第61話「混戦」

「う、う…ん…」
「ヴィータちゃん?」
「…シャマル?」

 瞼を開くとそこには家族の顔があった。
 体を起こそうとすると節々に痛みが走る。ジャケットは消え相棒も待機状態に戻っていた。

「ここは…ヴォルフラムか? じゃあミッドチルダに?」
「ううん、フッケバインの攻撃でヴォルフラムは飛行不能。負傷者を診ていた時に突然ベッドの上にヴィータちゃんが落ちてきたのよ。ミッドチルダに居た筈よね?」

 徐々に記憶が蘇る。
「私は…でっかいヴィヴィオと戦ってた時…何かが来て思いっきり腹を殴られて…」

 腹を見るが痣は無かった。そう言えばさっき起き上がろうとした時も腕や足は痛みが走ったけど…何が起きたのかヴィータ自身も判らない。

「シャマルが治してくれたのか?」
「ううん、酷い怪我は無かったから起きて話を聞きながらって思っていたから…それに魔力も残り少ないでしょう?」

 言われて胸のリンカーコアを感じる、確かに鼓動が弱い。だけど…カートリッジも数回使っただけで魔力も殆ど使っていない。

(最後のアレか? だったらやべぇ!)
「シャマルっ今の、ミッドチルダの状況は?」

「デアボリック・エミッションの中で戦闘は継続中…さっき対AMFセンサーからの映像が来てる…」
「デアボリック・エミッション!? まさかっ!」

 闇の書―夜天の魔導書に納められていた古代ベルカ魔法、誰でも使える代物じゃない。アレが使えるのははやてともう1人…

「どっちでもないわ、ヴィータちゃんを倒した…小さい方のヴィヴィオよ。今なのはちゃんと戦ってる…」
「!?」

 虹色の空間で時折見える光を見てヴィータは愕然とするのだった。 


 
「ハァアアアッ!」

 フェイトはバルディッシュをライオットザンバーⅡに切り替えて結界を突き破る。
 更に速度を上げて結界の中に入り上空に見えるゆりかごへと向かう。

「なのはっ!!」

 なのはとヴィヴィオ…何か取り返しのつかない事が起きようとしている不安に駆られていた。
 聖王のゆりかごとベルカ聖王と思われるヴィヴィオそっくりな女性がゆりかごを守り、その間にアリシア・テスタロッサを名乗る女性がECウィルスとラプターの事を公表した。

 シャーリーがニュースを見て呟いた言葉

『フェイトさんに来て欲しく無いと思ってるんじゃ…』

 それを聞いて彼女達の思考が読めた。
 目的はアリシアが映像で言っていた【ラプター開発計画の見直しと今後同様の計画が持ち上がった時の対処】。
 ただ情報を公表するだけでは管理局がもみ消す可能性も考慮し全ての管理世界に情報を送った。 即ち管理世界内の全ての人の目を向けさせる為。聖王のゆりかごはあくまでその看板。
 だがその看板も力が無ければ強制的に墜とされてしまう。その対抗策としてラプターの開発計画に加わっていて部隊コストを無視した部隊―特務6課、そのフォワード陣と正面からぶつかり倒す事で力を示すつもりなのだ。
 先にECウィルスの製造と対ECウィルス用ワクチンを特務6課に送り戦力を分散させフッケバイン一味を使いヴォルフラムを足止めしたのは全戦力を集められない、クラナガンに被害が出さない為。アリシアとプレシアの名前を出す事でフェイトと彼女の周囲に動揺を与え出撃を止めたのもその計画の1つ。
 逆に言えば…

(私が来たら困るから…)

 JS事件の様にクラナガンに被害を出さないのではなく出せない…即ち今出ている彼女達しか戦えないということ。その上でヴィータが倒されてなのはとシグナムに対し2人が出てくるという事は…そのままゆりかごに入れば制圧は…可能。




「!? ヴィヴィオ、フェイトが凄いスピードでこっちに向かってる。防いで!」

 ゆりかご内部でも結界を破って入ってきた彼女を把握した。ヴィヴィオに通信を送る。

(気づかれた?)

