第15話

 翌朝、日が昇る前に私は目が覚めた。
 フローリアン家では休む場所が無かったので、私とアリシア、プレシア、リインフォースの4人は惑星再生委員会近くに作られた居住棟の1部屋を借りていた。
 眠っている3人を起こさない様にそっと外に出る。
 目を瞑ってリンカーコアの鼓動を感じる。
 いつも通り強い鼓動を感じる。疲労はない…。

「本当に…みんなのおかげ…プレシアさん、アリシア、ユーリ、イリス、シュテル、ディアーチェ…レヴィ…」

 みんなに感謝してるし、巻き込んでごめんねとも思っている。
 それでも…やっとここまで来られた。
「一緒に頑張ろうね、RHd♪」
【Alright】

 愛機に声をかけると答えてくれた。
 遠くの山裾から日が昇ってくるのを眺めながら決意を胸にする。

「居ないと思ったらこんな所に居たんだ。」

 声が聞こえて振り向くとアリシアがいた。

「ごめん、起こしちゃった?」
「ううん、そろそろ起きなくちゃって時間だったし」
「そっか…」
「ヴィヴィオ、聖王様達へのプレゼント…叶えたいね。」
「えっ? 何の事?」
「私達やディアーチェ…リインフォースに話してくれた理由が嘘とは言わないけど、本当の理由があるんでしょ。」
「…やっぱり凄いよ、アリシアは。」

 ため息をついて呆れる様に言う。

「彼女に私達の世界を見て欲しいんでしょ? いつも誰かと戦っていた時じゃなくて概ね平和な世界を…、オリヴィエやイクスみたいに…」

 誰にも話していない理由がある。
 私を助ける為に消えてしまった…オリヴィエ・ゼーゲブレヒト。
 彼女がイクスの中に居ると気づいた時からリインフォースと逢って欲しいと思っていた。
 戦乱の世ではなく、平和なこの時間で…。
 それが私の願い。
 その願いまであと少し…

「大丈夫、ここまで来たんだから。ママ達を信じよう。」
「うん」
 差し出された手を握り返して頷いた。 


 

「ヴィヴィオ、気をつけて行ってきなさい」

 少し多めの朝食を済ませて私達は惑星再生委員会の本棟の屋上に来ていた。

「はい。」

 プレシアとアリシア、そして…

「リインフォース、また会いましょう。」
「ユーリ、また後でな」

 ユーリが見送ってくれる。昨日2人で色々話していたらしい。リインフォースは夜天の書を抱き抱えている。

「リインフォースさん、いくよっ」
「ああ」

 私の手を取ったのを見てバリアジャケットを纏いその世界から飛び立った。

  
   
「っと…着いた?」

 戻って来たのはアースラの中。部屋にあるベッドでははやてが安らかな表情で眠っている。

「そのようだ…」
「じゃあまた後で」

 そう言って私はその場から飛んだ。


「…あの様な者が居るとはな…」

 夜天の書を元あった場所に戻しながらリインフォースは呟いた。
 つい先日戦った相手なのに彼女は敵意すら持って居らずリインフォースを完全に信用していた。
 これまで何度も繰り返されてきた悲しみがこの様な形で終わるとは…昨日の自分には考えも着かなかっただろう。
 その時ドアがノックされて女性の管理局員が入ってきた。

