第06話「異文化交流?」

 翠屋での時間は過ぎてそれぞれが家路について夜が更けた頃、なのははフェイト、士郎、プレシアとリビングに居た。
 全員どこかソワソワしている。
 そこに

「おまたせ~♪」

 桃子が入ってきた。

「久しぶりだったから時間がかかっちゃった。ヴィヴィオ、アリシアちゃんの初お披露目~。入ってきなさい。」
 そう言うと2人は並んで入ってきた。
 ヴィヴィオは赤色を基調として色とりどりの花模様が栄えている。アリシアのはヴィヴィオとは対象の青色が基調となっているがこちらも花柄が彼女の髪色と合わさって栄えていた。

「…似合ってる…かな?」
「テレビでみたことはあったけど、着るなんて思って無かった。」

 照れながら言う2人。 

「ヴィヴィオ、アリシア、すっごくかわいい♪」
「うん、2人ともすごく似合ってるよ」  
「お~っ、かわいいじゃないか♪」
「桃子、流石ね。」

 4人が感嘆の声を挙げる。
 それもその筈。エイミィが持って来たのは昔フェイトが正月に着た晴れ着だった。サイズ直しも不要で、小物や襦袢についても桃子が知り合いに連絡して早々に届いていた。
 ヴィヴィオが着ているのは昔なのはが着たものだ。こちらもサイズ直しは不要だった。
 
 その時なのはとフェイトはニコッと笑って部屋を出ていった。でもすぐに戻って来て

「こんばんは~、!」
「お邪魔しま~す、わっ!」
「さっきぶりです、おおっ!」

 すずかとアリサ、はやてが一緒に入ってきた。3人は入るなりヴィヴィオとアリシアを見て驚いていた。

「久しぶりに初詣行こうって、準備出来たら呼びに来てくれたんだ。折角だから一緒に行こう♪」
「でも、その前に♪」

 カメラを持ち出した士郎を見て

「えっ!?」

 断る間も無く撮影会が始まってしまった。

  
 小一時間後、ようやく撮影会から解放された後。ヴィヴィオはなのは達と一緒に八束神社へと向かう。
 この服専用の靴だと桃子が用意したものを履いたのだけれど、歩きづらいし服も動きにくい。結局歩幅を短めに歩くしかない。なのは達はそういう服だと知っているのか、私達の歩くスピードに併せてくれている。 

「こう見ると、アリシアとフェイト…本当に似ているわね。一瞬フェイトって言いかけたもの。」
「そんなに似ていますか? アリシアの方が何考えてるかわかんない…じゃなくて強かだと思うんですけど。フェイトママの方が優しいです。」

 フェイトと手を繋いで言う。

「え~っ? 私そんななの? フェイトっ!」

 反対側に回ったアリシアがフェイトに聞く。

「う~ん…どうかな? アリシアの方がハキハキしてると思うよ。」
「フェイトちゃんは優しいから。」
「それって私がフェイトより優しくないって言われてるみたいなんですけどっ!」

 フェイトとなのはに言われて頬を膨らませるアリシア。

「アリシア、前に誘拐された時、犯人全員の骨を折って立てなくしてたじゃない。あれは…優しさじゃないんじゃない?」
「それを言ったらヴィヴィオも誘拐された時、犯人のジャケットもデバイスも全部壊してからあの剣で切ろうとしたじゃない。犯人の何人かは泡吹いて気絶したって聞いたよ!」
「えっ! どうしてそれっ! でも誰も怪我させてないよ。全員ロープ巻いて動けなくしたらスバルさん達が来てくれたから。」

 知ってるの?と聞きかけて、誰から聞いたのか気づいた。その時居たもう1人の少女から聞いたとしか思えない。

「…ヴィヴィオちゃん…アリシアちゃん…誘拐って…」
「…あんた達…2人とも大概だと思うわよ…」

 勢い余って言い返した直後、思いっきり口が滑っているのにヴィヴィオはアリシアとほぼ同時に気づいた。しかし時既に遅く…

「ヴィヴィオ…誘拐って初めて聞いたんだけど? アリシアも骨を折ったって? 何をしたの?」
「アリシア、ヴィヴィオ…後でママ達と少しお話しよっか?」
「「……はい…」」
 
