番外編 「記録を辿って」

 AffectStory~刻の移り人~で突然現れた成長した高町ヴィヴィオ。
 彼女がやって来た発端は事件の中に秘められていた。

  

「ねぇ、これ…変じゃない?」

 無限書庫で調べ物をしていたヴィヴィオにアリシアが1冊のファイルを持ってきた。

「これ…10年以上前の艦船情報でしょ。変ってどこが?」
「うん…ここ」

 そう言って彼女が指さしたのは1隻の艦船の補充機材リストだった。
「凄い資材数を急いで集めてるし整備スタッフを緊急招集出してる。資材数からするとフルメンテ出来るくらい…それでその艦船名が…」
「アースラ…」

 入局する前に退官しミッドチルダに展示されている船だが名前はよく知っている。

「それに時期…新暦66年の3月だから…97管理外世界に居た頃な筈…」

 そこまで言われればわかる。母さん達が向こうに居た頃、でもアースラがそこまで壊れたのは聞いていない。
 少し前に新暦65年の年末には行ったが、そこではアースラも健在だった。

「新暦66年の3月に何かが起きた…」
「でもその頃の報告書には何も書かれてないのよ。アースラも定期メンテナンス中に不具合が見つかって急遽メンテナンスしただけだって。それと…4月にリンディさんが契約者を申請しててそこでユーリさんの名前があった。」

 そうなると報告を誤魔化したか…記憶を消した。

(何のために…もしかして…)

 思い出したのは異世界の小さな私。彼女が再び来ていたら…

「気になるよね。だから…これか行ってみない?」
「えっ、ええーっ!!」



「お姉ちゃん話はわかりました。でもどうして私まで行かなくちゃいけないんですか?」

 書庫の隅にある事務室、そこで本を整理していた少女があからさまに嫌だという態度で答える。この辺は同一人物でも全く似なかったのだから不思議としか言い様がない。アリシアと顔を見合わせ苦笑する。 

「う~ん…管理外世界を知っておくのも司書として良い経験になると思うんだけどな~」
「調査依頼もいっぱいあるんです。ユーノ司書長不在の今だからこそしっかり依頼をこなさないと…お姉ちゃん達と違って私は司書ですから。」
「よし判った。帰ったらお姉ちゃん達も手伝う。本気になった私達は凄いよ~♪」
「知ってます。でも…」

 少し揺らいだのを感じ取り 

「ねぇ…一緒に来てくれないかな。私だけじゃ手が足りないかも知れないから。お願いっ!!」
「……チョコポッド…買ってくれるなら…」

 そう呟いた彼女、2人してニコリと笑い。

「じゃあ早速。私は母さんとフェイトに連絡する。」
「わかった。私は…こっちの部屋使える様にしてくる。身の回りの物ならあこに全部ある。足りない物は途中で買ってくるから部屋で待ち合わせね、行くよチェント♪」
「えっ、ちょっと!?」

 彼女の気が変わる前に私は彼女の手を取り無限書庫を飛び出した。



「……まったく強引なんだから…」

 さっさと荷物をまとめ、飛んできたのは新暦66年の3月の第97管理外世界の海鳴市

「アースラ近くにいる?」
「ううん…付近には反応なし。報告書通り修理中かな? 端末があれば使って状況調べられるんだけど…ここにあるとすると…フェイトの家?」
「行って見つからない?」
「行ってみてから考えよう~♪」

 そう言って3人は歩き出した。
 だが少し歩いた時、デバイスから警報が鳴る。【近くに魔導師が居ると】

「魔導師…誰?」

 周りを見回してもそんな様子はなく、上空を見ると小さな点が2つ動いていた。

「…あれは…シグナムさん? 最大望遠」

 モニタに映ったのはシグナムとなのはだった。シグナムが一方的に責め、横薙ぎになのはを胴から真っ二つにした。

「なのはさんを切った!?」
「違う…あれは思念体…」

 その直後思った通りなのはだったものは光に変わって霧散してしまった。それを見たシグナムは剣を納めそのまま飛んで行ってしまった。

「アリシアここを調べて。私は思念体を倒してくる。海鳴市の上空まで現れてるから周辺世界にもかなり出て来てる。アースラの反応もないから…何かあったんだと思う。何か判ったらデバイスに送って」
「うん、気をつけて」

