第28話「ヴィヴィオの弱点」

ブレイブデュエルの世界に来た翌朝、ヴィヴィオは早く起きてはやての朝食を作るのを手伝っていたら

「おはようございます~」

アリシアがやってきた。パタパタとスリッパを鳴らせ玄関に行く。

「おはよ、どうしたのこんな早く」
「恭也さんと美由希さんと朝トレ行くんだけど、ヴィヴィオもどうかなって。」
「へっ?」
「魔法使えなくても体力作りは大切でしょ。」
「それはそうだけど…いきなり言われても…」
 右手のお玉とエプロンを見る。

「ヴィヴィオちゃん行ってきていいよ~、私のウェア貸すよ。」
「ということで急いで着替えてっ♪」
「う、うん…」

何だかアリシアの勢いに乗せられた感じではやての部屋に行き着替えて

「お待たせ」

八神家を出た。



「おはようヴィヴィオ」
「おはよう」
「おはっよう…ございっます…アリシア、はやいよっ!」

 海鳴に来た時に練習している山麓の公園を過ぎて駆け上がり頂上付近まで来ると恭也と美由希が既に練習を始めていた。

「ヴィヴィオが遅いのっ。運動不足。」

 肩で息をする私に対して少し息があがった程度のアリシアを見てトレーニングしてるんだと改めて思う。
 そう言って背負っていたリュックから取り出して私にポイって投げた。慌てて受け取る。

「何これ? 棒?」
「体動かせば少しはスッキリするんじゃない? 行くよっ!」
「えっ!?」

 そう言うとアリシアは両手に同じ様な棒を持って真っ直ぐ私の方に向かってダッシュしてきた。慌てて構える。



「ヴィヴィオも結構やるな」

 柔軟中に2人の打ち合いを見て恭也は半ば感嘆の声を挙げる。

「ブレイブデュエルも凄かったけど、現実でもここまで出来るんだ…」

 美由希も驚いている。何度かの練習で打ち合ってアリシアの運動能力は高いのは知っていたし、ヴィヴィオも何らかの練習をしていたのはわかっていたけれど2人とも前に見たときより数段動きが良くなっていた。
 2人とも相手の動きを見ながら合わせている。つまりまだ余裕があるということ。

(仲がいいんだな…)

 そう思うと思わず頬が緩むのだった。



「あははは~それは災難やったね♪」

 立て続けに10分以上アリシアと練習した後、息も絶え絶えになってるところに美由希と恭也に挑まれて終わった頃には汗だくで足が震えて八神家に帰ってくるのも一苦労だった。
 恭也達やアリシアは少し汗をかいた位で平然としていたのだからあり得ないと思う。

「でも、そこまで熱中しちゃったのはそれだけ楽しかったからでしょう?」
「……楽しかった…っていうのは変ですけど何となくわかった気がしました。」

 魔法が使えなくなってどれだけ魔法に頼っていたかわかった。それにアリシアがいつもどれだけ大変だったかも…。

「そのままだと明日は筋肉痛で歩けなくなる。後でマッサージをしようか?」

 シグナムが苦笑いしながら言う。

「お、お願いします。」

 このまま筋肉痛になったら本当に動けなくなる。
 言われた通りだと思って頷いたのだけれどシャマルとヴィータ、リインフォースはそれを見て驚いていた。
 普段の私だったら空気が変わったのにも気づいてたのだけれどその時は本当にグッタリしていて…後で凄く後悔した。 



 同じ頃

「恭也さん、美由希さんどうでした? ヴィヴィオは」

 高町家の朝食の席で半ば体を乗り出しながらアリシアが聞く。
 桃子と士郎は翠屋に行っていてチェントも手伝う為について行った。本当はお世話になる手前なのはが行きたかったのだけれど…

『フェイト達はここにどうして来たのか忘れないで』

とアリシアが釘をさした為、朝トレから帰ってきた恭也達と朝食を食べた後、グランツ研究所でプロトタイプシミュレーターを使わせて貰う予定だ。

「そうね~、前より動きが凄く自然になってたね。もう少しペースを上げてもついてくるんじゃない、恭ちゃんはどう思う?」

 美由希がサラダを人数分小皿に取り分けて答えながら恭也に聞く。

「ついてこられるだろうな。感覚も鋭くなってるし、常時緊張するんじゃなくて緩急も使い分けてる。」

 2人のなのはとフェイトから感嘆の声が聞こえる。

「そういうのじゃなくて何か弱点みたいなものありませんか? ここを責めれば絶対勝てる!って位の。ブレイブデュエルの中限定でもいいので。全力の突きもアレも全部破られちゃうし一矢報いたいんです。」 、

