第05話「ブレイブデュエルの世界でVerA」
- なんでもないただの1日
- by ima
- 2020.04.02 Thursday 22:25
午後最初の授業は体育だ。教室に戻るとみんな先に行ってしまったらしく、慌てて服を持って更衣室へ向かった。着替えた後グラウンドに集まる。
食べて直ぐに体を動かすのはどうなの?と不思議で仕方ないけれど、考えれば普通に授業を聞いていると夢の世界に行く生徒も多いから体を動かした方がいいのだろうと勝手に推測する。
私は魔法を使わないで体を動かすのは結構好きだったりする。
この前ヴィヴィオの家にお呼ばれした時にその事を話したらフェイトも運動が得意だったとなのはさんから聞いた。
男子女子が交ざってゲームをしたりするとどうしても女子の方が苦手な子が多い。
なのはさんやはやてさんはそっちの方に入っていて、フェイトやすずかさんはそういう時、大活躍だったそうだ。
聖祥に居た頃を思い出す。体育という授業はみんなで一緒に何かをする感じだった。でもStヒルデでは魔法具を使わない限り思い思いのグループに分かれて何かで遊ぶ。
食べて直ぐに体を動かすのはどうなの?と不思議で仕方ないけれど、考えれば普通に授業を聞いていると夢の世界に行く生徒も多いから体を動かした方がいいのだろうと勝手に推測する。
私は魔法を使わないで体を動かすのは結構好きだったりする。
この前ヴィヴィオの家にお呼ばれした時にその事を話したらフェイトも運動が得意だったとなのはさんから聞いた。
男子女子が交ざってゲームをしたりするとどうしても女子の方が苦手な子が多い。
なのはさんやはやてさんはそっちの方に入っていて、フェイトやすずかさんはそういう時、大活躍だったそうだ。
聖祥に居た頃を思い出す。体育という授業はみんなで一緒に何かをする感じだった。でもStヒルデでは魔法具を使わない限り思い思いのグループに分かれて何かで遊ぶ。
ボールを使って遊ぶグループがあれば、何かのスポーツ道具?みたいなのを使って遊んでいるグループもある。生徒1人1人がどんな風に体を動かすのかを考えるのも授業の1つらしい。
最初は戸惑ったけれど今ではヴィヴィオやリオ、コロナと集まってボールで遊んだりテレビで見たダンスを真似てみたりと色々している。
最近知ったのはリオの実家が古流武術道場で彼女も練習していると聞いて時々どんなものかを教えて貰っている。
…勿論魔法を使ったり素手の格闘模擬戦なんてしようものなら先生が飛んで来てお説教タイムが始まるのでしないけどね。
「じゃあいくよ~っ、っと…!」
目標の前で思いっきりジャンプして体を前に倒してクルッと2回転して着地…
【パフッ】
しようとしたけれど回転が足りなくてそのままクッションマットにお尻から着地した。
「アリシアすご~い! 私も~っ!」
リオがマットよりかなり手前でジャンプして地面に手をつきそのまま3回前転した後にマット前で思いっきりジャンプし体を伸ばしたままクルクルっと回って着地。伸身の2回転宙返りだ。
ヴィヴィオとコロナが「すご~いっ!」と手を叩いている。
「流石リオ♪ あんな風に飛べるんだ」
私もマットから少し離れた場所でパチパチと手を叩く。
「アリシアも直ぐに出来るよ。コツはね…」
リオに教えて貰いながら私達は授業の時間めいいっぱい体を動かした。
それから少し時間が経って、午後の授業が終わる鐘が鳴るとバッグにテキストを入れて帰る準備をする。
「ヴィヴィオ、今日の依頼は?」
「ないよ。ユーノ司書長が『忙しくなったら呼ぶからそれまではいいよ~』って。」
ヴィヴィオは管理局、それも本局無限書庫の司書。事件が起きれば調査依頼が来て本局に行くためにクラナガンの地上本部へと向かう。その時は私も幼等科へチェントを迎えに行った後、ママの研究所へと向かう。
チェントを連れてリオやコロナとこのまま遊びに行くときもあるのだけれど、彼女達は今日何か用事があると言って先に帰っている。
