第19話 「糸口をだどって」

「レヴィがこっちに来たってほんと?」
「クロノさんが見つけてこっち向かったって。もうアースラに着いてる。」

 キャロと別れてからヴィヴィオは自室で眠りについた。だが朝早くドンドンとドアを叩くアリシアに起こされる。

「レヴィが来るよっ」

 その言葉で飛び起きたヴィヴィオはアリシアと一緒にスタッフルームへと急いでいた。 


「レヴィ!」
「あっ、ヴィヴィオとオリジナルのオリジナル♪」

 スタッフルームに駆け込むとなのは達と何か話していたレヴィがこっちに気づいて駆け寄る。

「オリジナルのオリジナルって…アリシアって言った方がはやいような」    

 ボソッと突っ込む

「私もオリジナルのオリジナルじゃなくてアリシアって呼んでくれた方が嬉しいんだけど…」
「え~こっちの方が言いやすいしわかりやすい! オリジナルとオリジナルのオリジナル、ウンウン♪」

 彼女には彼女の中で呼びやすいルールがあるらしい…

「レヴィ、シュテルとディアーチェも無事?」
「うん。僕だけ先に再起動したんだ。そっちの方がシュテルんと王様の再起動が早くなるからって。」

 3人ともU-Dに倒されなかったらしい。良かったとホッとする。



「お~いリボンの子~、あんたがリンディ提督の言ってた【小さなエース】だったんだ。」

 声をかけられ振り向くとクロノの横に2人の女性が手を振っていた。

(あれ? どこかで会ったような…)

 どこかで会った気がして思い出そうとするが出てこない。

「覚えて無いの? レティ提督に頼まれて無限書庫へ案内したの…」
「あっ!! あの時の」

 思い出した。
 ジュエルシード事件の時間に来てしまった時、元の時間に帰る方法を探して管理局へ行った。そこで無限書庫に案内してくれたのが彼女達だった。

(こっちの私も同じ事をしたんだ…)

 リーゼ達が会ったのは私じゃない、この世界のヴィヴィオ。彼女も時空転移出来るってことは同じ事をしたんだ感慨にふける。

「リーゼ・アリアとそっちがロッテ。私達は退職しちゃってるんだけどね。今は民間協力者」
(はやてさんが言ってた民間人ってリーゼさん達だったんだ…)

 リーゼ姉妹やレヴィと暫く話しているとはやてとなのは、フェイトが入って来る。そしてその後ろをキリエとマリエルが続いて入って来た。

「キリエさん」

 U-Dにかなりやられていたから思わず声をかける。

「ヴィヴィオ、お姉ちゃんを…アミタを助けてくれたんだって。ありがとう」
「応急措置しかしてないけど、話くらいは出来るから。ヴィヴィオ、RHdのメンテもしておいたよ」
「ありがとうございます。」

 マリエルからRHdを受け取った。



「全員集まったな。朝早いけど逼迫してるからここでブリーフィングするよ。ちょっと話が長くなるからみんな楽にして聞いて」

 クロノとレヴィ、大人のはやて、なのは、フェイトが前に立つ。
 はやてがそう言うと全員が近い席に座る。ヴィヴィオもアリシアとオリヴィエの横に座る。 

「マテリアル、レヴィから話を聞いた。その結果U-D『砕け得ぬ闇』を倒す方法が見つかった。」
「本当?」

 子供なのはの問いかけに答えずクロノは話を続ける。

「砕け得ぬ闇は、闇の書防衛システム級の耐久力を誇りなおかつ人間サイズで動き回る。白兵戦で倒す必要があるが、僕らが束になってかかっても勝利できる可能性は高くない。」
「だが、レヴィ・シュテル・ディアーチェの協力があれば、倒す事―正確には戦闘動作を停止させられる。」
「クロノ執務官、そこからは私が」

 そう言って入って来たのは

「シュテル!」
「再起動したんだね」

 なのはやレヴィと一緒に立ち上がって駆け寄りそうになるが踏みとどまる。

「おかげさまで。対システムU-Dプログラムは大別するとミッド術式とベルカ術式があります。いずれもカートリッジユニットに装填して使用します。ロードしたカートリッジが効いている間だけ、砕け得ぬ闇を砕くことができます。」
「使用者を決めなくてはいけないんだが、聞いての通りカートリッジ付きのデバイス所持者に限られる。」
「それなら私が」
「私も」
「ベルカ勢だと私とヴィータが」

 この世界のなのはとフェイト、シグナムが手を挙げる。

「充填時間と調整の関係上、4人に完全な形でお渡しするというのは少々困難です。一応4人にお渡ししますが主戦力となる2人を選択して頂ければと」
(…充填時間と調整の関係?)
「なら私が出るべきだろうな」
「あ、シグナムさんは駄目ですよ。私の方が適任です。」
「元は身内の事なんだからすっこんでろよ。」
「だからこそだよ。それに今はもう私達も身内だよ。レヴィと契約してるんだから…今は切れちゃってるけど…」
「「「「「…………」」」」」
(なのはママとフェイトママとはやてさん…シグナムさんとヴィータさんも呆れちゃってる…)

 こんな時に何を言い争っているのかと思っているのが一目でわかる。

「…とまぁ、こちらの事はこちらのメンバーで決めて貰うとして…来る前に話した通り、時間軸同士の衝突原因はアミティエ・キリエの2人が時間移動してきたのが原因です。その影響を受けて異世界のヴィヴィオ、アインハルト、トーマ、リリィもここに飛ばされました。王女、そう考えていいですか?」
「ええ、私もそう考えています。時間軸同士の衝突までそれ程余裕はない筈です。」

