第08話「遭遇戦」

 新宿でエイミィと出会ってしまったアリシアはヴィヴィオと一緒に慌てて電車に乗って他の場所へと行った。

「アリシア…待ち合わせ場所の【ぺんぎん】ってなんのことだったの?」
「え…あっ!」

 そう、彼女はこっちでは海鳴市から外に出ていない。図書館で見る機会はあっただろうけれど…流石に知らなかったらしい。
 折角なので、駅で聞いて向かったのは動物園。
 ペンギンを含めてここの動物を見せられたらと考えたのだ。
 そしてそれは大成功だった。
 ペンギンは勿論、色んな動物を見て目を輝かせるヴィヴィオ。その様子を見て

「そう言えば初めて雪を見たチェントも同じ顔してたな…」

 来て良かったと思うのだった。

 それから時間は過ぎて日が暮れてきた頃、

「ありがとうアリシア、ん~っ! 今日はすっごく楽しかった♪」

 閉園時間ギリギリまで見た後、出口から出たヴィヴィオはアリシアに礼を言う。
 図書館で得られるものとは全く違った刺激がある。
 図書館では沢山の情報や知識が得られるけれどそれは頭の中にしか入らない。
 でも日本での風習や気候、ペンギンを含む動物を見てその場の雰囲気を味わうのは体験や経験となる。
 読書好きな私は知識を求めてしまいがちになるけれど、アリシアは経験を大切にしている。
 それがよくわかった。

「そろそろ…?」  

 元の世界に帰ろうと言いかけた時、ふと妙な気配を感じた。
 思わず立ち止まって辺りを見回す。
 日が落ちて街の明かりが光っている位で特に違和感は無い。でも…

「…どこだろう?」
「ヴィヴィオ? どうしたの?」
「何か…へんな感じしない?」

 私の問いかけに首を傾げるアリシア。 

「変って? 誰かが魔法使ったとかそういうの? 私はわかんないけど、バルディッシュわかる?」

 バルディッシュに聞くが判らないらしい。

「うん…RHd、広域サーチ。一緒にセンサーが近くにあるか調べて」

 通常探索では見つからないと考えて広域モードでの探査を頼んだ。広域モードは通常モードよりも広範囲の魔力反応の探査が出来る反面詳細な情報は得にくく更に近くにセンサーがあれば逆にしられてしまう。
 でも今知られたからと言って何も無ければ帰ればいいし、気にしたまま帰るよりはいいと考えた。

【Alright】

 少し待つとRHdから返事があった。日中にあったセンサーが見当たらないらしい。そして離れた場所でベルカ式の結界と判別不明の反応があった。

(何か起きてる…)
「アリシア、様子見てくるから少し待ってて、遅くなっちゃうとマズイから先に海鳴市に戻って」
「えっ? ちょっと!」

 アリシアが呼ぶ前にヴィヴィオは空間転移を使ってその場から離れた。  
   
 

「……まったくもう…ここに居ても仕方ないし…海鳴に帰ろう」

 虹色の光の中に消えた親友にため息をついて駅へと向かった。
 しかし海鳴市へ向かう途中、アリシアもある反応に気づく。
 ミッドチルダ式の結界魔法が展開されたのだ。それもかなり広域に…
 直後展開の影響を受けて駅で電車に乗ろうとしていた乗客や乗務員が全員消えている。

「嘘…本当に何か…起きてる? バルディッシュっ!」

 結界の中に入ってしまった以上、アリシアが見つかるのは時間の問題。だったらここに居たら巻き込まれかねない。慌てて電車から降りてバリアジャケットを纏い結界の中心部へと飛び立った。  



「…何アレ? はやて?」

 ヴィヴィオが行った時、見知った顔、八神はやてが機械と戦っていた。
 ここの結界は彼女が作ったらしい。
 3台の機械の攻撃をはやてが受けていた。その内の1台の上に少女らしき姿が見えるが

(誰…?)

