時間軸同士の衝突を止めた私達は元の時間に戻って来ました。
写本…ううん、悠久の書は刻の魔導書より私のイメージ通りに転移出来るみたいで、アースラ毎時空転移した数分後に戻って来れて騒ぎも起きませんでした。
「ヴィヴィオ、今日も無限書庫?」
AffectStory~刻の移り人~で突然現れた成長した高町ヴィヴィオ。
彼女がやって来た発端は事件の中に秘められていた。
「ねぇ、これ…変じゃない?」
無限書庫で調べ物をしていたヴィヴィオにアリシアが1冊のファイルを持ってきた。
「これ…10年以上前の艦船情報でしょ。変ってどこが?」
「うん…ここ」
そう言って彼女が指さしたのは1隻の艦船の補充機材リストだった。
アミティエ、キリエ姉妹と異世界のヴィヴィオ、アインハルト、トーマ、リリィが去り、オリヴィエと別れたヴィヴィオ。
でもその頃新たな事件は起きていた。
なのは達と契約したマテリアル達、彼女達は元通りそれぞれ契約者の家で暮らす事になった。
でもそんな中で…。
その日翠屋のドアには貸し切りの札がかけられていた。
中からは賑やかな声が聞こえてくる。
ヴィヴィオやアリシア達異世界から来たアースラスタッフとアミティエ・キリエ、ユーリを含むマテリアル達、未来から来たヴィヴィオとアインハルト、トーマとリリィ、そしてこの時間のなのは達が初めて顔を揃えたのだ。
カウンターで2人のはやてと嬉しそうに話すリインフォースとリイン、その奥の厨房では桃子・士郎とプレシアに何故かセイン加わり料理を次から次へと作って大皿に盛り合わせる。
瞼を開くと何処かで見た林の中に立っていた。…木の陰に小さな動物が倒れている。
怪我をしているのだろうか?
駆け寄ろうとして2~3歩足を進めた時、既視感が起こり立ち止まる。
その時こっちへ駆けてくる足音が聞こえた。
「なのはちゃ~ん」
走ってきた少女は木の陰に横たわる小さな動物を見つけ駆け寄り抱き上げる。
『ヴィヴィオ、ディアーチェが再起動した。フェイト達と一緒にそっちに向かってる。もう少しだから頑張って』
アリシアから念話が届く。
(待ってたよっ!!)
待ちに待った瞬間だった。
舞台は全て整った。
ここまではU-Dを消耗させながら時間を稼ぐ為の戦い。
「オリヴィエさんが私を試してた理由…これだったんだ。」
U_Dが魄翼を広げ大量の魔力弾を放つ。
それを迎撃しようとヴィヴィオもシューターを作り撃ち出す。レリックを取り込み聖王化して出力の上がったシューターと魔力弾が2人の間でぶつかり消えた。全くの互角。
「だぁああああああ!!」
ヴィヴィオの拳がU-Dの作り出した巨大な鍵爪とぶつかる。その激突で空気が震えた。
RHdの中もコアだけでなくジュエルシードまでもが発動していて、増幅機能も全開状態。それでも互角でしかない。
溢れ出す魔力を必死に制御しながら四肢に魔力を込めぶつける。
何度か激突した後、U-Dが離れた。
【その力は人間に過ぎた力だ、すぐに壊れるよ。】
「また会えたね」
魔力の強さで目で見える程空間が歪んだ場所。そこに1人立つ少女の前に私は降り立った。
【前の…ゆりかごの聖王…いや違う。】
「オリヴィエさんを知ってるんだ。今私達と一緒に居るんだよ。ううん、今はそんな事を話しにきたんじゃなくてあなたを助けに来たの。このままじゃあなたはずっと迷子のままだからって」
【迷ってはいないよ…私はずっとひとりでこれからもひとりだから。】
「それが迷ってるって言うの。1人が楽しいならそれでもいいよ。だけど、そうじゃないでしょ? 本当は誰かと繋がりたい、一緒に居たい。誰かの為に何かをしてみたい。違う?」
【叶わない夢は只の幻だよ。何も違わない】
「オリヴィエさん、私オリヴィエさんと会ってから色々考えたんです。どうして私達を含めてベルカ聖王だけがそんな魔法が使える様になったのかなって。」
並んで歩き始めてすぐヴィヴィオは話始めた。
オリヴィエは彼女の話を何も言わずに聞く。
「闇の書、リインフォースさんはこの魔法と資質を【聖王の血に課せられた呪い】【世界を統べる為の代償】だって言ってました。私も時空転移でママ達や友達が消えた時凄く怖くてそう思いました。でも…今はそう思いません」