 このタイミングでフェイトが来るのは予想外、彼女はなのはやシグナムの戦闘エリアを避けて回り込みながらゆりかごへと向かっている。
 アリシアはそれを見てこっちの弱点を読まれたのに気づいた。

『!?』
『私が牽制します。』

 なのはと激戦中のヴィヴィオが通信でそう言うとアクセルシューターを数10個フェイトの方へと放つ。幾ら何でも2人を相手にするのは無茶苦茶だ。

(ゆりかごを使って魔力を分断させる? ううん、あのスピードじゃ当たらない。さっきの2人に…ううん、彼女達もザフィーラと教導隊だけで手いっぱい…シールドを強化…もっと何か…)
 
その時  

『私が止めるっ!』

 通信と共に彼女の進行方向に現れた蒼い光の中からバリアジャケット姿のアリシアが現れた。

「行かせないっ!」
「!?」
「タァアアアアアっ!」

真っ正面からザンバーモードにしたバルディッシュを持って激突した。



「アリシアっ?」

 突然視界が変わってここに飛ばされた時には驚いた。でもここでフェイトを止められるのは私しかいない。
 小太刀状に切り替えて剣を振りかぶり連続で切りつける。だがフェイトは寸前で避ける。

「どうしてっ?」
「ゆりかごに行くつもりでしょ! ここからは行かせない。」

 ブレイブデュエルと違ってこっちの空中戦は魔法力を酷く使うから苦手だ。しかも相手は高速戦用のジャケットに切り替えたフェイト。最初の奇襲で倒せなかったら勝ち目なんて無い。

(ヴィヴィオみたいに勝てるなんて思ってない。少しでも時間を作れたらっ!)

 目的はヴィヴィオ達が集中出来る時間を作る。

(誰がここに飛ばしてくれたのかわかんないけど、私が出来る事を思いっきりするんだ!)  
「ハァアアアッ!」



「アリシアっ!?」

 突然現れた魔力とその中から彼女が転移してきたのにはヴィヴィオも驚きを隠せなかった。

『アリシアっ! ゆりかごに戻って。アリシアじゃフェイトママは抑えられないよっ』

 念話を送る。だけど彼女から返ってきたのは…
 
『忘れないで。ヴィヴィオだけが戦ってるんじゃない。聖王とかそんなんじゃなくてヴィヴィオと同じ気持ちだったからみんなここに居るんだよ。もっと自分を信じて』

 念話が届く。
 大人の私達の様に枠割りを作って動くのもいい。だけどこんな風に近くで同じものを見てくれたら…こんな風に背中を押してくれたら…

(アリシア…うん、ありがと)
「もう1人の私…RHd…私、心の何処かで私が言い出した事だから私がもっと頑張らなきゃって思ってた。でも…そうじゃないよね。私もRHdも頑張ってくれてるからここまで来たんだよね。」

 胸が少し暖かく感じる。
 ここのヴィヴィオやなのは達のずっと考えていた。でも…それが原因で目的を見失ったら意味が無い。

(私…私達がここに居る意味は…)
  
 世界は必然が積み重なってできている。
 いくら偶然と思えようと何か理由があるからそこにある。
 数多の必然が連なって世界は成り立っている。 
 例え幾つもの事象が目の前にあっても、選んだ事象だけが必然になる。
 事象が些細な事であっても重大な事であっても変わらない。
 それが理であり真意。     
 
 ここで私が選ばなきゃいけない事象は…

「【みんなっ】行くよっ!!」
 
 そう言った瞬間、更に輝きを増した。



「あの魔力はっ!」
「何っ?」
「ヴィヴィオ…」

 シグナム、フェイト、なのはがヴィヴィオから溢れる光を見て驚く中

「優しすぎるんだよっ♪」

 アリシアだけがその力に気付き少しだけ頬を緩ませた。



(ヴィヴィオ、あなたはそちらを選ぶのですね。)

 イクスヴェリアは思う
 何故オリヴィエが自らの時間を失ってまで彼女達と一緒に刻を見て欲しいと思ったのか?
 彼女の立場、ヴィヴィオとチェントは幼さ、特にヴィヴィオは時空転移を安易に使いすぎる。
何かあれば影から支えて欲しいという意味だと思っていた。
 だけど…

「オリヴィエ陛下、貴方の想いはもう彼女に届いていますよ。」

 未来を選ぶ覚悟を彼女はもう持っている。

~コメント~
 ヴィヴィオSと特務6課のバトルが混戦模様になってきました。
 ヴィヴィオが選んだ事象の結末はどうなるのでしょう?
 
 掲載が遅れてすみませんでした。
 理由は…1月ももう終わりかなと言う時にパソコンの電源を入れたら…
 黒い画面に何やら英語の文字列が。
 スマートフォンを使って調べてみたらUSBメモリとかを抜いて再度電源を入れてみると…同じ文字列「Operatingsystem not found」
 
 どうもパソコンの中に入っているSSDが壊れたそうです。うちのパソコンは静奈君が色々弄ってくれているので連絡を入れて修理されて今日戻って参りました。
(SSDも保証期間中だったそうなので予備と交換してくれたそうです。)
 不幸中の幸いはデータが消えなくて良かった~
 

 

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