第25話「マテリアルズとの再会」
- リリカルなのは AffectStory2 ~刻の護り人~ > 第5章 事件の行方
- by ima
- 2019.07.18 Thursday 15:14
時空転移で使うストレージデバイス、刻の魔導書はそれぞれの時間軸に存在している。
その魔導書同士を繋いで転移する魔法が【虹の扉】
ヴィヴィオは悠久の書で使って大人アリシアの時間軸、通信している時間に飛んだ。
「っと、ここは研究所前?」
降りたのはプレシアの研究所前だった。
通信中の大人アリシアの背後に見えていたのはプレシアの研究室みたいだったから中に居るのだろう。そう思ってエントランスから入ろうと歩いていると
「ヴィヴィオ、こっちで~す。」
建物の横から女性が走ってきた。その姿を見て私には誰か直ぐにわかった。
「ユーリ♪、おっきく…じゃなくてすごく綺麗になった!」
その魔導書同士を繋いで転移する魔法が【虹の扉】
ヴィヴィオは悠久の書で使って大人アリシアの時間軸、通信している時間に飛んだ。
「っと、ここは研究所前?」
降りたのはプレシアの研究所前だった。
通信中の大人アリシアの背後に見えていたのはプレシアの研究室みたいだったから中に居るのだろう。そう思ってエントランスから入ろうと歩いていると
「ヴィヴィオ、こっちで~す。」
建物の横から女性が走ってきた。その姿を見て私には誰か直ぐにわかった。
「ユーリ♪、おっきく…じゃなくてすごく綺麗になった!」
成長してスラリと背が伸びたユーリの姿に驚くのと同時に久しぶりにあった友達の様に嬉しくなった。
「ありがとうございます…じゃなくて、急いでください。バルディッシュはこっちで修理するので預かりますね。」
「は、はい。」
来る前にアリシアから預かった待機状態のバルディッシュをユーリに渡すと、ユーリはポケットに入れて
「捕まっていてください。飛びますよ~っ!」
いきなりベルカの転移魔方陣を広げた
「と、飛ぶってどこに? 中にアリシアさんが居るんじゃないんですか?」
「それはあっちに着いてからです~♪」
そう言うと私達の姿はミッドチルダから消えた。
「到着しました~♪」
魔方陣が消えるとそこは海岸の岩場の上だった。一面の海と反対側には多い茂った木々が見える。人気というか人工物が全く見えない。
「ここは? 管理世界?」
「待っていました。ここは戦技教導隊が管理する訓練用の無人惑星です。」
上空から声が聞こえたかと思うと目の前に降りてきた。トンっと音を立てて着地する2人。
「わっ!! シュテルとレヴィ?」
降りてきたのはシュテルとレヴィだった。2人ともブレイブデュエルの世界で見たマスターモードと同じくらい大きくなっていた。
「久しぶりです。ここのあなたから頼まれています。3日間…ここでヴィヴィオ、あなたを特訓して戦闘経験値を底上げします。」
「え? 特訓? でも3日なんてそんな時間は…」
「そんなのヴィヴィオの魔法で何とでもなるでしょ♪ 向こうの飛んできたすぐ後に戻ればいいんだから。」
「それは…そうだけど、急に特訓なんて…」
「本来は…コラード教官の訓練を受けていけば自ずと身についていたのでしょうが…、それでは間に合いません。時間が無いので手加減等は一切しません。」
「覚悟してよねっ!」
「ヴィヴィオ、頑張ってくださいね♪」
シュテル、レヴィ、ユーリに言われて何が起きているのか判らないまでも大人の自分が何か考えてくれたのだと考え直し
「わかった。頑張る! RHdセットアップ」
デバイスを出して起動した。
それから少し経った頃、プレシアの研究所では
「こっちはOK、あの子はユーリさんが連れてってくれたよ。」
『ありがと♪』
アリシアがモニタ向こうのヴィヴィオと話していた。
