第64話「作られた者」
- リリカルなのは AdventStory > 第6章 AdventStory
- by ima
- 2017.03.05 Sunday 19:53
「!?」
「何っ! 何が起きた?」
ヴォルフラムの艦橋でどよめきが起きた。中継されていた映像が次々に消えてしまったのだ。
『フォートレスからの映像停止、反応も消えました。』
ミッドチルダに居るシャーリーから通信が届く。
「シャーリー、突入したメンバーとの通信は?」
『シグナム空尉の反応はありますが動きはありません。レヴァンティンは停止、フェイトさん、ザフィーラ・教導隊メンバーは交戦中らしく通信できません。』
(AECが全部壊れた?)
「何っ! 何が起きた?」
ヴォルフラムの艦橋でどよめきが起きた。中継されていた映像が次々に消えてしまったのだ。
『フォートレスからの映像停止、反応も消えました。』
ミッドチルダに居るシャーリーから通信が届く。
「シャーリー、突入したメンバーとの通信は?」
『シグナム空尉の反応はありますが動きはありません。レヴァンティンは停止、フェイトさん、ザフィーラ・教導隊メンバーは交戦中らしく通信できません。』
(AECが全部壊れた?)
カレドヴルフとの共同開発していた対AMF武装端末。強力なAMF空間でも利用出来る特徴を生かしてセンサーを組み込んでいたが逆にそれが仇となった。
(ストライクカノンの直撃を大きなヴィヴィオが小さいヴィヴィオを庇って、その後で小さなヴィヴィオが攻勢に出たのは見てたから判っている…でも)
(トーマとの後で対AMFもバッテリ稼働時間も改良されてたけど…それでも相手に出来んのか…)
ストライクカノンとフォートレスはトーマ救出時に1度破壊されており、なのはが今回使っているのは強度や機動性等を向上させた改良型、それでも破壊されたらしい…
「シャーリー第2次突入部隊編成してたらセンサー装備させて」
内部の情報だけでも得られればと考えたが、シャーリーは表情を曇らせる。
『…部隊長、先程からミッドチルダ…管理局本局の通信を見ていますが次の突入部隊は編成されていません。』
『ミッドチルダに直接的な攻撃が行われず、警備艇や武装隊の魔力消失原因が不明な為、現在の位置で交戦した場合、艦船が市街地に落ちる可能性が高いというのが理由です。それと…先の映像が全管理世界に送られていてそちらを配慮して…という状況です。』
他管理世界の状況を考えてJS事件の様に次元航行部隊を含む本局部隊は動けない。ザフィーラと一緒に居る教導隊メンバーももしかするとミッドチルダに居ただけかも知れない。
魔導兵器の都市部持ち込みや無許可での使用という名目でしか動けないから首都航空隊や地上部隊、即ちミッドチルダ在住の部隊しか動けない…。特務6課も下手に騒ぎを大きくすると命令が撤回されかねない状態だと気付く。
「…わかった。編成された時は持たせて。あと何か変化があったら都度頼むな。」
『了解です。』
彼女もそれを理解したらしく笑顔でピッと敬礼して通信を閉じた。
事態は彼女達の思惑通り進んでいる。聖王のゆりかごで周囲の目を集め、映像でラプターの危険性を曝け出す。それ以上何を考えているのか?
クラナガンの上空で聖王のゆりかごから一斉砲撃するつもりはないだろうけれど…
はぁっと息をついて艦長席の背もたれに体を預けた。
「失礼します。」
チンク達が入ってきたのはその時だった。
「チンク、トーマ、リリィ、アイシスも揃ってどうしたん?」
チンクと3人という珍しい組み合わせに笑顔で迎える。
「慌ただしい所にすまない、ノーヴェが急ぎ部隊長と話がしたいらしい。聖王のゆりかごについてらしい。」
「あの…俺達も今なのはさんと戦ってる子について思い出した事があるんです。」
「はい」
「私も…」
それらははやては勿論、リインや艦橋に居た全員を驚かせるには十分すぎる内容だった。
『忙しいのに悪い、どうしてもみんなに話とかなきゃって思ってチンク姉に頼んだ。』
通信に出たノーヴェと後ろに居る少女2人、確かジムで働いているフーカとリンネと言っただろうか?
