第07話「継ぐもの継がれるもの(後)」

「気持ちいい~♪」

 湯に入って移動の疲れが湯に溶けていく気がする。
 来た坂道を降りて少し歩いた所に露天風呂はあった。
 良い泉質の公衆浴場なんだけれど、人里から離れているから隠れた名湯とか秘湯と呼ばれているらしい。

「寒くなると猿や鹿、狸が入りに来たり、怪我した猫が足だけ浸けに来てたこともあったかな~」

 横で美由希が言う。そんなことを話していると温泉の反対側の木々がガサガサと鳴って狸の親子が現れた。私達を少し見た後そのまま湯に入って頭だけ出して目を細めた。
 かわいすぎて思わず立ち上がる。
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第06話「継ぐもの継がれるもの(前)」

「ヴィヴィオ、週末のミーティング代わって欲しいんだけどいいかな?」

 ある日、Stヒルデに登校して席に着くなりアリシアが駆け寄ってきて言った。
 4月から隔週末の放課後にストライクアーツと魔導研究クラブの合同ミーティングが行われている。主には活動内容と今後のスケジュールについての報告で集まる必要はそれ程無いのだけれど、管理局、聖王教会、民間企業のそれぞれの部署・部門から来ている人が多く、入れ替わりもあるので顔合わせも含まれているらしい。
 アリシアは生徒会長兼2つのクラブのチームリーダとしてミーティングに参加し、クラブメンバーのアンケートや要望をとりまとめて提出していた。

「いいよ、何かあったの?」
「うん、ちょっと海鳴に行ってくる。週末から3日間」
「えっ! あっちで何かあったの?」
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第05話「宿無し仔犬」

「成る程な~……」

 レールトレインの中、ノーヴェは背を窓に預けながらウィンドウに表示されたテキストを読んでいた。
 港湾レスキューの退局が決まったノーヴェはフロンティアジムへの転職迄の1週間をトレーナー資格取得の為の勉強時間に充てていた。
 救助要請や事故があれば休みでも呼び出されるのだから彼女の有休は最大日数まで貯まっていた。
 本来であれば飛び込みで受かる様な資格ではないのだけれど、元々レスキューとして人命救助や救護で必要な資格を持っていたので免除される内容も多く、実務時間が必要な資格も既にクリアしていて、それ程根を詰めなくても取れると知って転職前に取っておく事にしたのである。
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第04話「彼女だからできること」

「あれ? はやてさんからメッセージ届いた。」

 生徒会室で次の行事の準備をしていると端末の端にメッセージアイコンが現れた。
 RHdを起動して別のウィンドウを出すとメッセージが見えた。

「? あっ、私もだ」

 アリシアもそう言うと別ウィンドウを開く。
 誰だろう?と不思議そうに見ていた他の2人に

「私達の友達…っていうかママの親友の管理局員さん。こっちに来るから帰らずに待っててって」

 はやてからのメッセージには2時間後にStヒルデ学院に行くから私達とノーヴェには帰らずに待っていて欲しいと書かれていた。
 アリシアを見ると彼女も頷いたから同じメッセージが届いているらしい。
 念の為、ノーヴェにもメッセージを送ると「私にも来てる」とすぐ返事があった。
 ノーヴェからの返事を見てはやてに対して校門で待っていると送った。

  
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第03話「影響される世界」

 その日、Stヒルデ学院の中でも暴力事件についての話題が飛び交った。
 先生やシスター達はStヒルデでも同様の事件が起きないかと気にしていた。
 しかし実際に何か出来るわけでもなく、そしてそれは私達も同じだった。
 起きた時に【どうすればいいか?】なんて話し合っていたら間に合わないし、起きてもいないのに警戒すればみんなが戸惑う。結局噂に尾ひれが付いていくことを考えて生徒会としては高学年のクラス委員には判っている事を伝えて何かあれば些細な事でも相談して欲しいと連絡し、低学年は先生とシスターに任せることにした。
 私とアリシアはその応対に追われてノーヴェの話は全く出来なかった。


 
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第02話「命の選択」

「ノーヴェ!!」

 生徒会室の戸締まりをアリシアに任せて私は全速力で階段を駆け下りて靴を履き替えグラウンドに居るノーヴェの所に走った。

「おう、ヴィヴィオ。邪魔してる♪」
「邪魔って!! そっちはいいんだけど、どういうつもりなのっ?」

 私の剣幕に周りで練習していた生徒達が手を止めてこっちを見ている。

「…ああ、もう連絡が来たのか。あいつら早いな~、とりあえずここじゃなんだから話せる場所ない?」
「うん、それなら…RHd」

 みんなの練習を止めてしまったのに気づいて私はデバイスを出してアリシアにノーヴェを校内に連れて行きたいと連絡した。
 数分もしない間に彼女からノーヴェの初等科入校許可を取って、生徒会室の隣にあるミーティングルームの使用許可を貰ったとメッセージが来たのでノーヴェを連れて初等科へと入った。
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第01話「春の風が吹く頃に」

「少し落ち着いてきたかな~」

 放課後の生徒会室、窓から見える光景を眺めながら私-高町ヴィヴィオは呟いた。
 冷たかった風も最近は暖かくなってきていて窓を通して若葉の香りを届けてくれて心地良い。
 窓辺で肘をつきグラウンドに視線を移す。片隅でミッドチルダとベルカの魔方陣が出たり消えたりしている。
 
 運動着姿の初等科・中等科の学生と…青と白の制服とブラウンかかった制服、黒い服を着た大人が数人見える。本局教導隊とミッドチルダの地上本部、聖王教会の誰かが教えに来ているらしい。 少し離れた所に見える白衣の大人は魔導機器メーカーの研究員だろうか…。

 
 
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