「リインフォース、さっき魔力っぽい反応があったんだけど変わったところはない?」
「いや…気づかなかった。我が主の様子も特に変わっていない。」

 彼女は少し首を傾げた後

「わかった。何かあったら連絡してね」

 そう言うと部屋を出て行った。
  


「っと…寒っ!」

 翌朝、海鳴市の臨海公園に飛ぶと雪が積もっていた。
 あまりの寒さに慌ててコートを出して着込む。
 まだ日は昇っていない。

「準備しなくちゃ。」

 そう言ってプレシアから貰ったセンサーを飛ばして何度か行った岸壁へ向かわせるがそこには誰も居なかった。

「えっ!うそ、どこ? RHd急いでリインフォースさんの反応を探して、ママ達でもいいから急いでっ!」

 慌ててRHdに頼むと山の裾野にある公園に集まっているらしい。
 急いでセンサーを向かわせる。すると 

『あかん、止めてっ! リインフォース、止めてっ!!』

 聞こえてきたのははやての叫び。続けて送られて来た映像にはリインフォースとなのは、フェイト、シグナム達…。術式を使う準備をしているところらしい。
 既にベルカとミッドチルダの魔方陣が展開されている。
 撮影した場所とは違っていたのだ。朝からセンサーを出して待っていようとかんがえて居たのが功を奏した。

「急がなくっちゃ!」

 私はバリアジャケットを纏って空間転移した。

「主はやて、1つお願いが…。私は消えて小さく無力な欠片へと変わります。もし良ければ私の名はその欠片ではなく、あなたがいずれ手にするであろう新たな魔導の器に贈って頂けますか?」
「『祝福の風リインフォース』、私の魂はきっとその子に宿ります。」

 転けた車椅子から投げ出されたはやてに話すリインフォース。
 彼女が立ち上がり様に、私を見つけて一瞬こっちを見る。

「主はやて…守護騎士たち…そして小さな勇者たち…ありがとう…そしてさようなら…」
(今っ!)

 術式が起動した。私はプレシアから預かったストレージを出して上空へと空間転移、転移直後にプログラムを起動。
 星の欠片のように散っていた光の中からいくつかの光が流れてきてストレージの中に入る。その中で1つ大きな光がストレージに入らずに私の周りを揺蕩う。

「これは…あっ!」

 それは彼女からはやてへの贈り物だった。
 私はそのプログラムを起動し、生まれてきたものを手放した。金色の十字を飾ったペンダントは意思を持つかの様に主の元へと落ちていった。

「ばいばい、またね」

 私はそう呟くと、ストレージを大事に持ってその時から飛んだ。




 それから数日後経ったある日の夕方、私とアリシアは八神家に居た。
 予めはやてに連絡を取っていて、今日が全員が揃う日だと聞いていたからである。

「それで2人揃ってどうしたん? また何か考えてるん?」

 リビングのソファーに座るはやてが笑って言う。

「まぁ、考えてると言われれば考えてるんですけど、ほらヴィヴィオ」

 アリシアに促されて私は1歩前に出て、デバイスの中に入れていたものを彼女に渡した。

「本? …なんかのデバイス?」
「はい、魔力コアで動く書物型ストレージデバイスの試作品です。ベルカ式用だからってプレシアさんに運用テストを頼まれたんですが、私じゃ上手く使えなくって。」
「それではやてさん達にテストをお願い出来ないかなって相談しに来たんです。」
「へぇ~もうそんなもんまであるんやね。凄いな。」

 感心しながらはやてはパラパラとページをめくる。

「ええよ、面白そうやし。みんなで使えば色んなデータも取れるしな。レポートはプレシアさんに送ったらいい?」
「いいえ、テストデータは彼女が集めますので、その辺は気にしないでください。」
「「「「彼女?」」」」

 一緒に話を聞いていたシグナム、シャマル、ヴィータ、リインが首を傾げる 
     
「本の最後にデータを管理する管制システムが入ってます。起動してみてください。」

 言われるままはやては巻末を開いてそこに書かれていたプログラムを起動した。
 本から金色の光の欠片が生まれて部屋の中に溢れ出す。
 やがてそれは人の形となって光は消え、その姿を現した。

「え…?」
「……」
「う…そ…だろ」
「!?」
「リインフォース…なのか?」

 全員が立ち上がり驚く。
 普段冷静なザフィーラまで口をあけてその姿を見ている。
 その様子を見て私とアリシアは笑みを浮かべ頷く。

「そんな…わかった、撮影のデータ使って作った新しい管制プログラムやろ? よくできてるな~」
「お前達、これを見せたかったから来たのか? 私達を驚かしたいのはわかったが、悪ふざけにも程があるぞ」
「ああ」

