第07話「立体迷宮のナビゲーター」
- リリカルなのは AffectStory2 ~刻の護り人~ > 第2章 前兆の中へ
- by ima
- 2019.01.24 Thursday 03:00
【ドンッ!】
何かに突き飛ばされた様に光球から弾き出された。
地面を転がってそのまま木にぶつかって止まる。
「イタタタタ…何?さっきの…アリシア大丈夫…? アリシアっ!?」
抱き寄せた筈のアリシアが見当たらない。ガバッと飛び起きて辺りを見回すが彼女の姿はない。
「アリシア~っ!!」
慌てて叫ぶと
「ここ~…下りるの手伝って~」
何かに突き飛ばされた様に光球から弾き出された。
地面を転がってそのまま木にぶつかって止まる。
「イタタタタ…何?さっきの…アリシア大丈夫…? アリシアっ!?」
抱き寄せた筈のアリシアが見当たらない。ガバッと飛び起きて辺りを見回すが彼女の姿はない。
「アリシア~っ!!」
慌てて叫ぶと
「ここ~…下りるの手伝って~」
上を見ると私が転がっていた枝に引っかかっていた。それを見てホッとしながらも
「今行くから待ってて、RHd」
バリアジャケットを纏って飛び上がり、彼女を支えて地面に下りジャケットを解除した。
「ありがと、何が起きたの? 光の中に入ったら木の上に飛ばされてて何も出来なかったよ。」
転移中の感覚は彼女には無いらしい。私には何か迫ってくるのが見えていたけれど彼女が微動だにしなかったのはそれが理由らしい。
「わかんない、家の前に出ようとしたら何かがこっちに向かってきて離れない様にアリシアに抱きついて気がついたら私も落ちて木の下に転がってた。」
「何かにぶつかって? 私にはわかんなかった…ここは?」
「どこだろう? 海鳴市の様な感じはするんだけど…多分あそこに見えるの臨海公園…だよね?」
どうも出てしまったのは林の中だったらしい。そのまま歩いて出ると見慣れた場所に出た。臨海公園の林の中に落ちたらしい。
「…空間転移失敗したのかな? 別の時間に飛んじゃった?」
似た感じでブレイブデュエルの世界に来たこともあったけれど、さっきバリアジャケットが使えたから魔法が使えない世界ではない…。
臨海公園が見えるのに別の時間だとヴィヴィオもアリシアも既に気づいていた。
「う~ん…」
首を傾げる。
「その前にさ…ここすっごく暑いんだけど。冬じゃないよね。どう見ても」
雪の残った冬から飛んで来たのに、今はギラギラとした日射しと空に海上の雲が空に伸びていて蝉の鳴く声があちこちから聞こえてくる…
「夏…だね。」
「暑い…誰も来ないか見てて、服脱いじゃうから。着替えたら交替で」
「わかった」
アリシアはそう言うと木の陰に入って厚手のジャケットやシャツやニーソックスを脱いで薄手のシャツの裾を上げてキュロット姿になり、脱いだ服をバルディッシュの中に入れた。
「交替♪」
交替といわれてヴィヴィオが林の中に入るが、私が今着ている服はハイネックのフリースとジャンパースカートと厚手のジャケットだ。アリシアの様に脱げるのはジャケットだけ…
(どうしよう…あっ! 制服中に入れてたかな?)
