第06話「心の理由」

「ん~っ! 気持ちいいね~♪」

 晴れ渡った青空と海から来る潮風を感じながらヴィヴィオは伸びをした。
 こっちに来てから今日で5日。まだ戻る方法のきっかけすら掴めない。心の焦りが出ていたのかアリシアが「遊びに行こう」と誘ってくれてはやても

「今日はゆっくりしてたらいいよ。天気もいいし海でも行ってきたら?」

 と本の整理途中に半ば無理矢理追い出されてしまった。
 臨海公園…時空転移を使って色んな世界、時間のここには来ていたけれどこんなにゆっくりと見て回った事は無かった。

(こんなに素敵な場所だったんだ…)
「誘ってくれてありがと♪」

 小さな発見が嬉しくて誘ってくれたアリシアに礼を言う。
 そんな私を見て彼女はニコッと笑い

「うん、やっと戻った♪」
「戻った?」
「ヴィヴィオ、こっちに来てからずっと戻る方法探してたでしょ。私まで連れてきて責任感じてるんじゃないかって思ってた。」

 ズキンと胸が痛む。彼女が言った通り私は1日でも早く元の世界に戻ろうと方法を探していた。

「……」
「やっぱりね。気にしなくていいのに…」
「でもね、あっちのヴィヴィオに会いに行くって出てきちゃってるからママ達もプレシアさんもここに居るの知らないんだよ。あっちの私やアインハルトさん達も待ってる。だから…」
「前にヴィヴィオ言ったよね。『世界は必然で出来てる』って」

 頷く。時空転移魔法を初めて使ってジュエルシード事件を体験した後で無限書庫で時間に関する本をユーノと一緒に調べた時に見つけた1冊の本に書かれていた言葉だ。

『世界は必然が折り混ざって成り立っている。いかに偶然と思われようと何か理由があるからそこにある。』

 偶然だと思ってもそれは必然。
 だから時空転移を使っても時の流れに身を任せるんじゃなくて、自分の考えで自分の意志で動かなくちゃいけない。それが未来の必然になるのだから…

「私達がここに来たのも『必然』な訳でしょ。だったらここでしか出来ない事をするのも必然じゃない?」

 アリシアの言うことも判る。でも逆に言えば私が本の整理をしながら知識を深めるのも必然かも知れないのだ。

「う~ん…そうだ! ヴィヴィオ私の宝物見せてあげる。」

そう言ってポシェットからパスケースを出してその中から1つの封筒を取り出しその中にあった紙片を見せる。

「…思いつめずに気楽にね? A.T?」

その1文しか書かれていないメモ。これが宝物? A.Tは名前のイニシャルみたいだけれど誰だかわからない。首をかしげる。

「あっちの…砕け得ぬ闇事件だったかな、ヴィヴィオがユーリと最後に戦ったじゃない。その時もう1人のヴィヴィオが助けにきてくれたでしょ。実は…あの時一緒に私も来てたみたいなんだ。」
「!?」
「ママが怪我してチェントが熱出して寝込んでて看病に必死で部屋散らかったままだったから帰る前に掃除しようと思って行ったら全部片付いててこのメモが置いてあったの。」
「ヴィヴィオと一緒にアリシアも…」
「あっちのヴィヴィオは私達より大人になってたからきっと私ももう少し大人になってるだろうし、それに時空転移を使って来てたから私達よりもっと色んな事を知ってるんじゃないかって思うんだ。そんなアリシアから私へのアドバイスだから…その言葉を信じてみようって思ってるの。色んな世界を知れば知るほど考える事も多くなるけど…もっと気楽にいこうって」

 そう言えば…砕け得ぬ闇事件の後からアリシアの様子が少し変わった気がする。 
 これまでは私と一緒に居ることが多くて何かを考えて動いている気がしていたけれど、もっと自然体になっていたような…

「だから…楽しもうよ。この世界を」

 でも変わらないものもある。それは

「うん♪」

 私の親友だということ。

「じゃあT&Hへ行こう♪」

 手を繋ぎ私達は歩き始めた。



「気分転換になればいいんやけどな~」

 八神堂でヴィヴィオが分けた本を出しながら呟くはやてにリインフォースが声をかけた

「主、気分転換ですか?」
「ん? ああ、そうや。ヴィヴィオちゃん家に来てからずっと何や思い詰めていた感じしてたからな。本の整理も何かを調べてるみたいやったし…」
「そう言えば…そうですね。彼女に初めて会った時、突然泣かれて何かしたかと焦りましたが・・・その辺りも理由でしょうか?」
「流石にアレはビックリやったね~」

