第5話「ヴィヴィオなの?」

「ねぇママ、ヴィヴィオはどこの世界に行ったのかも判らないし、戻って来れないの?」
「……」

 アリシアの問いかけにプレシアは黙っていた。そうならそう、違うなら違うとはっきり言う彼女がそういう答えしか出せない時は…

「魔導書を調べて、呼び戻す方法があれば良いのだけれど…」

 今から調べ始めて答えが出るまでどれ位時間がかかるのか見当も付かない。
「ヴィヴィオ…」
「ねえさま。あそぼ」

 チェントがアリシアにペンを差し出す。絵を描いていたらしい。

「ゴメンね、お姉ちゃん今遊べないんだ。ヴィヴィオ…と一緒に」
『チェントの好きなお菓子教えてくれる? お土産に持って行きたいの。』

 本当なら今頃お土産を持ってきていて一緒に食べる筈だったのに…
 ヴィヴィオとチェント、互いの苦手意識を無くせればいいと思っていた。でもそのヴィヴィオが居なくちゃ意味がない。

「ねえさまないてるの? ヴィヴィオのせい?」
「ううん、泣いてないよ。ヴィヴィオのせい…なんかじゃ」

 その顔をチェントはじっと見つめた後、プレシアの側に行きテーブルに置いてあった刻の魔導書を手に取る。

「チェント、それにお絵かきしてはだめ…」

 それは目の前で起こった。
 チェントの胸にあったペンダントと魔導書が呼応し、彼女の目の前に虹色の球体が現れたのだ。

 そしてその中から…

「あれ? ここどこ?」

 ひょっこりと少女が顔を出す。

「ヴィヴィオ、ねえさまなかせちゃだめ。めっ!」
「えっ、何?」
「ヴィ…ヴィ…オ?」

 現れたのはなんとヴィヴィオだった。

「ヴィヴィオ、もうバカッ!心配させないでよ。」

 抱きつくアリシア

「良かった…」
「なのはママ、フェイトママ?」

 緊張の糸が切れた様にペタンと座り込むなのはとフェイト。

「戻って来れたみたいね」

フゥッと息をつくプレシアだったが

「なのはママ、フェイトママ? ここどこ?」

彼女の呟きによって一同は固まってしまった。



「ヴィヴィオ、私、わからない? アリシア・テスタロッサ、フェイトのお姉さん」
「フェイトママの写真に映ってた…でも、もう居ないって…でもアレ?」

 椅子に座ったヴィヴィオに問いかけるアリシア。その光景を見ながらフェイトがプレシアに聞く。

「母さん、一体何が?」
「ヴィヴィオ以外にもう1人居たのよ。チェントも写本で時空転移していたのだから…忘れていたわ。アリシアの為にって別世界のヴィヴィオを呼び出しちゃったのね。ジュエルシードをここまで簡単に使いこなすなんて思ってもみなかったけれど…RHdもフレームは同じだから…特性かしら。」

 1ヶ月ほど前、ヴィヴィオ達と一緒に異世界へ送り出した時に、何かの役に立つだろうとチェントに渡したペンダントに時の庭園崩壊時から隠し持っていたジュエルシードを組み込んでいた。
 帰ってきた後で回収しようと考えたが暴走する気配もなく、何よりアリシアとお揃いのペンダントを離そうとしなかったからそのまま持たせておいたのだけれど…

「私達が発端を作ったのかも知れないわ。ヴィヴィオ、あなた『刻の魔導書』という言葉に聞き覚えない? 無限書庫で名前だけでも見たとかでもいい」
「ときの…魔導書ですか? 知りません。無限書庫でも見ていません。」
「そう、ありがとう。」

 なのはにはプレシアがどうしてそんな事を聞いたのか判らなかった。

「プレシアさん、今の質問は…」
「勝手な推論だけれど、別世界のヴィヴィオがここにいる。つまり彼女が元居た世界のヴィヴィオはどこかに消えてしまった。聞いた通りここにいるヴィヴィオは刻の魔導書を知らない。時空転移も出来ない。」
「もし別の誰かが消えたヴィヴィオを探しに時空転移をしてここのヴィヴィオにたどり着いて、彼女の世界に連れて行ってしまったら…」

