第23話「惑星エルトリア」
- リリカルなのは AffectStory2 ~刻の護り人~ > 第4章 事件の過去と未来
- by ima
- 2019.07.13 Saturday 11:02
「じゃあ再生するよ」
レヴィによって修復されたデータが大型モニタに映される。
レヴィがそう言って夜天の書から復元した映像データを再生しはじめた。側に2つのウィンドウが浮かんでいて本局の捜査本部と本局の何処かの部屋に集まったのかなのはとフェイト、アミタ、キリエが映っている。
『資源の枯渇と土壌の砂漠化、命の暮らす星としてはもう死にかけている惑星、それが私達の故郷エルトリア』
それはかつてエルトリアにあった惑星再生委員会の記録。
荒廃が進むエルトリアから離れ宇宙に逃げる人が居る中で惑星再生委員会はエルトリアの緑を蘇らせる為に日々研究を続けていた。その支援用ユニットとして作られたのが惑星再生用のテラフォーミングユニット『イリス』だった。
レヴィによって修復されたデータが大型モニタに映される。
レヴィがそう言って夜天の書から復元した映像データを再生しはじめた。側に2つのウィンドウが浮かんでいて本局の捜査本部と本局の何処かの部屋に集まったのかなのはとフェイト、アミタ、キリエが映っている。
『資源の枯渇と土壌の砂漠化、命の暮らす星としてはもう死にかけている惑星、それが私達の故郷エルトリア』
それはかつてエルトリアにあった惑星再生委員会の記録。
荒廃が進むエルトリアから離れ宇宙に逃げる人が居る中で惑星再生委員会はエルトリアの緑を蘇らせる為に日々研究を続けていた。その支援用ユニットとして作られたのが惑星再生用のテラフォーミングユニット『イリス』だった。
彼女や委員会のメンバーによって日々研究・調査が行われていく。その中で彼女がある日遺跡の奥でユーリと出逢う。
(ユーリ…)
結晶や魔導書の中ではなく彼女は実体となって眠っていて5枚のシールドによって守られていた。イリスによって目覚めたユーリはそのまま彼女と一緒に惑星再生委員会へと向かう。
『ユーリ、ちょっといいかい? その魔導書というのは何が出来るのかな?』
ユーリへのヒアリングの途中で惑星再生委員会の所長が聞く。
『主が使えば色んなことが出来ます。出来ないのは失われた命を取り戻すことと時間に干渉すること…それ以外なら大抵のことは…』
(夜天の書…そんなに凄いんだ…)
ユーリの言葉に改めて夜天の書の凄さを知る。
その後もユーリとイリスの会話は続く。
『ユーリ、君自身もその本の力を扱えるのかな?』
『ほんの少しでしたら…あとは私自身も魔法をそれなりに…』
彼女と話す中でイリスや戦っていた機械が使っていた術式がフォーミュラーと呼ばれるシステムというのがわかった。
エルトリアには魔法が存在せす、ユーリの使った力にイリスやチームメンバー達は驚く。その映像にヴィヴィオも驚かされていた。
映像の中でユーリが使ったのは草木を一気に成長させる生命操作系の魔法を使ったからだ。
(ユーリの魔力吸収は生命操作系だったんだ…)
無限書庫で読んだ事がある。
魔力や体力ではなく生命力を直接操作できる魔法体系があったこと。四肢が無くなっても元に戻したり、逆にどれだけ屈強な兵士でも命を全て奪い取れる魔法体系…。
本当に命が失われない限りユーリがいれば蘇れるということ…。
聖王の鎧は魔力や物理の攻撃に対しては絶対的な力がある。でも生命操作系となると…
戦っている時にユーリが本気を出していたらと思うと背筋が凍った。
私がそんなことを考えている間にも映像は進む。
ユーリの魔法を元に惑星再生委員会は新たな可能性を目指していく。色々問題はあってもみんながエルトリアの復興に向けて協力しているのがわかる希望に満ちた映像。しかしその途中で止まってしまった。
「あれぇ…?」
「止まっちゃいましたね。」
「…なんか色々びっくりやね…」
「うん…」
はやての言葉に頷く。
ヴィヴィオ自身夜天の書、闇の書とは色々関わっている。だからはやてより前の闇の書の主のイメージがページを集めて暴走して転移を繰り返すことを続けてきたと思っていた。でもユーリが夜天の書と共に旅をして新たな主に使い方を教えていたのなら暴走させる人ばかりじゃなかったかも知れない。
(紫天の書やエグザミアは出てこなかった…ここが私の転移で生まれた世界じゃなくてもっと昔から分かれた世界なのかな?)