こんな風に2人だけになった時、私達は【ある所】へ行く。
「チンクさんにメッセージを送るね。」
「わかった、私もママ達に連絡するね。あとはいつもの所で」
「うん♪」
ママの研究所でスタッフをしているチンクさんにチェントを迎えに来て欲しいとメッセージを送ると直ぐに返事があった。
用事があってStヒルデ近くまで来ているらしい。
(チンクさんもいいお姉ちゃんよね♪)
クスッと笑いながらも私はバッグを背負って教室を出た。
靴を履き替えた後、私達は校舎裏の倉庫へと向かう。
「お待たせ~、チンクさんもう近くまで来てるって。」
中に入ると既にヴィヴィオは来ていた。
「いいお姉ちゃんだね♪」
彼女も判っているのかクスッと笑う。
チェントはベルカ聖王、オリヴィエ・ゼーゲブレヒトの聖骸布に残された遺伝子から作られた。ヴィヴィオと同じジェイル・スカリエッティによって…。
目覚めた時の違いで年齢差があるけれど私とフェイトよりも限りなく近い同一人物、魔法を使うと魔法色が7色の虹色になるのも同じ。
そんな生まれからか元ナンバーズ―戦闘機人だったチンクさん達を「ねえさま」と呼んでいた。それが私とママの呼び方が変わった後に彼女達も「おねえちゃん」に変わった。
良く聞くのは研究所に居るチンクさんと時々遊びに来る聖王教会本部のセインさん、オットーさん、ディードさん。中でもチンクさんは「おねえちゃん」と呼ばれるのが凄く好きみたいで今日みたいにお迎えをお願いする時だけじゃなくて、何か用事があればついでに迎えに来てくれている。
チンクさんを姉と呼ぶ人はみんな彼女より背が大きいというのが理由なんだろうと思っている。…私も年上で背もずっと大きい妹に「姉さん」と呼ばれても何かしっくりこない気持ちはわかる。
今頃ふにゃ~っとなって妹と手を繋いで歩いているだろう。そう思うと私もクスッと笑った。
「じゃあ行くよ。」
「いつでも♪」
彼女がデバイスから1冊の本を取り出して言うと私は彼女の手を握る。
そして彼女が作り出した虹色の球体に一緒に飛び込んだ。
「っと…」
着いたのは大きな庭園の中だった。
「時間と場所もピッタリ♪」
嬉しそうにVサインするヴィヴィオに私も頷く。
「ヴィヴィオ~、アリシア~いらっしゃい~♪」
私達を見つけて1人の少女が走ってきた。
「ユーリ、また遊びに来たよ~」
「はい、光が見えたのでみんなにもメールを送りました。早速行きましょう。みんな待ってますよ♪」
「よ~しっ! 連勝記録、伸ばそうかなっ」
私は腕を振りながら言った。
ヴィヴィオの使う魔法『時空転移』は過去や未来に行くだけじゃない、同じ様に見えて違う世界や違う時間軸にある異世界に行くことが出来る。
ここはそんな世界の1つ【現実では全く魔法が使えない世界】。
ここでは私は勿論ヴィヴィオも魔法が使えない。
そんな不便な世界にどうして来たのかというとここにしか無い物があるからだ。
【体感ゲーム、ブレイブデュエル】
現実で魔法が使えない代わりに、私達の世界の魔法がゲームの中のアイテム【スキルカード】になっていてブレイブデュエルの中で使うことができる。
建物、グランツ研究所の中へ入りそのままプレイルームへと行くと私達と同年代の子達が遊んでいる。知った顔を見つけて駆け寄る。
「シュテル、遊びに来たよ。」
「ようこそ。ヴィヴィオ、後で私とデュエルしましょう。アリシアは…フェイトからメッセージを受け取っています。
『アリシア、私との約束を覚えてるよね。バトルIDは…』
ユーリやシュテル、フェイト…他の時間軸に来て面白いを思うのは少しずつ違っている知人がいることだ。この世界には同い年のフェイトやなのは、はやて達がいる。来た時にここへ案内してくれたユーリやフェイトからのメッセージを見せてくれたシュテルは私達の世界には居ないけれど、他の時間軸で少し違う彼女達が居るのを知っている。
