「双子みたい」
「そっくり」
「リオ、コロナ、黙っててごめんね。」
「ううん、私達何となく気づいてたんだ。ヴィヴィオ、別人じゃないかって」
「うん、練習でクリスが一緒に居ても使おうとしなかったし。一昨日ヴィヴィオが凄く欲しいって言ってた靴お店に並んでたのに、そのまま通り過ぎちゃったでしょ」
2人に会った時ここのヴィヴィオについてはアインハルトから教えて貰った事しか判らなかった。
彼女が知らないヴィヴィオの姿もあるのだから、リオとコロナには判ったのだ。
「戻って来ませんね…」
「そうね」
「いつ戻ってくるんでしょうか…」
「いつ頃かしら?」
アリシアとチェントが行ってしまってから数時間が経過した。今は2人の姿がない。
「プレシアさん、さっきからそればっかり。アリシアとチェント、心配じゃないんですかっ!」
研究室の一画で黙々と何かをしているプレシアの背になのはが叫んだ。
(隙がない! でもっ)
ストライクアーツを練習している期間は圧倒的に向こうの方が長いし大人モードを使っている彼女の方がリーチもある。でも砲撃魔法や魔法弾が使えても操作する程上手く制御出来ないらしい。こっちにも利はある。
「離れて戦えば…」
ヴィヴィオを近づけさせなければ勝機は大いにあるし、カウンターさえ注意していれば攻撃を受けずに勝てる。でも…折角教えて貰っているストライクアーツを使わないのは
アリシア達が来た翌朝
「おかえりヴィヴィオ! 2人揃うと本当にそっくりだな」
「ノーヴェ当たり前だよ。私は私なんだから」
苦笑するヴィヴィオの横で
「ヴィヴィオさん、おかえりなさい。」
「アインハルトさん、ただいま。」
微笑むヴィヴィオとアインハルトを見て自分の事の様に嬉しくなる。
「ねぇ、ヴィヴィオどうだった? こっちは」
全員で夕食を食べた後、ヴィヴィオはヴィヴィオの薦めで彼女のベッドを借りて横になった。
隣には部屋の主、ヴィヴィオが居る。
「楽しかった…ううん、良い世界だね。ママ達も優しいし、アインハルトさんやコロナとリオも気にしてくれてたし、クラスのみんなにも心配かけちゃった。それにストライクアーツ、楽しかったよ。まだちょっとしかしてないけど。ヴィヴィオはどうだった?」
突然連れてこられて色々ありすぎて何て言えばいいのか判らなかったけれど、いつも時空転移と事件はついて回っていたから…
ヴィヴィオが聞くとヴィヴィオは少し間を置いて
~ヴィヴィオが練習を始めて数日が経った~
「ヴィヴィオ、今は止めた方が…」
「うん、まだ調子悪そうだし」
リオ、コロナが止めるのを
「コロナ、リオありがとう。でも…どこまで出来るかわかんないけど、やってみたいの。」
ヴィヴィオの手にはインターミドル・チャンピオンシップのチラシが握られている。
「よし、朝はこれくらいでいいだろう。」
「ハァッハァッ…ありがとう、ございましたっ」
翌朝、ヴィヴィオはノーヴェに特訓を受けていた。
本来は基礎があってこそ応用が出来るのは何でも同じでストライクアーツもそう。ストライクアーツを学ぶだけなら基礎を終えて進めばいい。
(チェントを…私だけで追える強さを)
守りたいだけじゃない。それを求めるのが彼女との繋がりになる気がする。
昨夜アインハルトとノーヴェに全て話して、どうしてカイザーアーツを教えて欲しいのかを打ち明けた。その時にノーヴェが聞くより見た方が良いと今朝からノーヴェ相手に模擬戦をしていたのである。
「そんな事が起こるのですか?」
翌日、ストライクアーツの練習を終えアインハルトを駅まで送りに行く時、2人になったのを見計らって昨夜思いついた事を話した。
「時空転移は元々過去へ行くのに使っていました。それに前に異世界に行った時はもっと昔に行ってましたから。」
