第04話「旅人達へ」

「ヴィヴィオ、そろそろ起きないと夜眠れないよ」

 体を揺さぶられて瞼を開くとフェイトの顔があった

「おはよ…フェイトママ」
「おはよう、ねぼすけさん♪ もうお昼だよ。桃子さんがお昼ご飯作ってたから一緒に食べよう。」

 時計を見るとお昼過ぎだった。

「は~い」

 そう言って起き上がろうとしたら今度は左腕がやけに重く感じた。見るとリニスが私の腕を抱きかかえるように眠っていた。
「リニスに気に入られちゃったね。」

チェントを起こそうとしていたアリシアが笑って言う。

「そうみたい。リニスもご飯食べようね。」

 そう言うと「にゃ~」と答えて炬燵を出て前足を大きく前に出して伸びをしたあとそのまま部屋を出て行った。

「…あっ! キッチンに結界作ってない! リニス待って!」

慌ててアリシアが追いかけていった。
    
    

「美味しい…」

 桃子が用意してくれていたのはシチューだった。
 チェントは初めて見るのか最初は戸惑っていたがアリシアが食べるのを真似て口に入れると美味しかったらしく夢中になって食べている。
 それを見て料理を笑顔で食べて貰える嬉しさというのが改めてわかった気がした。  
           
 それから夕方まではアリシアと一緒に課題を進めた。
チェントは初めての海鳴市ということでフェイトとお散歩に行っている。
人見知りするんじゃないかと言われていたのが嘘の様だ。最も…

「そう? 最初はそうかな~って思ったけど、そこまで人見知りじゃないよ。ヴィヴィオが近くに居ても怖がってないでしょ?」

 姉から言わせればその程度の認識だったらしい…

 そして…日が傾いてきた頃、2人と一緒になのはが戻って来た。

「アリシア、私達少し出かけてくるからチェントとお留守番お願いしていい?」
「はい、行ってらっしゃい」

 3人で再び出かけた。
 なのはもフェイトも何処に行くかは言っていない。でも私も何処へ行くつもりなのかわかっていた。
     
 商店街で少し寄り道をして1時間程歩いてその場に着く。
 そこには先に来ている者達が居た。

「なのはちゃん、フェイトちゃん、ヴィヴィオ…ありがとうな」

 海鳴市の外れにある海岸、はやてが振り返って私達に礼を言う。
 はやて達八神家の前には既に花束が置かれていた。
 買ってきた花束をその横に静かに置く。

 今日―12月25日は夜天の書、リインフォースが旅立った日…

「撮影でアインスの役をするのが決まった時から何度も来ようって思ってたんやけど…足が進まんでな…。どこかで受け止められんかったんやと思う。」
「でも、ヴィヴィオが戦技披露会で使ったアインスの魔法、私がアインスから受け継げへんだ魔法を見て怒られた気がしたんや。『何故、我が主だけ立ち止まっているのですか?』って、そう考えたら…やっと来られたよ。」 
「はやて…4つの花束は?」

 フェイトが聞く。
 ヴィヴィオ達が持って来た花束以外に4つの花束が置かれていた。

「アインスと…グレアムおじさんと、アリアとロッテの分…。最後の手紙をアリサちゃんに送ってくれてた。」
「……そうなんだ…」

 ヴィヴィオはどういう意味か最初はわからなかったが、彼女の言葉を頭の中でもう1度繰り返した時気づいた。
 ギル・グレアム元提督と使い魔リーゼ・アリアとリーゼ・ロッテ
 リンディの夫でクロノの父、クライド・ハラオウンの上司。闇の書の主となったはやてを支援しながらも彼女毎闇の書を凍結封印を進めていたがクロノによって暴かれ管理局を去った。

「…グレアム提督も…あっちで一緒に見てくれてるんじゃないかな。みんな元気にしてるのを…」

 ここに眠っている訳ではないけれど…彼らが居たからなのはやフェイト、はやて達はここに居て…彼女達が居たからヴィヴィオやリイン、アギトはここにいる。
 そう思うとヴィヴィオは誰に言われることもなく手を合わせていた。 
 その様子を見て他の者達も同じ様に手を合わせ4人の旅を祈るのだった。