「RHd、予備の制服あったよね?」
そう言うとStヒルデの制服が出てきた。長袖だけれど今より良い。そう思って制服に着替えた。
「お待たせ~」
「うん、?どうして制服?」
「ジャケットしか脱げないから、予備で持ってたのがこれだけだったの。それよりも急いで戻ろう。ここが何時かわかんないしママ達心配してるよ。」
悠久の書を取り出す。
行き先は兎も角、魔法が使えるから元の場所へとイメージを送れば高町家には戻られる。
「う~ん、折角来たんだしさ、ちょっと見て回らない? 向こうに行くのは時間を決めて行けば大丈夫でしょ? 折角来た所なんだから何か理由があるんじゃない?」
「でも…」
「危ないって思ったら直ぐに帰ればいいよ。魔法も使えるんだから。私もコア10個位は持ってるし」
彼女の言うとおり、何故ここに飛ばされたのか調べても良いかも知れない。
気にならないと言えば嘘になる…ヴィヴィオの心の中で帰ろうと言っているヴィヴィオと遊ぼうと言っているヴィヴィオが争っていて…遊ぶことに決めた。
「じゃあ…少しだけだよ。夜には戻るからね。」
「は~い、じゃあ早速街にいこ~!」
アリシアは私の手を引っ張って駆けだした。
「…イタタタ…ここは?」
2人が駆けだしたのと同じ頃、海鳴市から離れた場所にある山中に彼女は落ちていた。数本の木々が彼女の勢いを止められずに折れてしまっている。生身であれば天に召されたか立つ事も出来ない重傷だろう。しかし彼女は何事も無かったかの様に立ち上がり服についた土埃を払った後周りを見る。
「座標がずれた? っ! 急いで見つけないと。」
そう言うと足に力を込めてジャンプすると人間離れした跳躍力でその場から消えた。
2人が接触してしまったことで、既にこの時間の未来は変わり始めていた。
「これ…かわいい♪、うん! これに決めた」
ヴィヴィオとアリシアが最初に来たのは駅の近くにある古着屋だった。
どこの制服かは判らないけれど制服姿で色々歩いていると警備員に声をかけられかねないし、万が一Stヒルデを知っている人が居たらそれは間違い無くミッドチルダを知っている魔法関係者でここでは管理局員の可能性が高い。
それにアリシアも軽装になったとは言え、冬用の服なので色もそうだけと暑い目立つ。かといって新しい服は持っていたお小遣いでは買えない。。
幸いにも士郎や桃子、アリサ、すずかからお年玉としていくらか貰っていた。早速使うのに少し躊躇ったけれどここでミッドチルダのお金が使えないのだから仕方ない。
そこで目を付けたのは古着屋だった。
2人はそこで気に入った服を買って着替えて出かけた。
(あの子達…着ていた服どこに入れたんだろう?)
応対した店員は2人が出て行った後ろ姿を眺めながら首を傾げるのだった。
「ここは闇の書事件から2年位経ってる。サーチャーは有るみたいだけど、アースラは居ないね。」
駅前のお店でアイスを買って食べながら歩く。
RHdとバルディッシュが周囲の状況をチェックしてくれている。幾つかの魔力監視端末が動いているらしいから下手に魔法は使えない。デバイス反応を取られたら直ぐに見つかるだろうけれど管理外世界にそこまでのセンサーは持って来ていないだろう。
来た時既にバリアジャケットを使ってしまったからもしかすると知られているかも…という心配もあって2機にチェックを頼んでいた。
もしそんな状態になる前にバレたらさっさと元の世界に戻ってしまえばいいだけなので寧ろ気をつけないといけないのは私よりアリシアだ。
もしここにフェイトが居れば見間違われてしまう。
彼女もそれが判っているのか古着屋で売っていた深めの帽子を買って髪を巻いて入れている。
「とりあえず、同じ世界か判んないから…翠屋とフェイトのマンションは入れないかも知れないからなのはの家に行ってみる?」
