第30話「親子の会話」

『ヴィヴィオ君、何か違和感はあるかい?』

 デッキに入れたスキルカードを使ってみて前とは少し違う感触に戸惑う。

「前とは少し違った感じがしますけど…でも慣れれば使えると思います。」
「じゃあ早速次のテストだ♪」
「私達とのデュエルです。」

 ブレイブデュエルでスキルは使える様になったけれど、実際のデュエルで使っても大丈夫かは別問題。それを見る為にレヴィとシュテルはマスターモードで待っていた。

「ヴィヴィオ、こっちのボクはいつもと違うから全力で来てよ。」
「マスターモードは管理権限が使える他に全ての能力値が強化されています。魔法力は減りませんしので手加減は不要です。」
「ええーっ!それってズルくない?」
「はい、ですからこの姿で会った最初に言いました。『ズルです』と♪ では始めましょう」

 ニコリと言うより冷淡な笑みを浮かべる2人を見て軽くテストを受けたのをちょっぴり後悔した。


 

「マスターモードのレヴィを相手にヴィヴィオ君は本当に凄いね。」

 グランツが感嘆の声をあげた。
 いくらヴィヴィオが強くてもシュテルとレヴィとの2対1ではテストにならない。どちらが先かを決める数度のジャンケンの後、勝ったレヴィとデュエルを始めた。いつもよりスキルカードの威力もスピードも段違いのレヴィに対して対等以上のデュエルを繰り広げている…繰り広げているのだけれど、アリシアは居ても立っても居られずオペレーションをしているユーリの横に行って

「レヴィとシュテルとだけ話させて。」

 そう言ってマイクを取りジッと見る。

「右からカウンター、下がって!」
『!!』

 アリシアが言った直後、ヴィヴィオが左手で紫電一閃を放った。

『誰? アリシア?』
「レヴィ、なのはさんとフェイトから聞いてるよね? 高速で攻撃する時は感覚に頼っちゃ駄目。右上から攻撃する癖…気づいてる?」
『えっ!? …うん。』
「私がこのままアドバイスするね。あと今のテストはデュエルに勝つんじゃなくてヴィヴィオがデュエルでスキル使っても大丈夫かを見るテストなのを忘れないで。」
『わ…わかった。』  
「じゃあ、攻撃する時になるべく右からしない様に気をつけて続けて。最初に次に3番目に何処を攻撃するかを考えて」

 そう言うとユーリにマイクを一旦オフにするよう手で合図した。

「よく気づいたね」
「何度かデュエルもしてますし見てましたから。博士、レヴィはマスターモードに慣れてないですよね? スピードとパワーに振り回されてる様な気がします。」
「あ…うん。マスターモードを使うのは2回目なんだ。レヴィだけじゃなくシュテルもね。2人にフィードバックもあるから大事にならないと許可していない。フィードバックと言っても筋肉痛とか頭がフワフワするらしい。」
「じゃあ、振り回されない様にしないと…。レヴィ、今思いっきりスピード出してると思うけど、半分ぐらいに抑えて。それでも普段より断然速いしいざって時に全速力で動いた方が緩急ついてヴィヴィオも合わせ辛くなるから。」
『うんっ!』

 少ないアドバイスだけでレヴィの動きが見違えるようになった。寧ろヴィヴィオが翻弄され始めていた。その様子にグランツやユーリ、ブレイブデュエルの中で見ていたシュテルは小声で「凄い…」と呟いた。

「ねぇアリシア。帰ったら教導隊の育成マニュアル受けてみない? 充分資質はあると思うんだけど」

 なのはが聞いてくる。教導隊員として資質を伸ばしたいと思ったのだろう。

「ごめんなさい、今はまだ聖王教会側に居ます。私が受けたらママやフェイトにも影響します。それに…将来武器になると思うから。それよりも先にヴィヴィオのこと…解決しなくちゃ。」

 固辞すると再び画面に視線を向けた。



「負けた~っ!」

 何発目かわからないアクセルシュートを直撃させてレヴィのライフポイントが0になった。それを見てヴィヴィオはフゥ~と深呼吸をした後笑顔で言った。  

「途中から動きが見違えるように変わって驚いた。アリシア、レヴィにアドバイスしてたでしょ。」
『…テヘッ♪ やっぱりバレてた?』

 やっぱりとため息をつく。

「すぐわかったよ。これで終わりって思った時全部避けられちゃうんだから。でもスキルカードのテストはOKだよね。次はシュテル?」
「いえ、今のでテストは十分です。レヴィもそろそろ限界でしょうし1度ブレイブデュエルから出ましょう。」