 そう言って荷物を預け、私はバリアジャケットを纏い飛び立った。



 それから1日、思った通り近隣世界に何体もの思念体が生まれていた。あまり被害はなかったみたいだが、このまま地球に来られると戦場になってしまう。
 見つけ次第倒していく。だがその中でもアースラのセンサーどころか居るはずであろう彼女達は誰も現れなかった。
 更に1日が過ぎてアリシアから詳細がわかったと言うメッセージが飛んできた。
 私は幾つかセンサーを撒いて、海鳴へと戻った。

「ただいま~…もうクタクタ…」
「おかえり~って、ウッ…何その臭い。」

 メッセージにあったマンションの1室に入るとアリシアが駆け寄ってきた。しかしすぐに顔をしかめ1歩後ずさる。

「ああ…最後の思念体が海の上だったから…」
「すぐにシャワー浴びてきて。後で着替え持って行くから。シャワーは入ってすぐの部屋」
「は~い♪」

 ここは彼女の言うとおりにしよう。怒らせたら美味しそうな香りが遠のいてしまう。
 シャワーを浴びてすっきりした後、リビングに行くと料理が並んでいた。アリシアとチェントは先に椅子に座っている。
 料理の置かれた席へと座る。

「いただきま~す♪」

 彼女の料理に舌鼓をうった。 



「ごちそうさま…それで何かわかった? ここ使って良いの?」
「シャワー使ってご飯食べておいてそれですか…大丈夫よ。フェイト達は今アースラに居るから。」
「アースラ、戻って来たの?」
「う~ん…そうじゃないみたい。ヴィヴィオ、小さいヴィヴィオのこと知ってる? 多分年はチェントと同じ位…」

 いつもはっきり話す彼女にしては何か曖昧な言い方をする。

「前に…2年くらい前にここの3ヶ月前に来て…会ったよ。異世界のヴィヴィオ」
「多分だけど、そのヴィヴィオ達が来てるみたい。アースラごと」
「アースラごと!?」
「うん、市街から少し離れた岬に結界張って隠れてる。いくつかセンサーを付けてあるから何かあればすぐ判るよ。」

 異世界からアースラごと転移してきた。

(時空転移…私より凄い能力持ってるんだ…)
「ここはね、異世界の母さんと私、チェントの為に借りてくれたみたい。でも…誰か怪我してたみたいで来た時は傷薬とか包帯とかタオルが散らばってた。」
「それと、こっちにも思念体が出て来てて、なのはさんやスバルさん、ティアナさん、フェイトが迎撃してる。でもここだけに範囲絞ってるみたい。あと…報告書に砕け得ぬ闇、アンブレイカブルダーク、U-Dっていう名前が何度か出てくるんだけど…知ってる?」
「砕けえぬ闇…アンブレイカブルダーク…U-D? ごめん、知らない」

 何かの記号だろうか? 聞き覚えはない。

「判ったのはそんなとこ。ヴィヴィオは?」
「う~ん…近隣の3世界に行ってきた。思念体はかなり出て来てた。ここにいるみんなの思念体しか出て来てないから何か起きてるみたい。50体くらいまでは数えてたんだけどあとは忘れちゃった。」
「思念体…ここに出てくる数が少ない分、周りに居たんだね。」
「私もセンサー撒いて来たから明日からまた行ってくる。それでね…さっきから気になってるんだけど、チェント髪型変えたの?」

 ここに来るまでは左右の髪を少しだけまとめて小さなツインテールだった。でも今は全部後ろでまとめている。言わばポニーテール。

「プッ、あのね買い物に行っ時ヴィヴィオに間違われたんだって。」
「お姉ちゃんそれ話しちゃダメって!!」

 そうか…異世界のヴィヴィオも同じ髪型をしているのか…

「いいね、似合ってるよ」
「ーーーーっ!!」

そう言うと彼女はボッと顔を赤めて俯いてしまった。



 翌朝、私は再び近隣世界へと飛んだ。思念体が現れたからだ。
その最中に凄まじく強い魔力反応を検知する。そしてそこには
知らない4人と…

(ユーノさん…)

