第6話「星の光のOverture -序曲-」

「ヴァイスさんっ!」
「よっ!」

 シャマルの表情に胸騒ぎを覚えティアナは医務室に飛び込む
 しかしそこにいたのは…ベッドに腰掛け元気そうに手を挙げ答えるヴァイスの姿だった。

「……」
 呆然と立ちつくすティアナにヴァイスがいつもと変わらずニカッと笑い答える。

「ありがとなティアナ。まさか手術した所が開いちまうとはな。ん、どうした? まさか自分の弾で大怪我したって思いこんでいたのか? 俺も元武装隊だぜ、不測の事態に対しての準備くらいしてるし、あの時もしっかりシールドで弾いてたんだから。昨日今日始めた遠隔射撃程度で倒される訳ねーだ、アタッ!」

 ヴァイスが言い切る前に近くにいたはやてとリインがベシッと頭を叩く。

「アホッ、あんなんいきなり見せられて焦らん訳ないやろっ!」
「そうですっ。入院中に抜け出してきて訓練するなんて信じられないですっ」
「…」

無言で立ちつくすティアナ

「ティアナ?」
「…った‥良かった‥本当に…良かった」

 何故か涙が止まらなかった。嬉しくて涙が溢れてくる。

「心配させて済まなかったな…」

 気恥ずかしそうに謝るヴァイスが少し可愛く見える。

「それじゃティアナ後は頼んだで、行こうかシャマル・リイン」
「はい」

 三人はそのまま静かに医務室を後にした。


「ヴァイスさんありがとうございました、庇って貰って。それとラグナちゃんがさっきまで…」

『兄に謝らないでくださいね』そう言った彼女の言葉を信じて謝らなかった。
 謝ってしまうと同じ道を辿るという言葉通りにしたくなかった。
 ヴァイスも同じ事を思っていたのだろう

「いっ!あいつ、また病院に連れ戻しに…それでラグナは?」
「もう帰りました。また来ますと伝言を頼まれました。」
「あいつ…ティアナ、あいつに何か変な事言われなかったか?」

静かに首を横に振る。
 大切な事は沢山教えて貰った。とても大切な…

「凄く…凄く大切な事を教えて貰いました。」

その言葉だけで十分

「そっか…」

 ヴァイスもそれ以上聞こうとしなかった。


「さすがなのはちゃんの生徒やね~、1日であの領域とはな」
「シャマルがいて助かったです」
「ううん、リインちゃんがいたおかげ。私だけなら駄目だったかも…」
「【ユニゾン】したことはみんなに内緒やで!」
「「はい(ですっ)」」

 ティアナの放った弾は確かにヴァイスのシールドに当たっていた。しかし威力が想像以上に強く、シールドを破り更にヴァイスに直撃していた。
 もし、ティアナが何もせずそのまま受けていたら魔法ダメージに絞っていなかった分どうなっていたか…
 ヴァイスは医務室に担ぎ込まれる直前、目の前のグリフィスの腕を懸命に掴み「あいつに影を作りたくない。頼む」それだけを言い残し意識を失った。
 グリフィスを通じてそれを聞いたはやてはあえて自らの禁を犯し【真の湖の騎士の力】を使ったのである。
 シャマルの診察結果だとそれでも五分五分、残った半分は誰の力か?
 人の強い意思や願いは時に奇跡を起こす。はやてはそれを垣間見た気がした。

「それにしても…や」
「はい?」
「いつからティアナ、『ヴァイス陸曹』から『ヴァイスさん』に呼び方変えたんやろ?」
「あっ!」
「そういえば」

 春が近いのかも知れない。はやて達はふとそんな事を考えていた。


「これでまた暫く入院生活か~っ、折角抜け出してきたのに」

医務室でん~っと背筋を伸ばすヴァイスにティアナが少し呆れつつ

「病院でしっかり治してそれで、治ってからまた教えてください。あっでもまた抜け出して来たなんて言わないでくださいね」

 先に考えを読まれている。図星を指された事に苦虫を噛んだ様な顔をすると、ティアナもそれに気づいてジト目で睨む

「やっぱり逃げ出す気だったんですね…」
「ん~でも、病院退屈だからな~。あっそうだ! なら見舞いに来てくれないか。毎日…とは言わず時々でいいから」

 抜け出す口実を作ろうと軽く冗談半分で言う。
 しかし、彼女から返ってきた答えはヴァイスの予想を上回っていた。

「いいですよ。私で良ければ毎日お見舞い行きます。ラグナちゃんと一緒に♪」
「あ…ああ‥」

 そう微笑んで答えたティアナは何故か嬉しそうだった。


 その後、ヴァイスが退院するまでの間言葉の通りティアナは毎日任務の合間と見つけて部屋を訪れている。2人は同じ病室の者からは冷やかされたりもしたが、2人とも何故かまんざら悪い気分でもなかった。
 それはヴァイスが知らない【2人だけの約束】だったのかそれとも…
 それを知るのはもう少し後になってからのお話。

 
 それから更に日は過ぎて、JS事件で入院していたメンバーが戻ってきた。久々のフォワード隊全員での朝練の後

「ティアナ、ちょっと見ない内になんかすっごく上手くなったね。何かあったの? 秘密特訓?」
「いえ、特には何も」
「でも、ちょっと癖があるんだよね~。あれ? そういえば・・その癖どこかで見た事あるんだけど・・・」
「見てないですっ絶対!!」

なのはと少し赤くなりながら慌てているティアナを眺めつつ

「星の光を継ぐ者か…俺もやってみるか。」

ヴァイスは誰に言うでも無く呟いていた


~~コメント~~
 機動6課●物語は以前時空管理局様の時空管理局通信に1部連載させて頂いた物を再編集したものです。
(色々都合があって最後まで掲載出来なかった話だったので、ここに掲載させて頂きました)
 この話は色んなアニメのコラージュを含んでいます。某探偵アニメや中の方が大活躍なアニメetc
 StrikerS(ドラマCD)でティアナがヴァイスに事件への協力を頼んでいますが、すぐに連絡を取れた事やヴァイスも協力をすぐにしているので何かあったのかなと変に勘ぐったり…
 今回のSSはこれでおしまいですが、またこういう風なのを書いてみたいです。
最後まで読んで下さった貴方様、ありがとうございました。

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