第24話「主の責務」

「な、なんでアリシアさんが出るのっ!?」
『それはこっちの台詞よ。何? どうやって通信してるの!?』

 お互いに驚き過ぎて素っ頓狂な声をあげるヴィヴィオと大人アリシア。

「夜天の書の紙片に通信プログラムみたいなのがあってそれを使ったら繋がったの。そっちは?」
『こっちは誰からか判らない通信コールが来たから受けただけ。間違って繋がっちゃったんだ。今度遊びに来た時にでも術式教えてよ。ヴィヴィオも居ないし私も今は仕事中だから…じゃあまたね』
「ま、待って!! アリシアに聞きたい事があるの、ママは?」
 アリシアが身を乗り出して通信を切ろうとした大人アリシアに聞く。

『母さんは暫く出かけていて…大きな研究中で帰って来られないのよ。だから私が留守番。それよりアリシア、どうして車椅子に乗ってるのよ?』 

 プレシアは居ないらしい…何か良い方法があれば教えて欲しかったのだけれど…

「あの~母さんって、何処の誰と話してるの?とか聞かない方がいいのかな~やっぱり」

 驚き過ぎて引きつった笑みを浮かべるエイミィの言葉で彼女がここに居るのを思いだしてコクコクと頷く。

『あっ…出来れば…みんなには内緒で…エイミィさんも見ないで貰えた方が助かります。』

 エイミィを見てヴィヴィオ達が元世界とは違う世界に居るのに気づいたらしく大人アリシアが答える。

「わ、わかった。何かあったら通信で呼んで。クロノ君からもフォローする様に言われてるから。じゃあまたね」

 小さく手を振って小走りに出て行った。流石に驚き過ぎたらしい…

「ねぇ、アリシアさん。相談していいかな?」
『ええ、私でいいなら?』

 ヴィヴィオとアリシアは小さく頷き、巻き込まれている事件について話し始めた。



『至急通信を繋いでください。byアリシア』

 時間軸と時間と所が変わった無限書庫。
 ユーリがいつもの様に調査依頼のあった文献を探していると端末にメッセージが届いた。

「アリシアから?」

 至急というのは何かあったのだろうか? 調査中の本を端に寄せて通信端末でアリシアを呼び出す。

「アリシア、どうかしましたか?」

ウィンドウが開いて聞くが彼女の横顔しか映っていない。 

「誰かと話し中…ですか?」

 その時近くから知っている声が聞こえてきた。

『ア~リ~シ~ア~、上司にいきなり通信しろとは良い身分になったものだな~っ!』

 ディアーチェだ。

「ディアーチェも呼び出されたんですか?」
『ユーリもか? 貴様は一体どういう…』
 
 苦情を言おうとした時アリシアが手で合図をする。指さしている方を見てということらしい。端末を操作して角度を変えると彼女の通信相手が見えた。

『『ヴィヴィオっアリシア!?』』

 それは子供のヴィヴィオとアリシアだった。向こうから私達は見えないらしい、アリシアに何かを話している。

『それで私達はここで…』

 何らかの事件に巻き込まれているのだろうけれど…
 聞き耳を立てていると再びアリシアからメッセージが届いた。
 そこには今ヴィヴィオから聞いていた話が書かれていた。

 彼女達が別の時間軸に飛ばされ、事件に巻き込まれている…
 彼女達の居る時間は砕け得ぬ闇事件から1年と少し経った頃の海鳴市…
 しかしそこでは2つの事件が起きていなくて、今まとめて起きている…
 どういう方法かはわからないが、彼女達から研究所に通信があって相談されている…
 ヴィヴィオは聖王教会の式典に出席しているから通信出来ないのでメッセージを送っている…
 当時の事件関係者だったシュテルとレヴィ、ディアーチェ、ユーリに通信を送った…
 シュテルとレヴィは教導中で出られず、本局内で報告書を作っていたディアーチェとユーリが出た。

 それで至急通信を繋いで欲しいということだったのかと納得する。
 事件中に現れたアミティエとキリエ、惑星エルトリア…シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ…そこまでは知っている名前だけれど   

『イリス…ですか? 初めて聞きます。』
『うむ…エルトリアについては知っている。アミタとキリエの故郷であろう? だが…話を聞く限りあやつ等の世界とは違うようだ。』

 ユーリとディアーチェの通信に頷くアリシア、一方でヴィヴィオとアリシアの話も聞いている。

(アリシアは本当に器用ですね…)