 アリシアは恭也が動き以外のの所も見ていたのを知って驚いた。だけど驚いているだけでは次に進めない。

「う~ん…わかんない。練習あるのみ…かな? アリシアも十分凄いんだよ、私達が同じ年だった頃と比べたら全然敵わないと思う。」
「…でも無敵って訳じゃない。俺や美由希がブレイブデュエルでデュエルすれば勝てるよ、多分。」
「「「「「えっ?」」」」」

 恭也以外の全員が聞き返す。

「…もしかしてお兄ちゃん、ヴィヴィオの癖のこと?」
「は…はい」

 大人のなのはからお兄ちゃんと言われて一瞬戸惑うが、コーヒーを1口飲んだ後

「癖…というより俺はヴィヴィオが優しい子だからだと思いました。」
「そうですね。」

 何かわかったのかなのはは頬を崩す。

「…あっ!」 

 フェイトも気づいたらしいがアリシアと子供なのはは首を傾げている。

「4人だけわかってずるーい! お兄ちゃん私にも教えて~!」
「フェイト、私にも!」
「私、気づいてないんだけど…」
「姉さんならとっくに気づいてるって思ってた。私が見た姉さんと模擬戦やデュエルでもよくしてる。なのはも見てる筈だよ」

 フェイトに言われて更に頭に?マークがいっぱい浮かぶ。

「癖? 優しさ?」
「見落としてる?」

 子供なのはと顔を見合わせた。
 


 シグナムの激痛マッサージを受けた後、アリシア、こっちのなのはとT&Hで待ち合わせた。
 昨日から明日までどこの学校もお休みらしく、T&Hに来るとブレイブデュエルのスペースは沢山の子供で溢れていた。
 なのははフェイトとアリシアがスタッフとして動くので代わりにガーディアンとして待ちつつアリサとすずかが来たら一緒に遊ぶらしい。
 ヴィヴィオ達はなのはと別れ、デュエルスペースに来た。
 イベントも終わったから誰かからデュエルの対戦申し込みがあれば受けるつもりだったんだけど…

「誰も来ないね…」
「…昨日あんなの見せられたらね~」

 アリシアの呟きに苦笑いする。
 スキルカードを使う前に猛スピードで接近し倒してしまう&見えない程の速度を出す相手をノーダメージで倒す…こんな2人にわざわざ挑戦する猛者を見つけるならグランツ研究所に行った方がいい。

「私達もなのはを手伝う? ガーディアンで三月さん来るかも知れないし」
「そうだね~」

 周りの状況を眺めていると

「あのっ、私達とデュエルしませんか?」
「えっ、はい…えっ、ええっ!!」

挑戦を受けて振り返って思わず固まってしまった。


  
「冷たくて美味しい。」
「ブレイブデュエルの中だよね? これって凄いんじゃ…」

 アリシアと一緒にヴィヴィオも驚いた。
 スキルカードを使ったデュエルは止められているからと真夏のアイスクリーム争奪戦というゲームをしていた。
 アイスを作る材料やデザートがカードになっていてより多く集めた方がポイントをゲットするというゲーム。
 前回似たゲームをした時はRHdからのデータを見て全部のカードを見つけて勝ったけれど、今はそれが出来ずアリシアと2人でチームを組んで遊んでいた。
 対戦相手はこっちのスバルとティアナ。
 声をかけられて思いっきり驚かされた。
 このゲームでもスキルカードは使えるしライフポイントもある。だから相手がカードを集めるのを攻撃して妨害することも出来る。だから予め2人にスキルカードが使えない事を話した上で純粋にカードを多く見つけることにした。こっちのスバルとティアナもチームプレイに慣れているのかもの凄い勢いでカードを見つけていく。ヴィヴィオ達も2人とは違う方へ向かってコンビネーションでカードを集めた。
 結局あともう少しで勝てそうだったのだけれど、スバル達のポイントの方が多くゲームは負けた。その後でそれぞれ集めたカードでアイスを作って互いにお裾分けをして食べ比べていた。
 スキルを使ったデュエルも楽しいけれど、こんな風に遊べて最後に味わえるのも楽しい。
 スバルからこのゲームはギンガが得意らしいと聞いて何となくわかる気がした。

~コメント~
 再びブレイブデュエル編です。ヴィヴィオの癖についてはASシリーズで何度もそのシーンがあったりします。
 さて、1/12に本作の舞台になっていたなのはINNOCENTのサービスが終了しました。サービス開始当時は多かったカードバトル形式も今の様に多機能なゲームが増えてしまうと色あせてしまうのでこれも時間の流れなのかも。
(開始当時の色々を聞くとよく持ちこたえたとも…)

 もう少し過去の登場キャラクターを生かせなかったのかな~と(エリオやキャロとか)思っていますがまた何処かで別の形のゲームがあれば遊びたいと思います。

 
 

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