 思い出して苦笑する。
 ヴィヴィオを自宅に連れ帰った時、先に帰っていたリインフォースを見た途端凍った様に立ち止まり、そのまま周りの目もはばからず大泣きした。
 はやてやヴィータは勿論のことリインフォースも訳が判らず彼女が落ち着くのを待つしかなく、ただオロオロするだけだった。
 暫くして落ち着いたのは良いけれど、リインフォースを見ると悲しそうな顔をする。
 つい先日なのはの家に電話をしてアリシアに話を聞こうとしたけれど彼女も言葉を濁しつつ

「本当は凄く明るい子なんです。落ち着くまでしたいようにさせてもらえませんか」

と逆に頼まれてしまった。
 ヴィータにヴィヴィオをブレイブデュエルに誘ってくれるように頼んだけれど、肝心の魔法が殆ど使えないのでは魅力も半減だし、今日もはやてが頼んでアリシアに来て貰って外に連れ出す迄倉庫の中で1人本の仕分けを続けていた。
 こんな生活を続けていたらいくら読書好きでも体を壊してしまう。

「せめてヴィヴィオがみんなとブレイブデュエルで遊んでくれたらな~・・・」

 結局元はそこに戻ってしまう。
ハァ~とはやてがため息をついた時。

「こんにちは、注文していた本届きました?」
「いらっしゃい~、あっ!待ってました!!」
「はい?」

 金色の長いウェーブのかかった髪を揺らし少女は首を傾げるのだった。



「やった! レアカード♪」
「あっ、私も・・・ってこれ・・・私?」

 T&Hでカードローダを引いたヴィヴィオとアリシアは互いにカードを見せ合った。
 アリシアのはアリシアのスキルカード、ヴィヴィオが引いたカードにはヴィヴィオが描かれている。でも・・・

「これ・・・クリスじゃない?」
「本当だ・・・」

 Stヒルデ学院の制服を着たヴィヴィオとクリス。ここに描かれているのはヴィヴィオには違いないけれど異世界のヴィヴィオ。
 やっぱりどこかで繋がっている?
 何か引っかかりを覚えるヴィヴィオだった。

「留守を預かって貰ってありがとうございました。」

 ヴィヴィオ達がT&Hに来ていた頃、リンディとプレシアはフェイトとアリシアと共にある場所に来ていた。

「いえいえ、私達こそ本当に何もできなくて・・・」
「そんな、これだけブレイブデュエルが盛り上がっているのは皆さんが頑張ってくれているおかげです。」
「それよりも、みんな帰って来たって事はアレが完成したんでしょ♪」

 アリシアが身を乗り出して訪ねる。

「はい、もう凄い完成度ですよ。初心者用のソロバージョンからエース5人のチーム戦用まで沢山あります。最強レベルは私達でも10回に1回勝てるかどうかってくらい凄いですよ。」
「・・・それは・・・凄いね」

 フェイトは驚きながらも目は輝いている。

「お披露目はどうしようかしら?」
「そうですね。テストプレイヤーの私達が参加しちゃうとズルしてるみたいに思われちゃいそうですし、チェックもしたいですから・・・T&Hと八神堂のショッププレイヤー混合チームでなんてどうでしょう?」
「うん。それいいね。じゃあT&Hから私となのはと八神堂からヴィータと・・・あと2人」 
「私は解説だし・・・あっ♪、じゃあいい人知ってる! いきなり登場したらみんなビックリするよ♪ サプライズゲストみたいな感じでどうかな」
「サプライズですか?」

 アリシアの言葉に彼女は首を傾げる。
 でも他の3人は誰のことか気づいたみたいで

「いいわね♪」
「そうね♪」

 当の本人達が居ない間にこうして準備は進められていた。


~コメント~
 もしヴィヴィオがなのはイノセントの世界にやってきたら。
 今話はイノセントのお話より今までのASシリーズが背景になっている話です。
 ちなみに「世界は必然が~云々」は第1作「AnotherStory(ジュエルシード事件編)」以降毎シリーズの話のどこかに入れているフレーズでアリシアが話したのは「AgainStory2(闇の欠片事件編)第13話「生まれる縁」」からの引用で、アリシアの宝物ししているメモは「AffectStory~刻の移り人番外編」で別世界のアリシアが書いたメモだったりします。

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