第04話「彼女だからできること」

「あれ? はやてさんからメッセージ届いた。」

 生徒会室で次の行事の準備をしていると端末の端にメッセージアイコンが現れた。
 RHdを起動して別のウィンドウを出すとメッセージが見えた。

「? あっ、私もだ」

 アリシアもそう言うと別ウィンドウを開く。
 誰だろう?と不思議そうに見ていた他の2人に

「私達の友達…っていうかママの親友の管理局員さん。こっちに来るから帰らずに待っててって」

 はやてからのメッセージには2時間後にStヒルデ学院に行くから私達とノーヴェには帰らずに待っていて欲しいと書かれていた。
 アリシアを見ると彼女も頷いたから同じメッセージが届いているらしい。
 念の為、ノーヴェにもメッセージを送ると「私にも来てる」とすぐ返事があった。
 ノーヴェからの返事を見てはやてに対して校門で待っていると送った。

  
 2時間後、ヴィヴィオとアリシア、指導を終えたノーヴェは集まって校門前に居た。
 アリシアがチェントのお迎えでチンクを呼んでいたので、ノーヴェとアリシアははやてに呼ばれている事を伝え、2人を見送っている。

「はやてさん、何の用なのかな? ノーヴェは…まぁ何となく判るけど私達までって…」
「えっ?まだ私に用があるのか?」

 ノーヴェが私に聞き返す。

「そうですね~、レスキューでフォワードになってた人を簡単に辞めさせてくれないんじゃないですか? その上教えるのも凄く上手ですし、人気もあれば…色んな条件出してくるんじゃないですか? 辞めない為に…」

 私が答える前にアリシアが言う。

「うん、私もそう思う。私も空戦S+ライセンス取った後大変だったもん。ママとヴィータさんが教導隊に推薦してるかも…」

 地上本部でも管轄が違う港湾レスキュー隊から本局教導隊への転籍は多分今まででも例が無い位凄い事だと思う。エリートコースとか出世とかじゃない、港湾レスキューは海や港湾付近の犯罪・事故対応や救助活動が主な仕事であり本局教導隊は新型装備や魔法のテスト、魔導師ライセンステストの審査、管理局員の教導が主な仕事とそれぞれの任務や目的が違い過ぎているからだ。
 だからそれぞれへの転籍を望む者は居ないだろう。
 それはヴィヴィオが所属している無限書庫も同じだからよくわかる。

「マジか? 嘘だろ…」

 ヴィヴィオの言葉にノーヴェはあからさまに嫌そうな顔をして後ずさる。
 アリシアは彼女の横に来て手を繋ぐ。驚くノーヴェに微笑むアリシア、ヴィヴィオも彼女が動かなければ腕に抱きついていた。
 私達の【逃がさない】という意思表示にノーヴェはガックリと肩を落とした。

「あからさまなのは無いかもだけど、ノーヴェの希望に合う方法を探してくれてると思うよ。はやてさん、今凄く忙しい筈だし…、話だけでも聞いてみようよ?」
「わかったよ…」

 逃げる気を失ったノーヴェを見て私達は頷いた。



 それから10分程経った頃、大きな車がこっちに来るのを見つけた。フェイトが持っている車よりも大きい。車は私達の前で止まって助手席の窓が開いた。

「待たせてごめんな、ちょっと混んでた。」
「はやてさん!」

 顔を出したのは八神はやてだった。管理局の制服ではなく私服姿だった。

「八神司令…私はっ!」
「うん、わかってるよ。とりあえず後ろに乗って、ヴィヴィオとアリシアも」
「私達もですか? てっきりノーヴェさんを逃がさないように待ってたんだと思ってました。」

 私も頷く。
 はやてがノーヴェに用事があるのはメッセージから読み取っていた。だから彼女が逃げないように一緒に待っていたのだと思っていたからだ。

「その辺の話も含めてあるから乗って乗って♪」

 後部ドアが開くのを見て私達は車に乗り込んだ。    
     


「3人とも例の大会の事はどれ位知ってる?」

 車に乗って動き出すとはやてが話しかけてきた。

「例の大会って、魔力コアデバイスを使った大会のこと?」
「そうそう♪」 
「運営団体の名前がディメンジョン・スポーツ・アクティビティ・アソシエイション、通称【DSAA】に変わって年内に大会を開催するんですよね。」
「ああ、それとミッドチルダと主要管理世界から競技者を集める…って話は聞いています。」