今までの世界とは全く違う感じがする。もっと昔…オリヴィエが転移して生まれた世界なのだろうか?
「ヴィヴィオ、大丈夫?」
アリシアに声をかけられて我に返る。
「う、うん。夜天の書とユーリが違い過ぎててびっくりしただけ。」
「…そうならいいけど…」
とりあえずは納得したのかそう言うとアリシアは再び前を向いた。
「データが壊れちゃってるみたい。再生出来るところまで飛ばすよ」
レヴィがそう言うと再びモニタに視線を移した。
再生された映像は…さっきまでと全く違った光景だった。
チームメンバーは何者かに銃撃されて倒れ、部屋には血が飛び散っている。イリスも多くの棘に串刺しになり、服や頬に血が飛び散ったユーリがその前で立ち尽くしていた。
そこで映像は終わった。
惑星再生委員会、イリスとユーリの間に何か起きたらしい。
「アミタさん、惑星再生委員会というのは?」
はやてがアミタに聞くとモニタ向こうに映るアミタが端末を取り出して操作するとウィンドウの映像が変わった。
『40年ほど前ですが、確かに存在していました。私の祖父母もそこに所属していたと…事故が起きて職員や関係者のほぼ全員が死亡してエルトリアを救おうとする人は居なくなりました。』
『当時はまだ子供だった私達の両親を除いて…』
映される廃墟の映像、紙片の映像に似た場所が映っていたからその後の光景だろうか…
「これは仮説というか想像なんだけど」
「この場面の後にユーリちゃんはもう動けなくなって、夜天の書の中のアインスの意識もなくて…仕方なくユーリちゃんは夜天の書に自分自身を蒐集させたとしたら…」
「ユーリちゃんは夜天の書の中で眠る。主と会えなかった夜天の書もそのままエルトリアを後にして…」
「何人かの主を経て、私の所に来た…」
「だからアインスはユーリがどうなったか知らなかった。」
「でも、でしたらユーリはどうしてあんな場所に?」
「水族館の宝石の中だっけ?」
「闇の書の闇を切り離した時、ユーリちゃんも一緒に切り離されたんじゃないかしら?そして海の底であの結晶になって眠っていた。」
「それがオールストン・シーの開発によって発見されて…水族館に設置された。」
シャマルの想像をはやてとヴィータ、リインが補強する。
「イリスはそれを追いかけて色んな異世界から元のユーリがいる世界を見つけようとした。イリスの目的はユーリ…彼女への復讐。でも前に戦った時は負けちゃったから補強もしなくちゃいけない。見つけて戦わせる仲間が必要だった。」
「それが鍵…シュテルとレヴィとディアーチェ…、本当に私達は関係ない世界に関わっちゃったんだ…」
続けて言ったアリシアに私も続けて言う。でもそこで新たな疑問が浮かぶ
「でも…ユーリの転移は私達にも関係ないのかな?」
闇の書事件で闇の書の闇が切り離されたの元の時間軸でも起きていた。偶然起きたのがここだったのか? その答えは私自身が持っていた。
「あっ!」
「何か思い出した?
横に居たアリシアが聞いてくる。私はアリシアの耳元にいって小声で言う。
「私達…あっちの私の時間でユーリが切り離されてきていてもママ達が壊しちゃってる。トリプルブレイカーで…」
「はあっ!?」
アリシアが驚く声をあげたらみんなの視線が集まる。笑みを浮かべ手を振って誤魔化す。
1年半程前、ザフィーラが居なくなった過去を変える為に私は闇の書事件時に飛んだ。
闇の書の残滓からみんなを守る為…、一緒に行ったなのはとフェイト、はやてはアースラのアルカンシェルを受けた後に落ちてきた闇の書の残滓に対しトリプルブレイカーを放ち消滅させていた。
あれが残滓ではなく切り離されたユーリだったとしたら…後の状況を踏まえても間違い無く消えてしまっている。
「アリシア…どうしよう…」
「どうしようって言ったって過ぎたことだし、そもそもその残滓がユーリっていう証拠もないんだから間違って助けたら逆に復活しちゃうでしょ。」
「とりあえず、それは置いておいて先にこっちを考えよう。あのねさっき…」
そう言ってアリシアが話をしようとした時、アラート音と一緒にレティが映った。
『はやて、こちら捜査本部。対象イリスの拠点を発見したわ。今最寄りの武装局員が向かってる。全員出動準備を。』
隠れていた建物が別のウィンドウで映る。
ユーリがまだ動いていないなら空間転移で動いてイリスと話せるか?