【後悔先に立たず】海鳴り図書館でそんな事を書いた本があったのを思い出しながら肩を落とした。

「さっきの話やけどアリシアは強かっていうよりちゃっかりしてると私も思うよ。フェイトちゃんよりも洞察力も凄いし瞬間の判断力や魔法なしでの運動能力とかは同じ頃のフェイトちゃんより上やと思う。」
「でもそれはヴィヴィオのせいとも言えるけどな。」

 少し歩いたところで思い出したようにはやてが言う。

「私のせい?」
「多分この中で1番ヴィヴィオと一緒に色々巻き込まれてるのはアリシアやろ? ヴィヴィオが成長してるのと同じ様にアリシアも成長したって考えたらそうなんとちゃう?」
「つまり、私がフェイトより優しくないのはヴィヴィオのせいなんですね。」

 どういうこじつけ方だとヴィヴィオは言い返そうとするがはやてが手で制して

「アハハハ、優しいだけでは進めん事もあるからな。誰にでも優しくなれるのが1番良いけど、2人が体験してることは何処かで切り捨てる厳しさも要るからな…まぁそれは私達にも言えるけど。」

 彼女の言いたかった意味に気づいて、私もアリシアもそれ以上何も言えなかった。


 
 初詣の後、なのは達は少し見て回ると言うのを聞いてヴィヴィオはアリシアと一緒に帰ってきた。 
 深夜に慣れない服を着て2人では帰れないので、境内の裏に回ってそのまま空間転移で帰った。 
 それから服を着替えたところで疲れからかそのまま客間でグッスリ眠った。

「…ァアッ!!」

 ヴィヴィオが目覚めると既に日は部屋に差し込んでいた。並んでいる布団を見るとヴィヴィオ以外は全員起きているらしい。慌てて着替えて部屋を出ると

「タァアアアッ!」

 道場の方から声が聞こえた。   
 そっと庭に出てそのまま道場の中を見るとアリシアが美由希と打ち合っていた。端の方で士郎と恭也が見ている。士郎が手招きするのを見て足音を立てないようにそっと道場の中に入って2人の横に行く。アリシアも美由希も一瞬こっちを見たので気づいているみたいだ。
 しかし驚いたのはアリシアの動きだ。
 ヴィヴィオが見ている感じでも美由希とほぼ互角で動いている。あの見えなくなる動きはしていないからその辺は2人とも全力ではなさそうだ。
 それから数分経って

「それまでっ!」

 恭也の声に2人は下がって頭を下げる。その後アリシアはその場に膝をついてハァハァッと乱れた息を整え始めた。

「アリシア、凄く強くなってない?」

 端に置かれていたタオルを持ってアリシアに駆け寄る。ブレイブデュエルや聖王のゆりかご戦で見た時より数段動きにキレがあった。

「ハァッハアッ…そ、そんなことないよ。それよりみ、水…ちょうだい。」

 言われてタオルの横に置いてあった水筒を取って渡すと一気に飲んだ。 

「フゥ…、ありがと。今日はバルディッシュのアシストも使ってたから。そうじゃないと美由希さんとここまで出来ないって。バルディッシュの経験値も積みたいし。」

 バルディッシュに組み込まれている彼女達の剣術のアシストプログラム。魔法も使う状態で動いていたらしい。

「いや、それでも十分だよ。私達は魔法が使えないからそれもアリシアちゃんの力だよ。抜かれないように私も頑張らなくちゃ。」
「そんな…私なんて」

 汗を拭いながら褒める美由希に照れるアリシア。

「謙遜するのはいい。十分に動ける時になったと自信を持った時が1番危ない。」
「そうだな、俺も昔それで怪我したこともある。」

 恭也と士郎は頷く。

「怪我で思い出した。士郎さん、借りていたこれお返しします。」

 士郎の怪我で思い出したヴィヴィオはRHdの中にしまっていたものを取り出す。

「棒?」

 アリシアが覗き込む。士郎が手に取ると鞘を抜いて刃を見せる。      

「懐かしいな、持っていてくれたんだ。」
「父さん、こんな小太刀持ってたの?」
「昔の練習刀だ。なのはが生まれた頃に使ってたんだ。」

 なのはが生まれた頃と聞いてアリシアは気づいたらしい。この小太刀は私が昔の士郎から借りたもの。返す機会もなくそのまま持って帰ってきたのを忘れていた。

「…結構欠けてる。使える?」

 恭也が刃面を見て言う。

「練習用だからな。ヴィヴィオ、これはそのまま持っていてくれ。俺はもう引退したし、代わりもある。」

 白木の鞘に直して私に差し出す。

「わかりました。」

 士郎にとっても思い入れがあるかと思い返そうとしたけれど、彼が言った通り再びRHdの中に入れた。

「ヴィヴィオばっかりずるい~。私なんてデバイスと木刀だよ?」

 その様子を見てアリシアは頬を膨らませた。
 刃のこぼれた短刀より2本に分かれたバルディッシュの方が物理も魔法も対応出来る分かなり凶悪だと思うのだけれどそういう考えではないらしい。