ここのフェイトはブレイブデュエルの提携店、ホビーショップT&Hのショッププレイヤーでブレイブデュエルの全国レベルのトップランカー。そして戦闘スタイルは私とそっくり。
「既に対戦を待ってるって凄く気合いだね。ヴィヴィオ、先に行って連勝記録を伸ばしてくる。」
最近は私が連勝していて…それでも諦めずに今日みたいに挑戦してくる。どんどん強くなってきてるから私もうかうかしてられないんだよね。
「じゃあ私はプロトタイプの所に居るね、ユーリもいい?」
「はい♪ 準備は出来ています。」
「後で私も行きます。」
「じゃあまた後で♪」
そう言ってバッグからブレイブホルダーとメモリーカートリッジを取り出し、バッグをヴィヴィオに預けて遊ぶのを待っている列に並んだ。
私が並ぶのを見てヴィヴィオとユーリはプレイルームから出て行った。
魔法力の弱い私が色んな戦技魔法の練習をしたり模擬戦の経験を積むのにブレイブデュエルがうってつけなように、彼女にもここに来る目的がある。
八神はやてさんが持っている夜天の書は古代ベルカ式の魔法が沢山入ったストレージデバイス、でも闇の書事件が起きる前は更にもっと沢山の魔法が入っていたらしい。
多くの魔法が夜天の書の管制融合騎、先代のリインフォースが消えた時に一緒に失われてしまった。ヴィヴィオはそれを知ってここに来た。
この世界にはブレイブデュエルの他にも違いがある。
消えた筈の先代リインフォースがはやての家族として暮らしていて、私達の世界の彼女が使っていた魔法もブレイブデュエルの中でスキルカードとして残っている。
ヴィヴィオはそのスキルカードを使って覚えるだけじゃ無くて、古代ベルカ式の魔法として読み解いて古代ベルカ式魔法のプログラムとして元の世界に持ち帰りはやてさんに伝えている。
誰も出来るなんて思わないし、思いついてもそれがどれだけ大変なことなのか知って諦める。古代ベルカ式魔法と時空転移が使え、魔導知識も持っているヴィヴィオにしか出来ない事…ううん、ヴィヴィオだから出来たこと。
勿論、そんな大事が1人で出来る訳じゃなくて、ブレイブデュエルのシステムに詳しいユーリと…
「あっ、アインスさんだ♪」
リインフォース、アインス。彼女の協力が不可欠。
ユーリが連絡したらしい。プレイルームを通り過ぎる彼女に気づいて手を振ると彼女も私を見つけて手を振り返してくれた。
中央にある大きなモニタに目を移す。
そこではプレイヤー同士のデュエルの様子が映っていた。
渓谷をイメージした場所で少年と少女がデュエルしている。
少年の方は運動が得意なのか、高速移動系のスキルを使い凄いスピードでジャンプしたり走ったりして相手への距離を詰めてきている。反対に少女は操作系のスキルで大きな岩を幾つも宙に浮かせて投げているけれどスピードに追いつけずかすりもしない。
やがて少年が近くまで来てデバイスを出した。槍の様なデバイスを構えてまっすぐ突き進む。少女もそれに気づいて離れようと動き始めるが、高速移動系魔法が使えないのか移動速度が全然違う。
勝負があったかなと思った瞬間、鉄砲水が横から流れてきた。
少女が岩を投げていたのは水を溜めて一気に放つ為だったのだ。
少年は視界の外から遅いくる水に襲われ動きが止まる。そこへ少女は杖を翳して射撃系スキルを起動、一斉射するとゲージは全て無くなって少女の勝利を知らせるアナウンスが部屋内に響いた。
スピード特化するプレイヤーが増えるかと思っていたけれど、色んな対抗策を考えてきているらしい。小さく手を叩いて少女の活躍を喜ぶ。
(へぇ~もうこんな風に使えちゃうんだ…)
初めて来た時は稀少で強いスキルカードを持ったプレイヤーが勝つような単調なデュエルが多かった。先にどっちが攻撃するか? 攻撃・防御・反射・無効化…対抗出来るカードをどれだけ持っているかが直接勝敗に繋がっていた。
そんな世界に私達はやってきてブレイブデュエルは大きく変わるきっかけを作った。
ヴィヴィオは高位魔導師であれば誰もが出来る魔法の並列処理を応用して