「戻りました~。バルディッシュも預かってきましたよ。」
部屋にユーリが入ってきた。彼女を送り届け故障したバルディッシュを持ち帰ってきた。
『ユーリさん、急にお願いしてすみません。』
ヴィヴィオが頭を下げる。
「いいえ、それよりもヴィヴィオを特訓する必要ってあるんですか?」
「ヴィヴィオから頼まれた通り呼んだんだけど私も気になった。無茶苦茶なところはあるし荒削りだけど、それが小さいヴィヴィオの持ち味みたいなものでしょ?」
【ヴィヴィオをこっちに呼んで】
式典に参加している最中にも関わらずアリシアのメッセージを読んだヴィヴィオはアリシアに子供のヴィヴィオをこっちに連れてくる様に頼んだ。
アリシアはメッセージを読んで子供ヴィヴィオを呼び寄せたのだ。
でもその理由は全く知らされていなかった。
ヴィヴィオは同時にディアーチェにメッセージを送り、彼女とシュテルとレヴィの3人に子供ヴィヴィオの特訓をして欲しいと頼んでいた。
彼女のメッセージに従いながらも全員が疑問に思っていた。
ヴィヴィオの強さを知っているからわざわざ今特訓する必要はない、彼女も時と共に成長していくと考えていたからだ。しかしヴィヴィオはそう考えていなかった。
『私がヴィヴィオと同じ時と比べたらそれで十分です。でも彼女はそれじゃ駄目なんです。私の持ってた戦闘映像をシュテルさんとレヴィさんに見せたらすぐに気づきました。ヴィヴィオ、新しいRHdを全然使いこなせてないって。』
「え? 戦技披露会でヴィータさんとあれだけ凄いバトルしてたのに?…あっ!」
アリシアも思い出した。
『RHdは魔力のコントロールとヴィヴィオに頼まれた時に動くのと、危なくなったらインパクトキャノンとセイクリッドクラスターを使うだけで本来の性能の1割も使ってないんです。』
『前のRHdだったらバリアジャケットの強化するのに色々入っていて重くなってたからそれで全開だったかも知れないけれど、今のは騎士甲冑ベースになってリソースも十分に余っています。連携だけを見たら上手く出来てたのは昔ユーリさんと戦った時…でもあの時はヴィヴィオもギリギリまで魔力を使って、その上負傷していました。』
「はい…」
ユーリは深く頷く。彼女がヴィヴィオの戦った相手なのだから覚えているのだろう。
『きっと例の鎧とか魔法を使わなくても色々出来る様になっちゃってるのと、RHdを壊さないようにって心の何処かでブレーキかけちゃってるのか…性能が今までと同じだと思ってるんだと思います。でもそれじゃ今巻き込まれている事件で倒れてしまう…。』
『ヴィヴィオ達が経験してるのは私達の世界で起きた2つの事件がまとめて起きてるようなものなんでしょ?』
『今近くには母さん達も複製母体も居ません…。今度も同じ奇跡が起きるとは限らないんです。それに…今ヴィヴィオが倒れたら…私達も消えてしまうかも知れません。』
『だからディアーチェさん達にお願いしました。ディアーチェさん、シュテルさん、レヴィさんならヴィヴィオとRHdが協力したらもっと強くなれるってきっかけや経験をさせてくれる。』
『ヴィヴィオとRHdは経験を積めばまだまだ伸びます。私達なんか相手にならない位…』
ヴィヴィオの危惧したのは彼女が巻き込まれた事件の深刻度だった。
幼いヴィヴィオの成長は目を見張るものがあるが、それでも巻き込まれる事件の深刻度を考えると明らかに足りない。
特にここの様にユーリ達が現れたのであれば、こっちの彼女を助けた時と同じ様に激戦の中で彼女達を助けようとする。その時にギリギリの接戦じゃなくて「余裕」を作らなければならない。
無理をしてもいいけれど無茶をさせるわけにはいかない。
彼女が倒れたらここも巻き込まれるのだから他人事じゃない。
