第16話 「再会」

「キャアアアアアッ!!」
「キリエさんっ!!」

 巨大な腕に吹き飛ばされたキリエに向けてU-Dは更に砲撃魔法を放とうとしていた。

(インパクトキャノンで逸らせば何とかっ!!)

 射角を変えようと構える。

「キリエ逃げなさいっ!! ヴァリアントザッパー、オーバーブラストっ!!」
 だがさっきまで横にいたアミティエがU-Dに肉薄していた。その直後に銃型デバイスが強く輝いて放たれた。 

「アミティエさんっ! 魔力…じゃない、物理攻撃!! RHdっ鎧を広げるよ」

 咄嗟にはやてとリインフォースの前に出て虹色のシールドを広げる。
 先に気づいた双方の世界のシャマルとザフィーラ達は4人で結界を作りシグナムとヴィータ達を守っていた。
 しかし、どちらからも離れていたなのはとフェイト、彼女達に高熱と爆風が襲いかかる。

「なのはっ フェイト逃げてぇえええっ!!」

 間に合わない。直撃を受けたらっバリアジャケットじゃ持たない。
 そんな彼女達の前に黒と山吹色の魔方陣が現れた。続け様に黒い結界魔法と山吹色のシールドが張られる。
 光に呑み込まれる直前に見えたのはプレシアと知らない女性だった。4人の姿は見えなくなった。そしてヴィヴィオの方にも光の奔流が直撃する。
 聖王の鎧はヴィヴィオ自身を守る絶対防壁。いくら近くに居てどれだけ鎧を広げてもはやてとリインフォースを完全に守れない。

(もう少しだけだから、はやてとリインフォースさんを守ってっ!!)

 目をギュッと瞑ってシールドを広げようとする。
 その時3人を結界が包み込み余波が弱くなったのを感じる。

「子鴉と塵芥がだらしない」
「「「えっ!?」」」

 その声にヴィヴィオとはやて、リインフォースはその声に振り返った。



 目の前の光が視界を覆っていく。

「なのはっ フェイト逃げてぇえええっ!!」
「!?」

 ヴィヴィオの叫び声が聞こえてフェイトは我にかえった。
 しかし光は目前に迫っている。
 シールド展開?、ソニックフォーム?、それよりなのはをっ!
一瞬の間に幾つも考えが出るがまとまらず動けない。
 そんな私の前に大きな影が現れ手を引かれた。

「私が結界を」
「シールドで抑えましょう」

黒い結界魔法と山吹色のシールドが張られる。

「危ないわね…全く」
「油断しすぎですよ、フェイト」

 そう言って笑顔で答えたのは…プレシアと…

「母さん……リ…ニス…?」

 フェイトの言葉に笑みを返し、シールド強化をするリニス。
その姿は居なくなった時と同じ格好だった。そして

「ヤレヤレ…折角再起動が済んだと思えば…」
「しっかりしてよね、オリジナル♪」

 更に4人を包む結界が生まれた。

「!?!?」 



 ~U-Dが見つかる少し前の事~

「子供の心、誰かに言われるまでわからないなんて…本当、母親失格ね。」
『全く…本当にそうですよプレシア』
「誰っ!…リニス…」

 呟いたプレシアの前に現れたのはリニスだった。

「プレシア…ですか? 雰囲気が随分変わりましたね、すっかり母親の顔です。…とするとここはいつのどこでしょうか?」
「え、ええ…」
「この子は…フェイトの妹ですか? でも全然似ていませんね。」

その時

『プレシアさん、アリシアからプレシアさんが砲撃した時U-Dはそれを使って攻撃したって聞きましたが本当ですか?』

 はやてからの通信だった。モニタを出して答えようとするが側にいる彼女を見て音声だけを繋ぐ。

「ええそうよ。次元を越えた砲撃は軌跡が残る。U-Dはそれを使ったのよ。」

 そう言って通信を切った。

「アリシア? アルハザードに行ったのですか? おお、そんな悠長な事を言っていられません。プレシア、私と今すぐ来て下さい。フェイトの身に危険が迫っています。あなたのデバイスも持ってきました。」
「わかったわ…リニス、チェントの事お願いね」
「ニャー」

