【コンコン】
「どうぞ~♪」
時空管理局ミッドチルダ地上本部にある執務室でドアを叩く音が聞こえて、部屋の主であるはやては声をかけた。
「失礼します。ご無沙汰しています、八神司令」
入ってきたのは本局広報部の彼だった。笑顔で出迎える。
「こちらこそご無沙汰しています。」
「アリシア…滅茶苦茶強くない?」
グランツ研究所の所長室でデュエルを見ていた大人ヴィヴィオは驚き頬を引きつらせながらら隣に居る大人アリシアに聞く。
「うん、あっちのヴィヴィオを奮い起こさせる為に言ったつもりだったんだけど…アレは凄いわ。でも…流石にセーフティは要るんじゃないかしら。あんな模擬戦…じゃなかった、デュエルをしたら…疲労も凄いわよ。」
「「えっ?」」
グランツと大人ヴィヴィオが驚いたのと同時に八神堂のポッドからアリシアとフェイトは出てこられず、ヴィヴィオとシュテル、レヴィ、ディアーチェの肩を借りて出てきた。
「シュテルすっごく強くなってた。本当に驚いたよ。」
カプセルから出た直後、ヴィヴィオとシュテルは歓声に迎えられた。
「ありがとうございます。ヴィヴィオ…少しだけいいですか? 一緒に来てください」
「? うん…」
そう言われてヴィヴィオはシュテルの後をついて行った。
「失礼します。」
ついて行ったのは八神堂ブレイブデュエルのオペレーションルームだった。部屋の中で操作していたリインフォースが振り返って声をかける。
(シュテルのパイロディザスターと同じ魔力値だったから相殺される筈なのに出来なかった。それにクロスファイアシュートを真似されちゃうなんてっ)
舞台が市街地に移り近接戦から空中高機動戦に変わってヴィヴィオはシュテルの強さに驚いていた。
必死に飛んで離れようとするが彼女はぴったりと後ろを追いかけてくる。アクセルシューターも全てパイロディザスターに潰されて寧ろ使えば使うほど窮地に陥っている。先にスターライトブレイカーを使う為にアクセルシューターの1個を空に放ったけれど、しっかり潰されてしまった。…しっかり研究・対策されている。
それに…
翌朝、子供ヴィヴィオ達やチェントと別れてヴィヴィオ達はグランツ研究所へ向かっていた。
少し違う街並みを見てみたいとも思ったけれど、また事件に巻き込まれたくないという思いの方が強くて、それに…
「小さいなのはさんもかわいかったけど小さいユーリさんやディアーチェさんもいいよね♪」
何度か時空転移をしていたけれど、この世界の様に魔法文化が無い世界は初めてで、そんな世界になのはやフェイト、アリシア、ユーリやディアーチェ達が居てグランツやスカリエッティ、元ナンバーズ達が居てみんな仲がいいのだ。
ここに居るヴィヴィオの顔を見て彼女がこの世界が好きな理由がわかった。
この世界は聖王のゆりかごや古代ベルカという枷を持つ者にとってここは心から安らげる世界…
「………」
「…………」
「………………」
ヴィヴィオ達が帰ってから少し時間が経ったグランツ研究所の居住スペースのダイニングでは
「………」
夕食の一時を静かな…重い空気が部屋を包んでいた。その理由はというと…
「…………」
【Master.Call me】
相棒の声にヴィヴィオは強く頷く。
「うん、いくよレイジングハート、セェエエットアーップ!!」
右手を天に掲げ叫んだ直後ヴィヴィオの身体は虹色の光に包まれた。
「博士…ヴィヴィオのジャケットが変わりました。名前は…えっ? セイクリッド?」
「名称は同じですが、セイクリッドとは細部が違います。」
「そうだね似ているが…エクセリオンの上位派生か?…これは一体…」
「……行ったわね」
「…行きましたね~」
「行ったな」
「行っちゃいましたね」
虹色の光が消えるのを見送りプレシアとマリエルはフゥっと息をついた。マリエルの肩に乗ったリインとアギトはん~っと両腕を上げて伸びをしている。
4人が出来ることは全てした。
後は任せるしかない。
でも心配はしていない。何故ならプレシア自身が消えずにここに居るのだから。
「虹の橋、それがヴィヴィオの使ってた魔法?」
「うん。時空転移じゃなくて私の願いを鍵として魔導書同士を繋いで転移するみたい。」
ヴィヴィオとの練習は1勝1敗1引き分けで終わった。
ヴィヴィオが前より良い顔をしていたのがわかったから私も嬉しかった。
ヴィヴィオ達がシャワーで汗を流している間に休憩しているアリシアにさっきの事を話した。
「イメージを送る方法が違うのかな…」
「わからないけど、みんなが戻って来たらここから飛ぼう。」
「連続転移になると辛くない?」
「今なら出来る気がするんだ。大丈夫!」
「……スゥ……スゥ…」
私が瞼を開くと彼女の顔が目の前にあった。
「……ん…あ、眠っちゃったんだ、私…」
「おはよう、ヴィヴィオ」
瞼を擦りながら上半身を起こすと、マリエルの声が聞こえた。声をかけながらも視線は端末に向いていて手は高速でキーを叩いている。
「あ…すみません…寝てしまいました。」
「いいよまだ寝てて、転移魔法使ったから疲れてたんでしょ。」
時間を見ると既に日は変わってもうすぐ陽が昇る。6時間近く寝ていたらしい。
『ヴィヴィオ君、何か違和感はあるかい?』
デッキに入れたスキルカードを使ってみて前とは少し違う感触に戸惑う。
「前とは少し違った感じがしますけど…でも慣れれば使えると思います。」
「じゃあ早速次のテストだ♪」
「私達とのデュエルです。」
ブレイブデュエルでスキルは使える様になったけれど、実際のデュエルで使っても大丈夫かは別問題。それを見る為にレヴィとシュテルはマスターモードで待っていた。
「ヴィヴィオ、こっちのボクはいつもと違うから全力で来てよ。」
「マスターモードは管理権限が使える他に全ての能力値が強化されています。魔法力は減りませんしので手加減は不要です。」
「ええーっ!それってズルくない?」
「はい、ですからこの姿で会った最初に言いました。『ズルです』と♪ では始めましょう」
ニコリと言うより冷淡な笑みを浮かべる2人を見て軽くテストを受けたのをちょっぴり後悔した。
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