 私とアリシア、ノーヴェが口々に答える。

「うん、競技名は【ストライクアーツ】に決まったよ。アリシアが名付け親やね♪」

 笑顔で話すはやてに私達も笑って頷く。でも内心少し怖くなっていた。私達が別の時間軸から持ち込んだ情報が影響しているのを改めて知らされたからだ。

「競技人口次第やけど、今年はチャンピオンシップとして開催、ゆくゆくはクラスや年齢で分けて行けたらいいな~と思ってる。で、来月から競技人口を増やす為にここと主要管理世界のジムや道場に魔力コア専用デバイスを貸し出す。デバイスメーカーと新デバイスの作成協力も含めてな。近日中に公表されるよ。」

 試験デバイスや局員専用デバイスではなく、遂に魔力コア専用デバイスが出回り始める。でもそれはあることを意味する。

「はやてさん、でもそれって犯罪率が…」
「うん、犯罪は…わからんけど事故は増える可能性がある。でも主要管理世界の局員や聖王教会騎士のデバイスは改修が殆ど終わってて魔力コア用カートリッジに対応してるし訓練もほぼ終わってる。コア自身に出力制限もあるしな♪」

 彼女の話を聞いてノーヴェも頷く。
 管理局・聖王教会側の準備も整ったということ。
  
「それでもまだ不十分…準備不足な所もある。ノーヴェにはそれに協力して貰おうと思ってな♪」
「八神司令、私は昨日も話した通り退局することに決めたんだ。だから…」
「わかってる。だからノーヴェに来て貰った。ヴィヴィオとアリシアには会わせたい子が居るんよ。」
「私達にですか?」
「誰だろう?」

 ストライクアーツ絡みで会っているのは八神道場のミウラだけど私達はもう会っている。
 アリシアも誰か判らないらしく顔を横に振った。



 それから小一時間後、私達はクラナガンへと来ていた。
 管理局本部からもそれ程離れていない大きな建物が並び多くの人が行き交っている。
 車はビルの間から地下へと降りて止まった。

「着いたよ、降りて」

 はやてに言われて私達は降りた。
 地下の出入り口に来るとスーツ姿の女性がやって来て運転をしていた女性に頭を下げた。
 そのまま2人とはやては中に入る。私達も後に続く。エレベーターに乗って上に上がる。

「フロンティアジム?」

 エレベーターの階層表示に書かれていた名前を読む。

「有名なスポーツジムだ。ミッドチルダにも何カ所もジムがあって、幾つかの管理世界にもあるって聞いた。」
「詳しいな。」
「レスキューの同僚が会員なんです。私も昔誘われたんですが…」

 はやて達の会話を聞く。その横でアリシアが「フロンティアジム…どこかで聞いたような…」と呟いていた。
 エレベーターは止まってドアが開くとそこでは多くの人達が運動をしていた。

「凄い…」
「最新式の設備だ…」

 立ち止まっていると

「ヴィヴィオ、ノーヴェ、こっちや。」

 はやてに促されて慌ててエレベーターから降りて追いかけた。



「会長、お帰りなさいませ」

 奥の部屋の前に来ると別の女性が頭を下げてドアを開いた。

「あなたもここまででいいわ、用があれば呼びます。」

 そう言うと案内役をしていた女性が待っていた女性の横に並んで頭を下げた。部屋に入る。そこはさっきまでの光景と違って隊長室の様に重厚な雰囲気だった。そのまま部屋に入ってはやてに促されてソファーに座る。

「会長って…まさか…」

 アリシアに呟く
  
「多分…」
「紹介が遅れたな、彼女はフロンティアジムの責任者…というか会長さんやね。運転ありがとうございました、おかげで予定より早く来られました。」

 運転手だと思っていた彼女がここの会長だった。私達は慌てて立ち上がって挨拶する。
 
「Stヒルデ学院初等科生徒会長、アリシア・テスタロッサです。挨拶が遅れてすみません。」
「副会長の高町ヴィヴィオです。管理局司書です。」
「ノーヴェ・ナカジマです。元…先日まで港湾レスキュー隊員でした。」