ヴィヴィオ自身の戦闘センス、魔力運用能力は凄いし大人ヴィヴィオとチェントが使えない鎧の力もある。そこに完全体レリックを持っていて融合もできる。きっと彼女の世界で文字通りの全力を出したら今でもなのはやシグナム、フェイトを超えているだろう。
RHdも個々の性能で言えば3人のデバイスを凌ぐし、中にはレリックの完全体と欠片を組み合わせて作ったメインコアユニットを積んでいてロストロギア扱いされかねない性能を秘めている。
それぞれが他の時間軸と比べても秀でた素質と性能を持っている。けれどぞれぞれが生かしきれていない。
だからそれを気づかせてあげれば…。
彼女自身の能力上昇と経験値を底上げ、デバイスとの連携を強化しなければならない。
彼女の世界のなのはやフェイト、専任教官のコラードも考えているだろうがそれでは遅い。
3日間という短い時間で何処まで出来るか判らないがそこはシュテル達を信じることにする。彼女達もベテランの教導官、その辺りは心得ている筈だ。
ヴィヴィオ自身やなのは、フェイトが教えられない事でも彼女達なら…。
【パンッ!】
「アリシア?」
「あ~もう、そこまで言われたら私も協力しない訳にはいかないじゃない。折角母さんが居ない間に好き勝手に研究出来ると思ってたのに…」
アリシアは両手で頬を叩いて気合いを入れる。
「ユーリさん、ヴィヴィオから預かったバルディッシュを貸して下さい。私が修理します。」
「は、はい。私もお手伝いを…」
「ありがとうございます。でもユーリさんには別のお願いがあるんです…Stヒルデにチェントを迎えに行ってそのまま無限書庫に戻って貰えますか? 調べて貰いたいことがあるので、調査依頼は…教導隊じゃなくて研究所から出します。」
「え?」
首を傾げるユーリを見てアリシアとモニタ向こう側のヴィヴィオはニコッと笑みを浮かべ頷いた。
こうして皆が動き始めていく…
「事件を見直せって言ったって…」
一方、指揮船に残ったアリシアはというと異世界の自分から言われた言葉を繰り返し呟いていた。
通信用のウィンドウは繋がったままだけれど、映っているのは研究所の壁だけで向こう側に居た大人アリシアは何処かに行ってしまい姿が見えない。
切ってもいいんじゃないかと思うけれどもう1度繋げられないのでそのまま置いておく。
『事件を見直してみて。事件の鍵はイリスとユーリ。そっちじゃユーリの眠っていた紫天の書は無い。紫天の書が無いならアンブレイカブルダークも…エグザミアも無いかも知れない。それを踏まえて考え直してみて。ヴィヴィオが戻った時すぐに動ける様に』
確かに夜天の書を護る為に生まれ、永い時間旅をしてきたのであれば紫天の書、アンブレイカブルダーク、エグザミアとは全く関係がないとも思える。
「一旦、前の事件と違う事件と考える…」
瞼を閉じて考える。
今まで起きた事を時系列順に並べていく。
エルトリアが滅びそうになって惑星再生委員会は作られた。
イリスはテラフォーミングユニットとして惑星再生委員会が作った。
イリスが遺跡を調査していた時にユーリを見つけ、ユーリは惑星再生委員会の一員になった。
それから何かが起きて委員会の職員の殆どが死んで、イリスも動けなくなって、ユーリも消えた。
ユーリが消えた方法は自身を闇の書に蒐集させたからで、闇の書事件があってその時に闇の書に蒐集されていたユーリは切り離されて結晶になってオールストン・シーを作る時に見つかり、水族館に置かれた。
キリエとイリスが会って、グランツの病気とエルトリアを蘇らせる為に永遠結晶を探しに日本に来てアミティエは2人を追いかけてきた。
永遠結晶への鍵ははやての持っていた夜天の書、そこで眠るレヴィ達を起こしてユーリを探そうとした。レヴィ達は予定通りユーリを見つけた。
イリスはユーリを呼び起こし、何かを命令した…