見知った人が居れば海鳴市から離れた方がいい。
「そうだね。それから色々見て回ろう。何となくだけど懐かしい感じなんだよね。ここ…初めて私が来た頃によく似てる。」
それから私達は喫茶翠屋へと向かい窓から中を覗く。でも…店内には桃子も士郎、なのはや美由希達も居なかった。
「どういう世界なんだろうね?」
「う~ん…わかんない…違う世界…なのかな?」
アリシアに聞かれてヴィヴィオも首を傾げるだけだった。
「ん?」
新宿にある時空管理局日本支部。その中で駐在局員のアレックスはあるモニタ画面を見ていた。
「どうしたの?」
上司であるエイミィ・リミエッタが声をかける。
「海鳴市の広域センサーで未確認魔力を確認しています。6時間前に…」
「6時間前? 見逃しちゃった?」
「いえ、関東エリアにセンサーを集中させた影響で詳しい場所が絞り込めず、反応も警戒するレベルではなく以降反応が無かった為にセンサーの判断で再発見時に報告する予定でした。」
関東エリアで続いている重機の盗難事件。魔法ではないけれど何かが起きていると考え、周囲に広げていたセンサーを関東エリアに集めた。
その弊害で他の場所での検知精度が落ちてしまっていた。
アレックスが機器チェックしなければ見つからなかったレベルのものだ。
「う~ん、じゃあ仕方ないね。一応記録だけ取っておいて」
「了解です。」
エイミィもそれが判っているのでそこまで深く聞かずに次に何かあった時に調べられるようデータだけを残しておくように言い自身の席に戻る。
「さてと…折角の夏休み、フェイトちゃんとなのはちゃんには久しぶりに羽伸ばしてもらわなくちゃね♪。リンディ所長にも…」
今頃フェイトやなのは達は友達と一緒に楽しんでいるだろう。そんな時に水を差したくないと思いながらも今までの経験から事件が何か大きくなっていく様な気がしていた。
自身の席でモニタに映る臨海テーマパーク、【オールストン・シー】を見ながら呟いた。
ヴィヴィオ達は海鳴市の近くでウィンドーショッピングをしてから、そのまま電車に乗って都市部に向かっていた。
アリシアは兎も角ヴィヴィオはこっちの電車に乗るのも初めてだし、海鳴市以外の町は殆ど知らない。夏休みだから同じ年頃の子供も多い為か目立っていなかった。
海辺の方に変わった施設が見える。
「アリシア、あれ見て。すごいよ。あんなのあった?♪」
「オールストン・シー…じゃない? そこに写真が出てる。水族館やテーマパークが集まった施設…なんだって。」
電車の中にあった広告を見る。
「楽しそう…あ~でもまだ準備中なんだ…遊びに行きたかったね。そうだ、後で行ってみない?」
「? 外から見られるだけだよ?」
「違うって、これ使って。」
デバイスを見せる。流石にここで本を出すと周りに居る人達が驚かせてしまう。
「あっ! いいねそれ♪ でも…最初は直ぐ帰るって言ってたのヴィヴィオだったよね~」
「遊びに行こうって誘ったのアリシアだよね~」
ジッと見合った後2人同時に笑った。
「海鳴以外の街も楽しい事が沢山あるからその後に行こう♪」
「うん♪」
初めて見る日本の海鳴市街とは違う街、どんな所だろうとヴィヴィオは胸を躍らせるのだった。
それから小一時間後…、踊っていた胸は不安に満ちあふれていた。
クラナガンの都市部と変わらない位色んな建物があって、人も沢山…お店も沢山…辺りをキョロキョロとしていたらアリシアとはぐれたのだ。
念話は使えるから彼女とも直ぐに連絡したのだけれど、RHdとバルディッシュからかなりの数のセンサーが近くにあると聞いて使えなくなってしまった。
「こんないっぱいのセンサーなんて…どうして集まってるのよ~。」
悪態をつきながらアリシアからの最後の通信【ぺんぎんがある場所】っていうのを探している。
(…ぺんぎんてなに?)
