第5話「悲しみのTrio -三重奏-」
目の前で起きたことが信じられなかった。
ほんの一瞬の間に何が起きたのか? 私が気付いた時には八神部隊長が目の前にいた。頬が熱い…
「八神部隊長…」
「ヴァイス君は医務室に運んで貰ったよ。ここで何があったん?」
何があったって、訓練中に何があったかなんて…
完全に動転していたティアナにははやての問いに答えられる物を見つけられなかった。
ほんの一瞬の間に何が起きたのか? 私が気付いた時には八神部隊長が目の前にいた。頬が熱い…
「八神部隊長…」
「ヴァイス君は医務室に運んで貰ったよ。ここで何があったん?」
何があったって、訓練中に何があったかなんて…
完全に動転していたティアナにははやての問いに答えられる物を見つけられなかった。
はやてもティアナを見てそれに気付いたのか
「大丈夫や、医務室の前で待っててな。後で私も行くから。」
促されいつの間にか医務室の前までやって来ていた。どこをどう通ったのだろう。バリアジャケットをグリフィスに言われて気付き解除する。
少し遅れてはやてがやって来る。グリフィスと何かやり取りすると
「わかった、任せとき」
と言って医務室に入っていった。
「ティアナ、ヴァイスは‥」
(手…そのままだ…)
「手、洗ってきます」
「1人で大丈夫か?」
「はい、大丈夫です…」
後に残ったグリフィスが何かを聞いた気がする。その言葉に私はだ無意識に答えていた。
壊れていた機器を無理矢理動かして練習を始めたときに気付くべきだったんだ。今までがなのはさん達が整備してくれていたから何も起きず訓練に打ち込めていただけなんだ。それを過信してもしもの時を考えてなかった私のミスだ。
もしあの時シュートパレットを一発でも残していれば、相殺出来たのに…それよりもあの時咄嗟に回避行動が取れたらこんな事にもならなかったのに
時が経つにつれ脳裏にその時の事が何度も蘇る。
繰り返し流れる映像を止めたいのに止められず、目の前でヴァイスが庇ってくれる前に何か出来なかったのかと繰り返し繰り返し悔やんでいた。
廊下の壁に体を預けているとコツッと足音が聞こえた。音の方を振り向くとそこには一人の少女が立っている。
心配そうにこっちを見ている。何か用なのか?
「あの…ティアナさん‥ですか?」
どこかで見たことがある…それは…ヴァイスの過去を調べた際にみたファイルに載っていた、彼の妹の…
「…あなたはヴァイスさ…陸曹の」
「妹のラグナです」
彼女との直接の面識は無かった。でも彼女は私の事を知っているらしい。謝らなないと、折角会いに来たのにこんな事になってしまうなんて。
「私のせいでっごめんなさいっごめんなさい…訓練中に失敗したのをヴァイスさんがっ…」
嗚咽が入って最後まで言葉に出来ない。彼女と同じ頃に兄を亡くしたティアナには今のラグナにとって自身が兄の上司と同じ事をしている。そんな罪悪感しかなかった。
罵声を浴びせられても仕方が無いと思った。しかしラグナはティアナの横にきて唐突に話し始めた。
「昔のこと…少し前の兄と私の事、ティアナさんは知ってますか?」
何の事? どうしてその話をするの? いくつも理由を考えながらも頷く。
過去にあったヴァイスが武装隊から去る原因になった事件。それが兄と妹の間に溝を作った事も知っている。妹と対峙する事は自身の過去のミスと向き合わなければならない。それには相当の覚悟がいる。
「あの時から…兄は余所余所しくなって…私が話しかけても全然応えてくれなくて」
少し悲しそうな顔をするラグナ。彼女も辛いのだ。
「どうして…どうして、私にその話を?」
「ティアナさん、事件の後に会った兄と同じ顔してます。もしかして『あの時もっと気をつけていれば』とか思ってませんでした?」
図星だった。さっきまでずっとその事だけを考えていた。ミスショットをしたヴァイスと同じ顔をしていた事に少し驚いたが彼女が言うのだからそうなのだろう。
「ティアナさん、もし兄が目を覚ましても絶対に兄に謝らないで下さい。」
「えっ?」
「謝るなら…そうですね。そう何か1つだけ兄の頼みを聞いてあげて下さい。きっと兄も悔やんでいるティアナさんを見るより、笑顔のティアナさんを見たいと思うから。」
微笑みかけるラグナの気持ちが判らない。兄と話す折角の機会を奪ったのだ。
「どうして…どうしてそこまで言えるんですか?どうしてっ、今笑えるんですか?」
「どうして、兄と私だから…じゃないですね。きっと【同じ過ちの道】を通ってきたから…」
その時ハッっと気づいた。
同じ過ちを繰り返して欲しく無いというラグナの願いとどうすれば良いかを。それを見て取ったのか彼女は立ち上がり
「それじゃ、私は帰ります。兄が目覚めたらまた来るって言っておいてください。」
「でも…もし…」
ヴァイスが無事な確証は何も無い。最悪は…その言葉がティアナから出る前にラグナは首を振りやんわりと遮る。そして
「ティアナさん、兄は、ヴァイス陸曹は誰にでも教える訳じゃ無いんです。覚えておいて下さいね♪」
そう言うとくるりと来た道を戻っていった。
『誰にでも教える訳じゃ無いんです』そう言ったラグナの笑みが少し気になっていた。
(どういう意味なの? 何を言いたかったの?)
