第12話 「2人のヴィヴィオ」

 治療の終えた子供のはやてちゃんは家に帰った。
 シグナムさん達にはリンディ提督から状況を伝えて貰って家に戻っているから今頃揃って家でゆっくりしているだろう。
 怪我をして眠っていたリインフォースさんは翌朝目覚めた。私達の世界では彼女は既に消えているからはやてちゃん達2人とも凄く喜んでいた。
 はやてちゃん…リインフォースさんと会えるなんて思ってもみなかっただろう。
 リンディ提督は私達に後を任せて管理局に戻った。何か用意する物があるらしい、それが何なのかは私達には教えてくれなかった。

 そして…今、私とフェイトちゃんは子供の頃の私達の前に居る。

「あんまり驚かないんだ。驚いた顔見たかったのにちょっと残念。」
「ううん、すっごくビックリしてる。私とフェイトちゃんが大人になったら…」
「ガッカリした?」
「ううん、凄く綺麗…」
「ありがと、昔の私も可愛いよ♪」

 医務室の隣に急遽作られた部屋でなのはとフェイトはこの時間のなのはとフェイトに会いに来ていた。
 シャマルに聞けば2人とも体力と魔力を消耗した状態で治癒魔法を使えないらしい。もう少し休んで傷を治せる位まで体力・魔力が戻ったら全部治して家に戻って休んで貰うつもりだ。
 部屋に入ってきた私達を見て目を何度も瞬かせた後驚いて悲鳴をあげるかと思っていたが、逆に何も言わなかった。

「もしかして…ヴィヴィオのママって…RHdってレイジングハートでしょ?」

 少し話して緊張も解けてきた頃、子供なのはが聞いてきた。
 ヴィヴィオは家族の事を彼女達に話していなかったらしい。コクリと頷く。

「そうだよ。優しくて凄く頑張り屋な自慢の娘です♪」
「うん…無茶するからいつも心配なんだけどね」
「フェイト…もママ?」
「うん…そうだよ。」

 2人で顔を見合わせ小声で何か話し合っている。

「ヴィヴ…お父…って…ーノ君かな?」
「違うん…髪は…だけど瞳が…もしかす…私…同じかも」

 何となく話している内容はわかったけれどあえて言わないでおこう。
 暫く経って2人の中で解決したらしく、再び聞いてきた。

「大人の私達がどうしてここにいるの?」
「うん…U-Dの事件、私達も関係してるんだ。それで来たんだ。」
「それでね…こっちのアースラ壊れちゃってみんな怪我したり疲れてるから、なのは・フェイト2人にも暫く休んで貰います。」

 ここに来た目的、2人に状況を伝え休息をとって貰う為。
 事件の最中、ただ状況を伝えても私達は納得せず勝手に出るだろう。それがわかるから私達はリンディ提督からあえてこの役を引き受けた。

「えっ、でも今思念体が…」
「レヴィ達と姉妹の事もあるし…やっぱり」
「2人とマテリアルはクロノ君とユーノ君が探してくれてるし思念体は私達がなんとかする。リンディ提督達も怪我してて本局に戻ってるシグナムさん達も今は家で休んでる。ここは私達に任せて。」
「でも…じゃあクロノ君達のお手伝いなら」

 仕方がない。判っていた事だけれど…フェイトと頷きあい子供の私達に聞く。

「そう…じゃあ、リンディ提督から頼まれてたんだけど2人ともデバイス持ってる?」
「うん。あっ!」

 それぞれ待機状態のレイジングハートとバルディッシュを取り出して見せたところを取り上げた。

「フェイトちゃんごめんね…こうでもしないと無理して行くでしょ。私達からクロノ君に渡しておくから怪我と魔力が戻ったら受け取って」
「なのはもごめん。今の状態でなのはに魔法を使わせるわけにはいかないんだ。」