『複数のスキルを同時に使う』『1度読み込んだスキルカードは後はその後何度でもすぐに使える』ことを見せたら次のバージョンアップで難易度が下がった。
逆に『同時に同じスキルカードを何度も使える』のを見せたら上限が設けられた。
そして私は練習している剣術をブレイブデュエルに取り込んだことで『現実の運動能力等をブレイブデュエルに取り入れられる』ということを実演して見せた。
こうしてきっかけを作った私達は前々回のグランプリで今まで1位と2位だったシュテルとフェイトに勝って決勝戦でそれらを全て使って戦った。その光景を見ていた全員が気づいたらしい。
『スキルカードはあくまでスキル、道具の1つで使う方法は無限にある』ということ。
それと一緒に来たなのはさんとフェイトがこっちのフェイトとシュテルを猛特訓した影響も起きている。
戦技教導隊のエースオブエースと呼ばれるなのはさんは勿論、フェイトも教えるのは上手。
そんな彼女達に特訓された2人は得た経験を基にチュートリアルとランクアップトレーニングとしてまとめ上げた。
ブレイブデュエルの初心者が楽しく遊べるようにスキルの使い方を練習するとそれぞれのランクとランクアップのカリキュラムを作った。
この辺の話を聞いた時私とヴィヴィオは魔導師ランク試験を思い出していた。
そんなことがあって以降のブレイブデュエルの広がりは凄かったらしい。
今まで様子見をしていた子達や既に遊んでいたプレイヤーから口づてに広がって、提携店が更に増えたことで参加プレイヤー数が10倍に膨れ上がったそうだ。
結果今までなかったランクを作りランクアップシステムと初心者用にチュートリアルが必要になった。
そして再び行われたグランプリは凄く盛り上がってシュテルとフェイトは激戦を制して再びチャンピオンと2位に返り咲いた。
その時私達はなのはさんの故郷、管理外世界の海鳴市に行って更に違う異世界で事件に巻き込まれていたからグランプリどころじゃなかったのだけれど…
もしかするとフェイトとなのはさんは近い将来こうなるのを予想していたのかも…。
そんな事を考えていると列はどんどん進んでいって
「は~い、じゃあ次は…アリシア、いらっしゃい」
「こんにちは、アミタさん。また遊びに来ちゃいました」
列整理をしていたのはアミティエから声をかけられた。
「大歓迎です。今日は1人ですか?」
「ヴィヴィオも一緒です。ユーリとアインスさんと一緒にプロトタイプの所に行ってます。」
「でしたら今夜はお話を聞けますね。ではあっちのカプセルに入ってください。熱いバトルを期待しています。」
「は~い、フェイトとの連勝記録を伸ばしてきます♪」
そう言って指示されたカプセルへと入った。
「バトルIDは…っと」
フェイトから言われたナンバーを入れると、対戦プレイヤーとして彼女の名前が表示された。既に入っているらしい。
「バルディッシュ、フェイトを思いっきり驚かせちゃおう。ブレイブデュエル スタンバイ、カードドライブ リライズアーップ!!」
こうして私は異世界から更に仮想空間の中へと飛んだ。
「フェイト、来たよ」
「うん、待ってた。」
岩場ステージの中でフェイトは立っていた。
「そのジャケットって…」
彼女のアバタージャケットを見て驚く。この前まで私と同じだったのに変わっていた。
テスト中のジャケットとして私も着たことがあるし、先日巻き込まれた違う異世界での事件、そこのフェイトが纏っていたジャケットにそっくり…。
ヴィヴィオが前に言ってた…世界はどこか繋がってるって。こうやって目の前にすると何となく判る気がする。
「うん、少し前から使ってるんだ。アリシアも使う?」
「ううん、私はこれでいい」
フェイトのジャケットは私のより高速移動を更に特化させている、あのジャケットの前バージョンは特化する代わりに持てるスキルが1つ減ってしまう代償を持っていた。それを強化したジャケットだろうか?
