「ヴァイスさんっ!」
「よっ!」
シャマルの表情に胸騒ぎを覚えティアナは医務室に飛び込む
しかしそこにいたのは…ベッドに腰掛け元気そうに手を挙げ答えるヴァイスの姿だった。
「……」
目の前で起きたことが信じられなかった。
ほんの一瞬の間に何が起きたのか? 私が気付いた時には八神部隊長が目の前にいた。頬が熱い…
「八神部隊長…」
「ヴァイス君は医務室に運んで貰ったよ。ここで何があったん?」
何があったって、訓練中に何があったかなんて…
完全に動転していたティアナにははやての問いに答えられる物を見つけられなかった。
「あの~すみません、兄の…ヴァイス・グランセニックの病室はどこでしょうか?」
数日前、ラグナ・グランセニックは久しぶりに兄と出会えたのに避難命令のせいで話も出来なかった。
でもつい先日機動6課の八神はやてという兄の上司から連絡がありここに入院していると教えて貰いやってきた。
病室を教えて貰って向かい、部屋のドアをノックするものの応答が無い。
失礼します~とそーっと入ってみるとベッドはもぬけの空。
(検査中…なのかな?)
ふとそう思い部屋の前で待とうと部屋から出た時、ラグナに気付いた職員が近寄ってくる。
「グランセニックさんのご家族さん?」
「はい。妹です…兄になにか…」
「グランセニックさん、どこに行ったか知らない?」
「……はい?」
JS事件が終わったとは言え、機動6課が元の姿を取り戻すにはまだ暫くかかる。
機動6課の責任者、八神はやてにはしなければいけないことが山ほどあった。
レリック事件と戦闘機人についての資料と報告書のまとめ、シグナムより預かった情報から地上本部と本局との橋渡しなど。
その中でも優先したのが負傷した六課メンバーのフォローと家族への連絡だった。はやてを知る者が聞けば彼女らしいと答えるだろう。
そんな慌ただしい中、少し前に訓練施設の使用を聞いてきたティアナの事がふと気にかかる。
「その練習、手伝おうか?」
「!?」
突然背後からかけられた声にティアナは驚いて飛び上がりそうになった。慌てて振り返るとそこには
「ヴァイス陸曹! どうして、病院に行ったはずじゃ?」
その声に応えてヴァイス・グランセニックは瓦礫に腰掛けつつ『ヨッ』っと手を挙げる。
気付かないうちにあの人の影を追っていた。
最初少し気になっただけ
本当にただそれだけだった。
なのに癒えぬ傷を抱いたまま、
楽しかった時が次の瞬間悪夢へと変わる。
泣き叫ぶことも助けを請うことも出来なかった。
それでも私の瞳は零れる涙を止める事はできなかった。
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