第23話「集う光」

 ヴィヴィオ達がブレイブデュエルの世界に行った頃、大人ヴィヴィオと大人アリシアはミッドチルダ地上本部の転送ゲートからヴァイゼンに飛んで再び特務6課へと赴いた。
 着いた頃には日が暮れかけておりはやては2人を特務6課の隊舎、八神家で使っているプライベートフロアへと案内した。

「ごめんなさい…ヴィヴィオの問題は解決出来ませんでした。」

 大人ヴィヴィオは頭を下げて、彼女から聞いた心の問題について話した。
 アリシアが子供の頃に変身して大人モードのヴィヴィオを怒りのまま倒してしまった事は流石に言えなかったけれど、彼女自身が答えを見つけるしかないだろうと伝えた。

 
 
「…そうやね、それは自分で答えを見つけるしかないな。早く立て直してなのはちゃんとフェイトちゃんを帰れる様にするよ、2人ともありがとうな。レリック片は近日中に届くよ、それまでヴァイゼンでゆっくりしてて。あと…魔力コアの研究目的で譲渡許可取った以上、報告も必要やし少しだけこっちに残してな。」
「わかりました、ありがとうございます。」

 はやては約束通り動いていてくれた。それを聞いて2人は顔を見合わせ頬を崩した。


 レリック片が特務6課に届けられたのはそれか1週間後だった。本局経由で話を進めたから途中の手続きに時間がかかったらしい。
 その間2人は特務6課に身を置いてマリエルや技術スタッフに魔力コアとデバイスの接続についてレクチャすることにした。
 管理局を揺るがす事件が起きた後、いくら特務6課のゲストパスがあると言っても町中をブラブラ歩いて変な事件に巻き込まれるのも避けたい双方の思惑と回復待ちの大人ヴィヴィオの体調を優先させたかったヴィヴィオ達の思惑、なのはやフェイト、はやて達がヴィヴィオ達と話す時間を持ちたいという希望と色々理由はあったけれど、何より子供アリシアからフェイトに渡された魔力コアの設計データには魔力コアの設計や製造工程等は詳しく書かれていたがデバイスとの接続については幾つか抜けがあったのを見てノウハウを伝えることにしたのである。
 アリシアから言わせるとプレシアは子供アリシアによって最低限の情報を伝えた。そしてアリシア自身がその世界を認めて技術を伝えた時に魔力コアの本当の機能を生かせる様に考えていたのかも知れない。
 最初は敵対した者からの技術供与ということでマリエルを含め技術スタッフは酷く警戒していたが、2人が設計データから実機を見せて接続方法を話すと警戒心より技術者の好奇心が勝ったのか全員が少しでも技術を得ようと質問攻めにあった。

「私が決めたんだから、私も手伝わなきゃね。少しでも良い未来にする為に…」

 親友が照れながら言った台詞がヴィヴィオには忘れられない言葉となった。
 実際彼女達から受け入れられた結果、時を置かずに特務6課の大半のスタッフにも好意的に受け入れられる様になった。
 

 そして1週間後…

「色々ありがとうございました。」

 デバイスにレリック片を入れた後、隊舎の玄関でヴィヴィオ達は立っていた。
 なのはとフェイト、はやてが見送る。

「ううん、こっちこそ時間取らせてごめんな。」
「色々あったけど…ちゃんとお話出来て良かった。」
「うん…もし小さい私が遊びに来た時はいつもの母さんでいてあげて。」
「アリシア…姉さん。プレシア母さんにもありがとうって伝えて。姉さん達から貰ったもの…間違えない様に使うから。」
「間違えちゃってもいいよ、その代わりもう1人の私がここを消しに来ると思うからその時は覚悟してね。」
「それは是非とも遠慮したいな…」

 苦笑する皆にヴィヴィオはアリシアと顔を見合わせて笑い。

「じゃあ皆さん、色々お世話になりましたっ! ヴィヴィオ」

 刻の魔導書を取り出して言葉を紡ぐ。

「あっそうだ! ヴィヴィオのデバイスを直したらもう1回来なきゃ…フェイト、こっちのヴィヴィオが再戦言ってきたら『次来た時にね』って伝えて、またねっ♪」
「えっ!? 何っ?」