 2人が魔力反応に接近し、逆にユーノを含め3人が離れていく。
そして直後魔力反応が接近した2人ごと飛んだ。

(転移した!! まさか…海鳴へ?)
『ヴィヴィオ聞こえる!? こっちで凄い魔力反応が出て来た。場所は市街上空』

アリシアからの通信が届く。

「わかった。すぐに戻りたいけど近くにユーノさん達がいる。アリシア、チェントも気をつけて」

 ここで転移魔法を使えばユーノ達に知られてしまう。今は知られない方がいい。私は3人が動き出すのを今か今かと待ち続けた。



「ごめん、こっちでそんなに進むって思ってなかった」
「遅い~っ!って言いたいところだけど、ギリギリ間に合ったみたい。」

 マンションの屋上に居たアリシアの前に降り立つ。
ユーノ達が転移していったのを見届けてから戻って来たから随分おそくなってしまった。

「それで今はどこ?」
「多分あっち…凄い魔力反応がある…」
 指さした方にセンサーを向ける。凄まじい魔力反応が表示される。
「…SSレベル…ううんもっと上だね。多分私だけじゃ無理…」

 ぶつかっても数分持てば良い方だろう。

「そう…じゃあやっぱり…使うしかない?」

 ここは奥の手を使うしかない…彼女を連れ出す口実で言ったけれど本当に使う事になるとは思ってなかった。

「うん…でも今すぐじゃない。私達も寒いし中に入ろう、手…冷たくなっちゃって…。」
 そう言うと2人は歩きだしドアをあけて部屋へと戻った。
(アレを相手にするタイミング…大変な事に関わっちゃったかも)
 


 翌朝早朝、アリシアがアースラへ送っていたセンサーから反応があった。何か動きがあったらしい。リビングに集まりスタッフルームの映像を見る。

【…とまぁ、こちらの事はこちらのメンバーで決めて貰うとして…来る前に話した通り、時間軸同士の衝突原因はアミティエ・キリエの2人が時間移動してきたのが原因です。その影響を受けて異世界のヴィヴィオ、アインハルト、トーマ、リリィもここに飛ばされました。王女、そう考えていいですか?】

 王女? どこかの王政世界の姫か一緒にいるのか?

【ええ、私もそう考えています。時間軸同士の衝突までそれ程余裕はない筈です。】
「えっ?」
「はい?」
「うそ…」

 はやてに王女と言われ答えた女性を見て3人は固まった。
 同じ髪色と虹彩異色の瞳の王女…

「まさか…オリヴィエ・ゼーゲブレヒト?」
「嘘っ!?、何百年前の人だと思ってるの」
「でも私あの顔見た事あるよ。歴史書で…チェントも知ってるよね?」
「私も…そうだと思う…私達の複製母体…オリヴィエ・ゼーゲブレヒト…」

 あっちのヴィヴィオは何という人と一緒にいるのだ。
 思わずハァーとため息をついた。



「ヴィヴィオ、作戦まで少し時間あるけどどうする? 状況は判ったしあのメンバーなら戦力も十分。私達は見てる?」

 リビングのモニタをずっと見ているとコーヒーカップを渡しながらアリシアが聞いてきた。
 モニタ向こうのヴィヴィオは会議が終わってからも席を一歩も動かず何かを考えている。

【ねぇシュテル、U-Dは今どこに居るか知ってるの?】
【はい、先の戦闘空域から離れていません。隠せる魔力ではもう無いでしょうから強い魔力反応が出ている筈です。】
(…そうだよね…そうじゃないとわざわざ3ヶ月前に来ないよね、あっちの私は) 
【そう、私始まるまでちょっと休んでくる。】

 そう言ってヴィヴィオはスタッフルームから出て行ってしまった。

「う~ん…2人とも屋上で準備しておいて。私だったら1人でも…U-D…ユーリさんを助けに行くと思うから。」
「U-D…ユーリさんなんだね」

母さん達を含め誰もがみんなU-D、ユーリさんを倒そうとしている。でもヴィヴィオは1人それに納得していない様に見えた。今彼女が動くなら…それはユーリさんと1対1で戦ってシステムU-Dを止めてディアーチェさん達に託す。

「了解。」

3人なら何とか彼女の手助けくらい出来る筈だ。



「フルドライブで20分…全力だと10分くらいしか持たない。それ以上は…2人とも…」
「わかってる。我が侭につきあわせてごめんね。」
「私も…同じだから…助けたい。」
「じゃあ行ってきます。行くよレイジングハートっ!」
【StandBy Ready Setup】