 引きつった笑みを浮かべて言うはやての横で、シグナムとヴィータに睨まれる。

「いいえ、私達そんなプログラムを作って渡す程意地悪じゃないですし、悪戯しません。」
「うんうん、私もはやてさん役をしてみんなの気持ち知ってるんです。みんな、私の魔法を知ってるでしょ。ここの闇の書事件直後から来て貰いました。いろんな人に手伝って貰って防衛システムとか色んなのと繋がってた中から管制システムだけを切り離して。」
「夜天の書に入っていないので浸食もされません。そもそもストレージデバイスの管制プログラムになって貰ったので魔法を使ったりリインさんみたいにユニゾンは出来ませんが…。安全はママ、プレシア・テスタロッサが保証します。」
「それじゃ…本物?」
「はい、ご立派になられましたね、我が主」

 リインフォースがそう言った直後、八神家は文字通りお祭り騒ぎになった。



『急いで家に来て』

 はやてからメッセージを受け取ったなのはとフェイトは仕事を早々に切り上げて落ち合い八神家に向かった。
 ヴィヴィオとアリシアが八神家に言っているのは朝食時にヴィヴィオから聞いていた。
 何かあったのか? ヴィヴィオだけでなくはやて達八神家全員への通信も念話も繋がらず、フェイトが運転する車で急いで向かう。
 夜も更けた頃、八神家の前に着いて車を降りる。八神家の1階は明かりが点いていて人影も見える。チャイムを押すが誰も出てくる様子が無い。はやてを呼ぶがそれでも同じ。

「はやて、入るよ。」

 フェイトがそう言って家のドアを開けて中に入り、リビングへと向かった。

「はやてちゃん、ヴィヴィオ!」

 リビングの扉をあけて駆け込むとそこには

「おう、早かったな」
「急に呼んじゃってごめんね~」

 ヴィータとシャマルが声をかけた。

「「えっ?」」

 呆気にとられる2人。

「はやてちゃんとヴィヴィオは?」

 2人が苦笑しながら指さす。

「「え…ええーっ!!」」

 声を揃えて驚いた。

「遅いよ~なのはちゃん、フェイトちゃん~♪」
「はやてさん、飲み過ぎだって…わわっ! だからってくっつかないで~、ママ~助けて~」

 顔を真っ赤にしてグラス片手にヴィヴィオに絡むはやてと絡まれて半分涙目になっているヴィヴィオ。そしてアワアワとどうすればいいのかわからず近くで狼狽えていたのはリインフォースだった。
 ダイニングとリビングのテーブルには色んな料理と飲み物が所狭しと並んでいる。

「…一体何が…」
「…起きてるの? リインフォース?」

 唖然と立ち尽くすなのはとフェイトに…

「すまない、余程嬉しいらしい。美味しいものを色々食べて欲しいと言って沢山頼んでしまった。2人も好きなものを食べてくれ。」

 シグナムは2人分の取り分け用の小皿と飲み物を持って来る。

「シグナム、これって一体…」
「ヴィヴィオとリインフォース…は無理か。アリシア、悪いが話してくれ」

 そう言うと彼女はキッチンへと向かった。

「フェイト…なのはさん、はやてさんに呼ばれたんですね。」

 苦笑いするアリシア

「姉さん、何が起きたの?」

 はやてに絡まれない様、離れたところで様子を見ていた彼女にフェイトが聞く。

「えっと…簡単に言っちゃえば…ヴィヴィオの我が儘でリインフォースさんを闇の書事件から連れて来た。勿論、みんなに影響しないようにして…」
「ええっ!?」
「防衛システムの侵蝕とか全部外して、更にママが作ってくれた専用デバイスに入れて来たんだけど…はやてさんが舞い上がっちゃって…」
「アリシアもいっぱい食べてな~っ♪」
「は~い、美味しく食べてますよ~」

