第02話「強襲!ベルカの少女騎士!」

「挑戦者、フェイトだったら大ラッキー、他の知ってる人だったらラッキーってとこかなっ♪」

 アリシアが上空に見えるウィンドウ目がけて突き進む。
 設定ボタンに『挑戦者求む』の項目があったからそれをチェックしておいた。
 魔法の無い世界でどうしてゲームの中で魔法が使えるのかは判らないけれど、デバイスホルダーに刻まれたミッドチルダ式のプログラム起動用魔方陣は何かに関係している。
 フェイトと間違われ、彼女がロケテストをプレイしているのであれば彼女の友人、なのは達も同じ様にこのゲームで遊んでいる。
 だったらただむやみに動くのではなく、彼女達の誰かが気づく様に網を仕掛ける。
 ゲームにしてはやけにリアルで驚いた。でもその分体が思い通り動く。この中なら誰が来ても善戦出来る…筈。
 アリシアは数手先を見越して動いていた。
 そしてまっ先にその網に掛かって上空から現れたのは

「腕に覚えありって…お前かフェイト・テスタロッサっ!」
「ヴィータさん…ラッキーだね♪」

 騎士甲冑を纏ったヴィータの姿だった。

「ヴィータさん。」
「この前の雪辱戦だっ、行くぞーっ!!」

 どうもフェイトと彼女の間で何かがあったらしいが、当のアリシアはそんなの知らない。
でも話した所で納得して貰えるとも思えず…

「バルディッシュっ!」

 相棒に声をかけ迎撃態勢をとった。



「え? アリシア? ヴィータさん?」

 アリシアの後を追いかけてきたヴィヴィオが見た物はヴィータとアリシアの戦闘だった。
 2つの光が凄い速度で飛び交いぶつかっている。

「ど、どうしよう…じゃない、止めなきゃ!」

 急いで2人の描く軌跡を追いかけた。
一方その頃

「こんにちは~」

 ミッドチルダの北部にある聖王自治領。その中央、聖王教会から少し離れた所にある建物にフェイトはやってきていた。ここはフェイトの実母、プレシア・テスタロッサが預かる研究施設がある。
 彼女がここにやってきたのはある理由があるからだった。
 慣れた手つきでロックを開け中に入ってみると少し離れた所から声が聞こえた。

「やっぱり…思った通りだった。」

 苦笑しながらその声のする方へ向かうと、声がやがて泣き声だと判って誰の声か聞き分けられるようになった。目の前の部屋から聞こえている。

「こんにちは、チンク」
「ああ、フェイトか。丁度良かった助けてくれ。」

 半ば悲鳴に近い声で助けを求めて来たのはチンク、そして

「わぁぁああああん!!!」

 さっきから聞こえていた声の主、チェントがそこにいた。

「アリシアが旅行に行ってプレシアも会議で教会本部へ行っているのだ。さっきまで寝ていたのだが起きたらプレシアも居なくなって1人になったと思ったようなんだが…」
「いくら私が話して聞かせても駄目なんだ。」

 プレシアとアリシアが居ない事を説明されても初等科にも入れない子に理解出来る訳がない。
ギンガやチンクも妹は沢山居てもその辺りの経験はないのだろう…

「うん、だから来たんだ。昨日母さんから頼まれた。」

 そう言うとフェイトは座って彼女の前で

「チェントは新しいお友達出来たんだよね。ずっと泣いていたらお友達にきらいって言われちゃうよ」
「泣かないで待っていたらママもアリシアも偉い偉いって褒めてくれるよ。」

 そう言うと泣くのを止めぐずるがそれも止み

「…うん」

泣き止んだ。

「あれ程話しても駄目だったのに…」

と感嘆するチンクに微笑んで答えながらチェントを抱き上げ

「いいこだ、今日はフェイトお姉ちゃんが一緒にいるよ。」
「…うん…」

 ヒシっと抱きついた彼女を見て保護したばかりのヴィヴィオを思い出す。

(あの時のヴィヴィオも…いまどうしてるかな)



「ちょっとマズイっ?」

 ヴィータとの攻防が防戦一方になってきているのをアリシアは感じていた。
 元より初めて遊ぶゲームだから経験者の方が強いのは判っていたけれど、まさかデバイスの切り替えが出来ないとは…
 ブレイズフォームであれば防げる攻撃もバルディッシュが通常モード、アックス状態では使いづらい。加えて攻撃を受けたり魔法を使うとどんどん力が抜けていく感じがする。

「これで終わりだ。ラケーテン…」
(ラケーテンハンマーっ!?)