何かの名前だろうけど、ミッドチルダでそんなの聞いたことがなく、調べたくてもデバイスは使えないし、図書館でも近くにあれば探したのだけれど見当たらない。
そんなに離れていない筈だからと行ったり来たりしているが、そもそも何処に今いるのかすららからない。
「こうなったら…デバイス使ってアリシアと合流して…見つかっちゃったら直ぐに帰る!」
そう決めて胸元からペンダント状になった相棒に話しかけようとした時
「そこの青いリボンのキミ、もしかして迷子?」
「あっ…はい、友達とはぐれちゃ…っ!!」
慌ててデバイスを服の中に戻して振り返ると、思わず息を呑んだ。
「全く…私よりヴィヴィオが迷子になるなんて…」
一方その頃、アリシアは歩行者広場になっている場所に来ていた。
近くにあったお店で「友達とはぐれてしまっていい待ち合わせ場所はありませんか?」と聞いたところここを教えて貰った。
【ペンギンの銅像の近くに居る】
とそれだけを伝えて待っている。バルディッシュが近くに沢山のセンサーあるのを見つけていた為の苦肉の策だ。バルディッシュは兎も角、RHdはバレたらデバイス情報を取られかねない。
夏でも日陰もあるのでそこで、近くで買ったアイスを食べながら待っていると…
見慣れた青リボンが見えた。
「ヴィヴィオ~、も~っ、はぐれちゃって心配したんだから…」
そこまで言って隣に居た女性を見て思わず言葉を詰まらせた。
「ごめん、お姉さんに連れてきて貰ったの。ありがとうございます。」
「ありがとうございます。」
慌ててアリシアも帽子を深く被って女性に礼を言う。
「ううん、近くに行くつもりだったから。ボーイフレンド? ここは人が多いから女の子を1人にしちゃダメだよ。じゃあね♪。」
そう言うとその女性は手を挙げて人混みの中に消えていった。
「…ヴィヴィオ、聞きたいこといっぱいあるんだけど…」
彼女の姿が見えなくなったところでアリシアがジト目で聞いてきた。
「うん…私もびっくりしたんだから! まさかエイミィさんが声かけてくるなんて」
そう、ヴィヴィオをここまで連れてきたのはエイミィだったのだ。
ヴィヴィオも振り返った瞬間思いっきり驚いたし、アリシアも見た瞬間驚きの余り固まっていた。
「この服で良かった…」
「うん…私も危なかった…」
もう少し後でデバイスを起動させてでもいたら滅茶苦茶大変なことになっていたしStヒルデの制服だと気づかれかねない、アリシアも水色ベースのショートパンツではなくミニスカートと帽子を買っていなければ…確実にフェイトと見間違われただろう。その後のことを考えると…2人とも背筋が寒くなった。
「とにかくここから離れよう。…近くにいるとセンサーもあるし管理局員も居るから。」
「うん、今度は離れない様に手を繋いで行こう。」
2人は頷くと新宿から急いで離れた。
~コメント~
ということで2章開始です。飛んだ世界は…もちろんあの世界です。
何度か行きましたがあの場所は迷います。
「今行くから待ってて、RHd」
バリアジャケットを纏って飛び上がり、彼女を支えて地面に下りジャケットを解除した。
「ありがと、何が起きたの? 光の中に入ったら木の上に飛ばされてて何も出来なかったよ。」
転移中の感覚は彼女には無いらしい。私には何か迫ってくるのが見えていたけれど彼女が微動だにしなかったのはそれが理由らしい。
「わかんない、家の前に出ようとしたら何かがこっちに向かってきて離れない様にアリシアに抱きついて気がついたら私も落ちて木の下に転がってた。」
「何かにぶつかって? 私にはわかんなかった…ここは?」
「どこだろう? 海鳴市の様な感じはするんだけど…多分あそこに見えるの臨海公園…だよね?」
どうも出てしまったのは林の中だったらしい。そのまま歩いて出ると見慣れた場所に出た。臨海公園の林の中に落ちたらしい。
「…空間転移失敗したのかな? 別の時間に飛んじゃった?」
似た感じでブレイブデュエルの世界に来たこともあったけれど、さっきバリアジャケットが使えたから魔法が使えない世界ではない…。
臨海公園が見えるのに別の時間だとヴィヴィオもアリシアも既に気づいていた。
「う~ん…」
首を傾げる。
「その前にさ…ここすっごく暑いんだけど。冬じゃないよね。どう見ても」
雪の残った冬から飛んで来たのに、今はギラギラとした日射しと空に海上の雲が空に伸びていて蝉の鳴く声があちこちから聞こえてくる…
「夏…だね。」
「暑い…誰も来ないか見てて、服脱いじゃうから。着替えたら交替で」
「わかった」
アリシアはそう言うと木の陰に入って厚手のジャケットやシャツやニーソックスを脱いで薄手のシャツの裾を上げてキュロット姿になり、脱いだ服をバルディッシュの中に入れた。
「交替♪」
交替といわれてヴィヴィオが林の中に入るが、私が今着ている服はハイネックのフリースとジャンパースカートと厚手のジャケットだ。アリシアの様に脱げるのはジャケットだけ…
(どうしよう…あっ! 制服中に入れてたかな?)