彼女達からもたらされたのはヴィヴィオ達の計画だった。
Stヒルデにいたヴィヴィオが聖王のゆりかごに行こうとしたのを小さいアリシアが止めた。その時アリシアが負傷したのを知ったアインハルトからフーカとリンネに連絡が行き、彼女達によってアリシアはノーヴェの家に連れて来られた。
そこで彼女の口から今度の計画を聞かされた。
聖王のゆりかごを使い周囲の目を集め、全管理世界へラプターやECウィルスの危険性を暴露し、そしてそれを止めようとする管理局―ラプター開発に参加しコスト度外視で編成された特務6課のフォワードチームを倒す事で力を示す。
それが計画の全てだと。
既にヴィータが倒され、なのは・フェイト・シグナムが空域に居る。
はやては近くに居たルキノに目配せでなのは達へ連絡を促す。
『私はスバルと一緒にレスキューにも居たし今は離れて民間にいるから思うんだ。アイツらの方が正しいんじゃないかって。私も目の前で助けられなくて荒れてスバルに当たった…あの時もう1人…誰か一緒に居たらっていうのも判る。でもあの時荒れて…無茶苦茶悔しくて悲しい思いをしたから今私はここに居る、もしあの時そんな思いをしなければ…また違う道に進んでたんじゃないかって思うんだ。』
『チンク姉やはやてさん達にこんな事を言うのは間違ってる…間違ってるって判ってるけど…アイツらが言う様に私ら全員で考えなきゃいけないんじゃないか? 私が言いたかったのはそれだけだ。ごめん』
そう言うと通信は切れた。
「部隊長…俺達も彼女を知ってます。さっき隊長達と戦ってる映像を見て思い出しました。数日前、俺達…俺とリリィだけだけど異世界に飛ばされたんです。行ったこともない管理外世界でスウちゃんや部隊長、隊長達…ヴィヴィオと会いました。そこではロストロギア…闇の書の中に眠る存在が出てきていて街を消滅させようとしていて、みんなはその存在を倒そうとしていました。」
「でも、その中であの女の子…ヴィヴィオだけは違ったんです。ヴィヴィオはその存在の中で泣いてる少女を見ていて助けようとしていました。彼女が大怪我してでもその意思は曲げず、少女を助けました。そんな彼女がここまでするなんて…大事な理由がある筈なんです。俺はそれを聞いてみたい。」
「私達をミッドチルダへ転送して下さい。」
「お願いしますっ!」
頭を下げるトーマとリリィの横で怖ず怖ずとアイシスが手を上げる
「部隊長…私も…あの子を知ってます。フッケバインに捕まってトーマが暴走した時彼女が虹色のシールドを作って飛空艇の中に居た私を守ってくれたんです…私だけじゃなくて、フェイトさんやスバルさん、フッケバイン…あの中に居た全員。」
飛空艇フッケバイン追撃戦時に見た虹の壁の更に向こうに見えた虹、あれが銀十字の攻撃から全員を守ったらしい。はやてを含むヴォルフラムに居た全員も…
「ラプターについて考え直した方がいいです。」
はやては目を瞑って4人に言う
「うん、ありがとな教えてくれて。フッケバインの2次攻撃があるかも知れんから待機してて。」
「「「部隊長!」」」
トーマが1歩前に出るがチンクがそれを制し
「トーマ、リリィ、アイシス行こう。部隊長の言うとおりここでフッケバインの2次攻撃があれば酷い被害が出る。」
そう言って3人を艦橋から出る様に促した。最後に出て行く彼女にはやては声をかける。
「チンク、ありがとな。」
「部隊長、ラプターの開発に関わっていた私が言うのも変な話だが…ラプターと私やリリィ、リインフォース、シグナム…フェイト…ヴィヴィオと何処が違うのだろうか…」
その言葉ははやての胸にグサリと突き刺さるのだった。
「あいつっ!」
「無茶よっ、そんな体で行っても迷惑になるだけよ」
艦橋でひと騒動があった頃、医務室で映像を見ていたヴィータはベッド横に置いたグラーフ・アイゼンを手に取って降りて部屋から出ようしていた。しかしその前にシャマルが割って入る。
「医療スタッフとして許可出来ないわ。」
「シャマル! AECが壊されたらあいつは、なのはは無茶をする。だから私が行かねぇとダメなんだ。」
「ヴィータちゃん落ち着いて、今のヴィータちゃんが行っても迷惑にしかならない、あっちにはシグナムとザフィーラ、フェイトちゃんがいる、JS事件みたいにクラナガンに被害は出ていない、ヴィータちゃんの思ってる様にはならないわ。」
言われて思い出したのか厳しい眼差しが幾分和ぐ。
「思い出して、本当に倒すだけだったらあっちのヴィヴィオがヴィータちゃんをここに転送なんてしないでしょう、違う? 」
「今は休んで、ここで何かあった時はやてちゃんを守れるのは私達なのよ。」