「私が行って…」
腰を浮かせかけた瞬間、苦悶の声の後で武装局員からの通信が途絶えた。近くで煙が上がっている。戦闘が始まったのだ。
「イリスが…増えた?」
「結界から出ようとしている?」
複数のイリスが散り散りになって動き始める。
「父が言っていました。『委員会が手がけているテラフォーミングユニットは環境と状況に応じた自己増殖機能を持つ』と…、元々星を1つ、丸ごと改良するのが仕事です。資源の少ないエルトリアですらそれを可能にする能力があった。素材もエネルギーも大量にあるこの星なら…」
アミタの話を聞いてモニタを睨む。
「なんで…ここもなの?」
マリアージュ、ラプター…個々に意味を持たさずに生み出す技術。結局人の考えは何処に行っても変わらないのか?
イリスも全部壊すしか無いのか?
『分散した群体イリスを結界から出さない様に叩く。クロノ君、はやて、出撃して。なのはちゃんとフェイトちゃんも頼んだわ。』
「『『『了解』』』」
レティの出撃命令にはやては立ち上がってモニタに映ったなのはやフェイトと一緒に答えた。
(まだ魔力は全部戻ってないけど…、準備をすれば)
イリスの近くにはきっと操られたユーリが居る。
彼女を助ける為にはもう1度戦わなくちゃいけない。
ヴィヴィオも遅れて立ち上がり静かに頷いた。
「私も行ってくる。アリシアはここでバックアップお願い。」
はやて達とディアーチェ達3人に続いてヴィヴィオも部屋から出ようとしているとアリシアから呼び止められた。
「ちょっと待って」
「えっ?」
部屋を出て行こうとした足を止め、振り返ってアリシアの方を見る。
「ヴィヴィオちゃん、行かへんの?」
「後で追いかけるから先に行ってて」
出た所で顔を覗かせたはやてに言ってアリシアの所に行く。彼女はさっきまでレヴィが触っていた夜天の書の紙片に触れていた。
「何か気になるの?」
「うん…私、古代ベルカ語がそんなに読めないからわかんないんだけど…レヴィが復元してた時に気になるのを見つけちゃって…これって何かの通信魔法じゃない? エルトリアと繋げられたらって思って、ヴィヴィオなら読めるでしょ?」
ヴィヴィオは少し驚いてさっきまでシュテルが座っていた場所に座り、紙片を見る。確かに何かの通信術式だ。
「通信できるかはわかんないけどそうみたい。RHd」
デバイスを起動して紙片のプログラムを取り込む。
古代ベルカ文字で書かれたプログラムは対応する文献が無いと全てが読めない事が多い。
今、手持ちであるのは最近調べてRHdの中に残した幾つかのベルカ語で書かれた書物のコピーデータと悠久の書だけ…。
欠けている術式を悠久の書をベースに組み立てていく。
5分程でとりあえず動くだろうと思われる術式が出来上がった。
「これで動くかな…」
「ヴィヴィオちゃん、アリシアちゃん、どうしたの? もうみんな出るよ。」
エイミィが入ってきた。
「紙片に何かの通信プログラムが入っていて…全部は読めなかったけどこれで?」
初めて使う術式に少し緊張しながらも起動させるとベルカの魔方陣から1つのウィンドウが開いた。管理局の通信で使うものとレイアウトが違うのにヴィヴィオもアリシアも近くで見ていたエイミィも何が起きるかと覗き込む。
だが次の瞬間、映しだされた映像と声に3人は言葉も出ない程驚かされる。
『はい、テスタロッサ研究所です。………ヴィヴィオっ!? アリシアっ!?』
「えっ!?」