 そのまま「次は私です」と言ってくるかと思っていたけれど、そのまま外に出てしまったシュテルに首を傾げるが、彼女はあくまでテストが目的で普通にデュエルをしたいのかもと考え直し彼女の後を追いかけた。

「お疲れ様、ヴィヴィオ」

 ポッドから出るとアリシアが前で待っていた。手に持ったスポーツ飲料のペットボトルを受け取る。

「ありがと、途中でレヴィの動きが見違えたから驚いちゃった。何を教えたの?」
「マスターモードのスピードとパワーに振り回されちゃってたから全速で動いてるから緩急つけるのとどこから攻撃するのか考えて動く様にアドバイスしただけだよ。そんなに変わった?」
「全然違った。マスターモードって凄いね~レヴィありがと♪」

 隣のポッドから出てきたレヴィに声をかける。

「うん、次は普通にデュエルだっ! っと!」

 そう言ってポッドから出るが、次の瞬間足を絡ませた。

「レヴィ!!」

 慌てて駆け寄ろうとするが、その前にアリシアが彼女の横で支えた。

「大丈夫?」
「うん、ちょっと疲れただけだから。」

 アリシアがさっき『レヴィはスピードとパワーに振り回されていた』と言っていたからその影響だろうかと心配するが、レヴィの笑顔と一瞬アリシアがこっちを向いて少し顔を振ったのを見て

「ありがと」

もう1度彼女に礼を言った。



「ヴィヴィオ君、スキルを使ってみてどうだったかな?」

 レヴィが思った以上に疲れているのを見て、一旦休憩を入れる事にした。
 グランツに聞かれてヴィヴィオはう~んと少し考えてから

「違った感じ…少し魔法が出るまで遅い様な気がしましたけれど…言うほどじゃないし違和感もレヴィとのデュエルで気にならなくなりました。これで大丈夫です。ありがとうございます、グランツ博士」

 まさか1日足らずで原因を調べてくれたのには驚いた。礼を言うとグランツは照れながらも難しい顔をして

「ああ、うん。出来ればもう少しデータが欲しい所なんだが…レヴィやシュテルはマスターモードを使った後だしアリシア君はアリシア君でデータを取らせて欲しいし…」
「じゃあ、ヴィヴィオ。ママとデュエルしようか?」


「じゃあ、ヴィヴィオ。ママとデュエルしようか?」

 なのはの言葉を聞いてヴィヴィオを除く全員が彼女の答えを待つ。
 ヴィヴィオがブレイブデュエルでスキルが問題なく使えたら次はなのはがデュエルを挑む為の話の流れを考えていた。
 ここで彼女が躊躇ったら心の傷は思った以上に深い。尚更テストの続きとしてブレイブデュエルの中になのはと一緒に入らせなければならない。
しかし

「うんいいよ、なのはママとデュエルまだしたことないよね♪」
「えっ?」

 予想外の答えが返ってきた。思わず驚きの声が漏れる。

「駄目だった?」
「ううん、じゃあ早速。博士お願いします。」

一瞬戸惑ったが、予定通りだと思い直しさっきまでレヴィが入っていたポッドに向かった。



「姉さん…」

 ポッドの中に入るヴィヴィオとなのはをみてフェイトが声をかけてきた。

「うん…わかってる。私もなのはさんがヴィヴィオに言ったらヴィヴィオはデュエルしないと思ってた。だから私もヴィヴィオの背中を押すつもりだった。」
「なのはさんとヴィヴィオのデュエル始めます。」

 ユーリの言葉に頷きながらも頭の中では別の事を考えていた

 ヴィヴィオが魔法を使えなくなって、環境を変える為に海鳴に行って、聖王の力で自分の魔力を消そうとして無理して倒れた。だから現実には魔法が無いブレイブデュエルの世界に来た。
 プレシアが言っていた様に聖王の力で魔力を消そうとしたのは間違いないと思う。だったら…

「違うのは何?」

 デュエルが始まっている。
 なのははフォートレスとストライクカノンを装備し、ヴィヴィオはスキルが使える様になってエクセリオンモードをカスタマイズした騎士甲冑に変わって中長距離での砲撃戦を始めていた。
 なのはの装備は異世界での聖王のゆりかご戦と同じ装備で動いている。勿論理由はヴィヴィオの心の傷を表に出す為…でもヴィヴィオは特に驚いた様子も見せずデュエルしている。
 その様子をジッと見つめていた。



