第06話「ブレイブデュエルの世界でVerV」
- なんでもないただの1日
- by ima
- 2020.08.28 Friday 15:33
私とアリシアが急いで教室に戻ると誰も居なかった。みんな先に行ってしまったらしい。
(急がなくちゃっ!)
慌てて体操着を持って更衣室へと向かう。
次の授業は体育、更衣室にも誰も居なくて更に慌てて中に入り急いで着替えた。
私は運動があまり得意じゃない。静かな場所で沢山の本に囲まれながら毎日違う世界を思い浮かべる方が好きだったりする。だから体育の授業は少し体を動かす位で息が乱れそうになると休憩していた。
でも2年前に時空転移に目覚めてからはそんな事は言ってられなくなってきた。
(急がなくちゃっ!)
慌てて体操着を持って更衣室へと向かう。
次の授業は体育、更衣室にも誰も居なくて更に慌てて中に入り急いで着替えた。
私は運動があまり得意じゃない。静かな場所で沢山の本に囲まれながら毎日違う世界を思い浮かべる方が好きだったりする。だから体育の授業は少し体を動かす位で息が乱れそうになると休憩していた。
でも2年前に時空転移に目覚めてからはそんな事は言ってられなくなってきた。
戦技魔法を使いながら模擬戦をする時、冷静な判断と最後の気合い押し…みたいなものは体力が無いと出来なくなるのを思い知った。それからは授業にも前向きに参加するようになった。
同じ位に転校してきた親友が実は凄く運動が得意で、その流れで何となく巻き込まれちゃってる気もするんだけどね。
「じゃあいくよ~っ、っと…!」
そんなことを考えているとアリシアが手を挙げて少し離れてダッシュからジャンプ。クルクルっと回ってマットの上に着地…ふらついてパフッと座った。
「わぁ~♪」
隣で見ていたコロナと拍手する。
「アリシアすご~い! 私も~っ!」
今度はリオが飛ぶらしくアリシアよりもマットから離れてダッシュ、手前でジャンプして地面に手をつきそのまま3回前転した後にマット前で思いっきりジャンプし体を伸ばしたままクルクルっと回って着地。
「すご~いっ!」
彼女の軽快で身軽な動きに更に拍手をする。アリシアも手を叩いている。
「流石リオ♪ あんな風に飛べるんだ」
「アリシアも直ぐに出来るよ。」
「私にも出来るかな?」
「うん簡単だよ♪ コツはね…」
リオに教えて貰いながら私達は授業の時間めいいっぱい体を動かした。
…後で念入りにストレッチしないと全身が痛くなりそうだけど…
それから時間が経って授業が終わり、私はテキストをバッグに入れた。
「ヴィヴィオ、今日の依頼は?」
アリシアが私に聞いてきた。
「ないよ。ユーノ司書長が『忙しくなったら呼ぶからそれまではいいよ~』って。」
私は学生でも管理局員、本局無限書の司書。事件やロストロギア、本局や他管理世界の地上本部から調査依頼が飛び込んで来れば調べて資料を作り提出するのが仕事。本当に忙しい時は学院が終わってそのまま無限書庫に向かい、深夜まで調べたりする事もあった。
でも最近、私の司書としての任務が減っている。
それは無限書庫の責任者、総合司書長のユーノさんが私のしている事を理解してくれているから。
だからなるべく放課後に時間を作っている。
「チンクさんにメッセージを送るね。」
コロナとリオも用事があるって先に帰ったし、アリシアもチェントを迎えに行くのかなと思っていたけれど私と一緒に行くつもりらしい。
「わかった、私もママ達に連絡するね。あとはいつもの所で」
「うん♪」
そう言うと彼女は一足先に教室を後にした。
「RHd、ママ達にメッセージを送って。『アリシアといつもの所に行ってから帰ります。』って。あとプレシアさんにも」
【Allright】
相棒にお願いしてなのはママとフェイトママと、アリシアのお母さんのプレシアさんにメッセージを送る。心配いらないと思うけれど急に居なくなったらまた事件に巻き込まれたと思われて心配をかけたくない。
初等科の校舎を出てそのまま裏へと進む。そこには倉庫があって学院祭で使う道具が片付けられていて普段は誰も入れないように物理式の鍵がかけられている。
(アリシア、まだ来てないみたい…)
辺りを見回し誰も見ていないのを確認した後、ポケットから鍵を取り出して鍵を開けて音を立てないように引き戸式のドアをそ~っと開けて中に入り、少しだけ開けておく。
どうして私がここの鍵を持っているのかというと、それも親友の悪知恵だったりする。
彼女が学院際のクラス代表委員になっていた時にここを見つけた。
人目につかなくて、学院内のイベント期間以外は滅多に人も来ない。そして『魔法認証』を全く使わない鍵で閉じられている。何かあった時に使える良い場所だと考えた彼女は先生から借りた鍵をコピーしていた。
『何かあって転移しなくちゃいけなくなった時に使うかなって。大丈夫、ばれなきゃいいんだから♪』
そしてコピーした鍵を更にコピーして私も持っている。
先生に知られたらママ達も呼ばれてお説教タイムは間違い無いと思っていても何処かで誰かに見られた方が大変だからと妥協半分、諦め半分でその鍵を受け取った。
(聖王様…魔法を知られない様にする為には仕方なかったんです…見逃して下さいっ!)
