第41話「アリシアの役目」

「ただいま~なのはママ、フェイトママ」

 なのはとフェイトがキッチンで夕食を作っていると玄関からヴィヴィオの声が聞こえた。

「ヴィヴィオっ…えっ!?」
「おかえり~、キャッ!」
「た、ただいま…でいいのかな? こんばんは」

 2人でお出迎えしようと出て行くと、ヴィヴィオの隣に大きいヴィヴィオが会釈していた。
 高町家でそんな事があった数時間後、テスタロッサ家でもアリシアたってのお願いで大人アリシアとチェントを家に招いていた。ダイニングにお皿を並べるアリシアはキッチンに立つプレシアと大人アリシアに視線を移す。
 楽しそうに話をしながら料理を作る2人を眺め

(私もあんな風になれるのかな…)

 未来の自分を思い浮かべていた。
 そこへ2人のチェントが入ってくる。

「誤解は解けた?」
「ううん…諦めた。私こんなに強情じゃなかったと思うんだけど…」
「そっくりだよ。」

 肩を落として答える彼女に苦笑しながら言った。


 アリシアが大人アリシアとチェントを家に連れ帰る間、プレシアはStヒルデにチェントを迎えに行っていた。
 家に帰ってきて小さな妹が2人を見てヴィヴィオとフェイトだと思ったらしい。
ヴィヴィオと間違われたくないのかチェントは彼女にヴィヴィオじゃないと懸命に説明した。
 彼女に対して異世界の未来の自分だと言って聞かせても理解出来る筈がないと思った他の3人は夕食の用意を始める為その場を離れたのだけれど…予想通り無理だったらしい。 
 結局4人で彼女を混乱させない為に彼女の目の前ではフェイトとヴィヴィオと呼ぶ事にした。

「私、そんなにヴィヴィオに似てないと思うんだけど…」

そう呟きながら異世界のチェント=ヴィヴィオは渋々頷くのだった。



「ねぇ、少しお話していい?」

 プレシア達が就寝した後、アリシアはリビングで端末を触っている大人アリシアを見つけ声をかけた。

「うん、何?」
「手紙、受け取ってくれた?」
「手紙…ああ、シュテルさんが昔預かったっていう手紙、読んだよ。レヴィさんがアリシアが信用してくれなかったって少し怒ってた。」

 異世界のシュテルが来た時、彼女に渡した手紙は無事に届いたらしい。

「だって、レヴィ忘れられちゃいそうだったから。あのメモで凄く助けられた。ちゃんとお礼言いたくて、ありがとう」
「メモ? 気楽にねっていうの?」
「うん、ヴィヴィオの近くに居る為には私がもっと頑張らなくちゃって思ってたんだ。でももっと気楽でいいんだよね。それでね、私魔法が弱い分剣術でカバーしようと思って練習してるんだ。」

 そう言うと大人アリシアは端末を閉じてアリシアの方を見る。

「剣術? 剣の技?」
「うん、大きな剣を作ると魔力消費が激しいから小さめの剣を両手に持ってこうっ!」

 練習している時の様に腕を振る。大人アリシアはそれをジッと見ている。

「どう?」
「凄いね。凄いけど、どうしてそんな練習するの?」
「えっ?」

 予想外の質問に腕を下ろして彼女の方を向く。

「だって、一緒に居たいなら私も強くならなきゃ…アリシアもバルディッシュ持ってるでしょ?」
「持ってるよ、バルディッシュ。でも戦闘よりデータ処理に向き、ジャケットもあるしシールドとか念話は使えるけど戦闘向きじゃないよ。」

 彼女はそう言って胸のポケットから取り出した待機状態のバルディッシュを見せる。見た目は殆ど同じ形、でも中身は全く違うらしい…

「一緒に居たかったら強くならなきゃいけないの?」
「だって一緒だと事件や危険な場所に行くかも知れないじゃない。」
「だったら一緒に行かなきゃいいよね? 魔法力弱いのにそれをカバーしてまで行けば足手まといになるって思わない? それこそヴィヴィオが危くなるんじゃない?」
「それは…」

 痛いところを突かれた。確かにどれだけ練習しても高ランク魔導師相手に敵うはずもない。
 一緒に居て力になれる時もあれば逆に足を引っ張る時もある。だからなるべく足を引っ張らないようになりたい。そう考えていた。でも目の前の大人の私はそんな考えを真っ正面から否定した。

「私はね、サポート役なんだ。彼女が安心して全力が出せる環境を作って、帰って来られる場所を用意するのが私の役目。あっ、でも全然体を動かさない訳じゃないよ。基礎体力も持久力も冷静沈着に状況判断する為には重要だからね。でもそれ以上はしない。私が安全な所にいたら彼女は思いっきり動けるし、今日みたいに間違えない。間違っても私がフォロー出来る。」
「いつも隣にいるのも良いけど、近くだと見えない物も離れたら見える。もっと広い視野で見られたらちゃんと伝えられる。」