 はやてに問いかけられ頷き答えるオリヴィエ。

「マリィさんの話からアミティエ・キリエの両名は異質のエネルギー源で動いていてこっちでは供給不可能ですが戻る位はあるそうです。」
「アミティエ・キリエの2人に巻き込まれた4人を送り届けて元の時間に戻って貰えば衝突は回避できて私達の任務は完了です。」

 はやての言葉に頷く。

「ですが今この世界に危機が迫っています。私達には関係無い世界と言えばそこまでですが、異世界とは言え流石に子供の頃の私や家族、友達を放って帰るのは…ゴメン、無理や」

 はやてが笑った。

「ですから私達元機動6課+αは現地メンバーをフォローして、事件が解決してから帰ろうと思います。意見のある人は自由に言ってください。」

 納得しているのか誰も手を挙げない。
 しかしそこでヴィヴィオは手を挙げた。

「ヴィヴィオ、何か意見ある?」
「えっと、シュテルに聞きたいんだけど」
「私に何か?」
「何かまだ隠してない? 充填時間と調整の関係って言ってたけど…それって4人に渡せるように充填していたらU-Dが先に出てくるの? それともディアーチェの再起動が先にするから?」

 気になったのは何に対する時間なのか。

「…そうだな、4人全員に渡す時間が無いのか?」
「なんなら私らでその時間稼ぎするよ。物理と魔力の波状攻撃も出来るし、もう1度回復状態にさせたら4人と言わず全員の分も作れる。」

 全員の視線がシュテルに集中する。

「…全く…折角計画通りに進んでいたのに…私の目的はシステムU-Dの弱体化です。なのは達がプログラムを使って砕いても中にあるエグザミアを止められなければ何度でもシステムU-Dは再起動し、より強くなって蘇ります。」
「じゃあエグザミアを止めちゃえば。」
「それが出来るのは紫天の書の主、我らの王、ディアーチェだけです。ですからなのは達が弱体化させた所を再起動を終えたディアーチェ、レヴィ、私が暴走したアンブレイカブルダークを上書きしエグザミアの封印をするつもりでした。」
(そうか、シュテルとレヴィ…ディアーチェも…)

 シュテルが話をしている間隣のレヴィが何も言わなかった。言わなかったのは言いたくなかったんじゃなくて、失敗すれば返り討ちにあって消えてしまう…怖いのだ。

「ヴィヴィオ、これでいいですか?」
「うん…ありがとう」
「クロノ執務官、そんな状況ですので先の通り2人の選別をお願いします。」
「了解した…」
「私らはフォローやね。」
「お願いします。」



「………」

 はやて達も艦橋に戻ると出て行き、皆それぞれ持ち場に戻っていった。
 今はクロノ達現地チームとシュテル、レヴィはプログラムの説明をしている。それをヴィヴィオは眺め考えていた。

(………やっぱり…)
(…これしか…ないよね。)

 思いついた方法が我ながら無茶苦茶だと思って苦笑する。
 でも決めたら動く。

「ねぇシュテル、U-Dは今どこに居るか知ってるの?」
「はい、先の戦闘空域から離れていません。もう隠せる魔力ではありませんから強い魔力反応が出ている筈です。」 
「そう、私作戦始まるまでちょっと休んでくる。」

 そう言って部屋を出た。



「…行くのですね。ヴィヴィオ…」

 部屋を出て少し歩くと後ろから声をかけられた。歩みを止める。
振り向かなくても誰だかわかる。

「オリヴィエさん、こうなるの…知ってたんじゃないですか? 闇の書の防衛システムより強くて防御も硬くて無限の魔力を持ってる。そんな小さな女の子相手に全員一緒に戦える訳ないじゃないですか。」

 笑って答える。

「それに未確認の強化プログラムを無理に使っちゃえば未来にどんな影響があるかわかりません。この時間軸も知ってたんですね。」
「はい…すみません。」

 彼女から見ればこの時間軸も未来の1つ。私達の時間を知っていたようにここの時間軸も知ってると思っていた。

「私ここのなのはママやフェイトママ…みんなが怪我するの…もう見たくないです。それに…」
「それに…こうなっちゃったの…私のせいでもあるんです。幾つもの時間軸を作ったのは私です。アミティエさんとキリエさんが来たのが衝突の原因でも私が作らなきゃ起きませんでした。だから、私が行かなくちゃ。」
「そうですか…そうですね。行きましょう」
「はい。」 

 頷いて2人は歩きだした。


~コメント~
 ヴィヴィオがなのはGODの世界にやってきたら?
 来週は更新出来ないので、先に更新しました。
 なのはGODと今話とではシュテル・レヴィ・ディアーチェの感情が少し違っています。
 AgainStory2でBoAの世界、闇いの欠片事件にヴィヴィオが関わった時、マテリアルの3人はなのは・フェイト・はやてと契約し、それぞれの家族として迎えられました。今話はそこから3ヶ月程経過したGODの世界ですので3人には何かしら思う所があるかも…。
 
 刻の移り人ですが、ほぼ完成しました。今は誤字脱字や細部の追加を行っています。これから少しGODの話から外れていきますが楽しんで読んで頂けると嬉しいです。

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