「うそっ!?」
そう、ウィンドウの向こうに映ったのは異世界…2ヶ月前に帰った大人アリシアだったのだ。
~コメント~
今話は色んな意味のターニングポイントです。
惑星エルトリア、ヴィヴィオが知っているのは異なる時間軸にある星でその様子はギアーズ姉妹のアミタとキリエからしか聞いてませんでした。
そんな彼女が初めて見たエルトリアと夜天の書とユーリの関係と自我のある者を大量生産出来るテラフォーミングユニットという存在。
そして…ユーリからの紙片と悠久の書によって奇跡が起こります。
今話中盤に出てきた闇の書の残滓についてはAgainStory第13話「未来への扉」での出来事になります。(まさか10年後にフラグが回収出来るとは思いもしませんでした)
(ユーリ…)
結晶や魔導書の中ではなく彼女は実体となって眠っていて5枚のシールドによって守られていた。イリスによって目覚めたユーリはそのまま彼女と一緒に惑星再生委員会へと向かう。
『ユーリ、ちょっといいかい? その魔導書というのは何が出来るのかな?』
ユーリへのヒアリングの途中で惑星再生委員会の所長が聞く。
『主が使えば色んなことが出来ます。出来ないのは失われた命を取り戻すことと時間に干渉すること…それ以外なら大抵のことは…』
(夜天の書…そんなに凄いんだ…)
ユーリの言葉に改めて夜天の書の凄さを知る。
その後もユーリとイリスの会話は続く。
『ユーリ、君自身もその本の力を扱えるのかな?』
『ほんの少しでしたら…あとは私自身も魔法をそれなりに…』
彼女と話す中でイリスや戦っていた機械が使っていた術式がフォーミュラーと呼ばれるシステムというのがわかった。
エルトリアには魔法が存在せす、ユーリの使った力にイリスやチームメンバー達は驚く。その映像にヴィヴィオも驚かされていた。
映像の中でユーリが使ったのは草木を一気に成長させる生命操作系の魔法を使ったからだ。
(ユーリの魔力吸収は生命操作系だったんだ…)
無限書庫で読んだ事がある。
魔力や体力ではなく生命力を直接操作できる魔法体系があったこと。四肢が無くなっても元に戻したり、逆にどれだけ屈強な兵士でも命を全て奪い取れる魔法体系…。
本当に命が失われない限りユーリがいれば蘇れるということ…。
聖王の鎧は魔力や物理の攻撃に対しては絶対的な力がある。でも生命操作系となると…
戦っている時にユーリが本気を出していたらと思うと背筋が凍った。
私がそんなことを考えている間にも映像は進む。
ユーリの魔法を元に惑星再生委員会は新たな可能性を目指していく。色々問題はあってもみんながエルトリアの復興に向けて協力しているのがわかる希望に満ちた映像。しかしその途中で止まってしまった。
「あれぇ…?」
「止まっちゃいましたね。」
「…なんか色々びっくりやね…」
「うん…」
はやての言葉に頷く。
ヴィヴィオ自身夜天の書、闇の書とは色々関わっている。だからはやてより前の闇の書の主のイメージがページを集めて暴走して転移を繰り返すことを続けてきたと思っていた。でもユーリが夜天の書と共に旅をして新たな主に使い方を教えていたのなら暴走させる人ばかりじゃなかったかも知れない。
(紫天の書やエグザミアは出てこなかった…ここが私の転移で生まれた世界じゃなくてもっと昔から分かれた世界なのかな?)
今までの世界とは全く違う感じがする。もっと昔…オリヴィエが転移して生まれた世界なのだろうか?
