第18話「共同戦線」

「ハァアアアアッ!」

 ヴィヴィオは両手に魔力を集めてユーリに対して猛スピードで一気に詰めて拳を繰り出す。だが彼女はシールドで防いだ。

(滅茶苦茶固いっ! これじゃあ…っ!?)

 瞬間背後に寒気を感じ振り向き様に回し蹴りを放つ。
 その先では既にユーリが砲撃でヴィヴィオを狙っていた。放つ直前に足で弾いた事で射線がずれる。ユーリが放った砲撃は海面に突き刺さり水蒸気を伴った大爆発を起こす。

 
 
(スピードと魔力もっ!)

 横目で見て舌打ちしながら一旦距離を取る。 
 捉えられないレベルのスピード…振り返ってから攻撃していては間に合わなかった。砲撃魔法も直撃すれば無傷では済まない。

(5枚のシールドも邪魔だけど…それより…)

 急いで対策を考えなくちゃいけない。そう思いながらも再び攻め込んだ。



 アリシアは救急車の中でヴィヴィオとユーリの戦闘をモニタ越しに見ていた。

「ユーリ、思ってる以上に強い…でも…」 

 フォートレス以上のシールドが5つだけでもきついのに、彼女自身の魔力とスピードは異世界の彼女と同等かそれ以上…。
 アリシアが永遠結晶の所に向かったのも彼女が目覚めた時、出来れば戦いを避けたかったからだ。しかし先にイリスが彼女を目覚めさせてしまい退却せざるえなくなった。
 それにしても、ヴィヴィオもあれから魔力も上がっている。ここまで苦戦する相手じゃない筈…

「あっ! そうかヴィヴィオっ!」

 魔力と魔法が制限されてヴィヴィオは思う様に動けていない。

「エイミィさん、リンディさん聞こえますかっ?」

 それに気づいて通信を開いた。
 

   
 ヴィヴィオとユーリの攻防は続いていた。彼女に対しての攻撃が限られているのもあるが
 何よりも聖王の鎧を使っていないと魔力を取られてしまう中での戦いがより辛くしていた。

(まだ方法はあるけど…それよりも前にここから出なくちゃ!!)

 ここに居るだけで彼女はフェイトやはやて達局員からの魔力を強制的に吸収し続ける事ができる。ここから彼女を連れ出さないと分が悪すぎる。

「…………」

 無表情のまま魔力弾を放つユーリ。
 それを避けながら戦いの場をオールストン・シーから更に離れた海上へと移動させるしかない。そう考えて動こうとした時

【Caution】

 RHdが警告を出すのを聞いて慌てて離れる。

「フォーミュラーカノンっ、ファイアアアアアッ!」

 上空からタイミングを狙っていたなのはがユーリ目がけて一斉射した。  

『ヴィヴィオちゃん、私が入るからその間にデバイスに聞いてっ』

 ユーリがなのはに目標を変えたのか上空へ向かう。

「デバイスに? RHd」

 相棒に声をかけるとレイジングハートから3つの戦術プランが送られて来ていた。

 Aはヴィヴィオが前に出てなのはがフォローに入る。
 Bはなのはが前に出てヴィヴィオがフォローする。
 Cは2人同時に上下・左右で挟み込んで攻撃する。

 ざっくりと言えばそんな感じの戦術で今のプランはBらしい。更に海上に結界を作ったからそこへとユーリを誘い混む作戦らしい。

『わかった。なのは、バックアップから離れた瞬間にAに!』

 念話で送ってそのままなのはとユーリを追いかけた。


 ヴィヴィオはまだコンビネーションの訓練経験は少ない。
 対するなのははフェイトやはやて達・局員との訓練経験はあるが戦術を立てる余裕は無い。
 この状況で戦術を立てたのはレイジングハートだった。
 急遽取り入れたフォーミュラーシステムが不安定である今、魔力が奪われる空間でも戦えるヴィヴィオと彼女のデバイスは頼もしい味方だ。
 彼女を最大限に活用すればなのはも無理せずに済む。彼女達の動きは自身の想定した攻撃パターンに似ていたことから考えた。    
 RHd―レイジングハートセカンドはレイジングハートのシステムコピーから作り出されたインテリジェントシステムで親子といって言い関係。
 フェイトとアリシアのバルディッシュ達の様に互いに疎通しあったりはしていなくても変わらぬものがある。
 主の求めに応じて更なる可能性を求め変化していくこと。
 ヴィヴィオの騎士甲冑を維持出来る様になったのも、なのはの為にフォーミュラーシステムを取り込んだのも根本は同じ。同じ思考を持つ2機だからこそ相手の動きが読める。
 ヴィヴィオとなのははRHd・レイジングハートを起点として2人でユーリと戦闘に入った。
 


