第05話 「おいでませ、八神堂」

「八神堂にいらっしゃ~い♪」
(は…はやてさん…)

 ヴィータと一緒にやってきたのは八神堂と看板が掲げられた古書店だった。
 ヴィヴィオ達が居る元世界とは全然違う世界と思っていたけれど、読書好きのはやてが古書店に居るのはどこか繋がっている気もする。
でも…

「大学卒業して社会人1年生!? ここ…はやてさんのお店!?」

 アリシアと2人目を丸くして驚く。
 私達の知る彼女だったら「どうや、凄いやろ♪」と胸を張って言いそうだけれど、目の前の彼女は驚いている様子にアハハと苦笑していた。
 その後も地下にT&Hより大きなブレイブデュエルの施設があったり、そこには観戦者かプレイヤーと思われる人がいっぱい居たりとヴィヴィオとアリシアは何度も驚かされた。

「じゃあメンテナンス終わったら調整もまとめてヴィータ頼むな。」
「うん♪」
「ヴィヴィオちゃんとなのはちゃん、フェイトちゃんと…アリシアちゃんも一緒に頼むな」
「え…でも、順番…」

 シミュレーターで遊ぼうと列が既に出来ている。それを無視して入るのはと躊躇う

「安全に遊んで貰う為に私達がテストプレイするんだ。10分くらいしかないからあんまり時間も無いんだけどね。」

スタスタとフェイトがシミュレータに入っていく。

「そう言う訳やからさっさと入って♪」
「う、うん」

 はやてに背を押されてシミュレータに入り

「ブレイブデュエル、スタンバイ」

 ゲームの世界に飛び込んだ。



「白のセイクリッド、私以外で初めて見た。」

 なのはがまじまじとジャケットを見つめる。

「でも…ヴィヴィオちゃんの方が動きやすそうだね。」
「白のセイクリッド…本当にそっくり…」

 なのはのジャケットを見て思わず呟く。
 どこか繋がっている世界…ゲームの中で彼女が纏っているジャケットは記録映像で作られたなのは用のバリアジャケットにあまりにも似すぎていた。

(本当に…別世界なんだよね?)

一方で

「フェイト、時間も無いから手合わせお願いね」
「でも、まだ慣れてないよね。」
「遊んで覚えてこそのゲームじゃない。話してるだけじゃテストになんないでしょ♪」
「う、うん。わかった」

 そう言うと2人は距離を取って、ほぼ同時に動いた。

「私達もしよっか」
「おい、そこの白いの。お前の相手は私だ、鉄槌の騎士の力見せてやる。」

 そう言ってヴィータが一気に距離を詰めてきた。



10分後…管制室でヴィヴィオは項垂れていた。

「まるっきり初心者じゃんか…期待して損した。」
「…ごめん」

 ヴィータと2戦したけれどいずれも3分と持たず負けてしまった。 しかもヴィヴィオの攻撃はヴィータには直撃どころかかすりもしていない。

「まぁ2回目やったら仕方ないって。テストありがとな」

 はやてからカップを受け取る。

「あ~私も勝てない~っ!」

 近くでアリシアは悔しがっている。

「でも2回目であれだけ動ければ十分だよ。ね、フェイト」
「うん、油断したら負けてたよ。」

 フェイトの言うとおりアリシアはフェイトと良い勝負をしていた。彼女が本気じゃなかったかも知れないけれど、見ていてドキドキする戦闘だった。

「それに…アリシアの動きってなのはみたいに綺麗だった」
「私みたい?」

 アリシアsとフェイトの会話になのはが入ってくる。

「うん、この前見せてくれたスプーンのアレに何だか似ていたんだ」

 スプーンのと言われて何の話か判らなかったけれど、フェイトが真似をして気づく。

「なのは…お家に道場あって剣の練習してたりする? お父さんとかお兄さん、お姉さんが」
「ふえっ! どうして知ってるの?」
「ふーん、こっちじゃなのはも練習してるんだ。ね? 今日からなのはの家にお邪魔していいかな? 代わりにお店も手伝うよ♪ このままじゃ泊まる所もないしね」
「え? お店も知ってるの?」

