第13話

 朝食を食べた後、片付けをシュテルとディアーチェ、レヴィに任せて外にあるテーブルでプレシアが計画の詳細を話した。

「アリシアとヴィヴィオはこれから元世界、闇の書事件直後に行きなさい。防衛システムが破壊された後…はやてがアースラに運ばれた後、アースラにリインフォースと夜天の書を連れて戻ってくる。ヴィヴィオ、あなたは何度か同じ時間に行っているわね? それは『写本』を使っていた頃よね?」

 プレシアに聞かれて思い出す。
 私がその時間に行ったのは過去に2度
 1度目は改変した時間を戻す為、ここで彼女と戦った。
 2度目はクリスマスにはやて達に映像を贈る為、彼女に会いに行った。
 どちらも悠久の書になる前の写本を使っていた。
「はい。」
「それなら『修正力』は動かないわ。あなたが昔のあなたに会わない限り影響もないでしょう。ここに連れて来た後、ヴィヴィオはリインフォースを説得しなさい。その間、私達は夜天の書を調べる。もし防衛システムと管制システムを切り離せても彼女の同意がなければ何もせずに返す。」
「あなたの我が儘なんだからそれ位責任を持ちなさい。」

 消える覚悟をした彼女と会話の上で合意を取る。

「はい」

 深く頷いた。
  
「切り離せたらこれを使うわ。」

そう言って1冊の本をテーブルの上に置いた。

「これは?」
「魔力コアで動く書物型ストレージデバイスの試作版。古代ベルカ式で使える様に調整してある。作る際にイクスにも色々調べて貰ったから後で礼を言いなさい。」
「彼女の同意を得たら、切り離した状態で夜天の書と彼女を元の時間、元の場所に返す。翌日に使う崩壊プログラムに手を加えて発動した瞬間にここに入れて再びここに戻ってくる。」
「その後、私達が防衛プログラムの残骸が無いかを確かめ…はやてに渡す。連続転移から2報復になるから魔力消耗はかなり激しいものになる。あなたの行動次第で全てが変わる…心して望みなさい。」
「はいっ!」

 
   
 イリスがフィルとユーリを迎えに行くと車に乗って行ってしまった。
 その姿を目で追いかけた後、

「アリシア行くよ」
「うんっ!」

 バリアジャケットを纏い、聖祥小学校の制服を着たアリシアの手を繋いで元世界の闇の書事件直後のイメージを送って飛んだ。
 
「っと…ここは?」

 辺りが真っ暗な町、その中のあるマンションの通路に飛んだ。

「事件の日のハラオウン家、フェイトだったらここからゲートで飛べるでしょ。」
「なるほど! 部屋にはどうやって入…あっそうか!」
「そういうこと、飛ぶよ。」

 靴を脱いでリビングへと飛んだ。中は真っ暗で誰も居ない。そ~っとフェイトの部屋を覗くと彼女が眠っていた。枕元に置かれていたバルディッシュが反応する。

「バルディッシュ、私、ヴィヴィオだよ。こっそり来てごめんね。アースラに行きたいからゲート使わせて。」

 小声で言う。

【…Yes】

 バルディッシュもフェイトを起こさない様小さな声で返事をする。リビングに戻ると淡いミッドチルダの魔方陣が浮かび上がっていた。
 バルディッシュが起動させてくれたらしい。再び靴を履いてバリアジャケットを解除しゲートを使ってアースラへと向かった。

「っと…今度ははやてを探さなくちゃ。多分医療室…だよね?」
「えっ? 知らないの?」

 驚くアリシア。

「この時はママ達と来てたからアースラには来なかったの。今頃凄く疲れて寝ちゃってるし、もしママ達に聞いたら『どうして知りたいの?』って…」
「逆に怪しまれちゃうか…バルディッシュ、リインフォース…夜天の書の反応わかる?」
「あっそうか! RHdも調べて」

 数秒後、2人のデバイスは同じ座標を示した。ヴィヴィオはアリシアの手を取って空間転移する。
 魔力消費よりもここにいる時間をなるべく短くして誰にも会わないようにした方がいい。
 


(安らかな寝顔だ)