「ふぅ…これで少しは楽になったかな」

 アリシアは息をつく。リンディが直ぐに動いてくれて結界を作ってくれたのとヴィヴィオとなのはが連携しながらユーリを移動させたことで彼女が作った結界は消えた。イリスもアミタとキリエが追いかけている。
 救護班が入ってユーリに魔力を奪われ負傷した局員を移動させている。
 フェイトやはやて、シグナム、ヴィータ、ザフィーラ、シャマルとシュテル達はダメージを負っていたが全員動けるらしい。
 フェイト達が移動を始めた、ヴィヴィオとなのはの所へ向かうつもりらしい…。

「ここが…ブレイブデュエルなら…」

 怪我をしてデバイスも壊れて動かない今、苦戦している親友の応援に行けない辛さに顔を歪ませた。 


「ハァアアアッ!」
「紫電…一閃!」

 ヴィヴィオが近接に迫ったところでシールドを切って壊してそこを狙ってなのはが砲撃を放つ。
 2人の魔力だけでない力がユーリを追い詰めていく。

『ヴィヴィオちゃん、あと60秒!それまでに助けるよ』

 なのはからの念話を聞いて

『わかったっ!』

 頷き攻撃スピードを更に上げた。
 なのはのジャケットも何らかの改良がされたのか魔力吸収への耐性がついている、だけどそれには時間制限があるらしい。だけど切っても壊しても復活するシールドに手を焼かされていた。
 その時 

『なのは、ヴィヴィオ、連携行くぞっ!』

 念話で声が聞こえた。

「紫電、一閃!」

 横一閃で放ち5枚全てのシールドを上下に真っ2つにして直ぐさま上昇。そこへ 

「ダァアアアアッ!」
「ハアアアッ!」

 ヴィータが突っ込んできてアイゼンを振り抜いてで上半分のシールドを叩き壊し、そのまま横を通り抜ける。反対側からフェイトが槍状のバルディッシュで残っていたした下半分のシールドを貫いてシールドが全て失われる。
 ユーリもただ受けるだけではなく、ヴィータとフェイトに向かって砲撃を放つがシャマルとザフィーラがシールドで完全に防御した。ユーリとザフィーラの防御で海面に氷塊が生まれた。そこへ
 
「クラウソラスッ!」
「ハァーッ!」

 はやてとシグナムが上空から攻撃し、ユーリを氷塊に繋ぎ止めた。
 一時的に防御と動きを奪うコンビネーション

「なのはっ!」
「なのはちゃん!」

 フェイトとはやてが叫ぶ。待ち構えていた様に

「エクシィイイド、ブレイカァアアアアッ!」

 トドメの一撃とばかりなのはが集めていた魔力を一気に放った。
  
「………」

 だがそれは彼女が想定していた動きだった。
 刺さっていたシグナムの矢をユーリが吸収したのを見て

「これはっ…RHd!」

 彼女の真横に飛んで

「スタァアアライトッブレイカァアアッ!」

 今日2発目のスターライトブレイカーを放った。ブレイカーの目論見はユーリの吸収能力そのものを無効化する為、しかし発射した直後にゾワッとするのを感じて

「ジャケットカットっ!」

 騎士甲冑が失われ古代ベルカの戦装束姿になって一気に離れた。

「キャアアアアアアアアッ!!!」

 直後なのはの集束砲が直撃してユーリが悲鳴をあげる。
 だがそれにヴィヴィオは気を留めている余裕がなかった。
   
(やられたっ…)

 ガクッと力が抜けるのを感じる。
 スターライトブレイカーを通じて魔力が奪われたのだ。
 なのはの魔法が吸収出来ないのに気づいて、始めからヴィヴィオの攻撃を待っていたらしい。
 それでもなのはのブレイカーは直撃した。
 肩で息をしていると

「ヴィヴィオ、大丈夫?」

 フェイトが近寄ってきて肩を貸してくれている中で

「フェイト…ごめん…」
「えっ? ヴィヴィオっ!? ちょっと!!」

彼女に身体を預け身体の力が抜けていくのを感じた。 
 

~コメント~
 舞台はRefrectionからDetonationへ
 話を立て直すのに時間がかかってしまいました。すみません

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