「みんなを待たせちゃうし、始めようか。」
「そうだね。連勝記録を1つ加えなくちゃね♪」
「……いくよ」
ニヤリと笑って言うと、少し怒ったのか真剣な眼差しに変わった。私もサイズフォームのバルディッシュを構えて…動いた。
~コメント~
新年度に変わりました。(更新が出来ず本当にすみません)
世間が自粛や色々息苦しい状態になっていますが、そういう時だからこそ
当サイトの様なSSサイトが時間と心の余裕の欠片になれば幸いです。
最初は戸惑ったけれど今ではヴィヴィオやリオ、コロナと集まってボールで遊んだりテレビで見たダンスを真似てみたりと色々している。
最近知ったのはリオの実家が古流武術道場で彼女も練習していると聞いて時々どんなものかを教えて貰っている。
…勿論魔法を使ったり素手の格闘模擬戦なんてしようものなら先生が飛んで来てお説教タイムが始まるのでしないけどね。
「じゃあいくよ~っ、っと…!」
目標の前で思いっきりジャンプして体を前に倒してクルッと2回転して着地…
【パフッ】
しようとしたけれど回転が足りなくてそのままクッションマットにお尻から着地した。
「アリシアすご~い! 私も~っ!」
リオがマットよりかなり手前でジャンプして地面に手をつきそのまま3回前転した後にマット前で思いっきりジャンプし体を伸ばしたままクルクルっと回って着地。伸身の2回転宙返りだ。
ヴィヴィオとコロナが「すご~いっ!」と手を叩いている。
「流石リオ♪ あんな風に飛べるんだ」
私もマットから少し離れた場所でパチパチと手を叩く。
「アリシアも直ぐに出来るよ。コツはね…」
リオに教えて貰いながら私達は授業の時間めいいっぱい体を動かした。
それから少し時間が経って、午後の授業が終わる鐘が鳴るとバッグにテキストを入れて帰る準備をする。
「ヴィヴィオ、今日の依頼は?」
「ないよ。ユーノ司書長が『忙しくなったら呼ぶからそれまではいいよ~』って。」
ヴィヴィオは管理局、それも本局無限書庫の司書。事件が起きれば調査依頼が来て本局に行くためにクラナガンの地上本部へと向かう。その時は私も幼等科へチェントを迎えに行った後、ママの研究所へと向かう。
チェントを連れてリオやコロナとこのまま遊びに行くときもあるのだけれど、彼女達は今日何か用事があると言って先に帰っている。
こんな風に2人だけになった時、私達は【ある所】へ行く。
「チンクさんにメッセージを送るね。」
「わかった、私もママ達に連絡するね。あとはいつもの所で」
「うん♪」
ママの研究所でスタッフをしているチンクさんにチェントを迎えに来て欲しいとメッセージを送ると直ぐに返事があった。
用事があってStヒルデ近くまで来ているらしい。
(チンクさんもいいお姉ちゃんよね♪)
クスッと笑いながらも私はバッグを背負って教室を出た。
靴を履き替えた後、私達は校舎裏の倉庫へと向かう。
「お待たせ~、チンクさんもう近くまで来てるって。」
中に入ると既にヴィヴィオは来ていた。
「いいお姉ちゃんだね♪」
彼女も判っているのかクスッと笑う。
チェントはベルカ聖王、オリヴィエ・ゼーゲブレヒトの聖骸布に残された遺伝子から作られた。ヴィヴィオと同じジェイル・スカリエッティによって…。
目覚めた時の違いで年齢差があるけれど私とフェイトよりも限りなく近い同一人物、魔法を使うと魔法色が7色の虹色になるのも同じ。
そんな生まれからか元ナンバーズ―戦闘機人だったチンクさん達を「ねえさま」と呼んでいた。それが私とママの呼び方が変わった後に彼女達も「おねえちゃん」に変わった。