イリスから命令されたユーリはヴィヴィオ達と戦って一時的に正気に戻ったけれど直ぐにイリスに連れて行かれた…。
そして今イリスの隠れていた場所が判って包囲したらイリスが増えて出てきた…
「どうしてここに来たのかはユーリがここに居るって調べたからで…、実際にレヴィ達が見つけたんだよね…。さっきヴィヴィオが私達の時間に来ていたらって言ったけど、夜天の書は時間に関わる魔法は使えないから多分時間軸は越えられない…だからここは予め絞り込まれていたって考えた方がいいよね?」
自問自答しながら考えをまとめていく。
「レヴィ達を起こしたのはユーリを見つける意味もあるけど、倒す為でもあった…。イリス1人じゃ勝てないのは前に判っていたから…で、イリスはユーリを洗脳した…ん?」
経緯と疑問を照らし合わせた時、違和感があった。
「どうして…イリスはキリエに嘘をついて騙さなきゃいけなかったの? 1人じゃここに来られないからだったとしても、『友達を見つける為に手伝って』とか言えば…」
「それにここに迷惑をかけてっていうのは判るけど、目的がユーリへの復讐だけなら…はやてに夜天の書を返してユーリを連れてエルトリアに戻って復讐すれば、ユーリはもう逃げられない…」
「それにユーリを洗脳出来たならそのまま連れ帰って『騙していてごめんなさい、私の目的は果たせたから今度はユーリの魔法を使ってエルトリアを再生しましょう』とでも言えば少し問題はあるけど管理局に邪魔されない…なのに隠れてまでここに居る…どうして?」
幾つかの疑問が解けたけれど逆に生まれた疑問が何処にも繋がらず浮き出てきた。その結果は…
「…イリスはまだ何かしようとしてる…目的はユーリへの復讐だけじゃない…」
テーブルの横に端末を使い通信を行うエイミィが出た。近くにクロノのウィンドウも映っていた。
「気になってるんですけど…イリスの目的って…本当にユーリへの復讐だけでしょうか?」
『えっ? どういう意味?』
エイミィが驚いている。
「イリスの目的がユーリへの復讐だけなら目覚めさせたら終わりですよね? エルトリアを復興するつもりなら叶った後はキリエさんに協力してエルトリアに戻った方がいいし、アミタさんもキリエさんと目的は同じエルトリアの再生なんだから争う必要もないと思うんです。もう目的は果たしたんだからわざわざここに残って管理局と敵対する必要…ありませんよね?」
『…ああ、僕もそれが気になっていた』
クロノが答える。彼も同じ疑問を持っていたことで考えが間違っていないと確信する。
『すまない、まだこの事件には判らない事情がある。彼女達にとって君やヴィヴィオは想定外らしい。君達なら僕達よりも上手く事件解決出来るかも知れない。何か気づいたら教えてくれ』
「わかりました」
そう言うと通信を切った。
次はヴィヴィオが戻ってくる前に情報収集を始める。幸い置かれていた端末で幾つかの場所が表示出来た。
「ここからは…私達も知らない事件だ…」
何が起きるのかしっかり見ておかなくちゃいけない。
親友に伝える為に…。
通信を切ってからクロノはアリシアに驚いていた。
「ヴィヴィオにも驚かされたがアリシアも凄いな…」
『そんなに凄いの?』
「物理攻撃だけでイリスに1撃を与えていたのもそうだが、はやてやフェイト…僕たちもついさっき見つけた事件の先に彼女は1人で辿り着いたんだ。限られた情報しか無いのに」
クロノの下には彼女達が動き出した時からとアミタの聴取情報したデータを持っていない。それでも同じ疑問にたどり着いていた。
「大局的に全貌を見渡す目と見定める思考は持っている。エイミィ、アリシアとヴィヴィオから何か頼まれたら優先して動いてくれ。それが事件解決への近道かも知れない。」
管理局として事件を向き合い解決する決意には変わりはない。だがそれよりも早く解決出来るなら…、彼女達に任せたい。
