As01 新デバイス誕生?
「アリシア、ヴィヴィオごきげんよう。ねえ聞いた?【コア】の話」
ある日Stヒルデ学院に登校してきたアリシアとヴィヴィオにクラスメイトが駆け寄ってくる。
「コア?」
「そう、魔力…なんとか結晶体、通称【コア】。パパが言ってたんだけどもうすぐテストが始まるんだって。成功したら私達も空を飛んだり転移魔法が使えるんだよ。」
「そ、そうなんだ。凄いね~」
アリシアは一瞬ヴィヴィオを見て微笑んで答えた。
「アリシア、コアって…アレでしょ?」
「うん、ママの研究」
そう言いながら数日前の事を思い出す。
ある日Stヒルデ学院に登校してきたアリシアとヴィヴィオにクラスメイトが駆け寄ってくる。
「コア?」
「そう、魔力…なんとか結晶体、通称【コア】。パパが言ってたんだけどもうすぐテストが始まるんだって。成功したら私達も空を飛んだり転移魔法が使えるんだよ。」
「そ、そうなんだ。凄いね~」
アリシアは一瞬ヴィヴィオを見て微笑んで答えた。
「アリシア、コアって…アレでしょ?」
「うん、ママの研究」
そう言いながら数日前の事を思い出す。
数日前、ヴィヴィオが無限書庫へ向かうのを見送った後、先生に呼ばれて行ってみると教会本部にファイルを持って行って欲しいと頼まれた。
断る理由も無く、プレシアの研究施設も近いからと受けたのだけれど、教会本部へ持って行くと何故か騎士カリムの部屋に招かれたのだ。
「ごきげんよう。騎士カリム」
「ごきげんよう。アリシアさん。お遣いご苦労様」
朗らかな顔で出迎えた彼女に頭をペコリと下げる。
薦められるまま椅子に腰を下ろす。併せたかの様に
「失礼します」
誰かが入って来た。振り向いて顔を見る。
(前にどこかで…あっ、チェントの時の)
「ありがとう、オットー。アリシアさんと会った事あるのかしら?」
「はい。姉が居ますので。どうぞ」
「あ、ありがとうございます。」
(? どうして)
オットーからティーカップを受け取りつつ首を傾げる。彼女はその前にあったチェントの事件で数日間一緒に居たのだから。
(カリムさんも知ってるはずなのにどうして? ヴィヴィオとチェントの事?)
「今日来て貰ったのはアリシアさんにお願いがあってなのよ。ヴィヴィオさん達の事じゃないから安心して」
その疑問に答えたのはカリムだった。少し気にしすぎていたらしい。
「私ですか?」
「ええ、お母様、プレシア・テスタロッサさんが研究されていたものが実用段階、実際に使う前のテストに入るの。アリシアさんは研究内容について知っているかしら?」
「いいえ、ママは魔導書の修復してる話はしてくれますがそれ以外は…」
「そう…お母様が研究している物は魔法力を集めたエネルギー体。魔力格納多層構造結晶体、私達は魔法コアとかコアと呼んでいるわ。」
カリムの話にアリシアは引き込まれていった。
昔から高純度エネルギー体は多数ある。
今もベルカ式カートリッジシステムや魔導炉、ロストロギアとされるジュエルシードやレリックもエネルギー体だ。
しかしプレシアの研究しているコアとそれらとは大きく異なっている。
カートリッジシステムは瞬間的に魔力を開放する方法であり、魔導炉は大出力で長時間使えるが建物サイズだから持ち運べる代物ではない。過去の物は全て出力をコントロールする為の制御装置が必要であり、今はそれが失われているから下手に使うと暴走してしまう。
しかし、魔法コアはそのものが出力制御能力を持っていて、予め決めた枠を越えた出力は出せないから暴走する事はない。更に爪先程の小さな結晶でも長時間使えデバイスにも入るから魔法が使えない人でも持っていれば魔法を使えるようになる。
カリムから話を聞いたアリシアは母の凄さを改めて知った。
プレシアは魔導炉やジュエルシードの危険性を知っている。
ポケットに入れたデバイスを取り出して見つめる。アリシアのデバイスは魔法が使えない彼女の為に通信を念話に変える魔法やシールド系・フィールド系魔法が組み込まれている。
その魔法の源は何か…
(ママ、ずっと前から研究してたんだ…海鳴に居た頃から…)
「それでね、幾つかのテストは成功して次は実際に使ってテストをするの。魔法が使えないけれどデバイス制御やプログラムが組める人がコアを使って実際に魔法を使っても大丈夫かというテスト」
実用レベルのテストに入っているらしい。
「そこで、アリシアさんにもこのテストに参加して欲しいの」
「…えっ、わ、わっ私がですか!?」
プレシアの話だと思って聞いていたらいきなり話を振られて思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。