良く聞くのは研究所に居るチンクさんと時々遊びに来る聖王教会本部のセインさん、オットーさん、ディードさん。中でもチンクさんは「おねえちゃん」と呼ばれるのが凄く好きみたいで今日みたいにお迎えをお願いする時だけじゃなくて、何か用事があればついでに迎えに来てくれている。
チンクさんを姉と呼ぶ人はみんな彼女より背が大きいというのが理由なんだろうと思っている。…私も年上で背もずっと大きい妹に「姉さん」と呼ばれても何かしっくりこない気持ちはわかる。
今頃ふにゃ~っとなって妹と手を繋いで歩いているだろう。そう思うと私もクスッと笑った。
「じゃあ行くよ。」
「いつでも♪」
彼女がデバイスから1冊の本を取り出して言うと私は彼女の手を握る。
そして彼女が作り出した虹色の球体に一緒に飛び込んだ。
「っと…」
着いたのは大きな庭園の中だった。
「時間と場所もピッタリ♪」
嬉しそうにVサインするヴィヴィオに私も頷く。
「ヴィヴィオ~、アリシア~いらっしゃい~♪」
私達を見つけて1人の少女が走ってきた。
「ユーリ、また遊びに来たよ~」
「はい、光が見えたのでみんなにもメールを送りました。早速行きましょう。みんな待ってますよ♪」
「よ~しっ! 連勝記録、伸ばそうかなっ」
私は腕を振りながら言った。
ヴィヴィオの使う魔法『時空転移』は過去や未来に行くだけじゃない、同じ様に見えて違う世界や違う時間軸にある異世界に行くことが出来る。
ここはそんな世界の1つ【現実では全く魔法が使えない世界】。
ここでは私は勿論ヴィヴィオも魔法が使えない。
そんな不便な世界にどうして来たのかというとここにしか無い物があるからだ。
【体感ゲーム、ブレイブデュエル】
現実で魔法が使えない代わりに、私達の世界の魔法がゲームの中のアイテム【スキルカード】になっていてブレイブデュエルの中で使うことができる。
建物、グランツ研究所の中へ入りそのままプレイルームへと行くと私達と同年代の子達が遊んでいる。知った顔を見つけて駆け寄る。
「シュテル、遊びに来たよ。」
「ようこそ。ヴィヴィオ、後で私とデュエルしましょう。アリシアは…フェイトからメッセージを受け取っています。
『アリシア、私との約束を覚えてるよね。バトルIDは…』
ユーリやシュテル、フェイト…他の時間軸に来て面白いを思うのは少しずつ違っている知人がいることだ。この世界には同い年のフェイトやなのは、はやて達がいる。来た時にここへ案内してくれたユーリやフェイトからのメッセージを見せてくれたシュテルは私達の世界には居ないけれど、他の時間軸で少し違う彼女達が居るのを知っている。
ここのフェイトはブレイブデュエルの提携店、ホビーショップT&Hのショッププレイヤーでブレイブデュエルの全国レベルのトップランカー。そして戦闘スタイルは私とそっくり。
「既に対戦を待ってるって凄く気合いだね。ヴィヴィオ、先に行って連勝記録を伸ばしてくる。」
最近は私が連勝していて…それでも諦めずに今日みたいに挑戦してくる。どんどん強くなってきてるから私もうかうかしてられないんだよね。
「じゃあ私はプロトタイプの所に居るね、ユーリもいい?」
「はい♪ 準備は出来ています。」
「後で私も行きます。」
「じゃあまた後で♪」
そう言ってバッグからブレイブホルダーとメモリーカートリッジを取り出し、バッグをヴィヴィオに預けて遊ぶのを待っている列に並んだ。
私が並ぶのを見てヴィヴィオとユーリはプレイルームから出て行った。
魔法力の弱い私が色んな戦技魔法の練習をしたり模擬戦の経験を積むのにブレイブデュエルがうってつけなように、彼女にもここに来る目的がある。
八神はやてさんが持っている夜天の書は古代ベルカ式の魔法が沢山入ったストレージデバイス、でも闇の書事件が起きる前は更にもっと沢山の魔法が入っていたらしい。