「アリシアちゃんのも頼んであるよ。まだ作って貰っている段階だし、アリシアちゃんの体も成長途中でプレシアさんからもまだ早いと言われているから渡せないけどね。」
「それで雫のと…」
「ああ」

 恭也は何か知っていたらしい。

「やった♪」

 とりあえず彼女の機嫌が直ったのでよしとしよう。
 その時

「みんな~朝の用意出来たわよ」

 桃子の声が聞こえて朝の練習は終わった。



「さっきフィアッセから電話があったわ、明日の昼過ぎに日本に着くから夕方にはこっちに来るって。」

 朝食時に桃子が言う。それを聞いて喜ぶなのはとフェイト、アリシア。その時

「なのは、フィアッセさんへのプレゼント持って来た?」
「プレゼント?…プレゼント…あっ!」

 なのはが思い出したのか立ち上がる。

「なのはママ、フィアッセへのプレゼントって?」
「あ…うん。実はこの前ヴィヴィオがコンサートに来た後でヴィヴィオや私達と話出来る様にして欲しいってお願いされて携帯デバイスを準備してたの。」
「そんなこと出来るんですか? 管理外世界への魔法文化の持ち出しって厳しいんじゃ…」

 アリシアの言葉にヴィヴィオも頷く。
 魔法文化の管理外世界への持ち込みは厳禁というのが管理局の建前だ。でも…第97管理外世界に関しては色々事情が違っている。
 連続した第1級のロストロギア事件があった後も暫くの間は監視体制が取られており、それが無くなった後も名目上の監視が行われている。
 名目上というのはクロノ・ハラオウンの家族、エイミィが監視員として海鳴市で子育てしたいが為に臨時で設けた役職なのだけれど…。
 これによって色々自由が効くようになり、高町家とアリサ・すずかの電話に通信出来る様になったり、月村家の庭に専用ゲートを置いたりしている。

「リンディとレティが色々手を回してくれたおかげで私達もここで暮らせたのよ」

 プレシアが微笑みながら頷く。

「機動6課の時もロストロギアの反応が出て、みんなで来たんだよ。」

 へぇ~っと納得するアリシアとは対照にヴィヴィオは微妙な笑みを浮かべていた。

(…クロノさん…この計画知った時、絶対頭抱えてたよね…)

 多分相当な無茶というより、色んな権限を使いまくって駆け引きをしたのは想像だに難くない。

「ヴィヴィオの魔法のこともあるから、フィアッセおね…フィアッセさんも家族同然だからって専用の通信デバイスを用意したんだ。話が出来るのは家からだけだけど…渡す前に認証しないといけないから会うときに持ってこようって思って…。まだ時間あるから後で取りに行ってくる。」
「だったら私が行ってくるよ。ママ達だと本局と地上本部を通らなくちゃいけないでしょ。私ならそのまま家の前に飛べるし、直ぐ帰って来られる。」

 異世界からの転移魔法は色々制限がある。でも私の使う魔法は調べようがないから転移魔法だと気づかれない。

「フェイトママ…いい?」
「わかった、でも直ぐに帰ってくること。」
「じゃあ私もついて行く。家に行って帰ってくるだけだからいいよね♪ 遠い世界じゃないし。」
「え? 行ってすぐ帰るだけだよ?」
「それでもいいの♪」

 ニコッと笑いながら頷くのを見て、正月早々何かが起こるとも思えず頷いた。

   
「じゃあ行ってきます。向こうに着いたら連絡するからどこにあるか教えてね。」
「うん。」

 朝食を食べた後、そのまま玄関で靴を履いて家の前をイメージし虹色の光に飛び込んだ。
 しかし、飛び込んだ直後に何かが迫ってきて

(えっ? 何っ!?)

 咄嗟にアリシアを抱き寄せて目をつぶり衝撃に備えた。

~コメント~
 海鳴市で過ごす日常編でした。
 年末年始にかけてこの辺までアップ出来たら良かったのですが…



 

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