第21話「バイバイ、異世界(最終話)」

 ヴィヴィオ達が砂漠世界で暫く待っていると離れた場所にベルカの魔方陣が現れリインフォース達が現れる。
 ヴィヴィオが大きく手を振ると安心したらしくヴィータも大きく手を振り返したのが見えた。飛んできた5人は降り立つなりはやてに頭を下げる。
「我が主…申し訳ありません。」
「はやて…ゴメン」
「はやてちゃんを守る為の守護騎士なのに私達が主を窮地に追い込んでしまいました。」
「ええよ、心配してくれたんやろ。ありがとうな」
「もう…いいのか?」
「ああ、完全に抑えるまでには至らなかったが」
「ううん、はやてはちゃんと1人で抑えたよ。もう大丈夫。あとこれ」

 心配そうなリインフォースに満面の笑みで答え、さっき拾ったデバイスをポケットから取り出しシグナム、シャマル、ヴィータに返す。

「そうか…すまなかったな」

 後で思い出してみればこれは彼女なりの詫びを含めた礼だったのだろう。 

「それで、言われた通りレティ提督にことわってきたが、この後どこへ行けばいい?」
「今から言う座標へ私達も含め全員を転送してください。」
「行けばわかりますから。」
「? ええ判ったわ」

 座標を聞いたシャマルが怪訝な顔を浮かべながら転送魔法の準備をはじめた。


 
「ヴィヴィオ、おかえり。」
「はやてちゃん、みんないらっしゃい♪」
「なのはちゃん、フェイトちゃん? もしかしてここ…」

 転送した場所で待っていたのは【八神家の皆さんいらっしゃい】と書かれた布を持ったなのは達の姿。

「はやてさんいらっしゃい。」
「リンディ提督…はい、ありがとうございます」

 はやてはヴィヴィオ達の企みにリンディも加わっていたのを察したらしいが、リンディを見てそれ以上闇の書に触れようとしなかった。

「そうやディア言うのわすれとった。八神家には決まりがあってな、家族間で隠し事は無し皆さんに迷惑をかけたらあかん。あんたも家族の一員や、ちゃんと守ってな」
「ああっ、騙したなーっ! 我は闇統べる…」
「それは前の事で今は家族の一員や。旅館で車椅子はきついな…リインフォース魔法使ってもええかな?」
「ええ、ここには魔法を知る者しかいませんし」
「そうやね」

 そう言うと、小さな魔方陣を作りだして車椅子から降りた。

「まてはやて、我の話を…」
「なのはちゃん、フェイトちゃん温泉いかへん? 私初めてなんや」
「いいの?」
「いいのいいの♪」

 そう言うと2人の背を押して宿へと歩いて行った。

「…はやてもディアも照れ隠しのつもりなのでしょう」

 星光が呟いたのを聞いてヴィヴィオもそうだろうなと納得した。 


 
 それから一気に宿の中は賑やかになった。
 こっちを知らない星光・雷刃・闇統達が色々騒動の種を作るのが大変でもあり楽しくもあった。
 しかしそんな楽しい日は長くは続かない。

「おはよ、ヴィヴィオも散歩?」

 慌ただしかった年が明け、朝から外を散歩しているとなのはに声をかけられる。

「おはよう。一緒に行かない?」

 朝から2人で出たのは練習の時以来、ほんの数日前なのにずっと前の事の様に思える。2人で少し歩くと小高い丘に着く。空気が冷たいせいか朝日がいつもより輝いて見える。

「私、今日帰るね。なのは…模擬戦できなくてごめん」
「いいよ。また会えるんでしょ…いつかもっと未来に。」
「えっ?」
「はやてちゃんを助けた時の集束砲、あれ…ブレイカーでしょ。」

 なのはの言った通りヴィヴィオのスターライトブレイカーは目の前のなのはではなく元世界、未来のなのはが使ったのを見よう見真似している。
 それでも元は同じスターライト、判ったらしい