心の中で聖王様に懺悔する…誰に懺悔しているのかはこの際気にしない。
…きっと彼女なら
「その程度で怖じ気づいてどうするんですか」
と呆れられるかも知れない…
そんなことを考えていると、ドアが少し開いて犯人…じゃなくてアリシアが入ってきた。
「お待たせ~、チンクさんもう近くまで来てるって。」
チェントのお迎えに来ていたらしい。私達が行くことを知って…というより、末妹と一緒に居るのが楽しいらしい。
「いいお姉ちゃんだね♪」
彼女もはにかんで頷く。ドアを閉めて内側から鍵をロックする。
「じゃあ行くよ。」
「いつでも♪」
RHdから1冊の本を取り出して言うと彼女が手を握る。
そして作り出した虹色の球体に一緒に飛び込んだ。
「っと…」
着いたのは大きな庭園の中だった。
「時間と場所もピッタリ♪」
庭園の近くにあった時計を見てVサインする。
「ヴィヴィオ~、アリシア~いらっしゃい~♪」
私達を見つけて1人の少女が走ってきた。
「ユーリ、遊びに来たよ~」
「はい、光が見えたのでみんなにもメールを送りました。早速行きましょう。みんな待ってますよ♪」
「よ~しっ! 連勝記録、伸ばそうかなっ」
アリシアの言葉に程々にねと思いながらも頷いた。
ここは色んなものが同じ様で違う、異なる時間軸にある併行世界。
時空転移は過去や未来だけじゃなくて、こんな風に他の時間軸にいくことも出来る。
ここはそんな世界の1つ【現実では全く魔法が使えない世界】。
ここじゃ魔法の欠片が全く無いからリンカーコアも動かない、だから魔法も使えない。魔導師が魔法が使えないって不便な世界に来たのかと言うとここにはここにしかない【ある物】があるから。
【体感ゲーム、ブレイブデュエル】
現実では魔法は使えないけれど、ゲームの中に行けば使える。
アリシアはリンカーコアが弱くて現実だと殆ど魔法が使えない、でもブレイブデュエルの中じゃ【スキルカード】になった魔法なら好きに使える。
そして私にも…大切な目的がここにはある。
グランツ研究所の中へ入りそのままプレイルームへと行くと私達と同年代の子達が遊んでいる。知った顔を見つけて駆け寄る。
「シュテル、遊びに来たよ。」
「ようこそ。ヴィヴィオ、後で私とデュエルしましょう。アリシアは…フェイトからメッセージを受け取っています。」
『アリシア、私との約束を覚えてるよね。バトルIDは…』
ユーリ・シュテル・フェイト、ここにも私達の元世界と違う友達や家族が居る。アリシアも居るし、未来には私も…。
早速挑戦メッセージを受け取ったアリシアは模擬戦-デュエルする気満々らしい。
彼女はリアル剣術とスキルカードを混ぜた戦闘スタイルで神出鬼没なトッププレイヤーになっていてブレイブデュエルの提携店、ホビーショップT&Hのショッププレイヤーであり全国ランカーなフェイトにライバル視されている。
そして私も…
目の前のシュテルから挑戦を受けてしまった。
「わ、私はプロトタイプの所に居るね、ユーリもいい?」
ユーリの方を向いて誤魔化す。
「はい♪ 準備は出来ています。」
「後で私も行きます。」
「じゃあまた後で♪」
ちょっと残念そうにするシュテルに心の中で謝りながら話題を逸らした。アリシアのバッグを受け取ってユーリの後に続いてプレイルームから出た。
「アリシアとヴィヴィオは本当に人気者ですね~、アリシアがデュエルしようとするとグランツ研究所のトッププレイヤーはみんな見に来るんですよ。今日はどんなデュエルをするんだろうって、みんな研究熱心です♪ 次のグランプリはもっと盛り上げたいのでヴィヴィオも参加してくださいね。」
「う、うん。でも、そっちはきっとアリシアが頑張るよ。私にはこっちの方が大切だから。」
「そちらも全力でお手伝いします。なので、お願いしますね♪」
ニコリと笑うユーリ、そんな彼女に私は頷くしかなかった。交換条件ということらしい。
「わかった。その時はまた優勝するからね。」
そんなことを話しながらブレイブデュエルのゲームをテストする部屋、シミュレーションルームへと入った。