 ベッドの側にいた猫のリニスにそう言い

「行きましょう」
「はい」

 そう言いリニスはプレシアに杖を渡しそのまま転移魔法を広げた。



「なのは、フェイト…プレシアさんと…誰?」

 聖王の鎧で何とか2人を守る事が出来た。
 慌ててなのはとフェイトを探すとそこにはプレシアとさっき見えた女性が居た。

「母さん、リニスっ!!」

 爆風が収まった直後プレシアとリニスに抱きつくフェイト。

「相変わらず甘えん坊さんですね~フェイト。でもそれは後です。」

リニスはそう言うと険しい表情に変え振り返る。

「シュテル!! レヴィもおかえり~っ!!」

 なのははシュテルとレヴィに抱きついた。

「相変わらず危なかしいですねなのはは、桃子や士郎も心配しますよ。」
「そうだぞー、危ないぞー!」
「…2人とも私のことわかるの?」

 はやてが会ったディアーチェははやての事を忘れていたと言っていたからシュテルやレヴィも同じだと思っていた。

「ええ、勿論♪」
「シュークリームをいっぱいくれるオリジナルの友達だ♪」

 そう言い2人は笑顔を見せた。



「待たせたな…はやて、ヴィヴィオ」

 ヴァリアントザッパーオーバーブラストのエネルギーからはやてとリインフォースを守ろうとしていた時、声と共に結界魔法が張られた。

「ディアーチェ…私の事わかるん?」
「無論だ、だがその話は後だ。今はあやつを止めねばならん。」
「ヴィヴィオ、U-Dは落ちていない」
「嘘っ!?」

 ディアーチェとリインフォースに言われU-Dとアミティエの居た場所を見る。
 そこには片腕が無くなったアミティエをU-Dの背から伸びた腕が掴んでいた。

(あんな攻撃を間近で受けたのに…化け物っ…)

 U-Dのジャケットには焦げた跡すらない。はやてとリインフォースを1撃で落とした桁違いの魔力は本物だったのだ。

『全員引きなさい。私を含めてさっきの攻撃を防ぐのに魔力を相当消耗しているわ。このままでは落とされてしまう』

 プレシアからの念話だ。

『わかりました。なのは、フェイト、プレシアさん達をお願い。シグナムさん、ヴィータさんそっちもここのみんなとアミティエさん…お姉さんを連れて退いて下さい。はやてとリインフォースさんもディアーチェを連れて退いて。』
『了解した。しかしU-Dをこのままにはしては退くに退けない。』
『そうだ、ここは私が』

 シグナムの言う通り、U-Dをこのままにはしては逃げられない。

『いえ、私達が殿をつとめます。』
『シュテル達も一緒に退いて。U-Dの相手は、私がします。』

「アミティエさんを、離せぇえええええっ!!」

 ヴィヴィオは単身U-Dに突撃した。



「はやてちゃん、私達を近くに転送してっ!」
「………」

 アースラは衛星軌道上に移動し切っていたセンサーを繋げる。そしてモニタに映ったのはヴィヴィオが1人でU-Dと戦っている姿だった。
 他の全員は離れ始めている。退かせる為に単身残ったのだとなのはとフェイトは気づいた。
 すかさずはやてに詰め寄る。しかしはやては何も答えない。

「はやてっ!!」
「…今は無理や…アースラのシールドを抜いて、SSランクの次元跳躍砲撃をものともせん、逆に追いかけられる相手。転送機の魔法を逆に追いかけられたらアースラも墜とされる…」
「じゃあせめて私達をあの場所に飛ばしてから…」
「却下や…それを捉えられたら一緒や。現地メンバーはそれに気づいてるから離れてる…」
「じゃあ私の転移魔法で」
「それも却下や。理由はなのはちゃんのと同じ…」

 直後パァンという音が艦橋を響かせた。
 グリフィスやルキノ、リインとアギトはその音に驚いて振り向く。
そこには手を振り下ろしたなのはがいた。

「最優先はあこにいる全員を無事に避難させる事や。順番間違えたらアカン…私1人やったらアースラ動かして助けに行くよ。でもな…」

 その時になってなのはははやてが涙を流しているのに気づいた。

「でもな…私は艦長や。みんなの命を預かってる…ここはヴィヴィオに任せる以外他に手あるかっ? 私を叩いて気ぃ済むなら何度でも叩きっ!」

 人一倍冷静な彼女が叫びとも取れる声が艦橋を響かせた。

 

「ハァアアアアッ!!」

 拳に魔力を集中させてヴィヴィオはU-Dの腕を殴り壊す。その勢いに飛ばされるアミティエ。

「シグナムさん!!」
「了解したっ」

 シグナムは気を失ったアミティエを受け取りその場から離れる。
拳の痺れる感触から腕の硬さにゾッとする。

【システム妨害者として認識。排除行動に移行します】

直後U-Dがヴィヴィオの方に手の平を向ける。

(RHd、みんなが離れる間だけ頑張って。騎士甲冑…行くよっ!!)
【Yes.Armored module Startup】

 ヴィヴィオの体は虹色の光柱に包まれた。


~コメント~
 高町ヴィヴィオがもしなのはGODの世界にやってきたら?
「思望する者」としてリニスが登場です。そしてマテリアル3人が再登場です。
 その場に立たないとわからない事は幾つもあります。アースラの艦長なはやての重圧がどんなものだったのか、判るのはリンディだけでしょう。
 3章の想望する者、最後の登場はリニスとマテリアル3人でした。
 次章は事件が大詰めです。

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