そう…私も昔はそう思っていた。でも、それだと彼女が危険な所へ飛び込んでいくのを応援しているように感じてそれが嫌だった。
 異世界でオリヴィエに抱えられて帰って来て、その後暫く手を吊っていたのを見て何も出来ない悔しさを感じた。
 だから同じ思いをしないように私が近くに居れば何か出来ると思った。

「こっちの彼女はルーツ。私達の時間軸を作ったのも彼女。だから私とあなたは同じアリシアだけど別人、でも一緒に歩いて行きたいっていう気持ちは同じ。焦らなくてもいいんじゃないかな。」
「………」
「アリシアの未来はこれからなんだから何が正しくて何が間違っているのかなんて私にもわからない。今は色んな事を学んで経験するのも大切、すぐ決めなくてもいいと思うよ。というのがお姉さんからのアドバイスでした♪」
「もっと気楽にね。夜も遅いから私も寝るね、あんまり夜更かししちゃ母さんに怒られちゃうよ。」

 そう言うと大人アリシアはリビングから出て行った。

「私は…どうすれば? もっと気楽にって…」

 彼女を見送る私の心は今までで1番揺らいでいた。



『ふぅん、こっちのアリシアってそんな事考えてたんだ。』

 大人アリシアは寝室に戻ると再び端末を出して再び大人ヴィヴィオと通信を始めた。

「かわいいでしょ♪」
『それ自分で言うかな~』

 端末に映った大人ヴィヴィオの呆れ顔を見て笑みで答える。

「いいじゃない、かわいいんだから。命の恩人から頼まれてたしね。」
『?』
「こっちの話、それよりもヴォルフラムで取ってきたデータさっき目を通したんだけど…あのウィルス、ECウィルスは凄いよ。適合しちゃったら異常な回復力と魔法が一切効かない攻撃も出来るみたい。【魔導殺し】って報告書にあった。代償で理性が飛んで破壊衝動も起きるみたいだけど…」
『魔法が効かない…私達が受けたのはその攻撃なのかな。聖王の鎧も効かないのは痛いね。でもそんなの私達の世界にあった?』
「初めて聞いた。もっと昔に事件があって無くなっちゃったのかも知れないけど…でもこれは『偽りの魂』じゃない気がする。管理局で特別編成部隊、しかもはやてさんやフェイト、なのはさんが動いてるならコスト度外視の部隊編成、相当本腰入れてる。私達が手を出さなくても事件は解決する。」
『私達が調べたのは外れだったってこと? あんなに大変な目に遭ったのに~』

 彼女が肩を大きく落とすのを見てクスッと笑う。

「私も死にかけちゃったんだから言わないでよ。それよりさ、特務6課のレポート見てて気になったのがあったんだけど…こんなの知ってる?」
『…知らない…』
「もしかすると、こっち…なんじゃない? 私達の目的」
『………』
「………」

 本当か嘘かも判らないけれど…もう1度行かなければいけないらしい。
 


 翌朝

「おはよ~なのはママ、フェイトママ」

 ヴィヴィオが起きてリビングに行くと

「おはようヴィヴィオ」
「ヴィヴィオおはよう」

 既に2人は起きていた。なのははもう出かける準備をしているみたいだけれどフェイトはラフな部屋着にエプロンを着けている。今日はお休みらしい。

「ヴィヴィオ、あっちのヴィヴィオを起こしてきて」
「は~い」

 そう言うと再び2階の客室へと向かった。



「ヴィヴィオは今日どうするの?」

 大人ヴィヴィオを起こしてきて一緒に朝食を食べる。昨夜はなのはとフェイトは見るからに挙動不審だったし、大人ヴィヴィオも気付いていてぎこちない感じだったけれど3人とも少しは慣れたらしい。

「私? 研究所でちょっと調べなきゃいけないから、朝から行くつもり。あっちのアリシアとチェントも同じ。」
「そう、じゃあ学院の帰りアリシアと一緒に行くね。」
「ヴィヴィオは今日お休み、ママと一緒にシャマル先生の所へ行くよ。」

 久しぶりに登校出来ると思っていたけれどフェイトが直ぐさま否定した。

「えっ?」
「プレシア母さんから聞いてるよ。リンカーコアだけじゃなくて体の色んな所に負担がきているから看て貰った方がいいって。」

 昨日の話は耳に入っていたらしい。

「私も今日は教導隊で打ち合わせだけだからマリエルさんの所に寄った後行くね。」

 既に決まっていてもう元気、大丈夫と言っても変わらなさそうだ。  

「ヴィヴィオ、看て貰った方がいいよ。私より酷いの受けてるんだから」
「うん…」

隣に座った大人ヴィヴィオに小声で言われてヴィヴィオは頷いた。

~コメント~
 ヴィヴィオとアリシアが成長していく中で2人の関係は? それを考えた時、大人ヴィヴィオと大人アリシアとの考え方の違いを出してみたいと思いました。


 

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