 胸に輝いたペンダントを外し生まれたバリアジャケットに身を任せる。そして、魔力反応の強い場所へと飛び立った。



私が魔力反応のある場所へと着く前に戦闘は始まっていた。
前に見たバリアジャケットとは違うジャケットを纏ったヴィヴィオ。

(騎士甲冑…あっちの私も持ってるんだ)

 変なところで感心してどうすると言われそうだが思わす感心していた。しかし、寒気がゾクリと走った後ヴィヴィオの魔力量が一気に上がった。
 この力は…覚えている。

「レリックを取り込んだ…自分の手で」

 彼女は私が越えられなかった壁を既に越えていたのだ。
 戦闘を見る限りユーリさんとヴィヴィオは互角、今のままでは行っても足手まといにしかならない。
 そう思っているとクロノさんやシグナムさんの思念体がヴィヴィオめがけて襲ってきた。そして…

(時の庭園の…魔導騎兵! クロノさん達は思念体か…魔力ちょっと借りるよヴィヴィオ)
そう言って周りの魔力を一気に集める。ここで勝負をつければ知られてもそれ程影響はない。

「スタァアアライトッ、ブレイカァアアアッ!」

 ユーリさんと魔導騎兵の集団へ集束砲を撃ち込む。そして私は奥の手を起動させた。

『アリシア、チェント行くよ!!』



 その頃、マンションの屋上にはアリシアとチェントが離れて立っていた。

『アリシア、チェント行くよ!!』

その合図と共に、用意していた魔法を起動させる。

「チェントいい?」
「うん」
「接続術式魔方陣と増幅魔方陣展開。システム起動。コアリンク」

 3角形の古代ベルカとミッドチルダの魔方陣が現れ、2人もバリアジャケットへと切り替わる。そして…
 2人の立ち位置がそれぞれの頂点になり、残った1つの頂点が虹色に輝き始める。

「レイジングハート2nd・3rdのユニゾン、制限解除、増幅スタート」

 アリシアの言葉でチェントの纏ったバリアジャケットが弾け、同時にヴィヴィオのジャケットも弾け2人は同じ騎士甲冑へと切り替わる。
 そう、これが3人の奥の手。
同じ遺伝子を持つ者同士、同じ系譜のデバイス持つ者同士を繋いだ多重同期システム。そしてそのシステムを制御する高度な演算能力者。
 自己増幅がどうして自身の体に影響があるのかを追求した事から生まれたシステム。増幅魔法が術者を蝕む理由、それは制御しきれない魔力が体内外を痛めつけるから。だったら制御はより高度な演算能力者が行えばいい。そうする事で2人の魔力を相互増幅させ一時的にオーバーS以上の魔力を得る。
 彼女達の母が考え設計し、起動キーとなるデバイスを作ったシステムがこれだった。
 ヴィヴィオかチェントの魔力を飛躍的に上げる利点の反面、残った2人を無防備にし、制御者に高度な演算能力が求められるという欠点がある。

「虹色のブレイカー!?」
【ゆりかごの聖王?】
「聖王が1人だなんて思わないでよっ、私の時間なんだからっ!!」

 離れたユーリさんめがけて何発か砲撃を撃ち込む。しかし全て何かに遮断されている。ブレイカークラスでないと通らないらしい…唇を噛む。

(っ! 奥の手でもこの程度か…ブレイカーレベルじゃないと効かない)
『子供の私、私じゃこれ位しかできない。…お願い泣いてるユーリさん…彼女を助けてあげてっ』

 今の私じゃユーリさんを助けられない。だったら頭を切り換えて思念体と魔導騎兵をなぎ払う。

「クロスファイアァアシュートっ!!」

 30発の魔力弾を集束させ周りの魔導騎兵を一気になぎ払った。

「勿論♪」

 すれ違い様に互いのパンと手を叩き合う。

「いくよ…U-Dっ!!」



「チェント…まだ大丈夫?」
「うん…平気。もう少しなら」

 リンカーコアとデバイスの直リンク増幅はどうしても弱い方に負担が来てしまう。アリシアは2人のリンク処理をしながらも騎士甲冑を纏いながらも目を瞑って集中している妹を気にする。

『アリシア、チェント全力出すよ』 
「チェント…」
「うん…なんとか」
『判った。3分が限界だよ。』

 魔方陣の輝きが一気に増した。



(ヴィヴィオ…何するつもり?)

