第9話「アリシアの居ない世界」

「ねぇ、ヴィヴィオどうだった? こっちは」

 全員で夕食を食べた後、ヴィヴィオはヴィヴィオの薦めで彼女のベッドを借りて横になった。
 隣には部屋の主、ヴィヴィオが居る。

「楽しかった…ううん、良い世界だね。ママ達も優しいし、アインハルトさんやコロナとリオも気にしてくれてたし、クラスのみんなにも心配かけちゃった。それにストライクアーツ、楽しかったよ。まだちょっとしかしてないけど。ヴィヴィオはどうだった?」

 突然連れてこられて色々ありすぎて何て言えばいいのか判らなかったけれど、いつも時空転移と事件はついて回っていたから…
 ヴィヴィオが聞くとヴィヴィオは少し間を置いて
「ヴィヴィオが居なくなって心配してくれる人がこんなに居るんだなって。プレシアさんとアリシアさん、ここに戻るのに凄く頑張ってくれたんだよ。それにチェントちゃんも…」
「うん…」

 わかっている。魔力の弱い彼女がどうやってここまで転移するのがどれ程大変なのか、アリシアとプレシアが頑張ってくれたのだろう。ヴィヴィオやアリシアの様子だとそれ程時間は経っていないらしい。

「ねぇ、ヴィヴィオ…プレシアさんとアリシアさんってフェイトママのお母さんとお姉さんだから…おばあちゃんとおばさんになるのかな?」
「どうかな? アリシアに言っちゃだめだよ、絶対落ち込むから。アリシア達どんな話してるかな?」
「わかんない。でもフェイトママあんなに喜んでたから…きっと」
「…そうだね。」
(フェイトママ、きっとアリシアと手を繋いでるんじゃないかな…)

 アリシアが泊まりに来た時、そんな話を聞いていたからなんとなくそう思った。



「…動けない…」

 その頃アリシアはというと…フェイトの部屋のベッドで横になっていた。右側で眠るフェイトに半ば抱きかかえられ、左側のチェントが手を抱くように眠っている。左右から抱きつかれて寝返りも出来ない状態。
 2人が起きるまできっとこのまま続くのだろう…
せめてフェイトだけでも…と右手で彼女の腕をどけようとすると

「アリシア…姉さん…」

 呟いた後瞳からこぼれ落ちる涙を見た。

(そっか…ここに私とママは居ないんだ…)

幼い頃にヴィヴィオが助けてくれたからここにいる。でもここのヴィヴィオは時間移動出来ない。ここのアリシアとプレシアは彼女の思い出の中にしか…居ない。

「ねえさま…」

 チェントが呼ぶのを聞いて振り向く。寝息をたてているから寝言だったのだろう。
 ヴィヴィオの為に頑張ってくれた。
 彼女がここのヴィヴィオを呼び出さなければここの世界に来てヴィヴィオを見つける事も出来なかった。
 1番頑張ってくれたのは彼女だろう。

「今夜くらいいいか、フェイト、私はここにいるよ。チェント、よく頑張ったね。」
「…スゥ…スゥ…」
「ん…」
(ヴィヴィオを心配して来たけど、ここまでフェイトに喜んで貰えるならいいかな)

そう思いアリシアは瞼を閉じた。



【コンコン】
「ヴィヴィオ…もう寝ちゃった?」
「なのはママ?」
「どうしたの?」

 ベッドで横になって話しているとドアをノックする音が聞こえなのはが入ってきた。

「ねぇ、ヴィヴィオ…ママも一緒に寝ていいかな? フェイトちゃんもアリシアちゃん達と一緒なんだもん…」

 なのはだけ1人で寝るのは寂しいらしい。
 ヴィヴィオと互いに顔を見合わせる。ヴィヴィオも同じ様に考えたみたいだ。

「うん、じゃあママの部屋に行こう。ヴィヴィオもいいよね」
「うん。」

 答えながら

(私も帰ったら甘えてみようかな…)

 そう思い2人についていった。



「良かった。ヴィヴィオさんが無事で」

 アインハルトが部屋のライトを消してベッドに入ろうとした時、机の上に置いてあった本がぼんやり光を放っていた。

「刻の魔導書…どうして…まだ何かあるの?」

 ヴィヴィオが戻って来て、一緒に彼女を連れてきた世界から迎えも来た。これでヴィヴィオ達が元の世界に帰れば全て元に戻るのに…
 まだ何か起こるのか…そんな不安が心の中に生まれていた。 

~コメント~
 高町ヴィヴィオがもしVividの世界に行ったら?
 フェイトが居る理由の一因、元はアリシアの存在です。その彼女が目の前に現れたら? 
 AgainSTStoryで「ヴィヴィオがヴィヴィオと会う」話も案に出ていましたがやっと陽の目があたりました。

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