「フロンティアジムはDSAAの協力企業の1つでな、団体の活動支援以外にも大会開催とか色々お世話になってるんよ。プライベートでも八神道場を卒業した子を教えてくれたりな…」

 ソファーに座り直したヴィヴィオ達に対面に座ったはやてが話す。

「そこでなノーヴェ、ここで働いてみる気ない?」
「えっ!?」

 いきなり話を振られて驚くノーヴェ

「車で話した通り、来月から魔力コアデバイスを主要世界のジムや道場に貸し出す、貸し出す審査はあるけどなるべく緩めるつもりや。併せてデバイスの使い方を教えたりや開発支援もしていく。今はStヒルデ学院を強化モデル校にして進めてるけど、ミッドチルダだけでも溢れてしまう。勿論教える方もそんな人数揃えられる訳がないし、デバイスの管理も大変や。」
「そこで、フロンティアジムを含めて協力して貰う話になっててな…でも…」
「はい、当ジムには優秀なトレーナーは多く働いています。しかし魔力コア専用デバイスの使用方法を教えるノウハウが足りません。協力したいのですがこのままでは八神さんの希望を叶えられません。」
「ザフィーラにその辺の調整を頼もうかと思ってたけど、うちの家族は全員古代ベルカ式しか使えんからな…教導隊に応援を頼もうかと思ってたところにヴィヴィオからノーヴェの話を聞いたんや。教導隊員よりも教え方が上手いって評価も聞いてる。」
「でも私は…」
「ノーヴェが教えたいって気持ちは昨日十分伝わったよ。辞めてその後どうするのかをここで働きながら考えてみたら? ここならトレーナーのライセンスも取れるし自分のジムを作りたいなら経営方法も勉強出来る。勿論今まで通りStヒルデで教える事も出来る。」

 話を聞いてヴィヴィオは改めてはやての凄さを知った。
 ノーヴェが管理局を辞めた後の未来についても考えていたのだ。
     
「そんなに優遇して貰える程私は…」
「優遇ではありません、これは正当な評価と対価です。ノーヴェさんの持っているノウハウを更に高めトレーナーが学べば更に多くの人達を呼び込める。それは当ジムの世間からの評価を高められますしジムの拡大にも繋がります。更にジムで学んだ子達が将来管理局や聖王教会…港湾レスキューに入る事もあるでしょう。そのきっかけを作って欲しいのです。」
「八神さんが言われた通り、ライセンスの取得や新ジム設立にも協力を惜しみません。ノーヴェさんが将来を考える間、私達と働きませんか?」

 異世界のノーヴェはナカジマジムという自身のジムを作っていた。異世界の出来事が影響しているなら…、私は彼女に声をかける。

「ノーヴェ、やってみようよ。今日、私、ノーヴェが教えてるのを見てた。あんな風に教えるのは私じゃ出来ないし思いつきもしなかった。みんながノーヴェに教えて欲しいと思う理由すっごくわかった。港湾レスキューを辞めてまでしたいことなんでしょ。だったらやってみようよ。」
「ヴィヴィオ…司令…会長さん…ありがとうございます。こんな私の為に考えてくれて本当に嬉しいです。でも…」
「少しだけ考える時間…ううん、ジムを見せて貰って良いですか?」
「ええ、良い返事を待っています。」

 会長はそう言うとデバイスを起動し、

「ナカジマさんにジムを案内して下さい。あと例の場所にも…」 

 そう言うと扉が開いてトレーナー服の女性が入ってきた、さっき案内してくれた人だ。

「ヴィヴィオ、アリシアも一緒に見てきたら? 私達はちょっと別の打ち合わせがあるから」

 ここに居ても話の邪魔になるだけ、それにノーヴェが何を考えたのか気になって私は席を立った。


 トレーニングエリアに入るとノーヴェは案内の女性に「ここからは私達だけで見て来たい」と伝えた。女性はここで待っているので何かあれば呼んで下さいと言って会釈した。
 
「ねぇ、どうして決めなかったの? 嫌だった?」

 私達はノーヴェと一緒にジムの中を歩き回る。青年から大人、老人が器具を使って汗を流している。何人かのトレーナーが補助している。奥では魔方陣の光が見えるので魔法関係のトレーニングもあるらしい。