 「いってきま~す。」

 翌朝、ヴィヴィオはトレーニングを終えて食事を食べた後、早々に出かけた。
 行き先は海鳴図書館。
 こっちに来てはやてから教わった風習や行事についてもう少し知りたいと思ったのと面白そうな本があれば読みたいと思ったのと…そして何より今日、月村雫が戻ってくるのを聞いていたからである。
 月村雫、私やアリシアより2歳年上らしい。
 見た目通り元気で運動神経も良く人気者らしいけれど…私にとってはトラブルメーカーに近い存在。以前恭也達の朝練につきあって模擬戦をしてから何度も挑まれている。
 私はリアル剣術は苦手だ。元々運動が得意でもないしそれ程鍛えている訳でもない。紫電一閃の練習や偶にアリシアの練習に付き合う程度…。
 なのに彼女は私を標的にしている。困ったものだとしか言い様がない。 
 海鳴市の中で私が行きそうな場所は限られている。その中で図書館は1番行きそうな場所だからママ達や私を知ってる人に『私は何処にいる?』と聞かれたらまずここを教えるだろうから探そうと思えばすぐに見つかってしまう。
 だけど今日はそれも想定済みだ。
 身代わり…じゃなくて盾…でもなくて、アリシアに家に居るように頼んでいる。
 勿論タダと言う訳ではなく…

「美味しそうなお菓子買って帰らなくちゃね。アリシアとチェントの分…先に見に行こうかな」

 図書館へ行く前に寄り道をすることにした。


 ヴィヴィオが駅前のお店を見ていた頃、彼女が予想した通り高町家の道場に雫が来ていた。
 士郎と美由希が翠屋に行っている為、恭也が間に居て端の方でなのはとフェイトが正座をして見ていた。
【カカカッ】と木刀同士がぶつかる音と【ダンッ!】という足音が道場内に響き渡る。
 2人の少女の攻防は既に5分以上続いている。

「凄い…」
「アリシア…ここまで出来るんだ…」

 なのはとフェイトは息を呑む。
 彼女の剣を見たのは数度、この前見たのはRHdのテストの時であの時は軽く体を動かしていただけだったらしい。
 ブレイブデュエルの中ではスキルを使いながら動いている。でも今は魔法もデバイスも使っていない、純粋に彼女の身体能力だけだ。

「タァアアアアッ!」

 雫の声と共にアリシアに連撃が迫る。 

「まだ練習中だけどっ!」

 アリシアはそう言いながら冷静に4連を避けた後の追撃で振り下ろした木刀を狙った。雫はそれを読んで両手の小太刀を重ねて防御に回る。しかしダンっという床を蹴る音と同時に繰り出した突きによって奥側の小太刀が弾かれた。
 それはコンマ一瞬の攻防だった。

【カァアアアアン!】

 甲高い音を立てて木刀はそのまま宙を舞い道場の端へと飛ばされてしまった。

「それまでっ!」

 恭也の声にアリシアは下がって雫を見る。彼女から攻撃の意思が無くなったのを見て左手で2本の木刀を持って弾いた木刀を拾い雫に渡した。

「びっくりしました。前より凄かったです。」
「…それでも勝てなかった…。追いつけてない…」

 眉をしかめ悔しそうに言う雫。

「はい、私も追いかけてますから…。最近追いつけそうだって思ったらまた凄く遠くに離されちゃったばかりなんですけどね。」

 頬を崩して答えながらフェイトとなのはを見ると2人は苦笑いするのだった。


~コメント~
 連日掲載です。(本当は12月に掲載する予定だったので)
 前回のAffectStoryのAffectは~に連なるという意味があると書いていましたが、今話はヴィヴィオへと連なった者達の話です。
 いつか海鳴市での話を書く時、グレアムやリーゼ姉妹に触れたいと考えていました。

Comments

Comment Form

Trackbacks