 蓄積疲労からの怪我。ここの彼女も近い未来味わうかも知れない。自分の事だから尚更なってほしくない未来。

「元気になったらまたお話しようね。」
「待ってっ、ちゃんと休むから持って行かないでっ!」
「お願いします。バルディッシュを返してっ!!」

 部屋を後にしようとするなのはにベッドから悲鳴にもにた声で呼び止められる。でもここは心を鬼にする。そのまま2人に何も答えずフェイトと共に部屋を出た。

(ごめんね…子供の私達…)
「レイジングハート、バルディッシュもごめんね…でも2人が今魔法を使うと危ないんだ…クロノ君がこっちに来たら預けるからそれまで待っててくれるかな」
【All Right】
【Yes Sir】

 2人がどういう状況なのかはデバイスも知っていたらしく、2つ返事で答えてくれた。
 その時端末が飛び出しはやての顔がアップで現れた。

『なのはちゃん、フェイトちゃん大変や。ヴィヴィオが町の上空で誰かと戦ってる!』
「「ええっ!?」」
  


「これでセインの言って物全部だよね?」
「ああ、全く細かい物を注文するから余計な時間を使ってしまった…」

 一方ヴィヴィオはチンクと一緒にスーパーミクニヤに来ていた。カートいっぱいの食材や調味料を入れてレジへと進む。

「そう言わないで。セインが美味しい料理作ってくれるんだからいいじゃない。リンディさんからお金貰ってなかったら今頃みんなで食材集めしてるところだったんだから。」
「確かに…そうだな」

 こっちの世界に戻って来て最初に起きた問題。それは食料確保だった。水は備蓄分か海水から作ればいいけれど食べ物はそうはいかない。先に積んできた備蓄食料もあるが味は相当落ちるし長期滞在は想定していない。
 只でさえフォワード隊はとてもよく食べる。
 リンディがその事に気づいて管理局へ戻る前にお金を置いていってくれたのだ。

「これで足りない者は…持ってきた分か各々で確保して貰おう。甲板から釣り糸を垂らすのもいいだろう」
「それ楽しそう~♪」
「…冗談だったんだが…まぁいい。」

 冗談だったのか…彼女の冗談がどこまでなのか判らない。



2人が笑って話していた頃

「おっヒット!! 大物だよこれっ!!」
「スバルさん凄いです。あっ僕の方もっ!」
「お~い、こっちで網投げた方が良く穫れるぞーっ!!」
「おおっ、手伝うっス♪」
「こっちももうちょっとで焼く準備出来るよ~」
「「「「は~い」」」」

 甲板で釣り竿をしならせるスバルとエリオ、反対側では投げた網をノーヴェとウェンディが引っ張り、セインとオットーは石を積んで即席の釜戸を作って待っている。 

「みんな順応力ありすぎです…」
「本当…」

彼女の冗談を越えている者達がそこには居た。



「ねぇ後で翠屋に行ってもいいかな? 桃子さんと士郎さんなのは達の事心配してると思うし」

 買い物袋を両手一杯に抱え店を出たところでヴィヴィオはチンクに言う。

「そうだな。そこの影で荷物を転送して貰おう。私もなのはさんのご家族にお会いしたいと思って…」
【PiPiPi…】

言いかけたところでRHdからコール音が鳴る。

「ん? なのはママからだ…」

 建物の影に入り通信を開くといきなりなのはの顔が大きく映し出された。

『ヴィヴィオ大丈夫?』
「う、うん。ちょっと手が重いけど…」
『ええっ!?』
「いっぱい買いすぎちゃって。夕ご飯楽しみにしててね♪」
『??』
「…こちらは異常ない。食材を買って帰る前に翠屋に行こうと話していたのだが、何かあったのか?」
『…ヴィヴィオ…じゃないんだ。さっき海鳴市郊外の上空で魔力反応をキャッチしたの。その魔力光が虹色だって言うから…てっきりヴィヴィオに何かあったんだって。』
「!?」