多くの魔法が夜天の書の管制融合騎、先代のリインフォースが消えた時に一緒に失われてしまった。ヴィヴィオはそれを知ってここに来た。
この世界にはブレイブデュエルの他にも違いがある。
消えた筈の先代リインフォースがはやての家族として暮らしていて、私達の世界の彼女が使っていた魔法もブレイブデュエルの中でスキルカードとして残っている。
ヴィヴィオはそのスキルカードを使って覚えるだけじゃ無くて、古代ベルカ式の魔法として読み解いて古代ベルカ式魔法のプログラムとして元の世界に持ち帰りはやてさんに伝えている。
誰も出来るなんて思わないし、思いついてもそれがどれだけ大変なことなのか知って諦める。古代ベルカ式魔法と時空転移が使え、魔導知識も持っているヴィヴィオにしか出来ない事…ううん、ヴィヴィオだから出来たこと。
勿論、そんな大事が1人で出来る訳じゃなくて、ブレイブデュエルのシステムに詳しいユーリと…
「あっ、アインスさんだ♪」
リインフォース、アインス。彼女の協力が不可欠。
ユーリが連絡したらしい。プレイルームを通り過ぎる彼女に気づいて手を振ると彼女も私を見つけて手を振り返してくれた。
中央にある大きなモニタに目を移す。
そこではプレイヤー同士のデュエルの様子が映っていた。
渓谷をイメージした場所で少年と少女がデュエルしている。
少年の方は運動が得意なのか、高速移動系のスキルを使い凄いスピードでジャンプしたり走ったりして相手への距離を詰めてきている。反対に少女は操作系のスキルで大きな岩を幾つも宙に浮かせて投げているけれどスピードに追いつけずかすりもしない。
やがて少年が近くまで来てデバイスを出した。槍の様なデバイスを構えてまっすぐ突き進む。少女もそれに気づいて離れようと動き始めるが、高速移動系魔法が使えないのか移動速度が全然違う。
勝負があったかなと思った瞬間、鉄砲水が横から流れてきた。
少女が岩を投げていたのは水を溜めて一気に放つ為だったのだ。
少年は視界の外から遅いくる水に襲われ動きが止まる。そこへ少女は杖を翳して射撃系スキルを起動、一斉射するとゲージは全て無くなって少女の勝利を知らせるアナウンスが部屋内に響いた。
スピード特化するプレイヤーが増えるかと思っていたけれど、色んな対抗策を考えてきているらしい。小さく手を叩いて少女の活躍を喜ぶ。
(へぇ~もうこんな風に使えちゃうんだ…)
初めて来た時は稀少で強いスキルカードを持ったプレイヤーが勝つような単調なデュエルが多かった。先にどっちが攻撃するか? 攻撃・防御・反射・無効化…対抗出来るカードをどれだけ持っているかが直接勝敗に繋がっていた。
そんな世界に私達はやってきてブレイブデュエルは大きく変わるきっかけを作った。
ヴィヴィオは高位魔導師であれば誰もが出来る魔法の並列処理を応用して
『複数のスキルを同時に使う』『1度読み込んだスキルカードは後はその後何度でもすぐに使える』ことを見せたら次のバージョンアップで難易度が下がった。
逆に『同時に同じスキルカードを何度も使える』のを見せたら上限が設けられた。
そして私は練習している剣術をブレイブデュエルに取り込んだことで『現実の運動能力等をブレイブデュエルに取り入れられる』ということを実演して見せた。
こうしてきっかけを作った私達は前々回のグランプリで今まで1位と2位だったシュテルとフェイトに勝って決勝戦でそれらを全て使って戦った。その光景を見ていた全員が気づいたらしい。
『スキルカードはあくまでスキル、道具の1つで使う方法は無限にある』ということ。
それと一緒に来たなのはさんとフェイトがこっちのフェイトとシュテルを猛特訓した影響も起きている。