「RHd、予備の制服あったよね?」
そう言うとStヒルデの制服が出てきた。長袖だけれど今より良い。そう思って制服に着替えた。
「お待たせ~」
「うん、?どうして制服?」
「ジャケットしか脱げないから、予備で持ってたのがこれだけだったの。それよりも急いで戻ろう。ここが何時かわかんないしママ達心配してるよ。」
悠久の書を取り出す。
行き先は兎も角、魔法が使えるから元の場所へとイメージを送れば高町家には戻られる。
「う~ん、折角来たんだしさ、ちょっと見て回らない? 向こうに行くのは時間を決めて行けば大丈夫でしょ? 折角来た所なんだから何か理由があるんじゃない?」
「でも…」
「危ないって思ったら直ぐに帰ればいいよ。魔法も使えるんだから。私もコア10個位は持ってるし」
彼女の言うとおり、何故ここに飛ばされたのか調べても良いかも知れない。
気にならないと言えば嘘になる…ヴィヴィオの心の中で帰ろうと言っているヴィヴィオと遊ぼうと言っているヴィヴィオが争っていて…遊ぶことに決めた。
「じゃあ…少しだけだよ。夜には戻るからね。」
「は~い、じゃあ早速街にいこ~!」
アリシアは私の手を引っ張って駆けだした。
「…イタタタ…ここは?」
2人が駆けだしたのと同じ頃、海鳴市から離れた場所にある山中に彼女は落ちていた。数本の木々が彼女の勢いを止められずに折れてしまっている。生身であれば天に召されたか立つ事も出来ない重傷だろう。しかし彼女は何事も無かったかの様に立ち上がり服についた土埃を払った後周りを見る。
「座標がずれた? っ! 急いで見つけないと。」
そう言うと足に力を込めてジャンプすると人間離れした跳躍力でその場から消えた。
2人が接触してしまったことで、既にこの時間の未来は変わり始めていた。
「これ…かわいい♪、うん! これに決めた」
ヴィヴィオとアリシアが最初に来たのは駅の近くにある古着屋だった。
どこの制服かは判らないけれど制服姿で色々歩いていると警備員に声をかけられかねないし、万が一Stヒルデを知っている人が居たらそれは間違い無くミッドチルダを知っている魔法関係者でここでは管理局員の可能性が高い。
それにアリシアも軽装になったとは言え、冬用の服なので色もそうだけと暑い目立つ。かといって新しい服は持っていたお小遣いでは買えない。。
幸いにも士郎や桃子、アリサ、すずかからお年玉としていくらか貰っていた。早速使うのに少し躊躇ったけれどここでミッドチルダのお金が使えないのだから仕方ない。
そこで目を付けたのは古着屋だった。
2人はそこで気に入った服を買って着替えて出かけた。
(あの子達…着ていた服どこに入れたんだろう?)