そう、ヴォルフラムもフッケバイン一味の攻撃を受けて酷い状況なのだ。再び襲撃してくる可能性もある。
アリシア・テスタロッサの映像と話を聞いて特務6課の士気は酷く落ちている。ヴィータ自身、いやほぼ全員が彼女の言葉に納得してしまった。
人と人ならざる者・人を模した者・人として作られた者…その関係を壊してしまう怖さ、彼女が示す未来への恐怖を。
しかしシャマルの言うとおり聖王のゆりかごにばかり気を取られていられない。
「…悪かった…何かあったら教えてくれ」
そう言うと元あった場所にデバイスを置いてベッドで再び横になるしか無かった。
「ヴィヴィオ…何を?」
「…ヴィヴィオが変わった?」
今まで均衡を保っていたヴィヴィオとなのはの戦闘が動いた。それもヴィヴィオが対AMF装備を全て破壊するという方法で。
聖王のゆりかごの中でアリシアとチェントは呆然としていたが同じものを見て頬を緩ませる者が1人
(オリヴィエ様見ていますか、彼女達は貴方の意思を十分過ぎる程受け取ってくれていますよ。)
彼女は何処まで見ていたのだろうか…今となっては叶わないけれど1度彼女と話してみたかったと思うのだった。
「ハァッハアッ…」
(これでゆりかごを直接砲撃する方法は無くなった筈…)
少し離れた所で息をつきながら様子を見守る。
対AMFの装備ストライクカノンと攻防を備えたフォートレスの3枚のシールド。全てを破壊すれば外から砲撃でゆりかごを壊される事は無くなった。
(こんなとこでシュテルとのデュエルが役に立つなんて思って無かったよ。)
ブレイブデュエルの世界、グランプリ準決勝でシュテルと対戦した時、彼女にフォートレスのシールドを全て破壊されたのを思い出して同じ箇所を攻撃した。今思い返せば精密射撃が出来る彼女はあの時フォートレスの弱点を突いてきていたのだろう。
爆風の中から現れたのはバリアジャケット姿のなのは。エクシードモードでフォートレスのジャケットは全て外し、手には杖状に戻したレイジングハートを持っている。
ここからは彼女を相手にしなくてはいけない。
「ここからだよね。いくよ、RHd」
【Alright】
なのは目がけて10数個のアクセルシューターを放った。
~コメント~
今話は少し重い話です。シリーズを通して「作られた者」側に対する話です。TV版1期からフェイト、A'sからヴォルケンリッターとリインフォース(アインス&リイン)、Strikersからヴィヴィオ・エリオとナンバーズ・アギト、Forceではリリィ なのはシリーズではそれぞれ数奇な運命の中で「何らかの技術で人に模して(コピーとして)作られた者」が登場します。
その者達にとってアリシアからの言葉はどう聞こえたでしょうか?
もし聞く事ができるのならギンガとスバルから聞いてみたいなと思いました。
(ストライクカノンの直撃を大きなヴィヴィオが小さいヴィヴィオを庇って、その後で小さなヴィヴィオが攻勢に出たのは見てたから判っている…でも)
(トーマとの後で対AMFもバッテリ稼働時間も改良されてたけど…それでも相手に出来んのか…)
ストライクカノンとフォートレスはトーマ救出時に1度破壊されており、なのはが今回使っているのは強度や機動性等を向上させた改良型、それでも破壊されたらしい…
「シャーリー第2次突入部隊編成してたらセンサー装備させて」
内部の情報だけでも得られればと考えたが、シャーリーは表情を曇らせる。
『…部隊長、先程からミッドチルダ…管理局本局の通信を見ていますが次の突入部隊は編成されていません。』
『ミッドチルダに直接的な攻撃が行われず、警備艇や武装隊の魔力消失原因が不明な為、現在の位置で交戦した場合、艦船が市街地に落ちる可能性が高いというのが理由です。それと…先の映像が全管理世界に送られていてそちらを配慮して…という状況です。』
他管理世界の状況を考えてJS事件の様に次元航行部隊を含む本局部隊は動けない。ザフィーラと一緒に居る教導隊メンバーももしかするとミッドチルダに居ただけかも知れない。
魔導兵器の都市部持ち込みや無許可での使用という名目でしか動けないから首都航空隊や地上部隊、即ちミッドチルダ在住の部隊しか動けない…。特務6課も下手に騒ぎを大きくすると命令が撤回されかねない状態だと気付く。
「…わかった。編成された時は持たせて。あと何か変化があったら都度頼むな。」
『了解です。』
彼女もそれを理解したらしく笑顔でピッと敬礼して通信を閉じた。
事態は彼女達の思惑通り進んでいる。聖王のゆりかごで周囲の目を集め、映像でラプターの危険性を曝け出す。それ以上何を考えているのか?
