第21話 「決戦の序曲」

「また会えたね」

 魔力の強さで目で見える程空間が歪んだ場所。そこに1人立つ少女の前に私は降り立った。

【前の…ゆりかごの聖王…いや違う。】
「オリヴィエさんを知ってるんだ。今私達と一緒に居るんだよ。ううん、今はそんな事を話しにきたんじゃなくてあなたを助けに来たの。このままじゃあなたはずっと迷子のままだからって」
【迷ってはいないよ…私はずっとひとりでこれからもひとりだから。】
「それが迷ってるって言うの。1人が楽しいならそれでもいいよ。だけど、そうじゃないでしょ? 本当は誰かと繋がりたい、一緒に居たい。誰かの為に何かをしてみたい。違う?」
【叶わない夢は只の幻だよ。何も違わない】
 私もそう思った時があった。本当のママが居ないって気づいた時、ママと会いたいという願いは作り出されたものだと言われた時、私はずっと1人なんだと絶望した。

「夢があるなら叶えてみようよ。1人じゃ無理なら誰かに頼ってもいい。あなたには叶える力がきっとある。だから」
【憧れるから悲しくなる。それなら目を閉じた方がいい】

 でもママや友達に助けて貰ってその時気づいた。1人なんかじゃないって

「憧れが悲しいなんて言わないで、目を閉じちゃうなら私が開かせてあげるっ!」
【君も…壊れてしまうよ?】
「壊れないよ。私は弱いしいつも失敗してくじけそうになっちゃうけど、前を向いて頑張ればきっと前に進んでいけるって! そんな風に教えて貰った! あなたにも待ってる人がいるんだよ。」
「ちょっと口が悪いけど、家族やみんなの事をいつも想っているディアーチェ。いつも明るくて周りを元気にしてくれるレヴィ。静かにあんまり表情出さないけどあなたを助ける方法を一生懸命考えてくれたシュテル。みんなあなたを待ってるんだよ。だから泣かないで、こっちに来て、みんなの所に」

 私はU-Dじゃなくて【彼女】を助けたい。みんなが待ってる所に連れて行ってあげたい。
 だから…

「私が連れて行ってあげるっ!」


 
 RHdの中には普段眠っている力がある。
 しかしある条件が揃った時その力は目覚める。
 それは【純粋な心の底からの強い思いや願いが伝わった時】

【Armored module Full Drive Startup】

 立ち上った蒼い光柱の中でヴィヴィオのバリアジャケットは弾け飛び、騎士甲冑が体を包んでいた。


 
 アースラのセンサーが高魔力を感知し、艦内に警報が鳴り響く。

「何が起きた!?」
『U-Dを確認、海鳴市南方50kmの地点です。それと…!? ヴィヴィオが接触ですっ!!』

 リインの声が驚きの余り裏返っている。
 直後モニタに映し出されたヴィヴィオとU-Dの姿。

「ヴィヴィオ!? 勝手に何をやってるんだっ。まだ強化プログラムのテストもしていないのに、仕方がない、僕達も」
「クロノ君、今は動かないで。」

 スタッフルームから出て行こうとするクロノ達を合わせた様に入って来たなのはが止めた。

「ヴィヴィオはクロノ君達の作戦開始…ディアーチェちゃんが出て来られるまでの時間を作るつもりなんだ。このままじゃU-Dはもっと強くなって無関係な人にまで迷惑かけちゃうから。」
「しかしそんな勝手はっ!」
「勝手とちゃうよ。艦長の私が許可した。」

 なのは達と一緒に入って来たはやてが答える。

「クロノ…お願い、ヴィヴィオを信じて待ってあげて」

 フェイトがクロノに頼む。 

「これは…U_Dは完全に復活しています。もう私達3人…なのは達と一緒になってかかっても抑えられるかどうか…それを1人でなんて。レヴィ、私達も行きますよ。」
「オ、オウ!」

 クロノの横をすり抜けシュテルとレヴィが出て行こうとするが、後から入って来たアリシアが両手を広げ2人の前に立ちはだかる。

「待って。今は見ててよこっちのお姫様、私の親友の戦い。」



 部屋に入ってきたプレシアはアリシアとモニタに映るヴィヴィオを見て呟く。

「ブースト…使えば暴走するのに…どうして無茶を…」

 悠久の書を持っていると言うことは、レポートを見ている筈なのに…それが彼女の覚悟なのか?

「無茶ではありません。ヴィヴィオは暴走しません。彼女は間違いなくエースですから…」
「そうです。あいつらはそんなにヤワじゃねーです。」

側にいたシグナムとヴィータがモニタを見つめながら言う。

「…そうね。」



 アースラのメインモニタには騎士甲冑を纏ったヴィヴィオとU_Dが映っていた。艦橋のモニタを見つめるオリヴィエ。

 時間の流れは既に決まっている。でもそれは神しか知らない事。
 だからと言って怠惰、投げやりに時間を使う事は捨てるのと同義。
 今ある時間の中で自身の考え、自身の意志で動く事。それが理。
 例え時空転移で何処に行こうと理は変わらない。

 彼女の力、同じ素体でありながら異なる力を宿し進もうとする彼女の意志、その結果が何を意味するのかはわからない。
 でも…いや、だからこそ…

「ヴィヴィオ…あなたを信じます。」



「母さん…姉さん…リニス、その魔法って…まさか」

 フェイトが2人と1匹から出ている魔力に気づいて駆け寄ってくる。

「そんな…急いで結界を」
「いいのよ、フェイト」
「大丈夫だから」

 慌てるフェイトに2人は笑みで答える。

「信じてるからヴィヴィオを。ママもそうでしょ」
「ええ、勿論よ。」
 

~コメント~
高町ヴィヴィオがもしなのはGODの世界に行ったら?
ヴィヴィオとU-Dが遂に激突です。
 先日「なのはINNOCENT」の話が耳に入ってきました。
 ストライカーズやVividやForceの様に大人になったなのは達の話かと考えておりましたら、子供の頃の話だと聞いてびっくり。
 更になのはやフェイトやアリサ、すずか以外にアリシアも登場するとか…しかも連載はRewrite-R連載中な川上修一先生!?
(なのはファンな人は結構知ってると思いますが。川上先生は「syu(大文字小文字わからないです)」という名前でサークルBANDITとして
何冊もなのは関係の同人誌を描かれており、ほのぼの、シリアス、ギャグ、バトルがなんでも来いってくらい凄い漫画を描かれています。)
 
 リリカルなのはシリーズで高町なのはが魔法少女になった事で1期、A's、StrikerSを含め劇場版、コミックと多く、長く続いたシリーズになっています。
 でも良く考えてみればなのはとユーノが会った原因は?、ジュエルシードを積んだ船が事故を起こした原因は? と考えていくと
 1期10話で触れられた
「駆動炉、ヒュウドラの暴走事故によりアリシア・テスタロッサ死亡」
 が発端になります。(Asシリーズでも何度か触れてます)
 何はともあれアリシアが死亡しなければなのはシリーズは始まらなかったのではとも言える重要なキャラクターなので、INNOCENTは超期待です。


 

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