 アースラ内の居住区の1室、リインフォースは彼女の主、はやての眠るベッドの横でその寝顔を見つめていた。何か異常があれば連絡する為に残っている。
 シグナム、シャマル、ヴィータ、ザフィーラも残ると言ってくれたのだが、戦闘の疲れもあるからと頼んで帰って貰った。
 守護騎士システムを切り離し、後は防衛システムが主を蝕まない様共に逝けばいい。
 これでいい…これで…。これ以上望むのは都合が良すぎるというものだ。
 そんな時、間近に魔力反応を感じ立ち上がってベッドを回り込んではやてを守る様に前に立った。

  
「っと、見つけた。」
「待って、ジャミングかける」

 空間転移の後、彼女を見つけた私は駆け寄ろうとしたが、アリシアに止められた。
 彼女は予め用意していたのか、スカートのポケットから見慣れぬデバイスを出して動かした。
 アースラのセンサーやカメラに私達の痕跡を残さないように準備していたらしい。

「…もういいよ。」
「ありがと。リインフォースさん、やっと会えました。」
「お前は…聖…ヴィヴィオか?」

 彼女は既にあの時の私に会っているらしい。

「はい、あの時から2年位経ってますが、ヴィヴィオです。」
「そうか…我が主に用?」
「はやてにじゃなくてリインフォースさんに用があって…これから私達と一緒に来てくれませんか?」
「すまない、それは出来ない…今は我が主を…看ていなくては…」
「大丈夫です。ここの時間で1分以内に戻って来ます。私を信じて一緒に来てくれませんか?」
「…わかった。」

 彼女が頷いたのを見てはやての眠るベッドに置かれていた夜天の書を取る。

「それは…」
「わかってます。リインフォースさんが持っていてください。」

 そう言って彼女に預ける。

「それじゃ行きますよ~私に掴まってください。」

 そう言うと一気に異なる時間軸のエルトリアへと飛んだ。
           
 
  
「…ここは? 地球ではないな?」

 リインフォースが周囲を見渡す。
 草原が広がり遠くに木々が茂る森や湖が見える。

「ここはエルトリアって言って…」
「リインフォースっ!」

 私が話そうとした時、遮るように叫ぶ声が聞こえた。

「ユーリ?」

 ユーリが涙を浮かべ駆け寄ってきて…リインフォースに抱きついた。

「リインフォース、会いたかったですっ、本当に会えるなんてっ!」

 嗚咽するユーリに彼女とってどれだけリインフォースが大切だったのかを知る。
しかし…

「すまない…私はお前を知らない…私達は以前会っているのか?」

 リインフォースはユーリを優しく話しながら膝をつき彼女の顔を見た。
    
「!? そんなっ、リインフォース…私を…」

 大きく目を見開くユーリ

「…やっぱり…リインフォースさんはユーリと会った事無いんですね。」
「やっぱり…ってヴィヴィオ、何故ですか?」
「私…幾つかの平行世界で闇の書…夜天の書の事件とかその後を見てるの。ユーリやシュテル達…エルトリアと繋がってない世界もあればちょっと違う関係の世界もあった。」
「ほら、ちょっと前に大きくなったヴィヴィオや私と一緒にユーリが来た時があったでしょ? あの時の彼女は『ちょっと違う世界から来た私です』って言ってたの覚えてる?」
「はい…」
「彼女は夜天の書の中に眠る『紫天の書』…その中のある物を守る為に居たの。ユーリは紫天の書を知ってる?」
「いえ、知りません…」
「私達の世界のリインフォースさんが知ってるかは私達もわからなかったの…でも…内緒にしててごめん」
「……すまない…ユーリ、私で良ければお前の知っている私について教えてくれないか。きっとその中には私も知っていることがあるだろう。ここに居る間だけだが、リインフォースだと思って話して欲しい。」
「……はい…」

 グズグズと泣いていたユーリだったがリインフォースに言われてコクンと頷いた。



 ユーリやプレシア達が夜天の書を調べ始めたのを見て、その近くにあった木の幹で出来た椅子に座ってリインフォースに言う。

「リインフォースさん、私と一緒に私の時間に来て貰えませんか?」
「ヴィヴィオの時間?」
「はい、あっちの時間から言えば20年位未来です。私の時間には大人になったはやてさんやシグナムさん、ヴィータさん、シャマル先生、ザフィーラ…それにあなたの名を継いだリインさんが暮らしています。はやてさんは少し前に会いましたよね?」
「…すまない、誘いは嬉しいが私が行けば再び防衛プログラムが…、我が主達を危険に晒すわけにはいかない。」