 フェイトの問いかけに答える間もなく2人は異世界へと飛んだ。


 虹色の光が消えていくのをなのは達は見送った。

「何だかいっぱい色んな事が起きちゃって、私達がどうすれば良かったのか…わかんなくなっちゃった。」

 消えた光の跡を見つめながらなのはは呟く。時空管理局という組織に入って任務を通して考え方が管理局寄りになっていなかったかと考える。

「法と秩序を守る上で仕方ないって諦めてたものもあった気がする。もっと良い方法を求めるのを諦めて…」
「そうやね。それでも私らは組織で動いてる。だから間違ってるものは間違ってる、正しいものは正しいって言える様にしていかんとな。」 

 託されたものは大きすぎる。でもそれを生かした時新たな未来へと繋がる。それを感じたなのは達は2人の消えた軌跡を見つめていた。 



「っと、只今戻りました。」

 ヴィヴィオ達がプレシアの研究所に着いたのは2人が異世界に飛んでから10日経っていた。

「戻ってくるのを待っていた。アリシア、ヴィヴィオ」
「チンクさん、お待たせしました。母さんとチェントは何処に?」

 研究所の中に入るとチンクが出てきて声をかけた。

「案内しよう。少し色々起きてしまっている。その辺も含めて話があるだろう。」

 何が起きたのか?
 ヴィヴィオはアリシアと顔を見合わせ首を傾げた。 


「プレシア、2人が帰ってきた。」
「遅くなってすみません、只今戻り…えっ!?」

 案内されたのは元世界でデバイスメンテナンスをしていた部屋。ここも同じなのかと思って入ってみると

「お帰りなさい」
「…本当にフェイトちゃんそっくり。」
「血は争えませんね♪」
「そうだな♪」
『こんなに綺麗になるなら変な虫付かんかプレシアさんも心配ですね。』
「そうね、気をつけるわ。」

 プレシアの横にマリエルと子供サイズになったリインフォースとアギト、その横でウィンドウにははやてが映っていた。

「みんな…どうして…」
「どうしてって貴方達を待っていたのよ。それで探し物は見つかったかしら?」
「あっ、はい。」

 ヴィヴィオとアリシアはデバイスの中から取りだした。

「これがレリック片とジュエルシードNo10」
「そしてこれが完全体レリックNo14」

 テーブルの上に並べていく。 

「凄い…本物です」
「お疲れ様。マリエル技官、これで組み上げられますか?」
「はい。リイン、アギト手伝ってくれる?」
「はいです♪」
「勿論」
「私も手伝います。そう言えば…チェントは何処に居るんです?」  

 ここに戻れば真っ先に駆け寄ってくるだろうと思われる彼女が居ない。

「そうね…少し席を外しましょう。後はお願いします。」

 プレシアはそう言って私達を部屋から出るように促した。 



「ヴィヴィオが倒れた!?」

 プレシアの研究室に入った私達に彼女から聞かされたのはヴィヴィオが倒れたという知らせだった。

「聖王の力で自分の魔力を無効化って何日も持たない」
「でも無意識にしてたなら…、私は母さん達と戦ってないからわかんないけど…傷つけたくないって思うかも。」

 ブレイブデュエルというゲームのある世界には行ったことがない。刻の魔導書を使えば行けない事もないだろうけれど、必ず同じ世界…それも時間を狙って行くのは先ず不可能に近い。

「ヴィヴィオが言うのなら間違いないのでしょうね。このままヴィヴィオの魔力が戻らなければ私達は全員消えてしまう…でもそうなっていないのだから彼女が魔力を取り戻す可能性は十分に残されている。あちらはフェイトとなのはさんに任せて私達は私達が出来る事をしようという話になったの。」