戦技教導隊のエースオブエースと呼ばれるなのはさんは勿論、フェイトも教えるのは上手。
そんな彼女達に特訓された2人は得た経験を基にチュートリアルとランクアップトレーニングとしてまとめ上げた。
ブレイブデュエルの初心者が楽しく遊べるようにスキルの使い方を練習するとそれぞれのランクとランクアップのカリキュラムを作った。
この辺の話を聞いた時私とヴィヴィオは魔導師ランク試験を思い出していた。
そんなことがあって以降のブレイブデュエルの広がりは凄かったらしい。
今まで様子見をしていた子達や既に遊んでいたプレイヤーから口づてに広がって、提携店が更に増えたことで参加プレイヤー数が10倍に膨れ上がったそうだ。
結果今までなかったランクを作りランクアップシステムと初心者用にチュートリアルが必要になった。
そして再び行われたグランプリは凄く盛り上がってシュテルとフェイトは激戦を制して再びチャンピオンと2位に返り咲いた。
その時私達はなのはさんの故郷、管理外世界の海鳴市に行って更に違う異世界で事件に巻き込まれていたからグランプリどころじゃなかったのだけれど…
もしかするとフェイトとなのはさんは近い将来こうなるのを予想していたのかも…。
そんな事を考えていると列はどんどん進んでいって
「は~い、じゃあ次は…アリシア、いらっしゃい」
「こんにちは、アミタさん。また遊びに来ちゃいました」
列整理をしていたのはアミティエから声をかけられた。
「大歓迎です。今日は1人ですか?」
「ヴィヴィオも一緒です。ユーリとアインスさんと一緒にプロトタイプの所に行ってます。」
「でしたら今夜はお話を聞けますね。ではあっちのカプセルに入ってください。熱いバトルを期待しています。」
「は~い、フェイトとの連勝記録を伸ばしてきます♪」
そう言って指示されたカプセルへと入った。
「バトルIDは…っと」
フェイトから言われたナンバーを入れると、対戦プレイヤーとして彼女の名前が表示された。既に入っているらしい。
「バルディッシュ、フェイトを思いっきり驚かせちゃおう。ブレイブデュエル スタンバイ、カードドライブ リライズアーップ!!」
こうして私は異世界から更に仮想空間の中へと飛んだ。
「フェイト、来たよ」
「うん、待ってた。」
岩場ステージの中でフェイトは立っていた。
「そのジャケットって…」
彼女のアバタージャケットを見て驚く。この前まで私と同じだったのに変わっていた。
テスト中のジャケットとして私も着たことがあるし、先日巻き込まれた違う異世界での事件、そこのフェイトが纏っていたジャケットにそっくり…。
ヴィヴィオが前に言ってた…世界はどこか繋がってるって。こうやって目の前にすると何となく判る気がする。
「うん、少し前から使ってるんだ。アリシアも使う?」
「ううん、私はこれでいい」
フェイトのジャケットは私のより高速移動を更に特化させている、あのジャケットの前バージョンは特化する代わりに持てるスキルが1つ減ってしまう代償を持っていた。それを強化したジャケットだろうか?
「みんなを待たせちゃうし、始めようか。」
「そうだね。連勝記録を1つ加えなくちゃね♪」
「……いくよ」
ニヤリと笑って言うと、少し怒ったのか真剣な眼差しに変わった。私もサイズフォームのバルディッシュを構えて…動いた。
~コメント~
新年度に変わりました。(更新が出来ず本当にすみません)
世間が自粛や色々息苦しい状態になっていますが、そういう時だからこそ
当サイトの様なSSサイトが時間と心の余裕の欠片になれば幸いです。
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