 虹色の魔法色。その色の魔法色は…ヴィヴィオ自身とチェントとオリヴィエ…他には…

「…思念体…チンク荷物お願い、今から行ってみる。ママ場所を教えて。」

 思念体なら被害が出る前に消さなきゃいけない。

『わかった。場所は…』

 ヴィヴィオは場所を聞いてバリアジャケットを纏って空へと飛び立った。



「この辺だった筈なんだけど…見つけたっ! 思念体が4人!?」

 一気に高度を取って教えて貰った場所に近づくと下の方に人影を見つけた。
 高速で動く4人の影と光。どうも戦闘中らしい。聞いた通り確かに虹色の砲撃魔法を使ってる。

「セイクリッドッ、ブレイザァァアアッ!!!」
「鎖を断ち切る力をっ、覇王、断・空・拳!!」

 4人の戦いで2人が砲撃魔法を撃ち出して残る2人を消してしまった。

(あっちが思念体?…ええっ、私の思念体!? こんな所まで…強そうだけど…私が消さなきゃ)

 はやてが言っていた通りヴィヴィオの思念体が出ていたのだ。一気に近づこうとしたとき残った2人がこっちを見つけた。

「ああ~っ、また出て来た。アインハルトさん」
「今回は1人です。2人で一気に倒しますよ、ヴィヴィオさん。」
「はいっ!」
(2人がかりなんて、騎士甲冑でって…ってえっ? アインハルトさんとヴィヴィオってまさか!?)
「待って待って待ってぇぇえええ!!」

 急制動をかけて止まり、飛びかかってくる2人に向かって両手をあげる。2人はそれに気付き目の前で止まった。

「まさかとは思いますけど…アインハルトさんとヴィヴィオ?」
「え、ええ、そうです。もしかして…別の世界のヴィヴィオさんですか?」
「あっちの私?」

 受け答えもはっきりしている。どうやら思念体じゃなくて本物だ。

(そっか…あっちの私も魔法色が虹色だよね…)

 何を今更と思いつつ納得した。



「練習に向かう途中でここに飛ばされてどうしようかと困っていたんです。」
「ここが昔の海鳴市なのはすぐにわかったから、もし何かしちゃったら未来に影響すると思って」
「それでずっと隠れてたんだ…」
「でもさっきみたいなのが時々出てくるので被害が出る前に倒さなくちゃって空に上がって…」
「市街地では周りを巻き込んでしまいます。」

 そのまま放っておく訳にもいかず、ヴィヴィオとアインハルトを連れアースラへと向かう。

「リインさんさっきの戦闘エリアで2人を保護しました。アースラに降りる許可を」
『了解です。保護した2人の名前を教えてくださいです』
「アインハルト・ストラトスさんと…えっと…高町ヴィヴィオさん…です」
『着艦許可します。アインハルト・ストラトスさんと高町ヴィヴィオさんっと、はい?』

 聞き返すリインに苦笑しながらそのまま降りる。

「なのはママ、フェイトママ、はやてさんさっきの魔力反応の子を連れてきました。別世界の私、高町ヴィヴィオと彼女の友達のアインハルト・ストラトスさんです。」
「「「「「えええええええぇぇぇえ!!!」」」」」
 2人を連れて艦長室にいたなのは達に紹介した直後、その場に居たなのはとフェイトとはやてから艦を震わせる程の声が響いた。

「凄い声聞こえたけど、どうしたの?」
「何かあった?」

 更にタイミングが悪い事に怪我の癒えた子供のなのはとフェイトが入って来て

「あ~っ小っちゃいママだ~♪」
「ヴィヴィオが2人!?」

 驚くなのはと、対象に…

「フッ…」
「フェイトちゃん!?」

 気を失ってしまうフェイト。

「ハハハハハハ…こうなっちゃうよね…」

 もうどうにでもなってとヴィヴィオはもう投げやりな気持ちになっていた。


~コメント~
 ヴィヴィオがもしなのはGODの世界に行ったら?
今章「想望する」では文字の通り想い望むキャラクターが登場してきます。
今回はなのはGODで登場していたVivid世界のヴィヴィオ&アインハルトが合流しました。
次回は…

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