「ヴィヴィオ…前より動きがいいっ。」

 最近見たのはブレイブデュエルやミウラとの模擬戦、でもあれは魔法を全く使わなかったからそれより前になるとアリシアと一緒にコラードの研修を受けた時。
 昨日のアリシア、レヴィとのデュエルでも思っていた。相手の攻撃を幾つも想定しているから捌きがいい。アクセルシューターを10個放つがヴィヴィオも瞬時に同じ数のアクセルシューターを放つ。ぶつかった後ヴィヴィオの放っていた方が威力が強かったのかそのまま10個とも残りなのはめがけて来る。

「ファイアっ!」

 ほぼ集まった所に小型シールドをぶつけ完全に防いだ。しかしその間にもヴィヴィオは下から

「いっけぇええっ!!」

 インパクトキャノンを放つ。シールドで防ぐのを予め読んでいたのだ。なのはは大型シールドから砲撃を放ちインパクトキャノンを貫通させた。だが大型シールドの奥からヴィヴィオは猛スピードで迫って

「紫電…一閃!」
「っ!?」

 砲撃によって一瞬動きが止まった重装甲の大型シールドが虹色の刃で真っ2つにされた。彼女の目的はこれだったのだ。
 爆風から避けようと避けたところにアクセルシューターが迫る。1人で多重攻撃をしかけていた。

「凄いね、ヴィヴィオ♪」

 娘の成長が嬉しくなって嬉しくなる。しかし数度の激突からなのははヴィヴィオに対して違和感とそれによる弱点も見つけた。
 そして…なのは達全員が『何を見誤っていた』のかも…
 彼女にそれを気づかせるには…同じ物をぶつけるしかない。

「フォートレス・ストライクカノンパージっ!、レイジングハート、行くよ!」

 杖状に戻ったレイジングハートを手にして動いた。



「スキルカードだけでもあこまで動けるのですね…」

 シュテルが2人のデュエルを見て驚く。ヴィヴィオにはブレイブデュエルで今まで考えもしなかった方法を使われて何度も驚かされていた。でも今は純粋にスキルカードだけを使ったデュエルになっている。それでも2人がいかに凄いのか十分に感じていた。

「フェイトさん、僕が見てもハイレベルなデュエルで2人は本当に楽しそうにしています。彼女は心に傷を負っているのでしょうか?」
「それは…私も感じています。でも、ここに来る直前は倒れて意識もない位に…」

何かが違っている。なのはが既に気づいていた違いにフェイト達は気づいていなかった。



「レイジングハートっ、アクセルシューターのコントロールお願いっ」
【AllRight】

 ヴィヴィオのパンチをレイジングハートで躱しながら

「クロスファイアァアアアッシュートッ!」

 離れた直後を狙ってアクセルシューターを集束させて放つ。クロスファイアシュートはヴィヴィオの得意技だが元々機動6課に居た時なのはがティアナに教えようとしたものだ。勿論なのはも使える。

「わっ!?」

 驚いて離れるがマント部分に当たって消えてしまった。

「まだまだっ!」

 一気に離れるのと同時にインパクトキャノンとアクセルシューターを放つのを見てやっぱりと確信を得る。

「用意お願いっ!」
【Yes my master】

 アクセルシューターとクロスファイアシュートを使いながらヴィヴィオの動きを封じていく。
 ブレイブデュエルの中でクロスファイアシュートを想定していなかったのか、動揺が動きに出てしまった。それをなのはは見逃す筈はなく

「今っ!」

 7つのシューターで囲いを作り出し彼女を閉じ込めた。

 

(ママにバレちゃってるっ!)

 ヴィヴィオは焦っていた。クロスファイアシュートを使う可能性は頭の中にあった。それよりもスキルカードの魔法『しか』使っていないのに気づかれた。
 さっきのレヴィのデュエルでアクセルシューターから切り替えてクロスファイアシュートを使おうとしたけれど出来なかった。スターライトブレイカーも魔力回復で使おうとしたが動かなかった。
 元々それらの魔法は高度な制御能力が必要だからまだ慣れていないから使えないと思っていた。
 それに気づかれたら見逃してはくれないらしい。
 アクセルシューターとクロスファイアシュートで範囲を絞られているのに気づきながら

(剣で…ううん拳で叩き壊すっ!)

 ここでは空間転移の戦法は使えないしストライクスターズも使えない。
 残された方法…囲い込まれてストライクスターズの迎撃態勢を取る為に拳に力を集めた。


その時

【Call me master】
「!?」

 体の中から声が聞こえた。

そして外でも

「お待たせっ♪」

プロトタイプシミュレータールームに声が響き渡った。


~コメント~
 ようやく本話より最終章です。
 話を考えていた時はもっと短編なつもりでしたが…凄く長くなりました。(猛省)ともあれなのはは何に気づいたのでしょう?

 

Comments

Comment Form

Trackbacks