部屋に入って私はそのままプロトタイプシミュレーターに向かい、私達のバッグを置いて中に入る。
「ユーリ、いつでもいいよ。」
「は~い、行きますよ。」
彼女の声と共に私は仮想空間へと向かった。
そこは、ゴツゴツした地面だけが広がっている殺風景な世界。その中で1番目立つ大岩の前に降りる。
「RHd、リライズアップ」
【Standby Ready】
私は相棒に声をかけてバリアジャケット…じゃなくてアバタージャケットにチェンジする。
魔法が使えない現実世界ではデバイスも動かないけれど、ここに来ればいつもの様に話せる。
「デッキのカードは…3枚は空けちゃっても大丈夫だから…」
デュエルが始まれば使えるカードは全部で5枚、アバタージャケットになるのに2枚使うので残り3枚は空けたままにする。使わないカードをカードホルダーに入れた時、少し離れた場所が淡く光った。
「遅くなってすまない。」
「こんにちは、アインスさん。私も用意していたところだったので大丈夫です。」
「うん、じゃあ始めようか。ユーリ」
『は~い、ライフポイントとマジックポイントを固定しますね。あと、解析用のプログラムも起動します。』
見た目は変わらないが周囲から感じる雰囲気が変わった。
「今日はこの3枚にしようと思う。私が先に使うので見ていてくれ」
「はい」
彼女から少し離れて見つめる。
「いくよ…ハァッ!」
声と共にスキルカードが起動した。
私がここに来た目的…それはアインスさん、初代リインフォースが使っていた魔法を蘇らせること。
私の世界、私が生まれる前に起きた闇の書事件で初代リインフォースさんは主のはやてさんを助ける為に自ら旅立った。その時、夜天の書に保存されていた魔法も多く失ったらしい。
元々、夜天の書に残された魔法が凄く多かったし、当時はそれどころではなかったからはやてさん本人も気にしていなかった。
でも偶然この世界に来た私は紫電一閃のスキルカードを何度も使う間に実際に使えるのではと考える様になって、はやてさんは使わない魔法をアインスさんがスキルカードで持っている事を知った。
そこで私がこっちでその魔法を覚えて持ち帰り、はやてさんに教えることで失われた魔法を蘇らせた。
勿論そんな大変なことを私だけで出来る筈もなく、アインスさんやユーリやグランツ研究所のみんなと異世界の私達に手伝って貰ってようやく出来る様になった。
古代ベルカの魔法を私が覚えることで、私の魔法レパートリーも増えるし、再現不可能と思われていた稀少な魔法が蘇るのだからママ達やユーノさんも協力してくれている。
はやてさんをこっちに連れてきて覚えて貰うという方法も考えたんだけど、ブレイブデュエルのスキルカードは魔法じゃないから変換しなくちゃいけなくて、その変換が誰にでも出来るものじゃないらしい。
私は昔ユーノさんと一緒にベルカ式の検索魔法を最初から組み立てて作っていたからその能力が培われていたらしくて、私と異世界の私の2人しか変換は出来なかった。
そうは言っても大規模なスキルカードは変換も大変だからと異世界の私達は解析用のプログラムを作って残してくれた。
異世界間を移動出来て、スキルカードの解析が出来るのは私しか居ない。
私だけが…私がしたいことだから、1つずつ…1つずつ…焦らずに覚えていく。
~コメント~
アリシア視点とヴィヴィオ視点での違いは書いていて楽しいです。
夜天の書の魔法の復元、ヴィヴィオにしか出来ないことですが物語が始まる前の彼女では出来る出来ないの前に考えつかない事でした。
色んな経験をしてきた彼女だからこそ出来る様になった、彼女の力です。
前話から4ヶ月…長期間お待たせいたしました。
某病気の影響でマスクや医療物資不足に緊急事態宣言…
その後の混乱も未だに続いておりますが、何とか掲載出来る位の余裕を作る事が出来ました。
まだ予断を許せる状況ではありませんが、少しでも息抜きになればと思います。
…話を書いていて気になったのですが、ヴィヴィオとリオの友達の彼女…、名前を出しても大丈夫…ですよね?