 はやてに言われて振り返って笑顔で答える。

「と…こんな感じに…嬉しいのはわかるんだけど、まさかここまでなっちゃうなんて…」

 しかしなのは達の方に向き直るとハハハと疲れた笑みを浮かべた。              そこまで聞いてなのはとフェイトは顔を見合わせクスッと笑う。

「そっか…アリシア、ヴィヴィオを手伝ってくれてありがとう。私達も前からリインフォースさんを連れてこようってしてるんじゃないかなって思ってたんだ。」
「ヴィヴィオ、1年くらい前から私達にも内緒で無限書庫で色々調べてたし、少し前にはやてをブレイブデュエルの世界に連れて行ったりしたでしょ。それで準備をしてるんだな…って。それに母さん達も色々動いていたみたいだったし。あっちもちょっとね…」
「よく見てるね…? ママはストレージデバイスを作ったり色々調べてるのは知ってたけど…リンディさんも?」

 アリシアが首を傾げる。彼女にも伝えていなかったらしい。
 フェイトは耳打ちすると彼女は目を見開いて驚いた。

「アハハ…私達が手伝わなくても出来るよね…、まったく…敵わないな~」

 そう言って3人ははやてとヴィヴィオの所にスリッパを鳴らして駆け寄るのだった。



 翌朝、はやてが目覚めるとそこは自室のベッドだった。
 体を起こすと頭が痛い。
 昨日は嬉しくて舞い上がってしまった。

(夢…やったのかな…)

 ベッドから起きようとした時、ドアをノックする音が聞こえた。

「は~い、起きてるよ~」

 そう言うと彼女が部屋に入ってきた。

「おはようございます。我が主」

 彼女の顔を見て微笑む。夢ではなく夢が現実で叶ったのだと…。

「おはよう、リインフォース♪」
 
  

     
 一方の高町家、日が昇らない内に2人は目覚めた。

「…おはよ、ヴィヴィオ」
「おはよう~、ってアリシアどうして起きてるの? まだ朝早いよ?」

 一緒のベッドで眠っていた彼女が起きていたことに驚く。

「失礼ね~、最近は早起きしてるの。ちょっと朝練に行ってくるね。バルディッシュ」

 アリシアは借りたパジャマを脱いで下着姿になってバルディッシュに声をかけるとジャージ姿に変わった。

「私も行こうか?」     
「平気、ジョギングと少し動くだけだし…」

 と言ったところでドアがノックされて開き、フェイトが顔を見せた。

「姉さん、私が一緒に行こうか? 今日は私もなのはもお休みなんだ。」
「いいわね、ってことで行ってきます。」
「行ってらっしゃい」

 ヴィヴィオはアリシアを見送ると、自身も着替えてベッドの上に正座し目を瞑る。
 リンカーコアを感じその鼓動に耳を傾ける練習。魔法を使う時や鎧を纏う時、この練習が役立っている。

 
  
「おはよう、ヴィヴィオ…」

 フェイトとアリシアが家から出て行くのを見送った後、なのははヴィヴィオに声をかけようと彼女の部屋へと向かった。ドアの半開きになっていた隙間から覗く。
 瞑想というのだろうか? 暗い部屋の中で彼女を淡い虹色の光が包んでいた。
 ヴィヴィオとヴィヴィオのデバイスはユニゾンすることで相乗効果によって魔力を引き上げている。相乗効果の元になる魔力が上がればその差は何倍~何十倍にもなる。
 逆に言えば同じ魔力量でも同じ量の出力に抑えられればより長時間魔法が使えるようになり、魔力も枯渇しない。
 ただ、その制御は酷く難しい。
 戦闘中や極限時にそんなところまで気にする余裕が作れない。だから低ランクの魔導師は1つ1つ強い魔法・得意な魔法があっても自身の魔力量を抑えられない者が多い。結果魔導師はどこかで冷静に魔力運用することの大切さを身を以て知ることになる。
 その前に教えるのがなのは達の仕事の1つでもある。