 同時に複数の事を進める彼女に苦笑いしながらも、その目はモニタの更に奥に映る2人から離せないでいた。
 
 
「それで、イリスとユーリが居なくなって管理局の捜査班が探してて…今見つかったからレティ提督から出動命令が出た。私もみんなと一緒に行こうとしたらアリシアがこのプログラムを見つけて、古代ベルカ語で書かれたプログラムだったからRHdに入れて動かしたらアリシアさんが出たの。」

 最初は興味深そうに聞いていた大人アリシアだったけれど、闇の欠片事件と砕け得ぬ闇事件が同時に起きていると言われて顔つきが変わる。その後色々聞かれながらもヴィヴィオとアリシアは今までの経緯を説明し終えた。

『ありがとう、大体わかった。…その兵器だと…アリシアは前に出ない方がいいね。魔法を解析されたら魔力が取られるだけじゃすまない。』
「わかってる。怪我もしてるしコアもあと少ししかないし…バルディッシュもフェイトが壊しちゃって動かないし…」
「ねぇ…私達どうすればいいかな?」

 ヴィヴィオが聞くと大人アリシアの眉が上がって声を荒げた。

『違うでしょ! ヴィヴィオ、逃げちゃ駄目っ!。』
「「!!」」 

 その声に驚いて思わずアリシアとビクッと背筋を伸ばす。

『私達に聞いてその通りにしてそれが正しいって心の底から思える? 大切なのはどうすればいいかじゃなくてヴィヴィオがどうしたいかなんだよ。ヴィヴィオがどうしたいのか教えてくれたら私達は手伝うよ。』
『時空転移から目を逸らさないで、しっかり前を見て。』

 私は無意識に彼女から答えを求めて、私自身の責任から逃れようとしていた。
 彼女はそれに気づいて指摘した。
 私自身何をしたいか? どうすればいいかじゃなくて、どうしたいのか?
 目を瞑って考える。そして開いて言う。

「…そうだよね…アリシアさんに教えて貰ったからって。それが良いって思えるかわからないのに…ごめん、私…逃げてた。」
「私は…ユーリもシュテル達も…イリスも助けたい。エレノアさんやグランツ博士、エルトリアもみんな…みんなを助けたい。」

 そう言うと険しかった大人アリシアの表情が笑顔になる。

『うんわかった♪ 私たちがどうすればいいかを考える。それとヴィヴィオ、こっちに来られる? 時空転移だと難しいけど、この本を辿れば来られるよね?』

 そう言って見せたのは刻の魔導書、今は彼女の手元にあるらしい。あれがあるなら行く方法はある。

「うん、いけるけど? 今から?」
「そう、今から。アリシア、あなたはそっちで情報収集お願い。ヴィヴィオにだけ用事があるのよ。前みたいなことが起きて魔法が使えなくなったら困るからね。あっそうだ、バルディッシュ使えないならヴィヴィオに渡して。こっちで修理しちゃうから。でも通信するのに何かデバイスが…ペンダントは持ってるんでしょ。それにコアを入れてからヴィヴィオにこの通信を繋げたまま受け取って、通信術式なら出来ると思う。コア1個で1日位持つでしょ♪』

 言われた通りRHdからアリシアのペンダントに通信魔法を繋げたまま渡す。ペンダントが淡い輝きを生みながら通信は繋がったまま移される。
 ヴィヴィオとアリシアはこんな風に通信魔法が渡せるのを見て驚いた。

「行ってくる。エイミィさん達には直ぐ戻るって伝えて。あとぜ~ったいに前に出ちゃダメだからね。船から出るの禁止。」
『その辺はしっかり私が見てるから安心して』

 大人アリシアがそう言うと私はRHdから悠久の書を取り出し開いてイメージを送り光の中へと飛んだ。 

~コメント~
 今話から新章&オリジナル回です。

 ここで登場している成長したアリシアとユーリ、ディアーチェは異なる時間軸の彼女達です。
 ディアーチェはAgainStory2(闇の欠片事件-PSPゲームBattleOfACE)から、ユーリはAffectStory~刻の移り人(砕け得ぬ闇事件-PSPゲームGearOfDestiny)で登場し、その後エルトリアには行かずなのは達と同じ時間を過ごしています。
 彼女達がどんな風に成長してなのはやヴィヴィオ達と関わっているかは…考えてはあるのでどこかで出せたらと思っています
 

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