「やっぱり1発じゃ全部壊せないか・・・じゃあこれはどう?」
再びクロスファイアシュートの発射態勢をとる。
ティアナの得意魔法、クロスファイアシュートは複数の誘導弾によって空間制圧を目的に組まれたミッドチルダ式の魔法。ショットガンの様に小型の魔法弾殻を多数放つヴィヴィオの魔法―セイクリッドクラスターにとても似ている。しかしこの魔法にはセイクリッドクラスターに出来ないある『特性』がある。
それは多数のスフィア―誘導弾を集束させて砲撃魔法に出来る事。
スフィアの数を変える事で威力を調整出来、更に遠隔操作により離れた場所からでも発射可能、それらを応用すれば1人で相手に対し集中砲撃も出来る。
それらの特性を本能的に知ってか、ヴィヴィオはこの魔法を得意としていた。
それがブレイブデュエルの中で今火を噴く。
「初挑戦で苦も無く19体か・・・流石ショップチームのエースね。」
「次ので最後か・・・最後のって何だっけ?」
「私達が4人で挑んで1度も勝てなかった相手です。」
「多層式のシールドを落とし、新たなシールドを作らせない様にしつづけながら砲撃系を数発入れなければ勝利はありません。魔力総量から見て4人では勝てない相手です。ですが・・・5人なら・・・」
「テストで何度も戦った我らとは違う。あやつ達は初めてだ。まぁ、ここまでだろうよ・・・」
彼女はそう言いながらモニタ画面に映る5人の少女達を一瞥し手元にあったカップに口を付けた。
「え? 私達がフェイトやなのは達と一緒に?」
「いいの?」
ある日の夜、ヴィヴィオは高町家にお呼ばれになっていた。その時にブレイブデュエルの新しいゲームシステムのお披露目にゲスト参加して欲しいと頼まれた。なのはも参加するらしい。
「いいよ~そろそろ練習の成果見てみたかったし、フェイトと一緒に登場したらみんなビックリするよね♪」
楽しそうに言うアリシアとは違い、まだ上手くブレイブデュエルで遊べないヴィヴィオは迷う。
「ん~っ! 気持ちいいね~♪」
晴れ渡った青空と海から来る潮風を感じながらヴィヴィオは伸びをした。
こっちに来てから今日で5日。まだ戻る方法のきっかけすら掴めない。心の焦りが出ていたのかアリシアが「遊びに行こう」と誘ってくれてはやても
「今日はゆっくりしてたらいいよ。天気もいいし海でも行ってきたら?」
と本の整理途中に半ば無理矢理追い出されてしまった。
「八神堂にいらっしゃ~い♪」
(は…はやてさん…)
ヴィータと一緒にやってきたのは八神堂と看板が掲げられた古書店だった。
ヴィヴィオ達が居る元世界とは全然違う世界と思っていたけれど、読書好きのはやてが古書店に居るのはどこか繋がっている気もする。
でも…
「大学卒業して社会人1年生!? ここ…はやてさんのお店!?」
アリシアと2人目を丸くして驚く。
「フェイトちゃんのそっくりさん?」
ヴィータが初心者に負けたと聞いてはやては冷やかし半分励まし半分で声をかけた。しかし彼女から聞いたのは行った先でフェイトそっくりの女の子が居たことだった。
「フェイトちゃんと見間違えたんとちゃう? それかアリシアちゃんかレヴィの変装とか?」
「ううん、ホントにフェイトそっくりだったんだ。ジャケットはライトニングだったけど、レヴィとは闘い方も全然違ってて…後で来たフェイトも驚いてた。あともう1人初心者も…いたけど、白のセイクリッドで見たことない砲撃撃ってすぐぶつかってきて…」
「結構近くでビックリしたね。」
少し大きめのリュックを背負ったヴィヴィオは隣のアリシアに向かって言った。
「うん、でも…そんな建物海鳴にあったかな~?」
首を傾げて答える彼女はリュックが2~3個入りそうな大きなトランクを転がしながら歩いている。
「お店の人からも地図貰ったから、早く言って元の世界に戻る方法さがそ」
「…そうだね。うん♪」
彼女には何か思う所があるらしいが、それでも2人の足取りは軽かった。
「挑戦者、フェイトだったら大ラッキー、他の知ってる人だったらラッキーってとこかなっ♪」
アリシアが上空に見えるウィンドウ目がけて突き進む。
設定ボタンに『挑戦者求む』の項目があったからそれをチェックしておいた。
魔法の無い世界でどうしてゲームの中で魔法が使えるのかは判らないけれど、デバイスホルダーに刻まれたミッドチルダ式のプログラム起動用魔方陣は何かに関係している。
フェイトと間違われ、彼女がロケテストをプレイしているのであれば彼女の友人、なのは達も同じ様にこのゲームで遊んでいる。
だったらただむやみに動くのではなく、彼女達の誰かが気づく様に網を仕掛ける。
「っと、到着。ってあれ?」
トンっと降り立ったヴィヴィオが辺りを見回す。
使ったのは時間移動魔法-【時空転移】ではなく異世界間に存在する刻の魔導書を使い移動する【旅の扉】…の筈なのだけれど…
「ねぇヴィヴィオここ海鳴じゃない? 少しだけ海の香りするし、あっちに見える看板日本語だよ。」
「えっ?」
彼女の視線を追いかけ看板を見つける。確かにミッド標準文字じゃない。
。
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