(近・中・遠距離での魔法も…あの魔法もあるから魔力切れは致命的…それに気づいての練習…。)

 2年前に時空転移が使えるようになった時ではリインフォースを連れて来たくても出来なかった。
 1年前だと強くなる魔力を制御しきれてなかった。
 色んな偶然もあっただろうが、そのきっかけも彼女が日々欠かさず練習してきた結果。 

(私達より強くなっちゃったかな…ううん、私も頑張らなきゃね)

 娘の成長を見て嬉しく思いながらも彼女の練習の邪魔をしないよう、そっとドアを閉めた。
 


 場所と時間が少し変わって、テスタロッサ家では珍客が泊まっていた。

「よく眠れたかしら?」
「はい、チェントが抱きついてなかなか離してくれなくて…」

 アリシアが高町家に泊まった機会にイクスが泊まりに来ていた。
 昨夜はチェントと一緒に眠っていた。
 キッチンで朝食を準備していたプレシアは目覚めにとお茶を出す。
 そんな時、通信コールが鳴りプレシアはウィンドウを出した。通信相手はリンディ。

『朝早くにごめんなさいね。』
「かまわないわ、私も連絡しようと思っていたから。イクス様が一緒だけれどいい?」
『ええ、イクス様、おはようございます。』
『本局側では魔力コア専用デバイスの管制人格について、撮影時のデータを私からあなたに提供したって形にしたわ。誰も本物だとは思わないでしょうし、管制システムだけなら指定遺物にもならないし、データからあなたが作ったって言えば問題にもならないでしょうね。』
「それでいいわ。実際、教会からベルカ式デバイスの試作も頼まれていたから良い機会だった、彼女にはデータ収集と解析を頼むつもり。定期的に報告を貰えばいい。ここでの暮らしに慣れてくればイクス様と一緒に資料の編纂や調査をしてくれれば…、そこは私からカリムに話しておくわ。」
「そうですね。私よりも彼女の方が知っている事も多いでしょう。」
「それより、あなた達の方はどうなの?」

 端末に顔を向けるとリンディが少し顔を赤らめる。

『暫くは療養…なんだけど、その間にどうするか決めて貰うつもりよ。まさかこんな事があるなんて…本当に吃驚しすぎてどうしたらいいか…まだ気持ちが追いついていないのよ。』
「そう言っているけれど嬉しいんでしょう? 贈り物だと思って受け取っておきなさい」
『そうね、みんなに話せないのが申し訳ないのだけれどこればかりはね…。そっちも何かあったら連絡して、それじゃ。イクス様、彼女のことよろしくお願いします。』

そう言うとリンディからの通信は切れた。

「夜天の書の守護者、リインフォース。彼女に会える日が来るなんて…ヴィヴィオもそうですがプレシア達も凄いです。それより…リンディさんに言っていた『贈り物』って何ですか?」

 イクスがプレシアに聞く。彼女はクスッと笑った後。

「はやての家族、リインフォースを連れてくる為には夜天の書の完全修復か防衛システムと管制システムを切り離すしかなくて、ヴィヴィオは私や夜天の書を知る者に協力を求めるしか無かった。」
「…でも、そんな条件がなく彼女だけで出来る事もあった。」
「ヴィヴィオだけで?」
「リンディの夫、クライド・ハラオウンは闇の書事件が起こる前に亡くなっている。回収した闇の書が輸送中に暴走してリンディ達を巻き込まない様に小型艇で持ち出して…小型艇は爆発、四散したそうよ。小型艇にはクライドと一緒にもう1人乗っていた。その人の息子は私達も会った事がある、撮影で管理局広報で来ていた彼よ。小型艇が爆発した場所と時間は管理局のデータに残っている…。」
「ヴィヴィオの友人、ティアナの兄、ティーダ・ランスター。彼も任務中の事故で亡くなっている。こちらも事故が発生した時間は管理局のデータに残っているわ。」
「その2つの事故は時間も場所も状況も詳しいデータが手に入る。手伝わなくてもいいわよね?」
「まさか…」
「そのまさか。彼らは海鳴で療養中。私達も桃子と士郎さんから連絡を貰って驚いたのよ。そんなこと出来る子、1人しか居ないでしょう?」