同じ位に転校してきた親友が実は凄く運動が得意で、その流れで何となく巻き込まれちゃってる気もするんだけどね。
「じゃあいくよ~っ、っと…!」
そんなことを考えているとアリシアが手を挙げて少し離れてダッシュからジャンプ。クルクルっと回ってマットの上に着地…ふらついてパフッと座った。
「わぁ~♪」
隣で見ていたコロナと拍手する。
「アリシアすご~い! 私も~っ!」
今度はリオが飛ぶらしくアリシアよりもマットから離れてダッシュ、手前でジャンプして地面に手をつきそのまま3回前転した後にマット前で思いっきりジャンプし体を伸ばしたままクルクルっと回って着地。
「すご~いっ!」
彼女の軽快で身軽な動きに更に拍手をする。アリシアも手を叩いている。
「流石リオ♪ あんな風に飛べるんだ」
「アリシアも直ぐに出来るよ。」
「私にも出来るかな?」
「うん簡単だよ♪ コツはね…」
リオに教えて貰いながら私達は授業の時間めいいっぱい体を動かした。
…後で念入りにストレッチしないと全身が痛くなりそうだけど…
それから時間が経って授業が終わり、私はテキストをバッグに入れた。
「ヴィヴィオ、今日の依頼は?」
アリシアが私に聞いてきた。
「ないよ。ユーノ司書長が『忙しくなったら呼ぶからそれまではいいよ~』って。」
私は学生でも管理局員、本局無限書の司書。事件やロストロギア、本局や他管理世界の地上本部から調査依頼が飛び込んで来れば調べて資料を作り提出するのが仕事。本当に忙しい時は学院が終わってそのまま無限書庫に向かい、深夜まで調べたりする事もあった。
でも最近、私の司書としての任務が減っている。
それは無限書庫の責任者、総合司書長のユーノさんが私のしている事を理解してくれているから。
だからなるべく放課後に時間を作っている。
「チンクさんにメッセージを送るね。」
コロナとリオも用事があるって先に帰ったし、アリシアもチェントを迎えに行くのかなと思っていたけれど私と一緒に行くつもりらしい。
「わかった、私もママ達に連絡するね。あとはいつもの所で」
「うん♪」
そう言うと彼女は一足先に教室を後にした。
「RHd、ママ達にメッセージを送って。『アリシアといつもの所に行ってから帰ります。』って。あとプレシアさんにも」
【Allright】
相棒にお願いしてなのはママとフェイトママと、アリシアのお母さんのプレシアさんにメッセージを送る。心配いらないと思うけれど急に居なくなったらまた事件に巻き込まれたと思われて心配をかけたくない。
初等科の校舎を出てそのまま裏へと進む。そこには倉庫があって学院祭で使う道具が片付けられていて普段は誰も入れないように物理式の鍵がかけられている。
(アリシア、まだ来てないみたい…)
辺りを見回し誰も見ていないのを確認した後、ポケットから鍵を取り出して鍵を開けて音を立てないように引き戸式のドアをそ~っと開けて中に入り、少しだけ開けておく。
どうして私がここの鍵を持っているのかというと、それも親友の悪知恵だったりする。
彼女が学院際のクラス代表委員になっていた時にここを見つけた。
人目につかなくて、学院内のイベント期間以外は滅多に人も来ない。そして『魔法認証』を全く使わない鍵で閉じられている。何かあった時に使える良い場所だと考えた彼女は先生から借りた鍵をコピーしていた。
『何かあって転移しなくちゃいけなくなった時に使うかなって。大丈夫、ばれなきゃいいんだから♪』
そしてコピーした鍵を更にコピーして私も持っている。
先生に知られたらママ達も呼ばれてお説教タイムは間違い無いと思っていても何処かで誰かに見られた方が大変だからと妥協半分、諦め半分でその鍵を受け取った。
(聖王様…魔法を知られない様にする為には仕方なかったんです…見逃して下さいっ!)
