第13話「魔導師の信念」

「ねぇ、なのははどうして魔法使い…ううん魔導師になったの?」
「ふぇ? 私?」

 アリシアと一緒にフェイトとはやてが出て行くのを見送っていたなのはにヴィヴィオが聞くと驚かれた。

「私は…誰かを助けてあげられる…私の魔法が役にたてたらいいなって。」
「ユーノ君、私が魔法と出会うきっかけをくれた友達、はやてちゃんや八神家のみんな…フェイトちゃん達、アリサちゃんとすずかちゃん…みんなが笑ってると嬉しいの。」

 話しながら周りを見回す。

 
「だから、泣いている…悲しんでいる人が居たら助けてあげたいって、また笑って欲しい…その為に手を伸ばせるのが私の魔法…そう思ったから魔導師になったの…かな。」
「なのはちゃんらしいね」
「ちょっと格好付けすぎじゃない?」
「ハハハハ…そうかな」

 すずかとアリサに褒められて照れる彼女を見て

(やっぱりママはママだ)

 アリシアの危惧は判ったけれどヴィヴィオはあえてそれを止めないでおこうと思った。彼女の優しい心と強い意志があったから私がここに居るのだから…。  
   

  
 暫くしてアリシアとフェイト、はやてが戻って来た。
 アリシアとなのはの間のぎこちなさも少しはとけたのにホッとしてみんなと話していると、レティから通信が来た。

『重要参考人の治療は無事に成功、今はもう普通に話が出来る状態になったわ。』
「ずいぶん早い回復ですね。」

 ヴィヴィオ達、特にアリシアの姿を見て少し驚くが全員気にしていないのを見て話を続ける。

『簡単な治療処置をして貰って…あとはエネルギー補給をして貰ったらあっさり治っちゃったそうよ』
「それはまた…」
「ふぇ~…」

 モニタ上に映る彼女が平らげた後の食器を見て皆が驚く。

(そう言えばスバルさんやギンガさん、エリオもいっぱい食べてたよね…)

 1度みんなでどれだけ食べられるのか競ったらと考えてしまい思わず笑みが溢れた。

『ただ彼女ね、取り調べをするなら聴取担当者を指名したいって』
「指名?」
『ええ、フェイトちゃん』
「ええっ?」

 急に名前を呼ばれたフェイトが更に驚く。     

「奇妙な話ですね。」
「なんでフェイトちゃんなんやろ?」
「同情して貰いやすいからじゃない? 会ってもすぐ攻撃してないでしょ」

 アリシアの言葉にヴィヴィオはなのはと一緒に苦笑いする。
 初めて会った時に話を聞かずに攻撃された側としては何とも言えないだろう。

『フェイトはどう思う?』
「聴取は誰かがやるんだし、アミタさんの希望なら私にやらせて欲しい。」
『じゃあ通信を繋いで貰うわ』
「お願いします。」

 フェイトは頷いて答える。

『現場のみんなは対象キリエの創作を続けてくれ。』
『装備も更新が終わり次第届けるから空の上で受け取ってね』
「「「了解」」」

 どうやらなのは達が動き出すらしい。

「ヴィヴィオ、どうする?」

 アリシアが小声で聞いてくる。  

「フェイトの聴取を近くで聞こう。私達が知ってる事件と違う所が多すぎる…思い込みで動かないように注意する為にも…。」

 アミティエと会った時に聞いた話だけでは状況が掴めていない。     


『フェイトちゃん、バルディッシュは少し遅れるから代わりのストレージデバイスを用意してるからそれを使って。』

 聴取の準備をする間。エイミィから連絡が入った。

「はい」
「私が受け取っておく。」
「シグナム、お願いします。」
「フェイト、バルディッシュ修理中なの?」

 その話を聞いていたアリシアがフェイトとシグナムに駆け寄った。      

「うん、さっきの戦闘で」
「そうなんだ…じゃあ私のを貸してあげる。」

 そう言って胸のペンダントから外して差し出した。

「えっ?」
「いいの、アリシア?」

 ヴィヴィオも思わず聞く。    

「いいの♪ インテリジェントデバイスとストレージデバイスじゃ使い勝手が違うでしょ。それに空中戦になったら私じゃ足手まといだしね。でも壊さないでよ、大切なパートナーなんだから。バルディッシュ、フェイトを手伝ってあげて。」
【Yes Sir】
「ありがとう、バルディッシュ…よろしくね」

 フェイトが嬉しそうに受け取るとバルディッシュは待機状態でキラリと光って答えた。



「ではこれより聴取を始めさせて頂きます。」

 ホテルの洗面所を仮の聴取室としてフェイトがモニタ上のアミティエと向き合った。
 アミティエから見えない場所ヴィヴィオはアリシアとリンディと一緒に聞くことにした。

「会話は全て証拠として保存されますのでご理解をお願いします。」
『はい』


       
 惑星エルトリア、アミタ達の暮らす世界では砂漠化、地上資源の枯渇や環境汚染により多くの人が宇宙で生活出来る場を作りエルトリアを離れた。
 残された僅かな人の中に彼女とキリエ、2人の両親が居る。
 両親は科学者で故郷の緑化再生を目指していたが彼女の父は病に犯されていた。キリエは父の願いを叶える為に調べここを見つけた。
 星の命すら操るという永遠結晶、それを探す鍵が夜天の書にあることを。
 だがここのはやてはそれを知らない。夜天の書の大半はリインフォース消失と共に失われてしまっていた。
 
『…キリエの調査は綿密でした。永遠結晶の在処と計画にとって重要人物となるフェイトさんやなのはさん、はやてさんのデータ、能力は勿論過去の事件のことも色々と…。失礼ながらここに来る前にそのデータの閲覧を…。そうしてキリエはこちらの世界へ…私も半日遅れでやって来ました。途中で何かにぶつかってしまいましたが…』
「!?」
「ちょっ!!」  

 驚いて思わず声が出かける。ヴィヴィオとアリシアが海鳴からミッドチルダへ転移する際にぶつかったのはアミタだったのだ。
 アリシアが何か言いそうになったのを見て口を塞いで慌てて彼女を連れて洗面所から部屋に戻る。  

「あこで私達が出たら話が余計にややこしくなるでしょ!」

 扉を閉めてからアリシアの口を塞いでいた手を離す。

「…ごめん…」
「ううん、驚いたのは私も同じだから。でも…これで判ったね。アミタさんとキリエさんの目的…」
「それに…ここにも永遠結晶【エグザミア】があるってことが。」

 知っている物と大きな違いは無かった。
 これではっきりした。エグザミアを求めて来たキリエを止めなくちゃいけない…でも…

(私は…どうすればいいの?)

 まだ答えを見いだせないでいた。



 同時刻

「コードロック解除、管理者権限にアクセス。鍵の場所は構造の奥の奥…」
「封印の鍵…起動。」

 ヴィヴィオの迷いをあざ笑うかの様に事態は急速に動いていた。 

~コメント~
 もしヴィヴィオがなのはRefrectionの世界に来たら?
 今回はあまりいじれないシーンが多くて色々本編の台詞多めです。

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