「いや、私には過ぎてたよ。私のことをあこまで考えてくれてたなんて思わなかった。だからジムの中をきちんと見て考えたいって思ったんだ。父さんから言われたんだ『何処で働くかは自由だけど、決める前に同じ仕事をしてる人達の顔を見ておけ』ってな。人の顔って感情がはっきり出るんだよ。楽しい、嬉しい…苦しい、辛いって気持ちも。」

 それを聞いて前向きに考えていることがわかったからホッとする。

「それに、私は教えたいって気持ちだけが先走ってその後どうするのかなんて本気で考えてなかった。それも司令には見透かされたみたいだけどな…。あっちで模擬戦してるみたいだ。見に行くか」

 そう言うと小走りで向かった。

「もう大丈夫みたいだね」
「うん、向こうと似た未来になっちゃうかもだけど、ノーヴェが決めたんだからいいよね。」

 アリシアが気にしていた時間軸間の影響、もしあったとしても彼女の気持ちが向いているならそれが良いと私も頷いた。
      
「それにしても…私達に会わせたい人って誰だったんだろう?」

 はやての言葉が少し気になった。



「色々骨折って貰って助かりました。」

 3人が出て行った会長室ではやては礼を言う。

「いいえ、こちらこそ優秀な人を紹介して下さってお礼を言いたい位です。新部門の立ち上げ計画も問題無く進みます。」

 元々はザフィーラとヴィータが教えて居た八神道場を卒業した子から紹介された縁、そこからまさかこんな風に繋がっていくとははやて自身も思っていなかった。
 ストライクアーツを広めることで優秀な局員を集める、ジムの規模を広げる。2人の目的は似ているようで違っている。
 でも、そこは互いに理解し信頼しているからこそ生まれた道。 
  
 

「2人とも…相当強いぞ」
「凄い…」
「うん…」

 はやて達がそんな話をしていた頃、ヴィヴィオ達はある2人の模擬戦に釘付けになっていた。
 槍状のデバイスと刀状のデバイスをぶつけ合う2人、魔力・物理ダメージ遮断の結界が作られている中でも衝撃が伝わってくる。2人の気迫とその声も…
 2人の実力はほぼ互角、しかも双方余力を持っている。
 5分ほど2人が戦っているとアラームが鳴り、デバイスを下ろした、内の1人がジャケットを解除した。

「どうかしましたか?」
「言われていた客人が来たらしい。」
「あら? もうそんな時間ですのね。模擬戦は終わりましたから入ってきてください。」

 もう1人もジャケットを解除し私達を見て会釈した。



「練習中に気を散らせて悪い、ノーヴェ・ナカジマだ。」
「高町ヴィヴィオです。」
「アリシア・テスタロッサです。」

 模擬戦舞台横の休憩スペースに集まったところでヴィヴィオ達は挨拶をした。

「ミカヤ・シェベルだ。丁度休憩しようと思っていたところだった。気にしなくて良いよ」
「ヴィクトーリア・ダールグリュンです。お会い出来て光栄ですわ。特に高町ヴィヴィオさん」

 ヴィクトーリアが出した手を握った瞬間言われて驚く。

「ヴィクターと呼んで下さい。戦技披露会での古代ベルカの騎士同士の戦い、見ていてとても熱くなりました。それに…貴方の血統、私も少し継いでいるんです。」
「えっ!?」

 突然言われて私は何を言っているのか直ぐに理解出来なかった。
  
「気になるのでしたら【雷帝】を調べて下さい。聖王陛下」
「「「!!」」」

 驚いて数歩下がる。直後アリシアとノーヴェが私の前に出た。



「ヴィクターさん…どうして知ってるです?」

 ヴィヴィオがベルカ聖王家の血を継いでいる事はヴィヴィオの家族を含め一部の者しか知らないこと。
 それを彼女は知っていた。
 アリシアは警戒レベルを最大まで引き上げる。
 ヴィヴィオの前に出てスカートのポケットにあるバルディッシュを握る。
 ノーヴェもヴィヴィオを守るように付いてくれている。
  