応対した店員は2人が出て行った後ろ姿を眺めながら首を傾げるのだった。
「ここは闇の書事件から2年位経ってる。サーチャーは有るみたいだけど、アースラは居ないね。」
駅前のお店でアイスを買って食べながら歩く。
RHdとバルディッシュが周囲の状況をチェックしてくれている。幾つかの魔力監視端末が動いているらしいから下手に魔法は使えない。デバイス反応を取られたら直ぐに見つかるだろうけれど管理外世界にそこまでのセンサーは持って来ていないだろう。
来た時既にバリアジャケットを使ってしまったからもしかすると知られているかも…という心配もあって2機にチェックを頼んでいた。
もしそんな状態になる前にバレたらさっさと元の世界に戻ってしまえばいいだけなので寧ろ気をつけないといけないのは私よりアリシアだ。
もしここにフェイトが居れば見間違われてしまう。
彼女もそれが判っているのか古着屋で売っていた深めの帽子を買って髪を巻いて入れている。
「とりあえず、同じ世界か判んないから…翠屋とフェイトのマンションは入れないかも知れないからなのはの家に行ってみる?」
見知った人が居れば海鳴市から離れた方がいい。
「そうだね。それから色々見て回ろう。何となくだけど懐かしい感じなんだよね。ここ…初めて私が来た頃によく似てる。」
それから私達は喫茶翠屋へと向かい窓から中を覗く。でも…店内には桃子も士郎、なのはや美由希達も居なかった。
「どういう世界なんだろうね?」
「う~ん…わかんない…違う世界…なのかな?」
アリシアに聞かれてヴィヴィオも首を傾げるだけだった。
「ん?」
新宿にある時空管理局日本支部。その中で駐在局員のアレックスはあるモニタ画面を見ていた。
「どうしたの?」
上司であるエイミィ・リミエッタが声をかける。
「海鳴市の広域センサーで未確認魔力を確認しています。6時間前に…」
「6時間前? 見逃しちゃった?」
「いえ、関東エリアにセンサーを集中させた影響で詳しい場所が絞り込めず、反応も警戒するレベルではなく以降反応が無かった為にセンサーの判断で再発見時に報告する予定でした。」
関東エリアで続いている重機の盗難事件。魔法ではないけれど何かが起きていると考え、周囲に広げていたセンサーを関東エリアに集めた。
その弊害で他の場所での検知精度が落ちてしまっていた。
アレックスが機器チェックしなければ見つからなかったレベルのものだ。
「う~ん、じゃあ仕方ないね。一応記録だけ取っておいて」
「了解です。」
エイミィもそれが判っているのでそこまで深く聞かずに次に何かあった時に調べられるようデータだけを残しておくように言い自身の席に戻る。
「さてと…折角の夏休み、フェイトちゃんとなのはちゃんには久しぶりに羽伸ばしてもらわなくちゃね♪。リンディ所長にも…」
今頃フェイトやなのは達は友達と一緒に楽しんでいるだろう。そんな時に水を差したくないと思いながらも今までの経験から事件が何か大きくなっていく様な気がしていた。
自身の席でモニタに映る臨海テーマパーク、【オールストン・シー】を見ながら呟いた。
ヴィヴィオ達は海鳴市の近くでウィンドーショッピングをしてから、そのまま電車に乗って都市部に向かっていた。
アリシアは兎も角ヴィヴィオはこっちの電車に乗るのも初めてだし、海鳴市以外の町は殆ど知らない。夏休みだから同じ年頃の子供も多い為か目立っていなかった。
海辺の方に変わった施設が見える。
「アリシア、あれ見て。すごいよ。あんなのあった?♪」
「オールストン・シー…じゃない? そこに写真が出てる。水族館やテーマパークが集まった施設…なんだって。」
電車の中にあった広告を見る。
「楽しそう…あ~でもまだ準備中なんだ…遊びに行きたかったね。そうだ、後で行ってみない?」
「? 外から見られるだけだよ?」
「違うって、これ使って。」
デバイスを見せる。流石にここで本を出すと周りに居る人達が驚かせてしまう。
「あっ! いいねそれ♪ でも…最初は直ぐ帰るって言ってたのヴィヴィオだったよね~」
「遊びに行こうって誘ったのアリシアだよね~」
ジッと見合った後2人同時に笑った。
「海鳴以外の街も楽しい事が沢山あるからその後に行こう♪」
「うん♪」
初めて見る日本の海鳴市街とは違う街、どんな所だろうとヴィヴィオは胸を躍らせるのだった。
それから小一時間後…、踊っていた胸は不安に満ちあふれていた。
クラナガンの都市部と変わらない位色んな建物があって、人も沢山…お店も沢山…辺りをキョロキョロとしていたらアリシアとはぐれたのだ。
念話は使えるから彼女とも直ぐに連絡したのだけれど、RHdとバルディッシュからかなりの数のセンサーが近くにあると聞いて使えなくなってしまった。
「こんないっぱいのセンサーなんて…どうして集まってるのよ~。」
悪態をつきながらアリシアからの最後の通信【ぺんぎんがある場所】っていうのを探している。
(…ぺんぎんてなに?)