そう思った。
~コメント~
なのはReferction・Detonationの世界に行くとしたら、砕け得ぬ闇事件でのシュテル達も登場させたいというのはAffectStory2の構想段階から決めていました。
ヴィヴィオとアリシア、マテリアルズの4人がどんな風に関わっていくのかお楽しみ下さい。
●コミックマーケット96についての情報です。
新刊は「リリカルnanohaAffectStory2~刻の護り人~中巻」を予定しております。ただ現在アクシデントが起きており、夏コミにサークル参加できるかが不透明になっています。わかり次第再度告知いたしますのでお待ち頂けますようお願いいたします。
「ありがとうございます…じゃなくて、急いでください。バルディッシュはこっちで修理するので預かりますね。」
「は、はい。」
来る前にアリシアから預かった待機状態のバルディッシュをユーリに渡すと、ユーリはポケットに入れて
「捕まっていてください。飛びますよ~っ!」
いきなりベルカの転移魔方陣を広げた
「と、飛ぶってどこに? 中にアリシアさんが居るんじゃないんですか?」
「それはあっちに着いてからです~♪」
そう言うと私達の姿はミッドチルダから消えた。
「到着しました~♪」
魔方陣が消えるとそこは海岸の岩場の上だった。一面の海と反対側には多い茂った木々が見える。人気というか人工物が全く見えない。
「ここは? 管理世界?」
「待っていました。ここは戦技教導隊が管理する訓練用の無人惑星です。」
上空から声が聞こえたかと思うと目の前に降りてきた。トンっと音を立てて着地する2人。
「わっ!! シュテルとレヴィ?」
降りてきたのはシュテルとレヴィだった。2人ともブレイブデュエルの世界で見たマスターモードと同じくらい大きくなっていた。
「久しぶりです。ここのあなたから頼まれています。3日間…ここでヴィヴィオ、あなたを特訓して戦闘経験値を底上げします。」
「え? 特訓? でも3日なんてそんな時間は…」
「そんなのヴィヴィオの魔法で何とでもなるでしょ♪ 向こうの飛んできたすぐ後に戻ればいいんだから。」
「それは…そうだけど、急に特訓なんて…」
「本来は…コラード教官の訓練を受けていけば自ずと身についていたのでしょうが…、それでは間に合いません。時間が無いので手加減等は一切しません。」
「覚悟してよねっ!」
「ヴィヴィオ、頑張ってくださいね♪」
シュテル、レヴィ、ユーリに言われて何が起きているのか判らないまでも大人の自分が何か考えてくれたのだと考え直し
「わかった。頑張る! RHdセットアップ」
デバイスを出して起動した。
それから少し経った頃、プレシアの研究所では
「こっちはOK、あの子はユーリさんが連れてってくれたよ。」
『ありがと♪』
アリシアがモニタ向こうのヴィヴィオと話していた。
「戻りました~。バルディッシュも預かってきましたよ。」
部屋にユーリが入ってきた。彼女を送り届け故障したバルディッシュを持ち帰ってきた。
『ユーリさん、急にお願いしてすみません。』
ヴィヴィオが頭を下げる。
「いいえ、それよりもヴィヴィオを特訓する必要ってあるんですか?」
「ヴィヴィオから頼まれた通り呼んだんだけど私も気になった。無茶苦茶なところはあるし荒削りだけど、それが小さいヴィヴィオの持ち味みたいなものでしょ?」
【ヴィヴィオをこっちに呼んで】
式典に参加している最中にも関わらずアリシアのメッセージを読んだヴィヴィオはアリシアに子供のヴィヴィオをこっちに連れてくる様に頼んだ。
アリシアはメッセージを読んで子供ヴィヴィオを呼び寄せたのだ。
でもその理由は全く知らされていなかった。