心の中で聖王様に懺悔する…誰に懺悔しているのかはこの際気にしない。
…きっと彼女なら
「その程度で怖じ気づいてどうするんですか」
と呆れられるかも知れない…
そんなことを考えていると、ドアが少し開いて犯人…じゃなくてアリシアが入ってきた。
「お待たせ~、チンクさんもう近くまで来てるって。」
チェントのお迎えに来ていたらしい。私達が行くことを知って…というより、末妹と一緒に居るのが楽しいらしい。
「いいお姉ちゃんだね♪」
彼女もはにかんで頷く。ドアを閉めて内側から鍵をロックする。
「じゃあ行くよ。」
「いつでも♪」
RHdから1冊の本を取り出して言うと彼女が手を握る。
そして作り出した虹色の球体に一緒に飛び込んだ。
「っと…」
着いたのは大きな庭園の中だった。
「時間と場所もピッタリ♪」
庭園の近くにあった時計を見てVサインする。
「ヴィヴィオ~、アリシア~いらっしゃい~♪」
私達を見つけて1人の少女が走ってきた。
「ユーリ、遊びに来たよ~」
「はい、光が見えたのでみんなにもメールを送りました。早速行きましょう。みんな待ってますよ♪」
「よ~しっ! 連勝記録、伸ばそうかなっ」
アリシアの言葉に程々にねと思いながらも頷いた。
ここは色んなものが同じ様で違う、異なる時間軸にある併行世界。
時空転移は過去や未来だけじゃなくて、こんな風に他の時間軸にいくことも出来る。
ここはそんな世界の1つ【現実では全く魔法が使えない世界】。
ここじゃ魔法の欠片が全く無いからリンカーコアも動かない、だから魔法も使えない。魔導師が魔法が使えないって不便な世界に来たのかと言うとここにはここにしかない【ある物】があるから。
【体感ゲーム、ブレイブデュエル】
現実では魔法は使えないけれど、ゲームの中に行けば使える。
アリシアはリンカーコアが弱くて現実だと殆ど魔法が使えない、でもブレイブデュエルの中じゃ【スキルカード】になった魔法なら好きに使える。
そして私にも…大切な目的がここにはある。
グランツ研究所の中へ入りそのままプレイルームへと行くと私達と同年代の子達が遊んでいる。知った顔を見つけて駆け寄る。
「シュテル、遊びに来たよ。」
「ようこそ。ヴィヴィオ、後で私とデュエルしましょう。アリシアは…フェイトからメッセージを受け取っています。」
『アリシア、私との約束を覚えてるよね。バトルIDは…』
ユーリ・シュテル・フェイト、ここにも私達の元世界と違う友達や家族が居る。アリシアも居るし、未来には私も…。
早速挑戦メッセージを受け取ったアリシアは模擬戦-デュエルする気満々らしい。
彼女はリアル剣術とスキルカードを混ぜた戦闘スタイルで神出鬼没なトッププレイヤーになっていてブレイブデュエルの提携店、ホビーショップT&Hのショッププレイヤーであり全国ランカーなフェイトにライバル視されている。
そして私も…
目の前のシュテルから挑戦を受けてしまった。
「わ、私はプロトタイプの所に居るね、ユーリもいい?」
ユーリの方を向いて誤魔化す。
「はい♪ 準備は出来ています。」
「後で私も行きます。」
「じゃあまた後で♪」
ちょっと残念そうにするシュテルに心の中で謝りながら話題を逸らした。アリシアのバッグを受け取ってユーリの後に続いてプレイルームから出た。
「アリシアとヴィヴィオは本当に人気者ですね~、アリシアがデュエルしようとするとグランツ研究所のトッププレイヤーはみんな見に来るんですよ。今日はどんなデュエルをするんだろうって、みんな研究熱心です♪ 次のグランプリはもっと盛り上げたいのでヴィヴィオも参加してくださいね。」
「う、うん。でも、そっちはきっとアリシアが頑張るよ。私にはこっちの方が大切だから。」
「そちらも全力でお手伝いします。なので、お願いしますね♪」
ニコリと笑うユーリ、そんな彼女に私は頷くしかなかった。交換条件ということらしい。
「わかった。その時はまた優勝するからね。」
そんなことを話しながらブレイブデュエルのゲームをテストする部屋、シミュレーションルームへと入った。
部屋に入って私はそのままプロトタイプシミュレーターに向かい、私達のバッグを置いて中に入る。