 驚くなのは

「ん? 泊まる所って…ヴィヴィオちゃんご近所さんとちゃうん?」
「あ…」

 言葉尻を掴まれてジト目で睨むと張本人は手を合わせ謝っている。

「えっと…海鳴市には旅行で来たの。そこでアリシアにそっくりな子が居るって聞いて…」
「うん、そうそう。それでフェイトに会いに来たんだ♪」
「そうなん?」

 私とアリシアの顔をジッと見つめるはやて。

「まぁいいわ。じゃあヴィヴィオちゃんはうちの家でな♪ ヴィヴィオちゃんのジャケット初めて見るし、スキルカードが使えんのも気になるから夜にでも一緒に調べよ。グランツ博士に連絡つけばいいんやけど…」

 グランツ…何処かで聞いた名前だけど思い出せない。でも…思い出すより前に元の世界にどうやって戻ればいいのか、笑って話しているアリシアを見つめながらヴィヴィオは考えていた。



それから…
 夜遅く、八神家のはやての部屋で机に向かうヴィヴィオの姿があった。

 こっちに来てから4日、私ははやてさんの家でアリシアはなのはの家でお世話になっています。
 何処か少し違うけれど、はやてもみんなも優しくて…リインフォースさんも居たりちょっと複雑です。
 ノートを1冊貰って日記を書き始めていた。
 書くことは沢山あった。まず八神堂の家族にシグナムやシャマル、ザフィーラが居る事はヴィータと会った時から居るとは思っていた。でもまさかリインフォースまで居て一緒に暮らしているとは思っておらず、初めて会った時に泣いてしまい彼女達を困らせてしまった。
 それからブレイブデュエルの事を教えて貰いながら八神堂の手伝いを始めた。
 最初に見せて貰ったのはお店の倉庫に大量に積まれた古書の山。
 何でも数ヶ月前に古書の在庫が少なくなって買い取りをしたのだけれど、ある人達が大量に買い付けて来てくれたそうだ。それ以来少しずつ整理と修理をしながら店に出しているのだけれど余りにも多すぎて整理が出来ていないらしい。
 ヴィヴィオは何だかんだと言っても無限書庫の司書である。魔法が使えなくても整理するコツは知っている。
 判らない事が多いこの世界を知る為にも整理を買って出て時間を見つけては本の山に向かっていた。本の虫とまでは行かないけれどヴィヴィオも読書好きなのだ。
 ブレイブデュエルについてはテストプレイで何度か試しているけれど、インパクトキヤノンしか使えないし、最初に聞こえたRHdの声も聞こえない。ジャケットについても白のセイクリッドタイプだろうと言うこと迄は判ったけれど、他色で同じジャケットを見たことがなく、そもそもパーソナルカード以外のキャラクターカードでレアタイプは初めてらしい。
 
 
 一方その間のアリシアはというと

「喫茶翠屋へようこそ~♪」

 なのは達が学校に行っている間は翠屋の手伝いをしていた。表を出歩いてフェイトに間違われ補導されてしまうと彼女に迷惑がかかる事もあるし、翠屋でのお手伝いは何度かしている。
 そしてなのは達が帰ってくるとT&Hに一緒に行ってデッキの組み方を教えて貰い、家でなのは達と夕食を食べた後は士郎や恭也、美由希、なのは達の練習に参加していた。
 ハードな練習らしいけれど、それなりに楽しんでいるみたいで楽しそうに話すなのはとアリシアを見てヴィヴィオも少しだけ気が楽になった。

「それにしてもスキルカードが1つしか使えへんのは変やね。なのはちゃんのディバインシューターも使えへんし、そもそもインビジブルモード解除しても反応もないし。防御が堅くて豪火力なセイクリッドタイプやのに…」
「そうですね。セイクリッドを改造した影響でしょうか?」

 閉店した後の八神堂でヴィヴィオはリインフォースとはやてに見て貰っていた。
3人で首を捻る。今日のローダでレアカードであるなのはのディバインシューターを貰ったから早速使おうとしてみたけれど発動する気配はなかった。

「まぁ、ブレイブデュエルはバトル以外にも競争したりスポーツっぽいゲームしたりもするから先ずはそっちで遊んでて。」
「うん…」

 魔法を使うきっかけを見つけたと思ったのにどうして使えないのだろう?
ヴィヴィオはえも言われぬ不安を抱いていた。

~コメント~
 ヴィヴィオ達がもしなのはイノセントの世界にやってきたら?
遂に登場、八神堂です。

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