ヴィヴィオは同時にディアーチェにメッセージを送り、彼女とシュテルとレヴィの3人に子供ヴィヴィオの特訓をして欲しいと頼んでいた。
彼女のメッセージに従いながらも全員が疑問に思っていた。
ヴィヴィオの強さを知っているからわざわざ今特訓する必要はない、彼女も時と共に成長していくと考えていたからだ。しかしヴィヴィオはそう考えていなかった。
『私がヴィヴィオと同じ時と比べたらそれで十分です。でも彼女はそれじゃ駄目なんです。私の持ってた戦闘映像をシュテルさんとレヴィさんに見せたらすぐに気づきました。ヴィヴィオ、新しいRHdを全然使いこなせてないって。』
「え? 戦技披露会でヴィータさんとあれだけ凄いバトルしてたのに?…あっ!」
アリシアも思い出した。
『RHdは魔力のコントロールとヴィヴィオに頼まれた時に動くのと、危なくなったらインパクトキャノンとセイクリッドクラスターを使うだけで本来の性能の1割も使ってないんです。』
『前のRHdだったらバリアジャケットの強化するのに色々入っていて重くなってたからそれで全開だったかも知れないけれど、今のは騎士甲冑ベースになってリソースも十分に余っています。連携だけを見たら上手く出来てたのは昔ユーリさんと戦った時…でもあの時はヴィヴィオもギリギリまで魔力を使って、その上負傷していました。』
「はい…」
ユーリは深く頷く。彼女がヴィヴィオの戦った相手なのだから覚えているのだろう。
『きっと例の鎧とか魔法を使わなくても色々出来る様になっちゃってるのと、RHdを壊さないようにって心の何処かでブレーキかけちゃってるのか…性能が今までと同じだと思ってるんだと思います。でもそれじゃ今巻き込まれている事件で倒れてしまう…。』
『ヴィヴィオ達が経験してるのは私達の世界で起きた2つの事件がまとめて起きてるようなものなんでしょ?』
『今近くには母さん達も複製母体も居ません…。今度も同じ奇跡が起きるとは限らないんです。それに…今ヴィヴィオが倒れたら…私達も消えてしまうかも知れません。』
『だからディアーチェさん達にお願いしました。ディアーチェさん、シュテルさん、レヴィさんならヴィヴィオとRHdが協力したらもっと強くなれるってきっかけや経験をさせてくれる。』
『ヴィヴィオとRHdは経験を積めばまだまだ伸びます。私達なんか相手にならない位…』
ヴィヴィオの危惧したのは彼女が巻き込まれた事件の深刻度だった。
幼いヴィヴィオの成長は目を見張るものがあるが、それでも巻き込まれる事件の深刻度を考えると明らかに足りない。
特にここの様にユーリ達が現れたのであれば、こっちの彼女を助けた時と同じ様に激戦の中で彼女達を助けようとする。その時にギリギリの接戦じゃなくて「余裕」を作らなければならない。
無理をしてもいいけれど無茶をさせるわけにはいかない。
彼女が倒れたらここも巻き込まれるのだから他人事じゃない。
ヴィヴィオ自身の戦闘センス、魔力運用能力は凄いし大人ヴィヴィオとチェントが使えない鎧の力もある。そこに完全体レリックを持っていて融合もできる。きっと彼女の世界で文字通りの全力を出したら今でもなのはやシグナム、フェイトを超えているだろう。
RHdも個々の性能で言えば3人のデバイスを凌ぐし、中にはレリックの完全体と欠片を組み合わせて作ったメインコアユニットを積んでいてロストロギア扱いされかねない性能を秘めている。
それぞれが他の時間軸と比べても秀でた素質と性能を持っている。けれどぞれぞれが生かしきれていない。
だからそれを気づかせてあげれば…。
彼女自身の能力上昇と経験値を底上げ、デバイスとの連携を強化しなければならない。
彼女の世界のなのはやフェイト、専任教官のコラードも考えているだろうがそれでは遅い。
3日間という短い時間で何処まで出来るか判らないがそこはシュテル達を信じることにする。彼女達もベテランの教導官、その辺りは心得ている筈だ。
