第8話「私が会った日」

~ヴィヴィオが練習を始めて数日が経った~

「ヴィヴィオ、今は止めた方が…」
「うん、まだ調子悪そうだし」

 リオ、コロナが止めるのを

「コロナ、リオありがとう。でも…どこまで出来るかわかんないけど、やってみたいの。」

 ヴィヴィオの手にはインターミドル・チャンピオンシップのチラシが握られている。

 
 ストライクアーツの大きな大会、部屋にあった雑誌にも大きく取り上げられている。元々こっちのヴィヴィオも参加するつもりだったらしく、カレンダーにもきっちり丸印が付けられていた。
 申し込み締め切りは明日。
 ここのヴィヴィオが居ればきっと出場する。もし大会までにヴィヴィオが戻って来てヴィヴィオ自身も元の世界に帰れるなら彼女の代わりに申し込みをしておきたいし、ダメでも見ているより参加してみたい。
 アインハルトとの模擬戦は一旦打ち切られ、今は彼女は彼女でノーヴェから言われた練習をしている。

「じゃあ、また後でメールするね」

そう言って家に急いだ。



「っと、ここ? 住宅地みたいだけれど」  

 アリシア達がやってきたのは閑静な住宅地。見覚えがあるけれどどこか違う。

「近所だよ、ここ。私の家こっちだから。」

 ヴィヴィオが指さす。言われてみれば高町家の近所もこんな感じだったような…



「!?」
「クリス、どうしたの」

 家に帰る途中で突然ポシェットから出てきたクリスが今度はビュッと飛んでいってしまった。

「えっ? ちょっと待って!!」

 慌てて後を追いかける。



「もうすぐ着くよ。」

 時空転移は相当魔力を使うらしく、高町家に向かう間にチェントの歩みは遅くなり、遂にはアリシアにもたれかかって眠ってしまった。 彼女を背負いヴィヴィオの背を追いながら歩いて少し経った時何かが飛んできた。

「ウサギ?」
「クリス!!」

 ヴィヴィオの姿を見た瞬間、そのウサギは彼女の胸に飛び込む。

「クリス~、どこ行ったの~?」

 そして後を追ってきたのは

「ヴィヴィオ!」



「ヴィヴィオ!」

 聞き慣れた声、まさか…その声の方を向くと

「アリシア?」
「ヴィヴィオ…よかった。」

 そのまま駆けだしてアリシアに抱きつく。クリスが飛び出したのはこっちのヴィヴィオを見つけたからだったらしい。

「やっぱり思ってた通りだったんだ。」
「私と握手するの…なんか変な気持ち」
「私も」

 照れながらヴィヴィオと握手を交わす。

「ヴィヴィオも気づいてたんだ。」
「こっちのヴィヴィオが居なくなった時にあったコレを見てもしかしてって。これアリシアが書いたんじゃないかなって考えてたの」

 異世界と書かれた紙片を見せる。

「うん、ママから聞いた話をフェイトとなのはさんに話したとき書いたんだけど、そっか…みんな大変だったんだからね。ママやフェイトやなのはさん、それにチェントも頑張ってくれて」

 時空転移には行き先のイメージを伝えるだけじゃなく、相応に魔力も要る。嫌っているヴィヴィオの為に…嬉しかった。

「うん…ありがとう、チェント…」

ヴィヴィオは眠る小さな功労者の頭を優しく撫でた。


 
「ねぇ、ここで話すのもなんだから…家に来ない?」
「えっ?」
「でも、ママ達が居たら先に言っておかないとビックリするよね。私先に行くから後で来てね。」
「あっ…ヴィヴィオっ!」

 ヴィヴィオの制止を聞かずにヴィヴィオは行ってしまった。

「…アリシア…どうする? 行く? それとも…」
「…行くしか無いでしょ。」

 苦笑いをしつつ彼女の後を追う。
 数分後、2人の予想通り高町家で驚きの声と共に1人が卒倒したのは言うまでもない。



「別の世界のヴィヴィオ…なのね」
「黙っててゴメンね、なのはママ、フェイトママ」
「ううん、ヴィヴィオが2人居て驚いただけだから…フェイトちゃんは…違うと思うけど…」

 そう言ってなのはは横のソファで横になるフェイトを見る。暫く起きそうにない。
 やっぱりこうなると思っていても実際その通りになってしまうと流石に罪悪感が生まれる。

(フェイトママ…いつもゴメンね)

 苦笑いするアリシアを傍目にソファーに横になったフェイトを見る。彼女の存在がフェイトにとってそれ程大きいのだろう。

「ヴィヴィオ、アインハルトさんに連絡して。居なくなって凄く心配してるから」
「! 練習中に居なくなっちゃったから。ありがとうヴィヴィオ。クリスおいで」

 クリスを連れて部屋を出て行くヴィヴィオを見送る。

(クリス…元気になって良かった)

「アリシア、戻ろうか…ママ達も心配してると思うし」

 アリシアとチェントが来た時に刻の魔導書も持ってきてるからと立ち上がったヴィヴィオに

「待って…ねぇヴィヴィオ、今日だけ泊まっていかない? フェイトちゃん、ヴィヴィオとお別れも言いたいしそれに…」

 この世界にはアリシアは居ない。また会えるかわからないのに驚いたままで居なくなるのは…

「ヴィヴィオ、今夜くらいいいんじゃない? チェント寝ちゃってるし。」
「そう…だね。アインハルトさんとノーヴェにもお別れ言いたいし」

 再びソファーに腰を下ろした。


 暫く時間が過ぎてフェイトが目覚めた時、目の前のアリシアを見て抱きつき涙した。
 困った顔で大の大人の頭を優しく撫でるアリシアを見て

(アリシア…やっぱりお姉さんなんだ。フェイトママ…よかったね)

 異なる世界とのすれ違いが作り出した一時。
 ヴィヴィオもアリシアも何度も目にしている光景だけれど、フェイトにとってはとても大切な時、こんな時間があっても良いんじゃないかとヴィヴィオは思う。

~コメント~
 高町ヴィヴィオがもしなのはVividの世界に行ったら? 本作のタイトルadmix【混ざった】世界。
 Vividのフェイトは大人モードで驚いちゃってるのでヴィヴィオが2人居て、その隣にアリシアが居たら…大変だったんじゃと思ってしまいます。

 

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