クラナガンの上空で聖王のゆりかごから一斉砲撃するつもりはないだろうけれど…
はぁっと息をついて艦長席の背もたれに体を預けた。
「失礼します。」
チンク達が入ってきたのはその時だった。
「チンク、トーマ、リリィ、アイシスも揃ってどうしたん?」
チンクと3人という珍しい組み合わせに笑顔で迎える。
「慌ただしい所にすまない、ノーヴェが急ぎ部隊長と話がしたいらしい。聖王のゆりかごについてらしい。」
「あの…俺達も今なのはさんと戦ってる子について思い出した事があるんです。」
「はい」
「私も…」
それらははやては勿論、リインや艦橋に居た全員を驚かせるには十分すぎる内容だった。
『忙しいのに悪い、どうしてもみんなに話とかなきゃって思ってチンク姉に頼んだ。』
通信に出たノーヴェと後ろに居る少女2人、確かジムで働いているフーカとリンネと言っただろうか?
彼女達からもたらされたのはヴィヴィオ達の計画だった。
Stヒルデにいたヴィヴィオが聖王のゆりかごに行こうとしたのを小さいアリシアが止めた。その時アリシアが負傷したのを知ったアインハルトからフーカとリンネに連絡が行き、彼女達によってアリシアはノーヴェの家に連れて来られた。
そこで彼女の口から今度の計画を聞かされた。
聖王のゆりかごを使い周囲の目を集め、全管理世界へラプターやECウィルスの危険性を暴露し、そしてそれを止めようとする管理局―ラプター開発に参加しコスト度外視で編成された特務6課のフォワードチームを倒す事で力を示す。
それが計画の全てだと。
既にヴィータが倒され、なのは・フェイト・シグナムが空域に居る。
はやては近くに居たルキノに目配せでなのは達へ連絡を促す。
『私はスバルと一緒にレスキューにも居たし今は離れて民間にいるから思うんだ。アイツらの方が正しいんじゃないかって。私も目の前で助けられなくて荒れてスバルに当たった…あの時もう1人…誰か一緒に居たらっていうのも判る。でもあの時荒れて…無茶苦茶悔しくて悲しい思いをしたから今私はここに居る、もしあの時そんな思いをしなければ…また違う道に進んでたんじゃないかって思うんだ。』
『チンク姉やはやてさん達にこんな事を言うのは間違ってる…間違ってるって判ってるけど…アイツらが言う様に私ら全員で考えなきゃいけないんじゃないか? 私が言いたかったのはそれだけだ。ごめん』
そう言うと通信は切れた。
「部隊長…俺達も彼女を知ってます。さっき隊長達と戦ってる映像を見て思い出しました。数日前、俺達…俺とリリィだけだけど異世界に飛ばされたんです。行ったこともない管理外世界でスウちゃんや部隊長、隊長達…ヴィヴィオと会いました。そこではロストロギア…闇の書の中に眠る存在が出てきていて街を消滅させようとしていて、みんなはその存在を倒そうとしていました。」
「でも、その中であの女の子…ヴィヴィオだけは違ったんです。ヴィヴィオはその存在の中で泣いてる少女を見ていて助けようとしていました。彼女が大怪我してでもその意思は曲げず、少女を助けました。そんな彼女がここまでするなんて…大事な理由がある筈なんです。俺はそれを聞いてみたい。」
「私達をミッドチルダへ転送して下さい。」
「お願いしますっ!」
頭を下げるトーマとリリィの横で怖ず怖ずとアイシスが手を上げる
「部隊長…私も…あの子を知ってます。フッケバインに捕まってトーマが暴走した時彼女が虹色のシールドを作って飛空艇の中に居た私を守ってくれたんです…私だけじゃなくて、フェイトさんやスバルさん、フッケバイン…あの中に居た全員。」
飛空艇フッケバイン追撃戦時に見た虹の壁の更に向こうに見えた虹、あれが銀十字の攻撃から全員を守ったらしい。はやてを含むヴォルフラムに居た全員も…
「ラプターについて考え直した方がいいです。」
はやては目を瞑って4人に言う
「うん、ありがとな教えてくれて。フッケバインの2次攻撃があるかも知れんから待機してて。」
「「「部隊長!」」」
トーマが1歩前に出るがチンクがそれを制し
「トーマ、リリィ、アイシス行こう。部隊長の言うとおりここでフッケバインの2次攻撃があれば酷い被害が出る。」
そう言って3人を艦橋から出る様に促した。最後に出て行く彼女にはやては声をかける。
