第09話「2人のフェイト」

ヴィヴィオがアミティエと遭遇していた頃、アリシアはというと…

「……何が起きてるの? この世界は何?」

 ビルの屋上から目の前の光景を眉をひそめながら状況を見つめていた。
 エイミィが居たからフェイトとなのはが居るのは判っていた。でも…
 なのはは地中から伸びてきたワイヤーで縛られて動きを抑えられ、フェイトは…

(キリエさんが居るって…どういう状況?)



 
 何故かここにいるキリエと戦い始めていた。

「ねぇフェイトちゃん、ここは見逃して貰えない?」
「ええっ!?」
「私はどうしても欲しいものがあるのっ。それでイリスに…友達に手伝って貰ってここに来た。」
「家族を助ける為なのっ!」
「見逃して貰う訳にはいかない?」
(家族? アミタさん? イリスって誰?)

 出したセンサーを通して2人の会話に耳を傾けているとなのはが拘束されていたワイヤーを引きちぎって無理矢理エクセリオンバスターをキリエ目がけて放った。直撃を受けて2つ中1つのセンサーを壊され破壊ノイズに耳を押さえる。

「もーっ!話の途中なのに~っ!」

 この時ばかりはキリエに同意する。

「…させないように…つけなくちゃね…」

 もう1個のセンサーもダメージを受けたらしく音を拾い切れていない。しかもキリエは今までの剣1本だったのを2本に切り替えた。
 なのはがサポートに入れるかと見るが工事用の重機がなのはに襲いかかろうとしていてフェイトの支援どころではない。

(本気になった? あ~も~っ!!)
「バルディッシュ!」
【SonicMove】

 ビルの屋上から飛び出して初撃で腕ジャケットが壊れて引いたフェイトと構えたキリエの間に入った。キリエの振り下ろした双剣を同じく2刀流小太刀バージョンに切り替えたバルディッシュで受ける。  

「何やってんのフェイトっ! 相手の話を聞くのは制圧後でしょ!」
「えっ!?」
「キリエさんも何をしてるんですか、こんなところで」
「わ…わたし?」
「フェ? フェイトちゃんが2人?」

 戦闘中に現れたアリシアにキリエは呆然とするなか、アリシアは

「ハァッ!」
【ドゴッ!】

 キリエの双剣を巻き込んでそのまま体を回転させてキリエに対してかかと落としを食らわせた。
 状況把握に戸惑っていたキリエは後頭部にまともに受けてしまいそのまま高速道路へと蹴り落とされた。

「ったくもう…これで話を聞かせてくれますよね?」



「…」
「なっ!?」
「はいっ!?」
「フェイトちゃん?」

 同じ頃、ホテルで状況を見ていたリンディと画面で追いかけていた管理局日本支部で同じ画面を見ていたクロノ、エイミィを含む局員は何が起きたのか判らず、思わずキーを打つ手が止まっていた。

「嘘だろ…」  

 上空で装備を受け取って全速で向かっていたヴィータ達も驚きのあまり速度を緩めた。   

そんな状況の中で

「レイジングハート、バリアジャケットパージっ!」
【Alright Purge Burst】

 唯一戦闘中だった者が1人居た。
 重機に押さえ込まれていたなのははアリシアの登場に気づかずバリアジャケットの爆発させて解除した後、そのままフェイトを支援する為に

「エクセリオンっバスタァアアアアッ!」

 2射目のエクセリオンバスターを放ったのだ。流石にアリシアもそれには面食らった

「キリエさんっ! 避けて」

 流石にあの砲撃の直撃は防げないし、防御の薄いアリシアのジャケットでは壁にすらならない。

「ッ!」  

 だがなのはの放った桜色の光はキリエの目前で霧散してしまった。

「残念、もう解析が済んじゃったの。あなた…誰だかわかんないけど邪魔しないでくれるかしら? 私はなのはちゃんとフェイトちゃんに用があるの」  

 アリシアは道路に下りて構える。

(魔法が消えた? 無効化?)
「そうですか、わかりました。あとは好きにしてください…なんて言うと思いますか? フェイトもなのはも事情を話してくれたら聞きますよ。その上でわかりあえなくてぶつかるなら私は止めません。」
「でも、話しもしないで無理矢理するなら…全力で止めます。」

 アリシアはキリエへと向かった。



(何なのよこの子はっ、聞いてないっ!)