何かの名前だろうけど、ミッドチルダでそんなの聞いたことがなく、調べたくてもデバイスは使えないし、図書館でも近くにあれば探したのだけれど見当たらない。
そんなに離れていない筈だからと行ったり来たりしているが、そもそも何処に今いるのかすららからない。
「こうなったら…デバイス使ってアリシアと合流して…見つかっちゃったら直ぐに帰る!」
そう決めて胸元からペンダント状になった相棒に話しかけようとした時
「そこの青いリボンのキミ、もしかして迷子?」
「あっ…はい、友達とはぐれちゃ…っ!!」
慌ててデバイスを服の中に戻して振り返ると、思わず息を呑んだ。
「全く…私よりヴィヴィオが迷子になるなんて…」
一方その頃、アリシアは歩行者広場になっている場所に来ていた。
近くにあったお店で「友達とはぐれてしまっていい待ち合わせ場所はありませんか?」と聞いたところここを教えて貰った。
【ペンギンの銅像の近くに居る】
とそれだけを伝えて待っている。バルディッシュが近くに沢山のセンサーあるのを見つけていた為の苦肉の策だ。バルディッシュは兎も角、RHdはバレたらデバイス情報を取られかねない。
夏でも日陰もあるのでそこで、近くで買ったアイスを食べながら待っていると…
見慣れた青リボンが見えた。
「ヴィヴィオ~、も~っ、はぐれちゃって心配したんだから…」
そこまで言って隣に居た女性を見て思わず言葉を詰まらせた。
「ごめん、お姉さんに連れてきて貰ったの。ありがとうございます。」
「ありがとうございます。」
慌ててアリシアも帽子を深く被って女性に礼を言う。
「ううん、近くに行くつもりだったから。ボーイフレンド? ここは人が多いから女の子を1人にしちゃダメだよ。じゃあね♪。」
そう言うとその女性は手を挙げて人混みの中に消えていった。
「…ヴィヴィオ、聞きたいこといっぱいあるんだけど…」
彼女の姿が見えなくなったところでアリシアがジト目で聞いてきた。
「うん…私もびっくりしたんだから! まさかエイミィさんが声かけてくるなんて」
そう、ヴィヴィオをここまで連れてきたのはエイミィだったのだ。
ヴィヴィオも振り返った瞬間思いっきり驚いたし、アリシアも見た瞬間驚きの余り固まっていた。
「この服で良かった…」
「うん…私も危なかった…」
もう少し後でデバイスを起動させてでもいたら滅茶苦茶大変なことになっていたしStヒルデの制服だと気づかれかねない、アリシアも水色ベースのショートパンツではなくミニスカートと帽子を買っていなければ…確実にフェイトと見間違われただろう。その後のことを考えると…2人とも背筋が寒くなった。
「とにかくここから離れよう。…近くにいるとセンサーもあるし管理局員も居るから。」
「うん、今度は離れない様に手を繋いで行こう。」
2人は頷くと新宿から急いで離れた。
~コメント~
ということで2章開始です。飛んだ世界は…もちろんあの世界です。
何度か行きましたがあの場所は迷います。
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