 何体目かの小さなフェイト母さんを消した直後、ヴィヴィオ達の様子を見る。2人の上空に居た母さん達が皆散開し、ヴィヴィオの両手が強く輝いていた。恐ろしい魔力量だが動きが止まって格好の的になっている。
 ユーリさんも狙っているし、上空から魔導騎兵が迫っている。

『アリシア、チェント全力出すよ』
『…判った。3分が限界だよ。』
「それだけあればっ十分!! クロスファイアァァシュートッ!」

 ユーリさんとヴィヴィオの間に体を割り込ませクロスファイアシュートで上空からの魔導騎兵を一掃し、黒い翼から出た魔力弾を聖王の鎧を広げて受けきる。
 魔力弾の1個1個が凄く重く、魔力がどんどん削られる。

(こんなの…相手してたんだっ!!)
「ヤァアアアッ!」

 止んだ一瞬を狙ってユーリさんを思いっきり蹴り飛ばす。

「ハァッハァッハァッ…あんまり持たない…からっ…」

 これ以上は…私はともかく彼女が限界だろう。

「もういいよ、ありがと。出来たから。」

 そう言うと

「ハァアアアアアッ!!」

 彼女めがけて突っ込んでいった。遠くから子供の母さん達が来る。シュテルさん達も一緒でヴィヴィオとユーリさんを囲む様に3方に分かれた。

(私も上に居ちゃまずい。後は任せたよヴィヴィオ)

 慌ててその場から転移した。



「只今、2人ともお疲れさ…」

 リンクを解除してマンションの屋上に転移した私が2人に声をかけようとした瞬間、暴風と共に空へ何本もの虹の橋が架かった。2人もその光景に目を奪われている。

「凄い…綺麗…」
「…あれ…ヴィヴィオじゃないよね…あっちの子供のヴィヴィオ?」
「うん。多分彼女が主軸…」

 ユーノさんとプレシアさんから教えて貰った時空転移。その中で時空転移が原因で幾つもの並行世界が出来ると聞いた。
 並行世界はある時点に時空転移能力者が関わると元の未来と変わった未来が生まれるらしい。
 昔、私が行った世界でそんな未来が生まれていたらと考えていたけれど、もう1人の私と会った時、私達の現在は彼女が作ったんじゃないかと考えて悩んだ。
 アリシアに話したらそんなのどっちでもいいじゃないと笑い飛ばされてしまったけれど、ここでまた彼女に会えてアリシアが笑った理由が判った気がした。

「あ~もうヘトヘト…アリシア、チェントありがとう。つきあってくれて」
「うん。部屋で休んでから、帰ろう。そして明日から…」
「調査依頼を片付けます。遅れた分ちゃんと手伝ってくださいね…でも…ここに来て楽しか…わ、私先に戻りますっ」

彼女の背を見て2人でクスッと笑う。

「私達も部屋に戻ろう」
(バイバイ…ヴィヴィオ)      
 


翌日の午後、暗くなった部屋にガチャっと音がして光が差し込む。

「ただいま~って…事件の時に滅茶苦茶にしていったから片付けるの…たいへ…!?」

 ハラオウン家のお隣、ママとチェントの看病で部屋の中を滅茶苦茶にしていったのを思いだして片付けようと入って来た。あと数日いるかどうか判らない世界だけど、散らかしたまま帰るのは申し訳無く…
「!?」

 寝室を見ると包帯やタオル、薬を散らかしたままの筈が綺麗に片付けられていた。
 浴室前もそうだし、戻って玄関を見てもきちんと掃除されている。

「…誰が…リンディさん達?」

 その謎はリビングに置かれた1枚のメモを見て氷解する。

「来てたんだ…ヴィヴィオが居たんだから当たり前だよね…」

【思いつめずに気楽にね♪ A.T】

 そのメモをギュッと握りしめて

「会いたかったな~」

 そう思うアリシアだった。    



~コメント~

ヴィヴィオがもしなのはGODの世界にやってきたら?
AgainStory2番外編~もう1人のヴィヴィオの物語~の続き的な話です。
前回から数年が経過し、ヴィヴィオとアリシアは局員に、チェントはヴィヴィオの後を継いで無限書庫司書になってるという前提で話が進んでいます。
本編でもう1度出すなら異世界っぽい状態を思いっきり使っちゃえという事で本編、公式を無視して進めてみました。レイジングハート2nd・3rdや同期増幅とか使いたくても使えない案がありましたのでこの場で一気に使っちゃいました。

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