翠屋での時間は過ぎてそれぞれが家路について夜が更けた頃、なのははフェイト、士郎、プレシアとリビングに居た。
全員どこかソワソワしている。
そこに
「おまたせ~♪」
桃子が入ってきた。
「久しぶりだったから時間がかかっちゃった。ヴィヴィオ、アリシアちゃんの初お披露目~。入ってきなさい。」
「ヴィヴィオ~、チェント~、凄いよ。外見てみて♪」
「んん…なぁに…?」
翌朝、ヴィヴィオはアリシアの声に重い瞼を開ける。
彼女の方が朝が弱いと思っていたのに最近は起きられる様になったらしい。
布団から出て服を着替えて客間を開くと冷気が入ってくる。昨日は寒くて震えたけれど今日は目の前の光景に目を奪われてしまった。
一面の銀世界、しんしんと降る雪…昨日と同じ場所が全然違った幻想的な雰囲気に包まれている。
「わぁ…綺麗…」
思わず呟く。雪は何度か見ているけれどここまで降り積もっているのは初めて見る。
「ヴィヴィオ、そろそろ起きないと夜眠れないよ」
体を揺さぶられて瞼を開くとフェイトの顔があった
「おはよ…フェイトママ」
「おはよう、ねぼすけさん♪ もうお昼だよ。桃子さんがお昼ご飯作ってたから一緒に食べよう。」
時計を見るとお昼過ぎだった。
「は~い」
そう言って起き上がろうとしたら今度は左腕がやけに重く感じた。見るとリニスが私の腕を抱きかかえるように眠っていた。
「ごめ~ん…遅くなって」
「なのはママ」
「お疲れさん、なのはちゃん。」
翌朝、昨日の夕食のお礼としてはやてと一緒に朝食を作っているとなのはがやって来た。
彼女は教導訓練の責任者だったこともあって教導が終わった後訓練生の評価を行い報告した後で合流すると昨夜ヴィータから聞いていたから少し驚く。
夕方辺りに来るかと思っていたけれど、急いで終わらせて来たらしい。
「フェイトちゃんはまだあっち?」
「ううん、一緒に来たよ。先にエイミィさんの所に行ってからこっちにも来るって。私も手伝うよ。」
「なのはママ疲れてるんでしょ。もう少しで出来るからみんなと待ってて。」
「ヴィヴィオの手作りもあるから楽しみにしててな。」
私の手作りと聞いて彼女は嬉しそうに
「は~い♪」
そう言って厨房から出て行った。
「…全く…あんた達って秘密にするのも大概にしなさいよね。すずかも気づいてたなら教えてくれてもいいじゃない。」
アリサが大きいため息をつきながらぼやいた。それを見ていたヴィヴィオはアワアワと狼狽える。彼女の心の導火線に火が点こうものなら烈火の如く怒られるのは目に見えている。
その様子を近くで何度も見て来た。その矛先が私に向こうものなら…
「でも、先に教えてくれたり私が覚えていたらそっちの方が大変だったわね…なのはがヴィヴィオと会う前に『さっきあなたの子供とお姉さんに会ったわよ』なんてなのはとフェイトに言っちゃったらここにヴィヴィオもアリシアも居なかったかも知れないんだから。すずかみたいに秘密にしておくなんて出来ないもの。」
「わ~っ♪ 何だかお祭りみたい。」
高町ヴィヴィオはその光景を見て胸を躍らせた。
「賑わってるな~。元々は聖誕祭みたいな厳かなイベントやったんやけどな、みんなお祭り好きやからね~。」
ここは第97管理外世界―日本―海鳴市。
ヴィヴィオは商店街を歩きながら隣の八神はやてと話していた。
「その内聖誕祭もこんな感じになるのかな…だったら楽しそうですね♪」
「う~ん、人も違うし文化も違うから…難しいんとちゃうかな。」
「わぁ~すっごく綺麗…」
部屋の窓を開けてベランダに出ると私はその光景に目を奪われていた。
暗い闇の中、色とりどりのビルの明かりと街灯や部屋の光に照らされた白い光が落ちてくる。
身も縮む様な寒さの筈なのに全く感じなくて…いつまでも見ていられそうだった。
「ヴィヴィオちゃん~、そんな格好じゃ風邪ひいちゃうよ。」
「あっちじゃ雪なんて降らんしな~。」
「雪か…思い出すな」
「そうね…」
部屋の中に居た4人はそう言いながら降っている雪を見つめていた。
新暦79年の冬。私、高町ヴィヴィオは海鳴市に来ていた。
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