「それにリインちゃんははやてちゃんの…」

 気づいていて何も言わなかっただけ。

「…なのは、いつか私じゃない私と会う日が来る。その時は仲良くしてあげてね。」
「うん。ヴィヴィオ、模擬戦じゃないけど…一緒に飛ばない?」
「いいよ♪」

 そう言って胸のペンダントを取り出す。

「レイジングハート」
「レイジングハートセカンド」
「「セーットアップ」」

 揃ってバリアジャケットを纏い一気に雲の上まで上がる。
 なのはと並んで飛ぶ事は何度かあったけれど、嬉しいようでどこか寂しい気がしたのはこの時だけだった。


 そして…

「フェイト、元気でね」
「うん…ありがとう…姉さん。チェントも元気でね」
「ん…バイバイ」

 泣きそうなフェイトをそっと抱きしめるアリシアと握手するチェント

「リイン、宜しく頼む…」
「はいです。リインフォース」

 大人と子供くらい背の違う祝福の風同士が握手する。

「ヴィヴィオ、元気でね」
「うん、またね。」

 3人を見て来て良かったと思いながら見回す。
 高町家のみんなとハラオウン家のみんなと八神家のみんな、そしてマテリアル達が見送ってくれている。
 このままだと湿っぽい別れになりそうで、潤んだ目をゴシゴシと拭いてからアリシア、チェント、リインを呼んで

「皆さんいっぱいお世話になりました。バイバイ♪」

 そう言うと刻の魔導書を取り出し

「元の時間へ…」

 生まれた光の中に身を任せた。



「…ん…帰ってきたんだ…」

 瞼を開くと隣のベッドにアリシアとチェントが、反対側のベッドではリインが眠っている。
 無事に戻って来られたのに安堵して息をつく。

「…何日くらい行ってたんだろう」

 見覚えのある天井、ここはプレシアの研究施設らしいから彼女の部屋に向かう。
 とそこには

「ヴィヴィオ、起きたッスね」
「ヴィヴィオおはよう」
「陛下~♪、おかえりなさい」
「ごきげんよう、陛下」
「ノーヴェ!? セイン、ディエチ、ウェンディ…どうしてみんな居るの!?」

 プレシアが居ると思ってドアを開けたところに居たのは、チンクだけではなくノーヴェ・ディエチ・ウェンディの3人と何故かセイン・オットー・ディードが居たのだ。
 それもみんなどこかに怪我してるのに嬉しそうにコップを持ったりお菓子を摘んでいる。

「それにみんなどうしたの、怪我して」
「ヴィヴィオが行ってる間にちょっとした模擬戦があってな」
「私達はそのつもりでも相手は本気だったみたいッスけどね~♪」
「そうね、ストレス発散になったわ。相手にお礼をしなくちゃいけないわね」
(プレシアさんまで…)

 居ない間に一体何があったのか?
 わからなかったけれどみんなが笑っているのを見て何かあっても終わったんだと納得しヴィヴィオも輪の中に入っていった。

「そうだわヴィヴィオ、学院から課題を用意して待ってると連絡があったわ。アリシアにも言っておいて頂戴」
「!? はい…」

 世間はそう甘くないらしい… 

~ リリカルなのはAgainStory2 Fin ~

~コメント~
 高町ヴィヴィオがもし別の時間に行けるなら? という話から1期~StrikerSの世界までやってきて、今話ではPSPゲーム「The Battle Of ACES」の世界にやってきました。
 元々第3章で終わるつもりで続けていました。
 しかしマテリアルを残したいと考えた時、ただ契約するだけでいいのか? とか 本設定には無かった「はやての中に眠る闇」はそのままでいいのか? という疑問やもう少しだけ続きを書いてみたくて続けさせて頂きました。
 ヴィヴィオが帰った後も書いてみたい気がしているのですが、これで一旦ヴィヴィオのお話はおしまいです。
 最後までおつきあい頂きありがとうございました。

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