第32話「虹の下へ」

「虹の橋、それがヴィヴィオの使ってた魔法?」
「うん。時空転移じゃなくて私の願いを鍵として魔導書同士を繋いで転移するみたい。」

 ヴィヴィオとの練習は1勝1敗1引き分けで終わった。
 ヴィヴィオが前より良い顔をしていたのがわかったから私も嬉しかった。
 ヴィヴィオ達がシャワーで汗を流している間に休憩しているアリシアにさっきの事を話した。 

「イメージを送る方法が違うのかな…」
「わからないけど、みんなが戻って来たらここから飛ぼう。」
「連続転移になると辛くない?」
「今なら出来る気がするんだ。大丈夫!」

 
「今度は2人で遊びに来てね」
「わかった。」

 ヴィヴィオに言われてヴィヴィオは強く頷いた。それを見て私も笑顔で言う

「今度来る迄にもっと強くなっててよ。じゃないと私とアリシアが圧勝しちゃうんだから。アインハルト、フーカ、リンネもね♪」

 3人が頷くのを見て転移を促す。

「ヴィヴィオ」 
「うん、みんなまたね。」

 彼女が作った虹色の光球に飛び込んだ。



「っと…ここは?」

辺りを見回す。波の音とカモメが鳴く声が聞こえた。見覚えがある

「海鳴だ…虹の橋…私にも使えた。私にも使えるんだ…」

 ヴィヴィオが声を震わせ瞼に涙を滲ませている。内心不安だったのだろう。

「コラコラまだヴィヴィオに会ってないんだから…」

 ヴィヴィオの肩を抱きかかえる。デバイスを取り出して起動させる。しかしデバイスは何も反応しなかった。妹から聞いた通り魔法が使えない世界。

「泣いてないで急いでヴィヴィオを探そう。」
「……うん…」


 海鳴市を歩くとブレイブデュエルという名前を見る。
 ここは確かに目指していた世界だ。

「ブレイブデュエルのある場所に行ってみよう。出来る施設はいっぱいあるっぽいけどここじゃグランツ研究所とT&Hと八神堂がベース店舗みたい。」
「グランツ研究所とT&Hっていうのはわかんないけど八神堂って多分こっちのはやてさん達だよね?」
「グランツ研究所がブレイブデュエルの開発元でT&Hっていうのもテスタロッサとハラオウンっていう可能性もあるんだけど、八神堂の方が間違いないでしょ。もう少しチェントに聞いておけば良かった。」

 まぁそんな余裕もなく事件に巻き込まれていたから今更後悔してもしかたないのだけれど…

「じゃあ八神堂へ」
「うん」

 ヴィヴィオと頷きあって八神堂に向かおうとした時、交差点をフワフワ浮かんで進む物を見つけた。

「ねぇねぇアレって…ユーリさんそっくりじゃない? かわいい♪」
「ホントだ。こっちにはあんなデバイスあるんだ。」

 話しているとユーリをデフォルメした様なものがこっちを見て近づいてきて目の前まで来るとジーッと私達の顔を見る。1分ほど見た後アリシアの手を取ってクイクイッと引っ張った。

「え?」
「私達を知ってるの?」

ヴィヴィオの問いかけに
 コクコクと頷くと再びクイクイと袖を引っ張る。ヴィヴィオと頷き合って彼女?に案内されるまま歩き始めた。

 30分程歩いたところで着いたのは何処にでも有りそうな住宅地に中にある一際目を引く建物。

「ねぇ…ここで合ってるの?」

 コクコクと頷く

「…あからさまに怪しいんだけど、それに…この名前って…」
「うん。」

 スカリエッティ研究所…その名前を忘れる筈がない。
 ジェイル・スカリエッティ…聖王のゆりかごを動かす為にヴィヴィオを作った研究者。

「どうする? 入る?」

 流石に躊躇う。何かの罠がある可能性もあるからだ。そんな時

「ごめんなさ~い、遅れちゃいました。」
「すみませんっ!」

 後ろから声が聞こえて振り返った瞬間私達は固まった。

「わっ! 本当に大人の私だ!」
「大人のアリシアさんっ!?」

 そこに居たのはさっき別れた筈のヴィヴィオとアインハルトだったからだ。
 


「へぇ…2人はここのヴィヴィオとアインハルトなんだ…」

 声を震わせながら聞く。八神堂やなのはやフェイト達が居る世界なのだからヴィヴィオとアインハルトが居てもおかしくはないのだけれど…

「私も驚いちゃいました。博士に連絡貰って急いで来たんです。」
「博士?」
「はい、博士が中で待っています。」

 そう言うと小さなヴィヴィオとアインハルトが私達の手を引いてスカリエッティ研究所へと入った。

「本当に来るとは…本当にアリシア君は凄いね。」
「君達が次の被験者かい?」

中に入った私達を待っていたのは2人の男性だった。その中の1人を見て身構える。

「ジェイル・スカリエッティ…」
「どうしてここにっ!?」
「…はて、君達と会うのは初めてだが?」
「「えっ?」」
「私はグランツ・フローリアン。彼は私の友人で君達が知っている彼とは別人だよ。ここは君達と違う時間軸だからね。」
「どうして時間軸のことを?」

時間軸について知る人は限られている。その者達が時間移動出来ない限り…2人を警戒する。

「残念だが、ここに君達が探しているヴィヴィオ君は居ないんだ。今何処に居るかは僕も知らない。僕達に時間軸への干渉は出来ないからね。だが君達をヴィヴィオ君達の居る場所に送り届けることはできる。」

 どうして私達がヴィヴィオを探しているのを知っているのか? 何か全部見透かされている気がする。

「以前アリシア君…ヴィヴィオ君と一緒に来た彼女から頼まれていたんだ『もし未来に大きくなった私とヴィヴィオが揃って来ていたら。連れてきて欲しい』と」
「私…そっか…アリシアが」

 あっちの私は私達が来る可能性を考えていた。

「いつ来るかもわからないし、みんなに話すと違う未来を作りかねないからね。以前時間移動したヴィヴィオ君とアインハルト君、そしてチヴィット達にだけ見つけたらすぐ私に連絡が来るようにしていたんだ。まさか本当に来るとは思っていなかったけどね」
「えへへ~♪」
「はい♪」

 苦笑するグランツとはにかむヴィヴィオとアインハルト

「やっぱりあの子は凄いよ。ここまでわかってるんだから…」
「…長話もいいが私も付き合わなければならないのか? だったら話が終わったら読んでくれたまえ」

 小さな感動をぶちこわしにする台詞をスカリエッティが言って睨む。

「ハハハ、そうだね。彼の気が変わらない内に行こうか。」



 そうして私達はその時、その場所へと飛んだ。

 そして降り立った直後

「お待たせっ♪」

 その声を部屋中に響き渡らせた。

~コメント~
 来週所用があるので連日更新です。
 前話が大人ヴィヴィオの視点からの話だったので今話は大人アリシア視点で話を進めてみました。

 
 

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