第11話「クロスポイント」
- リリカルなのは AdmixingStory > 2章 クロスポイント
- by ima
- 2011.07.27 Wednesday 16:29
(隙がない! でもっ)
ストライクアーツを練習している期間は圧倒的に向こうの方が長いし大人モードを使っている彼女の方がリーチもある。でも砲撃魔法や魔法弾が使えても操作する程上手く制御出来ないらしい。こっちにも利はある。
「離れて戦えば…」
ヴィヴィオを近づけさせなければ勝機は大いにあるし、カウンターさえ注意していれば攻撃を受けずに勝てる。でも…折角教えて貰っているストライクアーツを使わないのは
ストライクアーツを練習している期間は圧倒的に向こうの方が長いし大人モードを使っている彼女の方がリーチもある。でも砲撃魔法や魔法弾が使えても操作する程上手く制御出来ないらしい。こっちにも利はある。
「離れて戦えば…」
ヴィヴィオを近づけさせなければ勝機は大いにあるし、カウンターさえ注意していれば攻撃を受けずに勝てる。でも…折角教えて貰っているストライクアーツを使わないのは
(私もヴィヴィオなんだからっ!)
自分から負けを認めたみたいで嫌だ。
(私より魔法操作は上手い。距離を縮めないとっ)
初手の打撃戦の後双方距離を取った時、ヴィヴィオも相手を分析していた。
バックステップで離れるのと同時に魔法弾を幾つも作ってヴィヴィオめがけて放ってくる。
避けられると踏んだが、避けた直後に魔法弾も方向を変えたのだ。
「操作弾!?」
慌てて魔法弾で迎撃する。驚かされた。ヴィヴィオはまだシューターを制御できない。
「離れたら負けちゃう。」
更に踏み込んでヴィヴィオとの距離を詰めるしかない。
そこにしか勝機はない。
(でも…)
小さなもう1人の自分の動きを見て違和感を持っていた。
「あっちのヴィヴィオ、フォワードよりセンターガード、なのはに近いね」
「うんバリアジャケット見て少し嬉しかった。こっちの…私達のヴィヴィオは距離取られて少し焦ってるかな。離れたら得意のカウンターが狙えないしシューターの制御は相手の方が数段上だからね」
なのはとフェイトは2人のヴィヴィオの模擬戦を冷静に評価していた。近接戦に持ち込もうとヴィヴィオの周りに浮いている魔法弾を打ち消そうとディバインバスターを放つ。だがヴィヴィオはそれに併せて
「クロスファイアーシュートッ!」
「!?」
魔法弾が集まり高速で回転、集束し撃ち出されディバインバスターを相殺した。
「ハァアアアッ!」
「!? ッと…あぶなっ」
驚きで動きが止まるヴィヴィオの前に急接近し体を捻って蹴る。だが寸前で我に返った彼女は紙一重でそれを避けた。
「あれティアナの…」
機動6課でティアナの為にとアレンジした魔法。
射撃モードのシューターを操作しあらゆる局面で応用できる利点を持つ、反面多数のシューターを同時制御しなくてはならずリソースを多く消費してしまうから近接戦には不向き。
でも目の前のヴィヴィオは
「使えるんだね…凄い」
知っているからこそ感嘆を洩らす。
いつの間にか見ている自分の胸が躍っていた。
「あの子、ヴィヴィオになら…」
出来るかも知れない。
「やっぱり強いっ!」
当たったと思ったのに避けられた。カウンターが来る前に距離を取る。
『一流の魔導師は常に幾つもの事を考えてるんだよ。』
『高速戦闘は感覚で動くんじゃない。常に幾つかの動くパターンを考えながら動くんだ』
なのはとノーヴェに言われた言葉を思い出す。一気に近づきシューターを作るとヴィヴィオが逆に離れた。追ってもいいがここは体制を整える。
(フェイントを作るんじゃなくてフェイントと思わせる)
読みやすい攻撃なら読んで貰えればいい。再び魔法弾を作り出して撃ち出す。その中の幾つかを高速回転させクロスファイアーシュートの発射態勢をとりつつ、中に身を飛び込ませる。
魔法弾は囮、リーチの短いヴィヴィオにとって大人モードになったヴィヴィオの胸元に飛び込むには…相手の意識を逸らせるか高速で飛び込むしかない。
(これで、後ろをっ!!)