「チンク、ありがとな。」
「部隊長、ラプターの開発に関わっていた私が言うのも変な話だが…ラプターと私やリリィ、リインフォース、シグナム…フェイト…ヴィヴィオと何処が違うのだろうか…」
その言葉ははやての胸にグサリと突き刺さるのだった。
「あいつっ!」
「無茶よっ、そんな体で行っても迷惑になるだけよ」
艦橋でひと騒動があった頃、医務室で映像を見ていたヴィータはベッド横に置いたグラーフ・アイゼンを手に取って降りて部屋から出ようしていた。しかしその前にシャマルが割って入る。
「医療スタッフとして許可出来ないわ。」
「シャマル! AECが壊されたらあいつは、なのはは無茶をする。だから私が行かねぇとダメなんだ。」
「ヴィータちゃん落ち着いて、今のヴィータちゃんが行っても迷惑にしかならない、あっちにはシグナムとザフィーラ、フェイトちゃんがいる、JS事件みたいにクラナガンに被害は出ていない、ヴィータちゃんの思ってる様にはならないわ。」
言われて思い出したのか厳しい眼差しが幾分和ぐ。
「思い出して、本当に倒すだけだったらあっちのヴィヴィオがヴィータちゃんをここに転送なんてしないでしょう、違う? 」
「今は休んで、ここで何かあった時はやてちゃんを守れるのは私達なのよ。」
そう、ヴォルフラムもフッケバイン一味の攻撃を受けて酷い状況なのだ。再び襲撃してくる可能性もある。
アリシア・テスタロッサの映像と話を聞いて特務6課の士気は酷く落ちている。ヴィータ自身、いやほぼ全員が彼女の言葉に納得してしまった。
人と人ならざる者・人を模した者・人として作られた者…その関係を壊してしまう怖さ、彼女が示す未来への恐怖を。
しかしシャマルの言うとおり聖王のゆりかごにばかり気を取られていられない。
「…悪かった…何かあったら教えてくれ」
そう言うと元あった場所にデバイスを置いてベッドで再び横になるしか無かった。
「ヴィヴィオ…何を?」
「…ヴィヴィオが変わった?」
今まで均衡を保っていたヴィヴィオとなのはの戦闘が動いた。それもヴィヴィオが対AMF装備を全て破壊するという方法で。
聖王のゆりかごの中でアリシアとチェントは呆然としていたが同じものを見て頬を緩ませる者が1人
(オリヴィエ様見ていますか、彼女達は貴方の意思を十分過ぎる程受け取ってくれていますよ。)
彼女は何処まで見ていたのだろうか…今となっては叶わないけれど1度彼女と話してみたかったと思うのだった。
「ハァッハアッ…」
(これでゆりかごを直接砲撃する方法は無くなった筈…)
少し離れた所で息をつきながら様子を見守る。
対AMFの装備ストライクカノンと攻防を備えたフォートレスの3枚のシールド。全てを破壊すれば外から砲撃でゆりかごを壊される事は無くなった。
(こんなとこでシュテルとのデュエルが役に立つなんて思って無かったよ。)
ブレイブデュエルの世界、グランプリ準決勝でシュテルと対戦した時、彼女にフォートレスのシールドを全て破壊されたのを思い出して同じ箇所を攻撃した。今思い返せば精密射撃が出来る彼女はあの時フォートレスの弱点を突いてきていたのだろう。
爆風の中から現れたのはバリアジャケット姿のなのは。エクシードモードでフォートレスのジャケットは全て外し、手には杖状に戻したレイジングハートを持っている。
ここからは彼女を相手にしなくてはいけない。
「ここからだよね。いくよ、RHd」
【Alright】
なのは目がけて10数個のアクセルシューターを放った。
~コメント~
今話は少し重い話です。シリーズを通して「作られた者」側に対する話です。TV版1期からフェイト、A'sからヴォルケンリッターとリインフォース(アインス&リイン)、Strikersからヴィヴィオ・エリオとナンバーズ・アギト、Forceではリリィ なのはシリーズではそれぞれ数奇な運命の中で「何らかの技術で人に模して(コピーとして)作られた者」が登場します。
その者達にとってアリシアからの言葉はどう聞こえたでしょうか?
もし聞く事ができるのならギンガとスバルから聞いてみたいなと思いました。
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