ヴィヴィオ自身やなのは、フェイトが教えられない事でも彼女達なら…。
【パンッ!】
「アリシア?」
「あ~もう、そこまで言われたら私も協力しない訳にはいかないじゃない。折角母さんが居ない間に好き勝手に研究出来ると思ってたのに…」
アリシアは両手で頬を叩いて気合いを入れる。
「ユーリさん、ヴィヴィオから預かったバルディッシュを貸して下さい。私が修理します。」
「は、はい。私もお手伝いを…」
「ありがとうございます。でもユーリさんには別のお願いがあるんです…Stヒルデにチェントを迎えに行ってそのまま無限書庫に戻って貰えますか? 調べて貰いたいことがあるので、調査依頼は…教導隊じゃなくて研究所から出します。」
「え?」
首を傾げるユーリを見てアリシアとモニタ向こう側のヴィヴィオはニコッと笑みを浮かべ頷いた。
こうして皆が動き始めていく…
「事件を見直せって言ったって…」
一方、指揮船に残ったアリシアはというと異世界の自分から言われた言葉を繰り返し呟いていた。
通信用のウィンドウは繋がったままだけれど、映っているのは研究所の壁だけで向こう側に居た大人アリシアは何処かに行ってしまい姿が見えない。
切ってもいいんじゃないかと思うけれどもう1度繋げられないのでそのまま置いておく。
『事件を見直してみて。事件の鍵はイリスとユーリ。そっちじゃユーリの眠っていた紫天の書は無い。紫天の書が無いならアンブレイカブルダークも…エグザミアも無いかも知れない。それを踏まえて考え直してみて。ヴィヴィオが戻った時すぐに動ける様に』
確かに夜天の書を護る為に生まれ、永い時間旅をしてきたのであれば紫天の書、アンブレイカブルダーク、エグザミアとは全く関係がないとも思える。
「一旦、前の事件と違う事件と考える…」
瞼を閉じて考える。
今まで起きた事を時系列順に並べていく。
エルトリアが滅びそうになって惑星再生委員会は作られた。
イリスはテラフォーミングユニットとして惑星再生委員会が作った。
イリスが遺跡を調査していた時にユーリを見つけ、ユーリは惑星再生委員会の一員になった。
それから何かが起きて委員会の職員の殆どが死んで、イリスも動けなくなって、ユーリも消えた。
ユーリが消えた方法は自身を闇の書に蒐集させたからで、闇の書事件があってその時に闇の書に蒐集されていたユーリは切り離されて結晶になってオールストン・シーを作る時に見つかり、水族館に置かれた。
キリエとイリスが会って、グランツの病気とエルトリアを蘇らせる為に永遠結晶を探しに日本に来てアミティエは2人を追いかけてきた。
永遠結晶への鍵ははやての持っていた夜天の書、そこで眠るレヴィ達を起こしてユーリを探そうとした。レヴィ達は予定通りユーリを見つけた。
イリスはユーリを呼び起こし、何かを命令した…
イリスから命令されたユーリはヴィヴィオ達と戦って一時的に正気に戻ったけれど直ぐにイリスに連れて行かれた…。
そして今イリスの隠れていた場所が判って包囲したらイリスが増えて出てきた…
「どうしてここに来たのかはユーリがここに居るって調べたからで…、実際にレヴィ達が見つけたんだよね…。さっきヴィヴィオが私達の時間に来ていたらって言ったけど、夜天の書は時間に関わる魔法は使えないから多分時間軸は越えられない…だからここは予め絞り込まれていたって考えた方がいいよね?」
自問自答しながら考えをまとめていく。
「レヴィ達を起こしたのはユーリを見つける意味もあるけど、倒す為でもあった…。イリス1人じゃ勝てないのは前に判っていたから…で、イリスはユーリを洗脳した…ん?」
経緯と疑問を照らし合わせた時、違和感があった。