しかしその動きは読まれていた。
ヴィヴィオがそれに気づいたのは彼女の居た場所に着いて振り返った瞬間だった。
「勝負あり、だね」
思わずギュッと瞑っていたヴィヴィオのおでこにコツンと軽い衝撃、瞼を開くとそこにはヴィヴィオの顔があった。
数歩後ずさりそのままペタンとその場に腰を落とす。
「負けちゃった…んだ」
「ずっと離れたままだったら私が負けてた。空間把握とシューターの制御は全然敵わないもん。」
彼女は隙をわざと作って待っていた。
ヴィヴィオがそれに気づいて飛び込んでくるのを
近接戦を織り交ぜるのではなく近接戦へ持ち込んだ時点で負けていたのだ。
「動かなかったの…あれがフェイントだったんだ」
「うん。ヴィヴィオが近くに来たいみたいだったから」
差し出された手を取り立ち上がる。
「ヴィヴィオ、どうしてそんなにストライクアーツ…近接戦…フォワードに拘るんだ? そこまで出来るならそのまま中長距離を制すセンターガードを目指せばいいんじゃないか。なのはさんもいるんだから。」
「ヴィヴィオ、クロスファイアシュート凄かった。使えるなら知ってると思うけど、中長距離を制してフォワード、バックを守るのに便利な魔法だよ。」
「教えてくれないかな? どうしてそこまでストライクアーツを覚えたいの?」
模擬戦が終わってノーヴェとアインハルト、なのは達も集まってくる。
言うべきかと迷っていると
「………」
「見せちゃえ。ヴィヴィオの全力全開」
「全力全開…全力じゃなかったの?」
折角良い模擬戦だったのにと悲しい顔をするヴィヴィオを見てアリシアが言った。
(アリシアッ~!! 余計な事言わなくていいのに)
心の中で突っ込みを入れつつ、仕方ないとハアッと息をつく。幸いここはヴィヴィオ2人の魔法を使った後だ。
「なのはママ、フェイトママ…ここの結界を強化して欲しいの。お願い」
「結界の強化? ここの?」
「うん。」
何をしたいのか判らないなのはとフェイトは顔を見合わせるが、デバイスを取り出して言われた通り港湾施設の結界を強化した。
「これでいいの?」
「うん、ありがとう。」
そう言って、全員から少し離れる。
「RHd…いくよ」
体内のデバイスに向かって呟き意識を集中させる。
【Armored module Startup】
バリアジャケットは羽の様に散り新たに生まれた騎士甲冑が身体を包み力が満ちあふれる感覚に身を委ねる。
「それがヴィヴィオの、本当のジャケットなのか?」
「ううんノーヴェ、これはバリアジャケットじゃないよ。これは私が作り出した騎士甲冑。クリス、ゴメンねこれが私があなたを使ってあげられなかった理由。」
ここのヴィヴィオはベルカとミッドのハイブリッド。でもヴィヴィオ自身は古代ベルカの魔法しか使えない。それに…
「力が強すぎるの。私だけで闇の書…リインフォースさんと戦えちゃうくらい」
闇の書とリインフォースと言う名前を聞いてなのはとフェイトの表情が厳しくなる。
「それに…こんな事が出来るくらい」
数分前まで模擬戦していたのだからここでも多分使える。心の中で周囲の魔力を集めるようにイメージする。周囲から小さな輝きが集まり拳大の魔法球を生み出す。
「ハァアアアッ!」
思いっきり光球を叩くと空に向かって虹の橋がかかった。橋は結界を破壊し伸びた後霧散し消えた。
「結界が…」
「壊れた…」
「スターライト…ブレイカー…」
「集束砲…」
「もういいよ、ありがとうRHd」
デバイスに呟いて騎士甲冑からバリアジャケット姿へと戻る。
なのはとフェイトが信じられない物を見た様な顔でこっちを見つめている。
(そうなるよね、やっぱり。)
元世界のなのはとフェイトなら驚きはしてもこんな顔はしない。
