第43話「存在矛盾」

 大人ヴィヴィオが異世界から持ち帰ったアンドロイド型デバイスCW-ADXアーマーダイン ラプターのデータ。それには存在矛盾があるらしい。
 プレシアはヴィヴィオ達の前に立って話し始めた。

「ラプターに併せて関係しそうな技術を考えましょう。」
「インテリジェントデバイス、あなた達にも馴染みがあるわね。使用者と会話し意思疎通出来るデバイス。」
「生産技術もほぼ完成されていて量産可能、だけれど同一のデバイスを使っても使用者が違えばデバイスも使用者に合わせて変わっていく。個々に相性もあるから誰でも同じ様に使えない。融合騎タイプになれば人格プログラムの違いがより顕著に表れる。同じ個体が複数あって全部に同じ経験をさせるのは難しい、情報を共有させていればより多くの情報を処理するのに負荷がかかるからラプターが増えれば増えるほど負荷は累積するわね。」

 なのはのレイジングハートやフェイトのバルディッシュのインテリジェントシステムは10年以上前に作られているが最新式と大差はない。それはRHdやアリシアのバルディッシュにシステムコピーして使っている事からも判るし、何より相性が合わなければ全く使えない。
 同じシステムでもレイジングハートとRHdでは性格も違う。

(そう言えば前にアリシアが言ってたかな…)

 同じバルディッシュでもフェイトのバルディッシュは指示された通りの事をするだけだけれど、アリシアのバルディッシュは彼女に合った調整を考えてくれるらしい。
 管理権限の違いもあるからなのかも知れないけれど、RHdもヴィヴィオに合わせて色々変えてくれている。成長に合わせて変わってゆく…だからデバイスを相棒、パートナーと呼ぶ魔導師も多い。

「人型だけで言えばProjectFateや戦闘機人。優れた魔導師を作る、組み込んだ機械に合わせて拒絶反応を起こさない人間を作る技術。」
「作るのは法や倫理面で問題があるけれど、実際に使える迄には教育も必要だし成熟するまで時間がかかる。勿論成長段階で個体差も出るからインテリジェントデバイスより相性は生まれやすい。情報共有能力は私達と同じレベルでラプターを使う環境を考えてもコスト面で問題も残る。」

 そう言ってヴィヴィオ達を見る。

「でも…それらは生まれが違うだけで人私達と同じ、感情もあるし好き嫌いもある。だから極限地帯でも背中を任せられるし、感情をぶつけられる。」
「私は戦闘機人の制作過程について詳しく知らないから断言はできないのだけれど、Drスカリエッティは戦闘機人を作った。その随伴として何故ラプターの様な人型デバイスではなくガジェットドローンを量産したのかしら?」
「彼にもラプターに近い物は作れた筈、情報を個々に持たせるにしても集中管理するにしても量産すればする程負荷が高くなって効率も悪くなる。」
「運用効率だけを考えればマリアージュの様に量産兵器として単純な思考で動かす方が良いわね。」

「量産すればするほど全体の機能が落ちる、特化させた物と比べてもスペック的に大きく劣る、切り捨てて使うにはコストがかかりすぎる。これが存在矛盾よ。」

 ヴィヴィオやチェントはベルカ聖王家オリヴィエ・ゼーゲブレヒトの聖骸布から作られている。プレシアが言った様にスカリエッティが戦力だけを望んでいたらガジェットドローンよりヴィヴィオを含む戦闘機人を量産した方が良い、でも彼はそうしなかった。
 それには何らかの理由がある…

「こちらに無い技術が向こうにあって、それで矛盾は解消されている可能性も無くは無い。でも…そんな物があれば世界が大きく変わっている筈よ。今の話から私が判るのはそこまでね。」


 そう言うと元いた椅子に座った。
 ヴィヴィオは彼女の顔を覗き込む。
 どうして矛盾の話だけをしたのかわからなかった。彼女ならデータに目を通して何を調べなければいけないのか判るだろうし、更に言えば何をすれば良いか指示も出来る。

「私達は巻き込まれてしまったけれどこれは異世界間の問題。ヴィヴィオが本気で事件に向き合うなら私も一緒に考えるわ。でも彼女達は別、彼女達には彼女達の世界の私が居る、彼女達を支えるのは私じゃない。」

 異世界のプレシア、チェントが彼女を頼ってきたと言うことはここと同じ様に大人アリシアの母、プレシアも居る。それは判るけれど…

「あなたには時間を…未来を変える魔法と権利がある。周りから見たら王や神とも思える魔法。それは私やなのはさん、フェイト、アリシアじゃない、あなただけの魔法。あなた自身が考え、あなた自身の意思で魔法を使わなければいけない時が必ず来る。それだけは覚えておきなさい」


『きっとこの先今聞いた様な事が起きる。だから今のはその時の為のテストや』

 随分前にはやてに言われた言葉を思い出す。
 あの時は闇の書事件に関わっていてどう動いても未来が変わっちゃうって時だった…
 でも今は…動かなければ未来も変わらない。

 大人になった私達とチェントを見る。
 ブレイブデュエルの世界にチェントが来なければ関わるどころか知りもしなかったのは事実。
 本当に巻き込まれただけ?
 私が悠久の書じゃなくて刻の魔導書を持っていたら気付いていた?

「プレシアさん、刻の魔導書は今聖王教会にあるんですよね?」
「ええ、悠久の書を直した後返したわ。」
「もう1回、見せて貰えないでしょうか。オリヴィエさんが私にもメッセージを送っていたのに私が気付かなかったから大人の私達が動いたのだったら気付かなかった私も責任があると思うんです。」
「わかったわ、今日中にメッセージを送る。でもそれは些細な問題じゃ無いかしら?」
「えっ?」
「メッセージがあっても無くてもヴィヴィオがどうしたいか? さっきも言ったけれどあなた自身が考えてあなた自身の意思で動かなきゃいけない。 メッセージがあれば行く? なければ行かない?」
「………」

 答えられない。確かにメッセージがあるか無いかは今に至っては意味が無いのかもしれない。

「数日間は魔法が使えないのだし、デバイスもこちらで預かるわ。その間によく考えてみなさい」

プレシアの言葉に私は頷くしか出来なかった。  


~コメント~
 今話は台詞が多めです。特にプレシアの…
 はやての台詞は第2作「AgainStory」での1コマです。
 当時の彼女はそこまで時空転移について知りませんでしたが今回は少し違います。
 ヴィヴィオ自身の考えで動くのか動かないのか?
 今後の事件を含むヴィヴィオの行動理由が示されるのですがはてさて…


 話は変わりましてコミックマーケット90に参加された皆様お疲れ様でした。
 又、鈴風堂に来て下さった皆様ありがとうございました。

 雨にも降られず猛暑にもならなかったそうで、ネットでは風の神が降臨されていたそうな…
 世間のお盆休みは大概日中+α勤務で冬に行ける望みを託しております。

 AdventStoryですが文庫版は1話~28話迄の編集・加筆版になっており
 本編はもう暫く続きます。
 お楽しみ頂けると幸いです。

追伸:静奈君がイベント中(AM中)スペース不在になったのは私があるサークルをお願いしていた為でして…来て下さった方、本当にすみませんでした。

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