「レヴィがこっちに来たってほんと?」
「クロノさんが見つけてこっち向かったって。もうアースラに着いてる。」
キャロと別れてからヴィヴィオは自室で眠りについた。だが朝早くドンドンとドアを叩くアリシアに起こされる。
「レヴィが来るよっ」
その言葉で飛び起きたヴィヴィオはアリシアと一緒にスタッフルームへと急いでいた。
ヴィヴィオは部屋に戻った後寝付けず外部通路から外を眺めていた。
窓の外には幾つもの星と青い地球が見えている。
「私…U-Dに全然歯がたたなかった。私じゃ無理なのかな…」
話せば何とかなると思っていたけどU-Dは危険があれば排除しようとする。でもU-Dの強さは想像以上でなのは達を逃がすのが精一杯でヴィヴィオ自身もシュテル達が来てくれなかったら負けていた。
(全力なのに、強すぎるっ)
「キャアッ!!!」
U-Dの爪を受け止めようとするが、半端ない強さでそのまま海面に叩きつけられ水柱が上がる。
直ぐさま飛び上がって魔力弾を数発作って牽制する。自己増幅機能を使った攻撃、クロスファイアシュートが直撃している筈なのにびくともしない。
(U-Dにも鎧があるのっ!?)
「キャアアアアアッ!!」
「キリエさんっ!!」
巨大な腕に吹き飛ばされたキリエに向けてU-Dは更に砲撃魔法を放とうとしていた。
(インパクトキャノンで逸らせば何とかっ!!)
射角を変えようと構える。
「キリエ逃げなさいっ!! ヴァリアントザッパー、オーバーブラストっ!!」
ヴィヴィオが訓練室で汗を流していた頃、医務室では先に目を覚ましたプレシアが熱にうなされるチェントの額に塗れタオルをあてていた。
治癒魔法で癒せるのは怪我だけである。
彼女の場合、レリック片を取り込み一時的に聖王化した影響で体内に制御できない魔力が溜まって発熱を起こしていた。
今はオリヴィエの魔法によって体内で暴れていた魔力を抜き取られて和らいでいる。
後はゆっくり休養させるしかないらしい。
「よし、今日はここまで。明日はスターズが思念体待機になるから手伝えない。」
「ハァッハァッ…ありがとう、ございましたっ」
アースラの訓練室で息を整えながらヴィータに頭を下げる。
バリアジャケットの姿で汗だくで息があがったヴィヴィオに比べて訓練服なヴィータとシグナムは息どころか汗ひとつかいていない。
「明日は私が相手をしよう。」
「よ、よろしくおねがい、します…」
「海…綺麗だ」
「そうね、本当に綺麗。」
「でも…僕達どうやって帰ればいいんだろう?」
臨海公園で2人は陽が海に沈むのを見つめていた。
「アイシス…心配してるかな。」
治療の終えた子供のはやてちゃんは家に帰った。
シグナムさん達にはリンディ提督から状況を伝えて貰って家に戻っているから今頃揃って家でゆっくりしているだろう。
怪我をして眠っていたリインフォースさんは翌朝目覚めた。私達の世界では彼女は既に消えているからはやてちゃん達2人とも凄く喜んでいた。
はやてちゃん…リインフォースさんと会えるなんて思ってもみなかっただろう。
ヴィヴィオと悠久の書から光が消えた後、下方に暗闇の中浮かぶ町明かりが見えていた。
「センサー遮断。軌道上やとエネルギー消費が激しいから海上へ」
「アースラ海上へ着水します。ここは…何処でしょうか?」
「ここは第97管理外世界、海鳴市の近く。時間は…闇の書事件から3ヶ月位経っています。」
グリフィスの問いに答えるヴィヴィオ。
「海鳴か~懐かしいな。ん? 闇の書事件から3ヶ月後って…軌道上にアースラ居るんとちゃう? リイン、軌道上を含む周囲に管理局艦船の検索」
「ただいま…」
「………」
「あれ? なのはママ~、フェイトママ~?」
ヴィヴィオは魔力が回復して再び時空転移が使えるようになる前に家に戻った。
理由は2つ、なのはとフェイトにも一緒に来て貰う為、そして…
(通信切って行っちゃったから…怒られると思ってたのに…ママ達どこに行っちゃったんだろう?)
レイジングハートとバルディッシュにも通信出来ない。どこにいるのか?