「さすがは騎士ですね。」
「…騎士じゃありません、親友です。どうして知ってるんです?」
「それは…」
「私が教えたからやっ! 間に合った~」

 ドアからはやてが駆け込んで来た。   



「ヴィクターは古代ベルカ王家、雷帝ダールグリュンの子孫でな、こっちに引っ越してきた時に騎士カリムから紹介されたんよ。」

 走ってきたのか乱れた息を整えながらはやてが話す。

「家にはベルカ聖王家に関する文献もありますから。JS事件の際、はやてさんからヴィヴィオの容姿と魔法色を聞いて直ぐにわかりましたわ。聖王教会の立場もあるので秘密にして欲しいとお願いされていたので誰にも言いませんでしたけれど、闇の書事件の撮影でヴィヴィオが優秀な騎士に成長していると知って、会わせてほしいとお願いしていたんです。」

 ヴィクターの言葉に成る程と納得する。
 JS事件で保護された時に私がベルカ聖王家の血を継いでいるのは彼女から聞いていたらしい。

「もう驚きすぎて頭が真っ白になっちゃいました。」
「ごめんな、練習後に会って貰うつもりやったけど、まさか先に会ってるとは…」
「ヴィクターさん、ごめんなさい…。」

 アリシアが頭を下げる。

「いいえ、私こそ驚かせてごめんなさいね。アリシアさんとも是非会いたいとミカヤとも話していたのよ。」
「ああ、とても良い気迫だった。短剣持ちとして私やヴィクターとの間合いの取り方も良かった。」
「ええ、同じストライクアーツ競技者として大会で戦えるのが楽しみね。」

 その言葉にヴィヴィオは驚いた。

「えっ? でもヴィクターさんもミカヤさんも魔力資質は…」
「DSAAのレギュレーション、ルールで魔力資質があっても制限した上で魔力コア専用デバイスを使えば参加できるのよ?」
「私達のデバイスは今調整しているところだから練習では制限していない物を使ってるんだ。」

 アリシアの顔を見ると彼女は首を横に振った。知らなかったらしい。

「じゃあ…私も制限してストライクアーツ参加…」
「出来る訳ないやろ! 制限かかってもベルカの騎士と同じ舞台で戦いたい思うか? AAランク以上の戦技魔法を使う魔導師・騎士は参加できひんよ。」
『ヴィヴィオに魔力制限かけたら管理局や聖王教会から怒られて大会どころか団体を潰されて計画が吹っ飛ぶ。それにあっちの力まで押さえる技術は無い。ここは悪いけど我慢して』

 はやてから言葉と念話で同時に突っ込まれた。
 使える戦技魔法がAAランク以上が殆どなのを思い出す。そしてここまで作り上げられたものを我が儘で潰すのはまずいと思い直す。

「残念…ですけどその分アリシアの応援頑張ります!」

 言い直したのを見てはやてがホッとしたのを私は見逃さなかった。



 ヴィクターとミカヤと少し話をした後、私とアリシアは先にジムを出た。

「あ~もう色々ありすぎて疲れちゃった。」

 レールトレインを待つ間、背伸びをする。

「うん、みんないい人達だったね。ミカヤさんやヴィクターさん…凄く強い。私も負けないように練習しなくっちゃ。」

 どれぐらい強い人がいるのか判らなかったけれど、強敵が現れたのを知ってアリシアにも火がついたらしい。

「私、いっぱい応援するよ。出来る事があったら何でも言ってね。」
「そうだね~…じゃああっちに行く時間をいっぱい作ってくれたら嬉しいな。」
「うん、任せて♪ その代わり目指すのは…」
「「優勝!」」

 親友とハイタッチするのだった。
  
 翌日ノーヴェからメッセージが届いていた。
 そこには将来を考える間、フロンティアジムで働くことに決めたと書かれていた。

(頑張って…ノーヴェ…)

 ヴィヴィオは心からノーヴェを応援するのだった。

~コメント~
 ようやく登場させられましたヴィクター&ミカヤ。
 Vividのヴィヴィオと違って聖王の資質を失わずに更に強めているASヴィヴィオは残念ながらストライクアーツに参加出来ません。
(戦技披露会で全力ヴィータに勝っている者と対戦なんかよっぽどじゃないとしたくないですよね)
 そういう意味ではアリシアがVividヴィヴィオの立ち位置に居ます。
 こんな風に第1章は色んなキャラが登場します。次回も…

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