第12話

 ヴィヴィオはアリシアが言った通りイリスに連れられてフローリアン家に戻った。
 『アリシアは明朝戻る』と伝えるとプレシアは「わかったわ」と頷いた。
 そしてその夜、私はシュテル達のベッドで横になった。
 フローリアン家はグランツ夫妻・アミタ・キリエの住居を増築して客間とシュテル・レヴィ・ディアーチェ達3人の部屋が作られている。
 彼女達の部屋は個室ではなく、1つの大部屋でその大部分を1つの大きなベッドが占有していた。
 時々ユーリが泊まっていくらしく、大きめのベッドにはシュテル達3人と私くらい寝るには十分だった。
 横になって木造の天井を見つめながら今日のことを思い出す。
 
(ズルい…か…)

 イリスの言葉が心に残っている。
 彼女が同意してくれないかも知れない…と思っていた。
 彼女にとって亡くなった惑星再生委員会のスタッフは家族も同然。
 だから私の魔法を同じ様に使えば助けられる可能性にすぐ気づくだろうと…。
 でもユーリやフィル・多くのイリスが戻ったエルトリアであれば彼女を宥めてくれるのではないかという打算的な考えもあってここに来た。
 それでも…

「魔力の限界…責任は取れない…か…」

 私の用意した返事は誰にも言い返せないもの…そう、私以外には。
 
(こっちにも私がいて、時空転移が使える様になってくれていたら…)

 その時は彼女と協力して叶えられただろう…でも、その可能性はかなり低い。
 何故なら、こっちのジュエルシード事件・闇の書事件に「ここの私」は関わっていない。
 私と同じ様に時空転移に目覚めていれば、そのきっかけはジュエルシード事件になる…。
 当時のなのはやフェイト、はやて、リンディ達管理局のメンバーが私を見ていれば私のことを知っているからだ。でも、ここでの彼女達は私を知らなかった。
 だからせめて未来に私が生まれる可能性を残すことしか出来なかった。

「ヴィヴィオ、イリスの言葉は気にしないでください。彼女もそこまで求めてはいないでしょう。」
「シュテル…ごめん、起こしちゃった?」

 隣で眠っていたシュテルが私の方を向いた。

「ずっと考えていました。『ヴィヴィオの我が儘』と言っていましたが、 本当の理由を教えてくれませんか?」
「えっ?」
「アリシアやプレシアにはあなたの我が儘と言っていましたが、本当にあなたの我が儘だけですか?」
「あなたの日々と魔法を守る為に、はやてと交流はありますね。彼女にとって同じ古代ベルカの魔法を使うあなたにとっては先輩にもあたります。それだけでなく恩義も感じているでしょう。でもそれはあなたがはやてや彼女の家族に対しても同じですよね。」
「うん…」
「であれば、はやて達が頼まなくても家族の抜けた穴を感じていた筈です。それを補おうと忖度しても不思議ではありません。」
「その気持ちが…あなたの我が儘になっていませんか?」
「………それは」

 彼女にジッと見つめられて言葉に詰まる。
 計画が成功したら…はやて達の笑顔が戻る。それを見たいという気持ちはあった。  

「シュテル、そこまでヴィヴィオを虐めるな…、ヴィヴィオ、シュテルも我等も協力するのが嫌な訳ではない。寧ろ我らに出来ることがあるなら喜んで協力する。」
「我らとユーリを助け、アミタとキリエは家族が救われ、ユーリはイリスや所長達との関係が戻り、皆が望んでいたエルトリア全土を蘇らせてくれた。」
「小鴉達の協力や過去のデータがあったからと言っていたがヴィヴィオの魔法…ヴィヴィオ達が居なければここでこの様に眠ることも出来なかっただろう。それ程皆は感謝している。」
「だから余計に気になって…心配なのだ。」
「何かがあってアインスを連れて来ようと考えたのであれば相談に乗ると、アリシア達に相談できぬ話も別世界の我らであれば気にならないだろう。」