 苦笑いする。
 過去から連れてこられた自身にとって3人も同じ立場だから何も言えない、チンクの姉やギンガの母の様に連れてくると現在に影響がある者は連れてきていないから考えて使っているとも思える。プレシア自身も小言くらいは言いたかったけれど、リンディが泣いて喜ぶ様を見てそれ以上何も言えなかった。

「プレシア、これからもヴィヴィオに協力してあげてください。」

 声色が変わる。オリヴィエに変わったらしい。

「ヴィヴィオは遠見の魔法が使える状態になっています。遠見の魔法は夢として過去や未来を見る魔法です。無意識に見えているもの…起きると忘れている未来…そこで彼女達の力が必要になるかも知れません。」
「彼女の我が儘かも知れませんが、その発端が夢であれば…時と場所を自由に行き来し強大な魔力を持つ彼女でも越えられない壁が目の前に現れた時、その時があなた達の真価を見る時なのでしょうね。」
 その言葉を聞いたプレシアから笑顔が消える。彼女は簡単に頷くことができなかった。


 一方で、時を場所を越えたエルトリア。
 教会の前でディアーチェは景色を眺めていた。
 ただ眺めているというには表情は景色と異なり曇っていた。

「仕事、全部シュテルとレヴィに任せちゃってなにしてるの?」

 イリスとユーリがやってきた。

「いや、この前に来たヴィヴィオが気になっていてな…」
「無関係な自分達や博士達、エルトリアを救う程の器量を持っているのにここの彼女は助けられないと言い切っていた。その様子に違和感を感じたのだ。」
「あやつらにはその方法が出来なくても他の方法を探そうとする柔軟さがあった。それなのに…あこまで言い切ったのには理由があったのではないかとな…」

 空を眺めながら言うと、イリスがハァ~っと大きなため息をついてから言った。

「あのね…ヴィヴィオが言ってたでしょ、責任を持てないって。それが答えなんじゃない?」
「ユーリ達の魔法も、私達のフォーミューラーも普通の人から見ればあり得ない力でしょ。ヴィヴィオのはその範囲が広いだけ。何でもかんでも頼ったら私達は成長しないわ。」
「過去の責任を受け止めて、過ちを受け入れて、それで明日に進まなきゃ。エルトリアを蘇らせて、グランツ君とエレノアちゃんを助けて、私だけじゃなくて所長や他のイリスまでここに連れてきてくれた。ここまでしてくれたのに更にどうして助けなかったなんて…」
「私なら『そうですか~じゃあ後は勝手にして頂戴っ!」』って怒って家に帰るわ。」
「そうですね。私も昔にそこまで言われちゃったら夜天の書の中に入って他の世界に行っちゃいますね。」
「…そうだな。我等に出来ることをしなくてはな」
 
 イリスの話を聞いてユーリはクスクスと笑い、釣られてディアーチェも笑顔になる。

 だが、それでもディアーチェの心の中にはそこまで拘った『アインス救出』が何かの予兆なのではないかと…何かが靄の様に残っていた。

~コメント~
 AgainStory4は幾つかの章で構成されています
 ・ノーヴェを主人公としてVividStrikeの話が繋がる章
 ・アリシアを主人公としてとらいあんぐるハート3からの剣術的な話
 ・ヴィヴィオ、アインスを主人公としたアインス復活の話
 暫く続きますのでお楽しみに

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