「ヴィヴィオ、大丈夫?」
アリシアに声をかけられて我に返る。
「う、うん。夜天の書とユーリが違い過ぎててびっくりしただけ。」
「…そうならいいけど…」
とりあえずは納得したのかそう言うとアリシアは再び前を向いた。
「データが壊れちゃってるみたい。再生出来るところまで飛ばすよ」
レヴィがそう言うと再びモニタに視線を移した。
再生された映像は…さっきまでと全く違った光景だった。
チームメンバーは何者かに銃撃されて倒れ、部屋には血が飛び散っている。イリスも多くの棘に串刺しになり、服や頬に血が飛び散ったユーリがその前で立ち尽くしていた。
そこで映像は終わった。
惑星再生委員会、イリスとユーリの間に何か起きたらしい。
「アミタさん、惑星再生委員会というのは?」
はやてがアミタに聞くとモニタ向こうに映るアミタが端末を取り出して操作するとウィンドウの映像が変わった。
『40年ほど前ですが、確かに存在していました。私の祖父母もそこに所属していたと…事故が起きて職員や関係者のほぼ全員が死亡してエルトリアを救おうとする人は居なくなりました。』
『当時はまだ子供だった私達の両親を除いて…』
映される廃墟の映像、紙片の映像に似た場所が映っていたからその後の光景だろうか…
「これは仮説というか想像なんだけど」
「この場面の後にユーリちゃんはもう動けなくなって、夜天の書の中のアインスの意識もなくて…仕方なくユーリちゃんは夜天の書に自分自身を蒐集させたとしたら…」
「ユーリちゃんは夜天の書の中で眠る。主と会えなかった夜天の書もそのままエルトリアを後にして…」
「何人かの主を経て、私の所に来た…」
「だからアインスはユーリがどうなったか知らなかった。」
「でも、でしたらユーリはどうしてあんな場所に?」
「水族館の宝石の中だっけ?」
「闇の書の闇を切り離した時、ユーリちゃんも一緒に切り離されたんじゃないかしら?そして海の底であの結晶になって眠っていた。」
「それがオールストン・シーの開発によって発見されて…水族館に設置された。」
シャマルの想像をはやてとヴィータ、リインが補強する。
「イリスはそれを追いかけて色んな異世界から元のユーリがいる世界を見つけようとした。イリスの目的はユーリ…彼女への復讐。でも前に戦った時は負けちゃったから補強もしなくちゃいけない。見つけて戦わせる仲間が必要だった。」
「それが鍵…シュテルとレヴィとディアーチェ…、本当に私達は関係ない世界に関わっちゃったんだ…」
続けて言ったアリシアに私も続けて言う。でもそこで新たな疑問が浮かぶ
「でも…ユーリの転移は私達にも関係ないのかな?」
闇の書事件で闇の書の闇が切り離されたの元の時間軸でも起きていた。偶然起きたのがここだったのか? その答えは私自身が持っていた。
「あっ!」
「何か思い出した?
横に居たアリシアが聞いてくる。私はアリシアの耳元にいって小声で言う。
「私達…あっちの私の時間でユーリが切り離されてきていてもママ達が壊しちゃってる。トリプルブレイカーで…」
「はあっ!?」
アリシアが驚く声をあげたらみんなの視線が集まる。笑みを浮かべ手を振って誤魔化す。
1年半程前、ザフィーラが居なくなった過去を変える為に私は闇の書事件時に飛んだ。
闇の書の残滓からみんなを守る為…、一緒に行ったなのはとフェイト、はやてはアースラのアルカンシェルを受けた後に落ちてきた闇の書の残滓に対しトリプルブレイカーを放ち消滅させていた。
あれが残滓ではなく切り離されたユーリだったとしたら…後の状況を踏まえても間違い無く消えてしまっている。
「アリシア…どうしよう…」
「どうしようって言ったって過ぎたことだし、そもそもその残滓がユーリっていう証拠もないんだから間違って助けたら逆に復活しちゃうでしょ。」
「とりあえず、それは置いておいて先にこっちを考えよう。あのねさっき…」
そう言ってアリシアが話をしようとした時、アラート音と一緒にレティが映った。
『はやて、こちら捜査本部。対象イリスの拠点を発見したわ。今最寄りの武装局員が向かってる。全員出動準備を。』
隠れていた建物が別のウィンドウで映る。
ユーリがまだ動いていないなら空間転移で動いてイリスと話せるか?