 鶏は卵から生まれる。でもその卵を産むのは鶏である。
 ヴィヴィオが消えたからヴィヴィオを探しにここまで来て、こちらのヴィヴィオを連れて行き、こちらのヴィヴィオが消えたからチェントが別世界のヴィヴィオを呼び出してしまった。
 時間の悪戯とでも言えばいいのだろうか?
 都合のいい解釈といえばそうだろう。

(でも、そう考えれば納得もいく。魔導書に新しい文字が出てこないのはヴィヴィオに危険が迫っていないという風にも取れる)

 闇の欠片事件へ行かせる為に、ヴィヴィオとチェントに夢まで見させ、魔導書にメッセージを送ってきた【本当の管理者】が動いていない。それが証拠とも取れる。

 仮に目の前のヴィヴィオの居る異世界にこちらのヴィヴィオが居るとして、こちらのヴィヴィオを連れ帰った者が何かのアクションを待っているなら、こちらから出向いて迎えに行った方が簡単に解決する。
 こちらには行く方法があるのだから。

「フェイト、なのはさん用意して欲しい物があるの。持ってきて貰えるかしら。なるべく急いで」
「何を持ってくれば?」
「それはね…」 
「「……ええーっ!!」」

 なのはとフェイトの素っ頓狂な声が部屋に響いた。



 一方ヴィヴィオも…

「ゴメンねクリス。私が使えればいいのに…」

 ヴィヴィオのデバイスであるクリスは使えない。謝るヴィヴィオに力なく首を振るクリス。

「ヴィヴィオが消えちゃった原因がわかればいいんだけど…もう1度アインハルトさんに聞いてみよう」

 呟いた時、クリスが机の上からペンを持ってノートに大きな丸を書いてその中に赤や青、黄色、緑のペンを持ち替えては塗りつぶしていった。
 そして最後にペちゃんと丸にクリスが体当たりした。何かのジェスチャー?

「…クリス、その大きな丸が出来てその中にヴィヴィオが入って行っちゃったの?」

 コクコクと頷く。
 何か引っかかる…じゃあ紙片はどこから?

「クリス、アインハルトさんに見せた紙はどうしたの? ヴィヴィオから預かったんじゃないの?」

聞くとクリスは丸の中から黒い線を外に向かって書き足した。

「…線…この紙ね。丸の中から出てきたのを拾ったの?」

頷くクリス

(クリスがヴィヴィオから預かった訳じゃないんだ…そっか…)

 今までヴィヴィオがクリスにメッセージを託したのだと考えていたけれどそうではないらしい。だったらどうやってヴィヴィオを探せばいいのか、全くわからない。

「じゃあ、異世界って言うのも本当かわかんないんだね。う~ん…ん?」

 ベッドの上で紙片を掲げ見ていてふと有る事に気づいた。

「この紙って普通の紙じゃなくて、絵を描くときの紙だよね…それにこのペン…これって…」

機動6課に居た頃、留守番の間絵を描いていた時使った画材に似ている。そしてクリスが紙に書いた色とりどりの丸。

(クリスの描いた絵…いろんな色…虹…まさかっ)

 ガバッと起き上がって紙片と並べる。

「この異世界って文字、見覚えあると思ったらアリシアと一緒なんだ」

 落ち着いて考えると画材用のペンと紙、アリシアに似た筆跡…

「ヴィヴィオが居なくなった理由、私の世界に行っちゃったからじゃ…」

滅茶苦茶な発想だと思いながらもその考えを否定できなかった。


~~コメント~~
もし高町ヴィヴィオがもしVividの世界に行ったら?
第2章のタイトル通りクロスポイント-交差点-です。
極力出さないでおこうと思っていたキャラ「チェント」が良いポイントに居たので出さざるえなくなってしまいました。反省


 

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