時空転移を何度も使っているヴィヴィオには明確なイメージを魔導書に伝える事が出来る。けれど、初めて使った時みたいに中途半端なイメージを送ってしまえば時間にズレが起きる。そして魔力もそれなりに無ければ遡れる時間も短くなる。
「ねぇママ、ヴィヴィオはどこの世界に行ったのかも判らないし、戻って来れないの?」
「……」
アリシアの問いかけにプレシアは黙っていた。そうならそう、違うなら違うとはっきり言う彼女がそういう答えしか出せない時は…
「魔導書を調べて、呼び戻す方法があれば良いのだけれど…」
今から調べ始めて答えが出るまでどれ位時間がかかるのか見当も付かない。
(今日は…色んな意味で疲れた…)
ベッドにドサッと倒れて深い息をつく。ずっと緊張が続くとここまで疲れるのかと思うくらい疲れた。
お昼休みや授業の合間の休憩時間
元居た世界とは違いこっちにはアリシアが居らず、リオとコロナと仲良しグループらしい。ちょっとした話でも話がわからなかったり、変な事を言わないようにしないととプレッシャーがずっとつきまとっていた。
廊下で見知った女の子が居たから声をかけたけれど、かなり余所余所しかった。こっちじゃクラスが違うから逆にヴィヴィオが判らなかったのだろう。
「フェイトちゃん、ヴィヴィオは!?」
ミッドチルダにある高町家に駆け込んできたのは家主である高町なのはだった。先に戻っていたフェイトにすがる様に抱きつく。
「なのは、落ち着いて聞いて。ヴィヴィオはまだ見つからない。でも何かの事件に巻き込まれたとも思えないんだ。」
「どういう意味?」
「ヴィヴィオのデバイスRHd、レイジングハート2ndへミッドと本局からアクセスをしたんだけど見つからない。シャーリーに頼んで数時間中に移動した形跡も調べて貰ったけど…」
「フェイトさん、今日はご機嫌ですね」
時空管理局、本局にある部屋でフェイト・T・ハラオウンは報告書をまとめていた。
補佐のシャーリー、シャリオ・フィニーノに言われて歌を口ずさんでいたのに気づく。
「ごめん、迷惑だった?」
「いいえ、フェイトさんがご機嫌だなって。今日は何かあるんですか? もしかして、後で誰かとデートの待ち合わせをしていて夜はそのまま一緒にキャーッ!!」
時々彼女のノリについて行けない時がある。
そういう時は影に狸娘と噂される親友の影が見えるのだけれど…
「今晩、何しようかな~♪ おはようございま~す。」
「お、おはよう。」
ある日の朝、閑静な住宅街を歩く少女の姿があった。
誰かとすれ違う度に挨拶をして笑顔を振りまいている。笑顔で返す人、驚きつつ挨拶する人と色々いたが、少女と挨拶を交わした後皆いつもより少しだけ笑顔になっていた。
そう、私こと高町ヴィヴィオはそれ程今夜を楽しみにしていたのだ。
「ねぇ、一緒にお出かけするの久しぶりだね♪」
「うん、ママあ~ん」
手に持ったソフトクリームを私は隣にいる彼女に近づける。ペロッと少し食べた後
「美味しいね。おかえし、ア~ン」
彼女の持ったソフトクリームを私も食べる。その時彼女の笑顔が私の記憶にあったもう1人の彼女と重なった。デジャヴ? ううん、そうじゃない。私にとって大切な人。
(今頃…どうしてるかな? 私達みたいにお出かけしてるのかな)
世界は必然が重なって出来ている。
いくら偶然と思っていても、必ず何か意味があってそれがある。
もしその瞬間の必然が幾つもあった時、他の必然を見られたら
それは夢?
そうかも知れない
そうじゃないかも知れない
それが判るのはあなただけなのだから
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