ティアナはラグナが去った後もその後を目で追いかけていた。
暫く経って医務室からシャマルが現れる。
「シャマル先生っ」
「ティアナ…あのね」
疲れたシャマルの顔をみてティアナは医務室に飛び込んだ。
~~コメント~~
三重奏の最後はティアナ・ランスターです。
残りあと1話、少しでも楽しんで頂けると嬉しいです。
「大丈夫や、医務室の前で待っててな。後で私も行くから。」
促されいつの間にか医務室の前までやって来ていた。どこをどう通ったのだろう。バリアジャケットをグリフィスに言われて気付き解除する。
少し遅れてはやてがやって来る。グリフィスと何かやり取りすると
「わかった、任せとき」
と言って医務室に入っていった。
「ティアナ、ヴァイスは‥」
(手…そのままだ…)
「手、洗ってきます」
「1人で大丈夫か?」
「はい、大丈夫です…」
後に残ったグリフィスが何かを聞いた気がする。その言葉に私はだ無意識に答えていた。
壊れていた機器を無理矢理動かして練習を始めたときに気付くべきだったんだ。今までがなのはさん達が整備してくれていたから何も起きず訓練に打ち込めていただけなんだ。それを過信してもしもの時を考えてなかった私のミスだ。
もしあの時シュートパレットを一発でも残していれば、相殺出来たのに…それよりもあの時咄嗟に回避行動が取れたらこんな事にもならなかったのに
時が経つにつれ脳裏にその時の事が何度も蘇る。
繰り返し流れる映像を止めたいのに止められず、目の前でヴァイスが庇ってくれる前に何か出来なかったのかと繰り返し繰り返し悔やんでいた。
廊下の壁に体を預けているとコツッと足音が聞こえた。音の方を振り向くとそこには一人の少女が立っている。
心配そうにこっちを見ている。何か用なのか?
「あの…ティアナさん‥ですか?」
どこかで見たことがある…それは…ヴァイスの過去を調べた際にみたファイルに載っていた、彼の妹の…
「…あなたはヴァイスさ…陸曹の」
「妹のラグナです」
彼女との直接の面識は無かった。でも彼女は私の事を知っているらしい。謝らなないと、折角会いに来たのにこんな事になってしまうなんて。
「私のせいでっごめんなさいっごめんなさい…訓練中に失敗したのをヴァイスさんがっ…」
嗚咽が入って最後まで言葉に出来ない。彼女と同じ頃に兄を亡くしたティアナには今のラグナにとって自身が兄の上司と同じ事をしている。そんな罪悪感しかなかった。
罵声を浴びせられても仕方が無いと思った。しかしラグナはティアナの横にきて唐突に話し始めた。
「昔のこと…少し前の兄と私の事、ティアナさんは知ってますか?」
何の事? どうしてその話をするの? いくつも理由を考えながらも頷く。
過去にあったヴァイスが武装隊から去る原因になった事件。それが兄と妹の間に溝を作った事も知っている。妹と対峙する事は自身の過去のミスと向き合わなければならない。それには相当の覚悟がいる。
「あの時から…兄は余所余所しくなって…私が話しかけても全然応えてくれなくて」
少し悲しそうな顔をするラグナ。彼女も辛いのだ。
「どうして…どうして、私にその話を?」
「ティアナさん、事件の後に会った兄と同じ顔してます。もしかして『あの時もっと気をつけていれば』とか思ってませんでした?」
図星だった。さっきまでずっとその事だけを考えていた。ミスショットをしたヴァイスと同じ顔をしていた事に少し驚いたが彼女が言うのだからそうなのだろう。
「ティアナさん、もし兄が目を覚ましても絶対に兄に謝らないで下さい。」
「えっ?」
「謝るなら…そうですね。そう何か1つだけ兄の頼みを聞いてあげて下さい。きっと兄も悔やんでいるティアナさんを見るより、笑顔のティアナさんを見たいと思うから。」
微笑みかけるラグナの気持ちが判らない。兄と話す折角の機会を奪ったのだ。
「どうして…どうしてそこまで言えるんですか?どうしてっ、今笑えるんですか?」
「どうして、兄と私だから…じゃないですね。きっと【同じ過ちの道】を通ってきたから…」
その時ハッっと気づいた。
同じ過ちを繰り返して欲しく無いというラグナの願いとどうすれば良いかを。それを見て取ったのか彼女は立ち上がり
「それじゃ、私は帰ります。兄が目覚めたらまた来るって言っておいてください。」
「でも…もし…」
ヴァイスが無事な確証は何も無い。最悪は…その言葉がティアナから出る前にラグナは首を振りやんわりと遮る。そして
「ティアナさん、兄は、ヴァイス陸曹は誰にでも教える訳じゃ無いんです。覚えておいて下さいね♪」
そう言うとくるりと来た道を戻っていった。
『誰にでも教える訳じゃ無いんです』そう言ったラグナの笑みが少し気になっていた。
(どういう意味なの? 何を言いたかったの?)
ティアナはラグナが去った後もその後を目で追いかけていた。
暫く経って医務室からシャマルが現れる。
「シャマル先生っ」
「ティアナ…あのね」
疲れたシャマルの顔をみてティアナは医務室に飛び込んだ。
~~コメント~~
三重奏の最後はティアナ・ランスターです。
残りあと1話、少しでも楽しんで頂けると嬉しいです。
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