 そう言うと思っていたから予め答えは準備している。

「それは私達が何とかします。それより大切なのはリインフォースさんの気持ちです。リインフォースさんは来たくないんですか? 一緒に暮らしたいって思わないんですか?」
「そんなことはない。我が主や将…皆との健やかで平和な日々…私がどれ程望んだのか…」
「だったらっ!」
「だからだ。ヴィヴィオの気持ちは嬉しい…だが、闇の書…夜天の書に込められた呪いは簡単に解けるものじゃない。」
「多くの者が必死になって解こうとしたが出来ず、『闇の書』と呼ばれたのだ。」
「我が主の眠る部屋に戻してくれないか、残り少ない時間を我が主と共にしたい。」

 彼女の意思は硬かった。
 彼女は夜天の書に入っている防衛プログラムがどれ程のものなのか誰よりも知っている。説得を頑なに拒否する彼女にどう言えばいいか悩んでいるとアリシアが口を開いた。

「リインフォースさん、ご挨拶がまだでしたね。私、アリシア・テスタロッサって言います。あなたが戦ったフェイトの姉です。」
「…よく似ているな」
「リインフォースさんがそう思う理由も知っていますし、気持ちもわかっています。あっちを見て下さい。」

 そう言って部屋の奥で幾つもウィンドウを出して話しているプレシア達を指さす。

「あこに居るのは私のママ、プレシアは魔法学者です。ベルカ式魔法を使うヴィヴィオのデバイスを修理したり、ベルカ語のプログラムについても凄く詳しいです。」
「隣に居る子はユーリと言ってこの世界の夜天の書と一緒に旅をしてきました。彼女は古代ベルカにも詳しいですし、夜天の書のプログラムを使っていました。はやてやなのは達に似ている子達は彼女達のデータと夜天の書のプログラムを使って生まれています。彼女達もベルカ語をよく知っています。」
「私を含めて全員ヴィヴィオに助けられてここに居ます。ヴィヴィオの魔法がなければここにみんな集まるなんて出来ませんでした。ここにはリインフォースさんが思ってるよりも凄い人達が集まってるんです。」
「ヴィヴィオがさっき言った様に防衛プログラムとかはやてさんを浸食してしまうかもというのは私達が何とかします。」
「それよりも大切なのはリインフォースさんの気持ちです。私達はヴィヴィオが『あなたを連れてきたい』っていう我が儘を聞く為に集まりました。あなたがはやてさん達に会いたくない、来るつもりがないならそれもあなたの意思だと思います。だけど…私達の聖王様の我が儘…聞いてあげて貰えないでしょうか?」
「リインフォースさん、防衛プログラムとか夜天の書が…とかを抜きにしてあなたは来たいんですか? 来たくないんですか?」

 一気にまくし立てるように言う。

「王の我が儘か…臣下であれば聞くのは当然だろう…わかった、ヴィヴィオ、お前達のところに連れて行ってくれ。」

クスッと笑ったリインフォースはそう答えた。
 思わずアリシアとハイタッチする。

「ありがとうございます。リインフォースさん。」
「リインフォースさん、さっき臣下がって言いましたけど私達は違いますよ。ヴィヴィオは大切な親友です♪ 彼女、騎士ですら嫌がるんだから臣下なんてもっと嫌がっちゃいますよ。ママ~、リインフォースさんが来てくれるって♪」

 大声でプレシアに言う。
 しかし答えたプレシアの表情は暗く重かった。

「ヴィヴィオ、アリシア、リインフォースも来てくれるかしら?」

~コメント~
本話はAgainStory第13話「未来への扉」とリンクしています。
本話でのアインスは今まで会ってきた別世界のアインスではなく、ヴィヴィオの居る時間の過去に居た彼女で、ヴィヴィオ・大人はやてと会った後を考えていた様です
10年越しのフラグ回収って(汗)

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