 そう言ってプレシアは端末を触ってウィンドウを出して私達に見せた。

「これってRHdの設計データ?」
 アリシアから先に見せて貰ったのに似ていたからピンと来た。
「ええ、これはRHdの改良プラン。マリエル技官が先の事件でRHdに何が起きたかを調べてくれたのよ。原因は内包した全ての魔力をヴィヴィオが使ってしまった事による消滅。ジュエルシードもレリック片も膨大な魔力を持った結晶体。その魔力を全部使い切るなんて普通はありえない。数千回の砲撃魔法や時空転移を使えばありえるけれど数度の戦闘では起こらない。でもヴィヴィオはその魔力を使い切る行為をしてしまった。」
「…聖王のゆりかご」

 思い当たるものは1つしか無かった。あれだけ巨大な船を直して月の魔力を受けるまで飛ばせた力…それはヴィヴィオの魔力から来ていた。

「私のせいで…それだけの代償があったんだ…」

 アリシアは項垂れる。作戦を考えたのは彼女だったからだ。

「ええ、でもあなたが考えた計画は間違っていなかった。過去の事は悔やんでも仕方ないわ、次に何が出来るかを考えましょう。」
「話を戻すわね。マリエル技官がそれを見つけてくれたおかげでRHdは直せる可能性が見つかったわ。レリック片を再びコア状に作り直してシステムを入れ、フレームになったジュエルシードを入れればいい。けれどそれだと次に同じ事件が起きた時代替パーツは手に入らない。そこでコアとフレームにセーフティをかける。でもそれだと魔力増幅が出来なくなるからヴィヴィオのリンカーコアと直接リンクしてオーバーブーストさせる様する。その為には適応したレリック、それも完全体レリックが望ましい。」 
「でも母さん、それだと完全体レリックが2つになって…」
「『同じ時間に同一の物は存在出来ない。』でしょう? だからヴィヴィオを異世界、ブレイブデュエルの世界に行かせた。その間にレリック片と完全体レリックをRHdのコアとして作り替える。そうすれば管理局としてもRHdに変わりはないから封印されないしヴィヴィオの魔力を安定させているレリック完全体も失われない。」
「レリック作り替える…そんな技術、今のミッドチルダには…」

 ヴィヴィオがそこまで言って思い出した。ここにはそれを知る【彼女】が存在している。   

「彼女から方法や記述式、構成が届いたわ。不確かな箇所があったから蔵書から調べていたそうよ。私達が何をしようとしているのか全部知っていたようね。」

 イクスヴェリアとオリヴィエ・ゼーゲブレヒト。ヴィヴィオが魔力を失った時から何故彼女が動かないのか気になっていた。異世界の私達が来る前に彼女が何故ヴィヴィオとのコンタクトをしないのか気になっていたけれど、戻って来てから直ぐに動いていたのだ。  

 マリエルはデバイスの状況と原因を調べ新たなRHdを設計した。
 大人ヴィヴィオと大人アリシアは異世界から必要な物を集めてきた。
 イクス達はそれらを再構成する手法を調べ伝えた。
 はやては管理局でのデバイスの所持規定を調べ違法性が無い手続きを見つけ出し、リンカーコアと直接繋がるシステムを持つリインとアギトを向かわせた。
 チェントはヴィヴィオ達を連れ魔法のない世界へと連れて行き、大人ヴィヴィオ達が戻って来た時にレリックが消えない様にした。
 リンディ、レティ、エイミィ、士郎、桃子、シャマル、すずか、アリサ、フェイト、なのは…多くの者が自分が何が出来るかを考えて動いた。
 そしてアリシアはヴィヴィオと歩いて行く為に彼女について行って、プレシアは全てを見渡せる位置でそれぞれの想いを繋げ形にした。
 まるで全員の光を集めるかのように…
 
 
「ここからが大変よ。アリシア、ヴィヴィオ、あなた達も手伝って頂戴。」
「「はいっ!」」
  
 2人は声を揃えて答えた。

 それから3日後、赤い宝石が輝きを取り戻した。
 それは何処までも吸い込まれそうな深さの中に眩い光を有していた。

~コメント~
 Adventというのは到来するとか降臨するという意味だとAdventStoryの時に書きました。今話はForce編のエピローグと到来する為の因子が揃う話です。

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