「ユーリ、いつでもいいよ。」
「は~い、行きますよ。」
彼女の声と共に私は仮想空間へと向かった。
そこは、ゴツゴツした地面だけが広がっている殺風景な世界。その中で1番目立つ大岩の前に降りる。
「RHd、リライズアップ」
【Standby Ready】
私は相棒に声をかけてバリアジャケット…じゃなくてアバタージャケットにチェンジする。
魔法が使えない現実世界ではデバイスも動かないけれど、ここに来ればいつもの様に話せる。
「デッキのカードは…3枚は空けちゃっても大丈夫だから…」
デュエルが始まれば使えるカードは全部で5枚、アバタージャケットになるのに2枚使うので残り3枚は空けたままにする。使わないカードをカードホルダーに入れた時、少し離れた場所が淡く光った。
「遅くなってすまない。」
「こんにちは、アインスさん。私も用意していたところだったので大丈夫です。」
「うん、じゃあ始めようか。ユーリ」
『は~い、ライフポイントとマジックポイントを固定しますね。あと、解析用のプログラムも起動します。』
見た目は変わらないが周囲から感じる雰囲気が変わった。
「今日はこの3枚にしようと思う。私が先に使うので見ていてくれ」
「はい」
彼女から少し離れて見つめる。
「いくよ…ハァッ!」
声と共にスキルカードが起動した。
私がここに来た目的…それはアインスさん、初代リインフォースが使っていた魔法を蘇らせること。
私の世界、私が生まれる前に起きた闇の書事件で初代リインフォースさんは主のはやてさんを助ける為に自ら旅立った。その時、夜天の書に保存されていた魔法も多く失ったらしい。
元々、夜天の書に残された魔法が凄く多かったし、当時はそれどころではなかったからはやてさん本人も気にしていなかった。
でも偶然この世界に来た私は紫電一閃のスキルカードを何度も使う間に実際に使えるのではと考える様になって、はやてさんは使わない魔法をアインスさんがスキルカードで持っている事を知った。
そこで私がこっちでその魔法を覚えて持ち帰り、はやてさんに教えることで失われた魔法を蘇らせた。
勿論そんな大変なことを私だけで出来る筈もなく、アインスさんやユーリやグランツ研究所のみんなと異世界の私達に手伝って貰ってようやく出来る様になった。
古代ベルカの魔法を私が覚えることで、私の魔法レパートリーも増えるし、再現不可能と思われていた稀少な魔法が蘇るのだからママ達やユーノさんも協力してくれている。
はやてさんをこっちに連れてきて覚えて貰うという方法も考えたんだけど、ブレイブデュエルのスキルカードは魔法じゃないから変換しなくちゃいけなくて、その変換が誰にでも出来るものじゃないらしい。
私は昔ユーノさんと一緒にベルカ式の検索魔法を最初から組み立てて作っていたからその能力が培われていたらしくて、私と異世界の私の2人しか変換は出来なかった。
そうは言っても大規模なスキルカードは変換も大変だからと異世界の私達は解析用のプログラムを作って残してくれた。
異世界間を移動出来て、スキルカードの解析が出来るのは私しか居ない。
私だけが…私がしたいことだから、1つずつ…1つずつ…焦らずに覚えていく。
~コメント~
アリシア視点とヴィヴィオ視点での違いは書いていて楽しいです。
夜天の書の魔法の復元、ヴィヴィオにしか出来ないことですが物語が始まる前の彼女では出来る出来ないの前に考えつかない事でした。
色んな経験をしてきた彼女だからこそ出来る様になった、彼女の力です。
前話から4ヶ月…長期間お待たせいたしました。
某病気の影響でマスクや医療物資不足に緊急事態宣言…
その後の混乱も未だに続いておりますが、何とか掲載出来る位の余裕を作る事が出来ました。
まだ予断を許せる状況ではありませんが、少しでも息抜きになればと思います。
…話を書いていて気になったのですが、ヴィヴィオとリオの友達の彼女…、名前を出しても大丈夫…ですよね?
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