「どうして…イリスはキリエに嘘をついて騙さなきゃいけなかったの? 1人じゃここに来られないからだったとしても、『友達を見つける為に手伝って』とか言えば…」
「それにここに迷惑をかけてっていうのは判るけど、目的がユーリへの復讐だけなら…はやてに夜天の書を返してユーリを連れてエルトリアに戻って復讐すれば、ユーリはもう逃げられない…」
「それにユーリを洗脳出来たならそのまま連れ帰って『騙していてごめんなさい、私の目的は果たせたから今度はユーリの魔法を使ってエルトリアを再生しましょう』とでも言えば少し問題はあるけど管理局に邪魔されない…なのに隠れてまでここに居る…どうして?」
幾つかの疑問が解けたけれど逆に生まれた疑問が何処にも繋がらず浮き出てきた。その結果は…
「…イリスはまだ何かしようとしてる…目的はユーリへの復讐だけじゃない…」
テーブルの横に端末を使い通信を行うエイミィが出た。近くにクロノのウィンドウも映っていた。
「気になってるんですけど…イリスの目的って…本当にユーリへの復讐だけでしょうか?」
『えっ? どういう意味?』
エイミィが驚いている。
「イリスの目的がユーリへの復讐だけなら目覚めさせたら終わりですよね? エルトリアを復興するつもりなら叶った後はキリエさんに協力してエルトリアに戻った方がいいし、アミタさんもキリエさんと目的は同じエルトリアの再生なんだから争う必要もないと思うんです。もう目的は果たしたんだからわざわざここに残って管理局と敵対する必要…ありませんよね?」
『…ああ、僕もそれが気になっていた』
クロノが答える。彼も同じ疑問を持っていたことで考えが間違っていないと確信する。
『すまない、まだこの事件には判らない事情がある。彼女達にとって君やヴィヴィオは想定外らしい。君達なら僕達よりも上手く事件解決出来るかも知れない。何か気づいたら教えてくれ』
「わかりました」
そう言うと通信を切った。
次はヴィヴィオが戻ってくる前に情報収集を始める。幸い置かれていた端末で幾つかの場所が表示出来た。
「ここからは…私達も知らない事件だ…」
何が起きるのかしっかり見ておかなくちゃいけない。
親友に伝える為に…。
通信を切ってからクロノはアリシアに驚いていた。
「ヴィヴィオにも驚かされたがアリシアも凄いな…」
『そんなに凄いの?』
「物理攻撃だけでイリスに1撃を与えていたのもそうだが、はやてやフェイト…僕たちもついさっき見つけた事件の先に彼女は1人で辿り着いたんだ。限られた情報しか無いのに」
クロノの下には彼女達が動き出した時からとアミタの聴取情報したデータを持っていない。それでも同じ疑問にたどり着いていた。
「大局的に全貌を見渡す目と見定める思考は持っている。エイミィ、アリシアとヴィヴィオから何か頼まれたら優先して動いてくれ。それが事件解決への近道かも知れない。」
管理局として事件を向き合い解決する決意には変わりはない。だがそれよりも早く解決出来るなら…、彼女達に任せたい。
そう思った。
~コメント~
なのはReferction・Detonationの世界に行くとしたら、砕け得ぬ闇事件でのシュテル達も登場させたいというのはAffectStory2の構想段階から決めていました。
ヴィヴィオとアリシア、マテリアルズの4人がどんな風に関わっていくのかお楽しみ下さい。
●コミックマーケット96についての情報です。
新刊は「リリカルnanohaAffectStory2~刻の護り人~中巻」を予定しております。ただ現在アクシデントが起きており、夏コミにサークル参加できるかが不透明になっています。わかり次第再度告知いたしますのでお待ち頂けますようお願いいたします。
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