 キリエはアリシアの登場に狼狽えていた。
 イリスは八神はやてが持つ闇の書と彼女と近くに居る管理局の魔導師、高町なのはとフェイト・テスタロッサのパーソナルデータが必要だと言っていた。
 最初に居た子は間違い無くフェイトだ、そして…目の前の少女もフェイトに見える。どっちのデータを取れば良いのか判らない。
 それに…

「この子…強いし迷ってない」

 両手に剣を持つ者同士、何度かぶつかれば彼女の力量がわかった。高速移動するのは2人とも同じ。しかしフェイトは魔法で牽制していたのに対し目の前の彼女は全く攻撃系の魔法を使わない。その代わり油断すると目の前まで来て容赦なく剣を叩き込んでくる。

「ハァッ!」
【ガキッ!!】
「イッ!!」

 まただ。時々剣で攻撃を防いだと思ったら衝撃が体を駆け抜けてくる。思わず顔をしかめる。
 なのはの魔法で解析が出来たからもう攻撃手段は無いと思わせたかったのに完全に番狂わせだ。

(余裕は無いわね。もう1人のフェイトちゃんごめんっ!)
  


(キリエさん、動きは遅いけど滅茶苦茶タフだよっ!)

 剣を交えていたアリシアもキリエに対して驚いていた。
 ブレイブデュエルの世界で同じスタイルの練習相手として彼女とは何度もデュエルしている。グランツ研究所のショッププレイヤーだけでなく開発当初からのテストプレイヤーだけあって多くのスキルカードを持ちテストしているから攻撃も防御も多彩で攻防一辺倒のアリシアにとってはとても良い練習相手だ。
 しかし目の前のキリエは攻撃の多彩さは無い代わりに防御が高いのか彼女の身体能力なのかは判らないが信じられないほどタフさがある。
 今練習中の衝撃を通す技を何度も使っていて、彼女の表情からこっちの攻撃が伝わっているにも関わらず蹌踉けもしないし膝もつかない。
 ゲームとは違って彼女のダメージ量が見えないから危険を顧みず踏み込む事が出来ない。
 かと言って致命的なダメージを与える訳にもいかない。

(もっと動いて…もっと考えて…動けっ!)

 自身に念じる様に言った直後、彼女が離れて片方の剣を銃形態に切り替えた。射撃型は今のアリシアにとって最も苦手な相手だ。

「ヤバッ!」

 慌てて距離を取って防御態勢を取るがキリエの持つ短銃の銃口が光った。
避けられないとギュッと目を瞑った時

「遅くなってごめん」

 目の前にヴィヴィオが立っていた。そして

「そこまでです、キリエ」

 キリエの姉、アミティエ・フローリアンがキリエの銃を撃ち落としていた。


    
「ヴィヴィオ♪」
「全然通信出来ないから焦ったよ。無事でよかった、でも1人で無理しないで、はやてから映像見せて貰って驚いたんだから。それより…」

 なのはの背後に居た重機が動きだす。しかし直後に光弾が吸い込まれて動きを止め爆発した。

「ハァアアアアッ!」

 続けて聞きなじみのある声と共に爆発した重機の背後に居た2機が動きを止めた。

「これで全員揃った。」

 はやてと守護騎士4人がアミタとキリエを中心に囲んだ。
 笑顔だったヴィヴィオの顔が変わって2人の方を向く。

「アミタさんとキリエさん…だね。」
「さっき、アミタさんから少し聞いた。キリエさん達が探しに来たの…【永遠結晶】だって」

 ヴィヴィオの呟きに確信した。

「じゃあ…」
「うん…私達、あの事件に巻き込まれてる。」

 その時アリシアは確信した。
 目の前で起きている事件はこの世界での【砕け得ぬ闇事件】なのだと。

~コメント~
 前話はヴィヴィオの話だったので今話はアリシアとなのは・フェイト・キリエの遭遇でした。
 結局2人とも巻き込まれてしまいました。再びの事件。
 少し違ったなのはRefrectionの世界をお楽しみ下さい。
(シーン単位で繋がっていくと思うので、先にRefrectionを見て頂いた方が何処から巻き込まれているのかわかりやすいです)


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