第13話「またね」(最終話)

「双子みたい」
「そっくり」
「リオ、コロナ、黙っててごめんね。」
「ううん、私達何となく気づいてたんだ。ヴィヴィオ、別人じゃないかって」
「うん、練習でクリスが一緒に居ても使おうとしなかったし。一昨日ヴィヴィオが凄く欲しいって言ってた靴お店に並んでたのに、そのまま通り過ぎちゃったでしょ」

 2人に会った時ここのヴィヴィオについてはアインハルトから教えて貰った事しか判らなかった。
 彼女が知らないヴィヴィオの姿もあるのだから、リオとコロナには判ったのだ。
「あったの!? 私今から行って…」

 ヴィヴィオがソファーから立ち上がって出て行こうとする。

「大丈夫。明日まで取っておいて貰ってるから。ねっ♪ 違うでしょ」

 ウィンクするリオにコクコクと頷く。納得したと言うより納得させられた。
 同じ様に見えても別人、趣味や趣向は全く違う。 

「紹介するね、こっちが私の友達アリシアとチェント」
「ごきげんよう、リオさん、コロナさん。アリシア…と妹のチェントです」
「ごきげんよ~」

 アリシアとチェントを見て怪訝な顔をする。

(どこかで見た様な…って思ってるよね。)

 アリシアと視線があって笑う。
 ヴィヴィオとチェント・アリシアとフェイト、似ていると言うより同一人物に近いのだから。アリシアもそれに気づいてあえて【テスタロッサ】を名乗らなかった。

「ヴィヴィオ、アインハルトさんは? 一緒じゃないの?」
「家に帰ってから後で来るって」
「そうなんだ」
(何かあったのかな?)

 少し気になったけれど、後で来るのだからその時聞けばいいと切り替えた。


そして…小一時間後

「ただいま、ヴィヴィオ達まだ居るよねっ」

慌てて駆け込んでくるフェイト。アリシアの姿を見てホッと息をつく。

「フェイトちゃん、約束したんだから大丈夫だって。」
「そうだよ、フェイトが待っててって言ったんだから。待ってるよ」
「アインハルトさんも後で来るって言ってたんだから、何も言わずに帰らないよ」

 アインハルトの名前が出た途端、

「アインハルトが外に居たんだ。入って来て」

 どうして外なんかに…と気になったヴィヴィオはリビングを出て玄関へ向かう。
 彼女は玄関の外に立っていた。

「アインハルトさんみんな待ってますよ。どうぞ上がってください。って私の家じゃないけど」
「ヴィヴィオさん…あの…これ」

 スポーツバッグの中から取りだしたのは、彼女の持つ刻の魔導書だった。ただし、魔導書はボンヤリと光を明滅させている。

「これ…もしかして」
「昨日からこんな感じで、ヴィヴィオさんをこちらに連れてきた時と同じです。まだ何かあるんじゃないかって…」

その時リビングで

「何これ、光ってない?」
「魔導書が、ヴィヴィオっ!!」

 リビングから魔導書を持ってアリシアが飛び出してくる。こんなのは初めて見る。
 2冊の魔導書を手に取るヴィヴィオ。
 それぞれ明滅を繰り返していたが、2冊は数回光を放った後何事も無かったかの様に光を消した。

「消えた?」
「消えましたね…」
「ヴィヴィオ、アインハルトさん…何が」

 後から来たヴィヴィオ達に聞かれるがアインハルトも何も判らず首を振って答える。

(魔導書同士で何かを伝えた…?)

 ヴィヴィオが居なくなって探す為にアインハルトは別世界へ来た。
 チェントが呼び出したのも別世界のヴィヴィオ。アリシアとヴィヴィオからその話を聞いて「ヴィヴィオ」と「魔導書」が鍵だと思っていた。
 でも、今ここに鍵は全部揃っている。これ以上何か…

「アリシア、こっちのヴィヴィオを呼んだのはいつ?」
「ここに来る前の日だから2日前だよ」
「そんなっ、ヴィヴィオさんが消えたのは2週間前です。」
「えっ、あ…そうだよね。申し込みに行くのずっと先だったんだから」
(もしかして…私の思った通りだったら)

 ヴィヴィオは自分の世界の刻の魔導書を見る。こっちの方には『異なる世界を繋ぐ門』としか書かれていなかった。その箇所を見つける。そしてそこには…

「そうだったんだ…」

「ヴィヴィオ?」
「…アリシア、チェント、帰ろっか私達の世界に」

クルッと振り向きそう言った。



「アリシア、チェント帰ろっか私達の世界に。」

 ヴィヴィオの言葉を聞いたヴィヴィオには彼女が何を見たのか何を知ったのか判らなかった。
 判るのは違う世界に呼ばれ戻ってくると2週間が過ぎていて、そこでもう1人の自身に会っただけ。

「ヴィヴィオ…」

何か蚊帳の外に出されているみたい。

「アリシア、チェントも戻る準備して。ママ達にも言わなきゃ。」

ヴィヴィオがそう言うとこっちに振り返って

「ヴィヴィオ、アインハルトさん、アリシア、これ見てください」

と本を開いて見せた。
それを見て

「「あっ♪」」

 どうして突然帰ろうと言ったのか納得した。



「ヴィヴィオ、もう少し話したかったな…」
「うん、でもママ達も心配してるから」
「姉さん…元気でね」
「フェイトもね」

 庭に出てチェントと手を繋ぐ。いつもはヴィヴィオもチェントもあまり近寄らないのにその時は自然に手を差し出せた。
 アリシアが笑顔で頷いている。

「ママ達、アインハルトさん、リオ、コロナ、そしてもう1人の私…いっぱいお世話になりました。」

 なのはとフェイト…元居た世界をイメージすると持っていた魔導書から虹色の光が生まれる。

「みんな、またね♪」

 そう言うと光の中に飛び込んだ。

「!?」



「ワワッ」
「キャッ」
「っと、セーフ」

 虹色の光に飛び込んだ直後一瞬落ちる様な感覚があって、そのまま着地した。
 手を繋いでいたチェントは転ぶ前に支えられたが、アリシアまで手が回らず…尻餅をついていた。