「勿論最初は管理局や教会職員の大人がテストをして安全かどうか確かめるわ。アリシアさん達にテストをして貰うのはその後、お母様には私から話をしておくから考えておいて貰えないかしら」
「はい」
そう言われていたがその時にはもう心の中で答えは決まっていた。
クラスメイトの話を聞いてテストの話題が広まっていると言うことは大人のテストも成功しているのだろう。
「アリシア、テストって何するの?」
「何をするのかわかんないけど、魔法が使える人より使えない人に試して貰った方が結果もはっきりするって言ってたから何かの魔法を使うんじゃない?」
「そうなんだ。何かわかったら教えてね」
「うん。」
先生が教室に入ってくるのが見えて話はそこで終わった。
(ヴィヴィオ、もしかして気づいてる? 私もテストに参加したいと思ってるの何も言っていないのに…)
~そしてその日の夜~
「アリシア、お願いがあるの。あのね…カリムさんから話を聞いていると思うのだけど…」
夕食を食べている時に話が出てきた。言いにくそうにしているプレシアに笑顔で答える。
「うん、いいよ。私もママの役に立ちたいもん。コアのテスト、私も参加するよ。魔法が使えなくてもデバイスの制御方法や公式知ってる人って子供じゃあまり居ないみたいだし」
「そう、ありがとう。」
「ねえさまわたしもする~」
「チェントったら。じゃあ、お姉ちゃんがちゃんと出来るか見てて。終わったらみんなでお祝いしようね。ママおめでとうって」
「うん♪」
満面の笑みで答える。
「そうね、ママも頑張るから一緒に頑張ろうね」
アリシアが再び聖王教会に呼び出されテストデバイスを受け取ったのはそれから2日後の事だった。
「へぇ~これがそのコアが入ったデバイスなんだ」
昼休み、ヴィヴィオが腕のリングをマジマジと見つめる。
先生には伝えてあるが、クラスメイトには話していない。
テストと言っても普段の生活を送るだけなのだから。でもいつもと違うのは通信ではなく念話を、走る時に軽い強化魔法と言う風に魔法で何か出来る時は使うだけ。
「大変なんだよ~。ヴィヴィオやママに念話するのもいちいち念話を飛ばす方向から入れなきゃいけないんだから。いつもはデバイスに頼んでたのに…」
普段使っているデバイスは今は止めている。通信や念話が使いやすく作られていたプレシア特製のオリジナル。でもテスト用のデバイス市販のと同じらしくその都度色々調整しなきゃいけない。
「わ~それ嫌…私のもだけどアリシアのもオリジナルだからね」
「うん。」
「テストなんだからもっと使わなくていいの? 大きな魔法とか」
「子供に持たせる様にコアの出力も低く抑えてあるんだって。砲撃魔法とか魔法弾は作れないみたい。でも飛行魔法は使えるから放課後に教会本部の広場でテストするんだ。」
そう言って簡単な回復魔法をヴィヴィオに使う。
「気持ちいい~、ありがと。あ~でも今日はまだ調べなきゃいけないのがあるから…ごめんね」
「いいよ。明日結果を教えてあげる。」
「うん」
初めて使う飛行魔法にアリシアの心は躍っていた。
~そして放課後~
「アリシア、体の力を抜いてプログラムをデバイスに送って。いきなり飛ぼうと思わずに体の周りに魔力が満ちていくのを感じるんだ」
ヴィータがアリシアに言う。
教会から立ち会って欲しいと管理局に依頼があり教導隊の一員であるヴィータが来ていた。
周りには何人もの関係者が来て様子を見守っている。
目を閉じ何度もプログラムを確認してデバイスへと送る。
すると腕のリングが淡い青色の光を放ちアリシアの体を包もうとする。
「そうだ、そのまま浮き上がる感じで…」
(このまま少し浮き上がる感じで…)
【Emergency Mode load】
その時突然ポケットに入れていたデバイスが反応した。
「えっ? キャアッ!!」
一瞬の何かに押されるような感じを受けて、ハッと気づいたら上空へと飛び出していた。
「クッ!!」
ヴィータも騎士甲冑を纏って慌てて追いかける。
「アリシアっ、何があった!」
すぐに追いついてきたヴィータが叫ぶ。
「わかりません。急にデバイスが反応してそのままっ」
いきなり反応してそのまま何かが動いている。
「受け止めてやるから、飛行魔法をキャンセルしろっ!」
「もうやってます。デバイスも待機状態に戻ってるのに」
何が起きたのかわからない。
腕のリング、テストデバイスのせいじゃない。
ヴィータが手を広げ抱きかかえようとした時、シールドの様な物で弾かれた。
「何っ、シールドだっ?」
(シールド、反応したのこっち?)