 はやて目がけて鉄の爪が飛んでいく、彼女はそれをシールドで防ぐが貫かれる。物理兵器が魔法を上回ったことに息をのむ

「!?」

 そのまま後ろのビルに爪は直撃し爆発する。はやては爆風を受けるが立て直す。
しかし続けざまに機械は彼女を狙っていた。彼女はそれに気づいていない。

(あぶないっ!!)
「RHd!」
【Standby Ready】 
「インパクトキャノン!」

 虹色の砲撃が発射する前の機械に直撃した。そのままはやてと機械の間に飛び出る。

『誰っ?』
「!?」
「はやて、何やってるの! 時間作るから早くジャケット着て! そっちの子も何が目的でこんな事してるのかわかんないけど、話をしようよ。はやて達は聞いてくれるよ?」
「今は無理、リインが…」
『誰か知らないけど、私の目的は八神はやての持っている闇の書、少し貸して欲しいだけ。』

口々に言われる。

(リインさんが居ないと騎士甲冑は使えなくて、こっちの人は闇の書が狙いで2人が離れたタイミングに来た?)
「使って何をするつもり? この本は彼女にとってとても大切なもので簡単に貸してって言って貸せるものじゃないの。これで何をしたいのかとかどうして必要なのか理由を教えて。」
『あなたには関係ないっ、排除してっ』

 再び動き出す機械から高速で何かが飛んでくる。はやてを含むシールドを広げる。

「前に出るからはやては下がって! 本を守って」
『う、うんっ!』

 彼女の目的がはやての持つ本なら…

(先にあれを何とかしなくちゃ…でも…はやての前じゃ…) 

 クロスファイアシュートを使いたいけれど、ここでは使えない。そう思っていると

【Master!】

 RHdから警告が聞こえたのとほぼ同時にシールドを破られた。

「嘘っ!」

 叫びながらもはやてが後ろに下がったのを確認しながら体は既に回避行動を始めていて

【ImpactCannon】

 RHdから砲撃魔法が放たれた。しかし、それもシールドにかき消された。それを見て

(防がれた…違う、何かで消された? もしかしてさっきのはやても同じ?) 

 何かの効果でベルカ式魔法が消されている?

(だったら!)
「RHdジャケット解除」

 私服に戻ってRHdから白木鞘の小太刀を取り出して構え機械の上に居る少女に向けて叫ぶ

「まだ手加減上手く出来ないから逃げてよっ!」
『何を?』

 少女に返事をせずにそのまま駆けだした。

「ハァァアアアアッ!」

 そのまま機械めがけて飛び込み鎧を纏うと小太刀に光が集まって大剣状に変わる。そして

「紫電…一閃っ!」

 白い光の軌跡が3台を一閃、光の軌跡に触れた機械はピタリと止まる。直後

【ドォォオオオオン!】

 大爆発を起こした。



 機械に乗っていた少女は爆発の前に離れていた。上空から私を睨みつける。

「これで話、できるよね?」
『このっ…』 

 何か言おうとして消えてしまった。どうやら何処からか投影していて本体ではなかったらしい…

「ふぅ…」

 息をついて鎧を解除し私服に戻って小太刀もデバイスにしまう。

「あの…助けてくれてありがとうございます。」

 終わったのを見てはやてが駆け寄ってきた。

「はやて、大丈夫?」
「うん、でも…なんで私の名前を知ってるんです? それに…さっきのジャケット…なのはちゃん…私の友達のバリアジャケットに凄く似てたんですが管理局員ですか?」
「あ…」

 その時になって思いっきり大失敗をしていることに気づいた。
 元々この時間に関わらないようにしようとアリシアにも何度も言っていたのに

(私のバカ~何やってるのよ…)

 エイミィがここにいるということは管理局の数名が日本・海鳴に居るということ。はやてが居るならなのはとフェイトも当然近くに居るわけで…何かあったら彼女たちも動く。
 本当に窮地になるまで見ていなくちゃいけなかったのだ。
 やっちゃった~としゃがんで頭を抱える。

「あの…どこか怪我でも?」
「…ううん、平気。すっごくプライベートで悩んでるだけだから。」

 戻ったらアリシアから色々言われるだろうと思いながらも頭を切り替える。

「はやて、さっきの人は? 知ってる人? 闇の書…夜天の書を知ってるみたいだったけど?」
「ううん、初めて会います。」 

 見るからに管理局の関係者でもなかったし…誰だろうと首をかしげていると
 遠くから高速で動く光が見えてこっちに向かってきた。何か音もする。

「結界の中に入ってきた?」

 驚く彼女の呟きを聞いて警戒する。ミッドチルダ式とベルカ式、結界魔法に違いはあるけれど魔法資質が無い者が簡単に入って来られるものではない。しかし入ってきたバイクに乗っていたのは「はやてさん、無事ですかっ!?」

「アミタさんっ!?」

 アミティエ・フローリアン その人だったからである。

~コメント~
 8話になってようやく本編に話が繋がりました。今回の舞台はなのはRefrectionの世界です。
 ヴィヴィオが入ったことでどんな風に事件が進むのか…お楽しみに

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