私はベッドから起き上がり座る。 
 
「少し長い話になるけどいい?」

 そう前置きしてヴィヴィオは話を始めた。
 自身の出生と高町ヴィヴィオになった経緯、魔法に目覚めた時のことと失敗したこと…
 その中でリインフォースにも何度か会っていて実際に戦った事もあること…
 
「リインフォースさんからもっと色々教わりたい、話したいと思ったから彼女を連れて来たいと思った。私が経験して教わったことを残しておけば、将来私の子供や…私と同じ様に時空転移を使う者が生まれて…迷った時に同じ悩みにぶつかると思うから…。だから私の我が儘なの。」

 勿論シュテルに指摘された様にはやてや八神家のみんなの気持ちも知っている。
 でもそれは彼女達の気持ちや願いなだけでシュテルが言った通りこの魔法を使うのはどうかと思ったし、アリシアもその為に使うのは反対だと言っていた。
 今度の事は彼女達は勿論、家族にもこの事は話していない。
 みんなに話すのは計画が全部成功した後。


 話終えた私はフウッと息をつく。
 しかし直後

「嘘だな」
「ですね」

 シュテルとディアーチェは即答した。

「嘘じゃないよ!」
「今話したのは、アリシアやユーリ、イリス達を納得させる為に考えた建前だ。」
「前々から考えていたのも、はやて達が歩き出したのを見て決めたのも本当だろう。夜天の魔導書を知っているユーリと知り合ったことも一因だろう。
だが、それらは全て動機にはなっても実際に行おうとはしない。ヴィヴィオが動こうと思ったきっかけを教えて欲しい」

 瞼を閉じて考える。
 動くきっかけになった事はある…でもそれを言えば彼女達が納得するだろうか?
結局…

「ごめん…わかんない…」

 私は誤魔化すことしか出来なかった。
   


「んにゃ……ふぁあああ~」

 翌朝、ヴィヴィオが目覚めるとベッドにはシュテル達の姿は無かった。

「っああああっ!」
「…って、それっ!」

 外から声が聞こえる。レヴィと…アリシアの声だ。

「……ああっ!」

 ベッドから飛び降りると急いで服を着替えた。
  
「おはようございます…」

 キッチンに行くとプレシアとエレノアが朝食を作っていた。

「おはよう、よく眠れたかしら?」
「ディアーチェがよく眠っているから寝かせてあげてって、疲れていたのね。」
「えへへへ…」

 夜更かししてましたとは言えず誤魔化して笑う。

「手伝います。」

 そう言ってテーブルに全員の取り皿を並べ始めた。

 暫くして

「みんな~ご飯だよ~!」

 外に向かって声をかけると、シュテルとディアーチェ、イリス、グランツ、そして少し遅れてレヴィとアリシアが入ってきた。それぞれ席につく。

「わぉ美味しそう♪」

 朝食はパンとスープとサラダ、それと…

「これは?」
「向こうで似た料理があったから作ってみた。料理って言うほどのものじゃないんだけど。味付けしてあるからそのまま食べてみて。」
 ハムの真ん中をくり抜いて卵を落として焼いたもの。くり抜いたハムはサラダの付け合わせになっている。ハムを焼く時に少し多めの塩と香辛料をかけておくと卵と合わさって丁度良い。
 目玉焼きやスクランブルエッグだと取り分けや後片付けで手間がかかる。そこで作ってみたのがこの料理だった。

「すっごく美味しい!」
「確かに…」
「うむ…」
「色々レパートリーも作れそうね。委員会でも作ってみようかな」

 思いのほか好評で思わず笑みを浮かべた

~コメント~
 本作はAgainStory4 1巻に収録されている話の原話になります。
 imaさんが残してくれた話を静奈が整えて上記の話にしましたが、Webだけでも原話を残したいと考えていました。
 ただ、本サイトのパスワードが判らず色々していたところ、先日imaさんのご家族から譲り受けたPCの中にらしきものがありましたので、こうして更新にこぎ着けました。
 前話から酷く時間がかかってしまい申し訳ありません。
 ASヴィヴィオ達の最後の活躍を読んで頂ければ幸いです。

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