コアの魔法エネルギーを敵からの攻撃と認識してデバイスが動いた?
「アリシア、シールドを切れ。そうじゃないとそのまま真っ逆さまだ」
「これ私じゃ止められませんっ!」
飛行魔法の効果が消えて落下を始めている。
その時念話が届いた。
『ヴィータさんシールドは私が何とかします。消えたらお願いします。アリシアちょっとだけ目を瞑ってじっとしてて』
「誰だっ!」
言われた通り目を瞑る。
ヴィータに答えるより先に、幾つもの光弾がアリシアを襲った。
器用にシールドの中心にいるアリシアを避けるようにしながらシールドのエネルギーを奪い、しかも落下速度を抑えている。
そして光弾が消えたのと同時にシールドも消える。時を置かずヴィータがアリシアの体を抱きかかえた。
「アリシア、大丈夫か?」
「ヴィータさん、ありがとうございます」
「ったく、あんな無茶するヤツは…まぁ1人しかいないか」
呆れた様に言うヴィータ。でも彼女にも誰かわかっているらしい。
あのタイミングでこんな無茶を思いつくのは言った通り1人しか居ない。
「そうですね…。ヴィータさん、降りたらまた見て貰えますか? 飛行魔法」
一瞬目を丸くしてからニヤッと笑い
「お前も負けず嫌いだな。気に入った! とことん付き合ってやる」
『まったくもう、無茶するんだから』
「でも転移先が管理局の敷地内じゃ無かったんだし、教会からも何も言われないよ。」
モニタの向こうでため息をついている。
『それはそうだけど…何か気になるっていきなり飛ぶのは僕は…』
「ごめんなさい。今から戻って続きしますね。」
『えっええっ!!』
次の瞬間、その場から人影は消えていた。
テスト関係者が見守る中アリシアとヴィータは降りてきた。見守る中にプレシアの姿もあった。
事故が起きたのを聞いて駆けつけたのだろう。
いきなり飛び出してしまったのは予想通り、元々のデバイスがコアの魔力を攻撃と間違えて働いたのが原因だった。
プレシアにデバイスを預けて再び飛行魔法を使う。
「わ、私…飛んでる?」
「気を逸らすな。集中して」
暫く浮いた後そのまま降りる。
背丈くらいまで浮いただけ、魔導師で言えば何て事もない魔法。でも、初めて1人で飛べたのは文字通り飛ぶほど嬉しかった。
~翌朝~
「おはよ~アリシア。昨日どうだった?」
教室に入るなり駆け寄ってくる親友。
その様子に笑みがこぼれる。
「うん、飛べたよ…浮く位だったけど。練習してデバイスを改良すればもっと自由に飛べるようになるって」
「じゃあ今日は? 放課後一緒に」
「残念、私のテストはおしまい。いっぱいデータ取れたってママ喜んでた」
テストデバイスは昨日返した。今頃データを取る為にプレシアの所にあるだろう。
「え~っ、アリシアが飛んでるところ見たかったのに…」
「代わりに今夜テスト成功のお祝いするんだけど、来る? フェイトやなのはさん達も誘って」
「うん、行く行く♪ ママ達に連絡しなきゃ…」
ウサギの様に飛び跳ねて喜ぶ彼女の背を目で追いながら
(ありがと…)
心の中で呟いた。
~コメント~
ヴィヴィオメインのお話、AnotherStoryから始まってAdmixStoryまで書かせて頂きました。このシリーズは短編ばかり集めた1話か2話くらいで終わる話になります。
短編なのでヴィヴィオ以外のキャラクターにも光を当ててみたいと思い、最初はアリシア・テスタロッサが主人公の話です。
アリシアはプレシアの娘で魔導炉事故で死亡し、後にフェイトが生まれるきっかけになりました。Asシリーズでは『ある理由』からヴイヴィオのクラスメイトになりヴィヴィオが巻き込まれる事件に関わっています。
名前だけ使った半分以上オリジナルキャラクターだとも思えますが、違う面からAsシリーズを楽しんで頂ければ嬉しいです。
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