「私が行って…」
腰を浮かせかけた瞬間、苦悶の声の後で武装局員からの通信が途絶えた。近くで煙が上がっている。戦闘が始まったのだ。
「イリスが…増えた?」
「結界から出ようとしている?」
複数のイリスが散り散りになって動き始める。
「父が言っていました。『委員会が手がけているテラフォーミングユニットは環境と状況に応じた自己増殖機能を持つ』と…、元々星を1つ、丸ごと改良するのが仕事です。資源の少ないエルトリアですらそれを可能にする能力があった。素材もエネルギーも大量にあるこの星なら…」
アミタの話を聞いてモニタを睨む。
「なんで…ここもなの?」
マリアージュ、ラプター…個々に意味を持たさずに生み出す技術。結局人の考えは何処に行っても変わらないのか?
イリスも全部壊すしか無いのか?
『分散した群体イリスを結界から出さない様に叩く。クロノ君、はやて、出撃して。なのはちゃんとフェイトちゃんも頼んだわ。』
「『『『了解』』』」
レティの出撃命令にはやては立ち上がってモニタに映ったなのはやフェイトと一緒に答えた。
(まだ魔力は全部戻ってないけど…、準備をすれば)
イリスの近くにはきっと操られたユーリが居る。
彼女を助ける為にはもう1度戦わなくちゃいけない。
ヴィヴィオも遅れて立ち上がり静かに頷いた。
「私も行ってくる。アリシアはここでバックアップお願い。」
はやて達とディアーチェ達3人に続いてヴィヴィオも部屋から出ようとしているとアリシアから呼び止められた。
「ちょっと待って」
「えっ?」
部屋を出て行こうとした足を止め、振り返ってアリシアの方を見る。
「ヴィヴィオちゃん、行かへんの?」
「後で追いかけるから先に行ってて」
出た所で顔を覗かせたはやてに言ってアリシアの所に行く。彼女はさっきまでレヴィが触っていた夜天の書の紙片に触れていた。
「何か気になるの?」
「うん…私、古代ベルカ語がそんなに読めないからわかんないんだけど…レヴィが復元してた時に気になるのを見つけちゃって…これって何かの通信魔法じゃない? エルトリアと繋げられたらって思って、ヴィヴィオなら読めるでしょ?」
ヴィヴィオは少し驚いてさっきまでシュテルが座っていた場所に座り、紙片を見る。確かに何かの通信術式だ。
「通信できるかはわかんないけどそうみたい。RHd」
デバイスを起動して紙片のプログラムを取り込む。
古代ベルカ文字で書かれたプログラムは対応する文献が無いと全てが読めない事が多い。
今、手持ちであるのは最近調べてRHdの中に残した幾つかのベルカ語で書かれた書物のコピーデータと悠久の書だけ…。
欠けている術式を悠久の書をベースに組み立てていく。
5分程でとりあえず動くだろうと思われる術式が出来上がった。
「これで動くかな…」
「ヴィヴィオちゃん、アリシアちゃん、どうしたの? もうみんな出るよ。」
エイミィが入ってきた。
「紙片に何かの通信プログラムが入っていて…全部は読めなかったけどこれで?」
初めて使う術式に少し緊張しながらも起動させるとベルカの魔方陣から1つのウィンドウが開いた。管理局の通信で使うものとレイアウトが違うのにヴィヴィオもアリシアも近くで見ていたエイミィも何が起きるかと覗き込む。
だが次の瞬間、映しだされた映像と声に3人は言葉も出ない程驚かされる。
『はい、テスタロッサ研究所です。………ヴィヴィオっ!? アリシアっ!?』
「えっ!?」
「うそっ!?」
そう、ウィンドウの向こうに映ったのは異世界…2ヶ月前に帰った大人アリシアだったのだ。
~コメント~
今話は色んな意味のターニングポイントです。
惑星エルトリア、ヴィヴィオが知っているのは異なる時間軸にある星でその様子はギアーズ姉妹のアミタとキリエからしか聞いてませんでした。
そんな彼女が初めて見たエルトリアと夜天の書とユーリの関係と自我のある者を大量生産出来るテラフォーミングユニットという存在。
そして…ユーリからの紙片と悠久の書によって奇跡が起こります。
今話中盤に出てきた闇の書の残滓についてはAgainStory第13話「未来への扉」での出来事になります。(まさか10年後にフラグが回収出来るとは思いもしませんでした)
Comments
豪快に打っ放なしてましたね。
・・・三人娘、可能性を聞いたら真っ青なりそうですね(笑)