AS44「ヴィヴィオ流の特訓」

それから2日後の夜

「ヴィヴィオ、戦技披露会の対戦相手決まったよ。ヴィータちゃんだって。」

 夕食時になのはから話があった。

「試験の時と違ってヴィータちゃんも全力で来る。大丈夫?」
「うん、コラード先生から多分ヴィータさんじゃないかって聞いてたから。なのはママ、フェイトママ、ママ達はいつ管理局に入ろうって思ったの? 入る前になりたいことってあった?」

 急に話を振られて2人とも驚いている。


 
「コラード先生から言われたの。将来どうしたいか考えなさいって、その答えが戦技披露会の結果にも繋がるからって。教えて、ママ達はいつ将来のことを考えたの?」

 テーブルに乗りかかるようにしてなのはとフェイトに聞く。
 2人は顔を見合わせた後

「そうだね、ヴィヴィオももうそんな年なんだよね。私とフェイトちゃんが将来管理局に入ろうって決めたのは闇の書事件の直ぐ後だったの。はやてちゃんの為に消えようとしたリインフォースさんを送る魔法を使った時、はやてちゃんもリインフォースさんもヴィータちゃん達もみんな一緒に居たいと思っているのに出来なくて…私達には助けられる力がなくて…あの撮影のヴィヴィオみたいに泣くはやてちゃんを見て決めたんだ。」
「悲しい事件が少しでも無くなるなら、私達の手が届くなら…って。私はクロノやリンディ母さんの様になりたいって思ったから執務官を目指して」
「私は空を飛ぶのが好きだから、いっぱい魔法を勉強して…教えられるようになればって教導隊を目指したの。途中色々あって大変だったけれど、あの時の夢は叶ったよ。」
「あの時に…決めたんだ…」

 1年前、闇の書事件、異世界の闇の欠片事件や砕け得ぬ闇事件を見て来て、半年前闇の書事件の撮影ではやて役を演じた私はその時のみんなを見て来た。
 あの悲しい…胸を締め付ける様な気持ちは私だけじゃなかった。なのはやフェイトも同じ様に感じていたのだ。
 あの時みんながその気持ちから将来を決めたから今の私がある。
 だったら…私が出来ることは…
 私の中で視界が開け何が出来るのか見えた。    

「ママ、お願いがあるの。あのね……いいかな?」

2人に聞くと

「うん」
「いいよ」

 笑顔で頷いた。



「ファ…」

 研究所の会議室に作られた寝室、大人ヴィヴィオはそこで大きな欠伸をしてから横になった。いい感じに微睡みが来ている。

「じゃあ明かり消すわよ」

 大人アリシアがそう言って明かりを消そうと手を翳した瞬間、部屋の中に虹色の光が生まれて

「キャッ!」
「グエッ…」
「!?」

 親友の上に落ちてきた。チェントが飛び起きてシーツを片手にアリシアの背後に回る。

「何っ?」
「イタタタ…」
「ヴィヴィオっ!?」

 落ちてきたのはヴィヴィオだった。

  
「あ~…もう少しでリインフォースの所に行きそうだったよ…」
「ゴメン…部屋の外に飛ぶつもりだったんだけどずれちゃった」

 お腹を摩りながら言う大人ヴィヴィオにヴィヴィオは両手を合わせて謝った。
 寝る前のリラックスしている時にお腹の上に両足で着地したものだから防御もあったもんじゃない。
 大人アリシアはその様子に笑いながら2人にカップを渡す。

「どうしたの? こんな夜に、その服で? 何かあった? 事件?」

 何かの事件かと緊張する。しかし彼女は両手を振って

「ううん、そんなんじゃなくて…みんなにお願いがあるの。これから私と一緒に来て。」
「これから? 明日じゃなくて?」
「何処に行くの?」

 2人から矢継ぎ早に聞かれてアワアワと狼狽えるヴィヴィオに

「ヴィヴィオ、深呼吸して。その後で話して。何処に行って何をするつもりなのか、私達に何をして欲しいのか。私達はヴィヴィオのお願いを断るつもりはないよ。でも何をしたいのか判らないと協力したくても出来ないでしょ♪」

 彼女は何かを思いついた。でもそれをするのに彼女だけでは出来なくて私達の所に来た。
 それは何?

 その後、彼女が話したことを聞いて、3人は流石だと驚きながらもその可能性と意味に気づいて

「待ってて10分で準備するから」

 立ち上がってパジャマを脱いだ。          



…ヴィヴィオの様子がおかしい…

 アリシアが彼女の様子に気づいたのはそれから2日後だった。
 遅刻しないで毎日学院には来ているけれど、終わったら直ぐ帰ってしまう。それも気づいたら居ないのだ。 
 昨日から大人の私達も何処かに行ったみたいだし、コラード先生の練習にも出てこない。
 フェイトに聞いても『戦技披露会への準備に忙しいんじゃないかな』と言葉を濁している。

「戦技披露会のチケットみんなの分もお願いしてるから来てね」

 コロナとリオは喜んでいたけど…
 私の勘は何かあると告げている。
 こうなったら…

 放課後

「じゃあまた明日、ごきげんよ~♪」

 そう言って教室から出たのを慌てて追いかける。彼女が走って行ったのは校門ではなく屋上…思った通り。
 扉が閉まる前に階段を駆け上がった
  
「ヴィヴィオ何処行くのっ!」 
「キャッ!? びっくりした~アリシア驚かさないでよ。」
「驚かさないでよじゃないでしょ、何を隠してるの?」
「隠してる?」
「直ぐに帰っちゃうし、昨日も通信送っても出ないのは何かあるんでしょ?」

 目が泳いでいるのを見逃さない。ジーッと見る。

「あ~…もうバレちゃったか…はやいよ。」

 アハハと笑う。私もフフフと笑うが誤魔化せないように追い詰める。

「戦技披露会の準備してるってフェイトから聞いてるけど何をしてるのよ?」
「えっとね…」

 その話を聞いて

「えーっ! ヴィヴィオだけずるい! 私もっ」
「…そう言うと思ったから内緒にしてたのに…プレシアさんに許可貰ってね。じゃないと私が怒られるから」
「うん♪」

早速ペンダントから通信を開いて

「ママ、あのね…」

 一通り話すと

「仕方ないわね」

 と苦笑交じりだったけれど許可を貰った。  


               
 それから3週間が慌ただしく過ぎていった。
 そして、戦技披露会当日。

「ヴィヴィオ、準備はいい?」
「頑張ろうね♪」

 なのはとフェイトに聞かれて

「うん、バッチリ♪」

 2人と手を繋いで、高町家を出発した。


~コメント~
 戦技披露会編2話です。
 ヴィヴィオは何を思いついたのでしょうか?

Tittwerを始めました。
 https://twitter.com/ami_suzukazedou
 SSについてとか活動についてとかを呟けたらいいなと思います。

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