 勝負には勝っても負けてもいいけれど、彼女から話を聞き出さなければならない。
 負けて力が抜けた状態になっている間に帰られたら意味がない。
 そこへ

「ヴィータさん待って!!」

 ヴィヴィオが飛び込んできた。

「ヴィヴィオっ!?」



「ヴィヴィオ!?」
「ごめん…まだ上手く飛べなくて…」

 ギリギリ間に合った。アリシアに謝りヴィータの方を向く。勝利目前で止められたからか、バトルに水を差されたからかヴィヴィオをギロリと睨む。 

「何だお前…何で私を知ってんだ?」
「ヴィータさん、ちょっとだけでいいから話聞いて貰えないかなって…」
「バカかお前は。どこの世界にバトルゲームでお話する奴がいるんだっ! っていってもショッププレイヤーだからな…私に勝てたら話を聞いてやる。」

 グラーフ・アイゼンを向けて言い放ち迫る。

「私達もいくよRHdっ…あっ!」

 言ってから思い出した。そう、私はまだバリアジャケットすら纏えていない。
 魔法も使えないから聖王の鎧も生まれない。
 もう直前にヴィータが迫っている。アリシアですら負けかけたのに今のままなら1撃で落とされる。
 その時

「そこの女の子これ使って!」

 声と共に手の平の中に1枚のカードが現れる。

「ストライカーチェンジして、ホルダーに2枚通してリライズアップ!」
「う、うんっ!」」

 言われるままに持っていたカードをホルダーに通し、更に受け取ったカードを通す。
 その瞬間

【Master Call me . Call Card fusion Striker change DriveReady Rerise UP】

 その声は聞き間違えようがない。こっちに来て聞きたかった声

「うん。RHd…行くよっ! カードフュージョン、ストライカーチェンジ、ドライブレディ…」
「リライズアーップ!!」
【StandByReady】

 馴染む様に体をジャケットが包んでいく。その感触を待っていた。

【Call skill ImpactCannon】
「白のセイクリッドタイプっ!? こいつもかっ!!」

驚くヴィータに手のひらをかざす

「いっけぇぇえっ! インパクトキャノンファイアァァァアアッ!!」
「…んのやろーっ!!」

 インパクトキャノンの直撃を受けたにも関わらず、ヴィータは突っ込んできた。

(ベルカの騎士の…特性は近接攻撃。叩き切って進むのみだったよね)

 ヴィータのデバイスの挙動を視野に入れながらぶつかる。近接戦はこっちも十八番だ。
 まさか真っ向からぶつかって来られるとは思っていなかったのかヴィータは一瞬怯む。
 その瞬間を狙って黒い影が彼女の後ろに回り込む。ヴィヴィオにはそれが誰か判っていた。

「まだ対戦する?」

 ヴィータの首先に鎌状にした切っ先を向けるアリシア。

「…わ、わぁーったよ。負けだ負け!」

 手を上げて降参の意志をしめした。

「フェイト、全国2位が2人がかりでなんて卑怯だぞ!!」

 バトルが終わった後、デバイスをしまったヴィータがアリシアに詰め寄る。

「私フェイトじゃないよ。アリシアって名前見えるよね。ヴィータ…ちゃんでいいかな」
「アリシアって…それお前の姉ちゃんだろうが、ふざけんなっ!」

 顔を真っ赤にしてヴィータが怒っていると

「ごめんね、何かの手違いでカードがこっちに来ちゃったんだ…え?」

 そう言って現れたのは金髪のツインテールと漆黒のマントを羽織った

「フェイトっ!?」
「「フェイト♪」」

 フェイトだった。ちなみに最初に驚いたのはヴィータだったりする。

「え…私…じゃないよね? 名前…アリシア? お姉ちゃん?」

 呆然とするフェイトとフェイトとアリシアを見比べるヴィータ、そしてその様子を微妙な笑みを浮かべ見守るアリシア。 

「ね♪ 彼女はフェイトじゃないよ。私が保証する。ねぇフェイトちゃん、私達フェイトちゃんを探してたんだ。会いたいんだけど何処に行ったらいいかな?」
「え…うん、あの…ゲームの後でT&Hってお店の場所を聞いたら教えてくれる…」
「ありがと。アリシア行こう。じゃあ後でね。ヴィータちゃんもありがとう。また遊ぼうね。」

 そう言ってゲームをログアウトした。



「…お前…フェイトだよな?…」
「…うん…」
「あっちも…フェイトだったよな?」
「…うん…多分…」

 残された2人は消えた2人が居た場所を暫く呆然と眺めていたのだった。


~コメント~
なのはInnocentの世界に行ってしまったヴィヴィオ達。
ちょっと違う世界で再会するフェイトとヴィータ。どんな風に進んでいくのか書きながらワクワクしています。

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