「ごめん、アリシア…大丈夫?」
「うん。ここは?」
「ここは…」

 その場所を話す前に

「「ヴィヴィオ!!」」

 リビングからなのはとフェイトが飛び出てきた。

「なのはママ、フェイトママ、ただいま♪」

 ヴィヴィオも駆け出し2人に抱きついた。



 フェイトがアリシアとチェントを送って行った後、ヴィヴィオはなのはに今までの事を話す。
 突然アインハルトによって異世界に連れて行かれ、向こうの世界でヴィヴィオとして過ごして居た事、アインハルトやリオ、コロナの事…

「もう1人の私か…ママも会ってみたいな。」
「うん、また行けるよ。行きたいって思えば」
「えっ?」



「そう、あっちの世界に姉さんは居なかったんだ…」

 車の中で助手席のアリシアに話す。チェントは窓にベッタリと顔を付けて外を眺めている。

「うん、私もママもチェントもね。私達の代わりじゃないけど向こうのヴィヴィオも友達がいっぱいいるみたいだし」
「異世界の私か…会ってみたい」
「2人揃って気絶しちゃいそうだけどね」
「姉さん~!!」
「フェイト、前っ前見て!!」
「えっ、キャアッ!」

フェイトが慌ててハンドルを戻し胸を撫でる。

「もう、フェイト。ちゃんと前見てよ」
「ごめん。でも姉さんが変な事言うから…」
「私のせいにするんだ。そんな事言うなら今度行くとき誘わないから」
「えっ?」
 


「ヴィヴィオどうだった? もう1人の自分と会って」

 ヴィヴィオ達が去りリオとコロナ・アインハルトが帰った後、ヴィヴィオ達はリビングで家族の時間を楽しんでいた。

「嬉しかった。あっちのママ達も凄く優しくて」
「そっか…」
「アリシアのママにも会えたし♪」 
「アリシアの母さんって…プレシア母さん?」
「うん、厳しそうな人だったけど。ヴィヴィオの事すっごく心配してた」
「母さんか…会いたいな…」

 遠い目をするフェイトに

「会えるよ。」
「「えっ?」」



「「「だって、願えば絶対叶うんだから♪」」」


 
『虹の橋。主の願いを鍵とし異なる世界を繋ぐ門』

 刻の魔導書に書かれた文字をヴィヴィオはなぞる。
 アインハルトはヴィヴィオが居なくなったから彼女が戻ってくるのを強く願った。
 やはりもう1つの世界の管理者はアインハルトだったのだ。
 チェントは姉の悲しみを癒そうとヴィヴィオが強く願ってヴィヴィオを呼び寄せた。
 管理者オリヴィエを複製母体とするチェントだから出来た魔法。
 これらから考えた通り元世界を強く想う事で橋を作り出した。
双方に鍵があるという意味。

 また行きたいな、今度はみんなと一緒に
 なのはとフェイト、プレシアとアリシアとチェントを誘って…
 思いつつヴィヴィオは魔導書を閉じた。


~コメント~
 高町ヴィヴィオがもしなのはVividの世界に行ったら?
 今話は事件と言うより誰かの悪戯的な話でした。
 ヴィヴィオの話を進めて行くにつれ、少しずつなのはシリーズでも違う世界になっていたので
「じゃあいっその事ヴィヴィオの所にヴィヴィオが行けば」というのが始まりです。
 Asシリーズには時空転移やアリシア・プレシア・チェントという死亡したキャラ、オリジナル設定、キャラクターが登場します。
 それらをもう少し上手く使えないかと試みたのも今話です。
 なのはVividの世界はもう一度描いてみたいなと思いますが、今回はこの辺で
最後までお付き合い頂きありがとうございました。

インフォメーションというか宣伝
昨年11月~今年の2月にかけて当サイトで掲載しておりました
「魔法少女リリカルなのはAgainStory2」が夏コミから頒布開始になります。
 高町ヴィヴィオがもし「The Battle Of Aces」の世界に行ったら? というコンセプトで書いた話で
マテリアル+αが登場します。
 AgainStory「2」となっているので1作目にあたるAgainStoryを併せてお読み頂ければ更に楽しんで頂けると思います。
 静奈さんの可愛いヴィヴィオ達のイラストや新たに書き下ろした短編も追加しておりますのでよろしくおねがいします。

(ちょっとしたこぼれ話)
2ヶ月程前に静奈さんとイラストの打ち合わせをした際、シュテル・レヴィ・ディアのチビキャラを何点か見せて貰いました。これまでの本は
 AnotherStory(なのは1期):春っぽいキャラと写真 
 AgainStory(なのはAs):冬服と雪の中にキャラクター投影
 AgainSTStory(なのはStrikerS):春の桜(始まりと終わりが春だったのでとのこと)
という風にそれぞれ舞台背景の季節が描かれていました。
 今回はオリジナル色が強いですが闇の書事件直後なので舞台は冬。でも
「冬の話でも出すの夏だから夏っぽい方がいいんじゃない」
と表紙にチビキャラがいっぱい出るのかと思っていれば
完全に意表をつかれました。

静奈さんはキャラクターを部品みたいに組み合わせるのが好きなのは知っていましたがこう言う組み合わせをするとは…
 今回はもう1冊動かれている様なので併せてそちらも見て頂ければ嬉しいです。

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