彼女達はここのヴィヴィオの母達だという事を改めて知ると共に寂しさを感じ、元世界の2人に会いたくなった。
「ヴィヴィオ全力じゃなくてゴメン。でも…この力は不安定なの。間違ったらヴィヴィオに怪我させちゃうくらい」
以前ヴィヴィオの心が怒りに染まった時アリシアを傷つけてしまったのを思い出しながら続ける。
「私は戦う為の力が欲しいんじゃない。ママ達を…親友を…大切な人
を守る為の助ける為の力が欲しい。だから、今はこっちが私の全力。」
「う、うん…」
咄嗟に頷いたヴィヴィオを見て
(そうだよね…)
「…だから、今はこっちが私の全力」
「う、うん…」
アリシアの隣でヴィヴィオが呆然としている。
同じヴィヴィオが彼女の母と同じ集束砲を使ったのだから驚くのも当然。
それも簡単に…
本当にヴィヴィオなのかと思っているだろう。その様子をヴィヴィオが見ているが、彼女が一瞬悲しそうな笑みを見せた。
(…そっか、そうだよね…)
「ねぇヴィヴィオ、驚くのは判るけど話を聞いて」
「アリシアさん?」
「こっちにあなたのデバイス、クリスやアインハルトさんが居るみたいに、あっちの…私の世界には私やママ、チェントが居るの。」
ヴィヴィオが静かに頷く。
「違う世界なんだから同じヴィヴィオでも違ってて当たり前なんだよ。模擬戦って言ってもヴィヴィオに勝ったんだし、そうだよねっヴィヴィオ♪」
「そうだよねっヴィヴィオ♪」
ニコッ振り返ってヴィヴィオに言うアリシア
(アリシア…ありがと)
ヴィヴィオと異世界のヴィヴィオ、同じ様に見えても彼女とは違う。目の前のなのはやフェイト、ノーヴェが別人の様に見えて少し悲しい気持ちになったけれど、それはアリシアの言葉が和らげてくれた。
「うん、ウンウン♪ ヴィヴィオも強いんだから。負けたのフェイトくらいだし…」
「え…」
「凄いよね。闇の書なんて一瞬で倒しちゃったし、ゆりかごも1撃で壊したんだからね。」
(ア、アリシアッ!?)
軽く言った彼女の言葉にその場が凍り付いた。
アリシア…困った時にフォローしてくれる。でも時々暴走するのが玉にキズ…
「なのはママ、フェイトママ、えっとね、向こうで色々あった訳で…じゃだめかな?」
「ヴィヴィオ、今日インターミドルの申し込み行くんだよね?」
「う、うん。お昼にみんな一緒に行くつもりだけど」
「じゃあその間、ヴィヴィオとアリシアちゃんとチェントちゃん家に来ない?」
「…」
言葉では誘ってる様に聞こえる。でもこれは…
「で、でも…ママ達きっと心配してるし…」
その時になってアリシアはビクッと固まった。やっと自分が地雷を踏んでしまった事に気づいたらしい。顔を少し引きつらせながらヴィヴィオに続く。
「う、うん。そうだよね。だから…」
「私ねお菓子作り得意なんだよ。そうだチェントちゃん、帰ったら一緒に作ろうか?」
「うん♪」
チェントがなのはの方へ駆け寄って手を握る。
(裏切り者~っ!)
でも魔導書を持ってきて帰るきっかけを作ってくれたのは彼女
「チェント、あのね」
無理な魔法を使ってここまで来たのだから少しくらい我が侭を聞いても
「アリシア、帰るの夕方にしよ。私もリオとコロナにお別れ言いたいし」
そう言って納得する事にした。
戻った後、ヴィヴィオとアリシアはなのはから次から次へ質問を浴びせかけられたのは言うまでもない。
~コメント~
高町ヴィヴィオがもしなのはVividの世界にやってきたら?
ヴィヴィオvsヴィヴィオ ちょっとずつ違うヴィヴィオなので書いてみたかったです。
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