第3話「悲しみのTrio -三重奏-」
JS事件が終わったとは言え、機動6課が元の姿を取り戻すにはまだ暫くかかる。
機動6課の責任者、八神はやてにはしなければいけないことが山ほどあった。
レリック事件と戦闘機人についての資料と報告書のまとめ、シグナムより預かった情報から地上本部と本局との橋渡しなど。
その中でも優先したのが負傷した六課メンバーのフォローと家族への連絡だった。はやてを知る者が聞けば彼女らしいと答えるだろう。
そんな慌ただしい中、少し前に訓練施設の使用を聞いてきたティアナの事がふと気にかかる。
機動6課の責任者、八神はやてにはしなければいけないことが山ほどあった。
レリック事件と戦闘機人についての資料と報告書のまとめ、シグナムより預かった情報から地上本部と本局との橋渡しなど。
その中でも優先したのが負傷した六課メンバーのフォローと家族への連絡だった。はやてを知る者が聞けば彼女らしいと答えるだろう。
そんな慌ただしい中、少し前に訓練施設の使用を聞いてきたティアナの事がふと気にかかる。
30分後、はやては手に袋を持って訓練施設に向かっていた。
【訓練を遠目に見つつ、折をみて顔を見せよう】そんな軽いノリと気分転換にと2人分の飲み物とつまめる菓子類を用意して陣中見舞いに来たのだ。
「ティアナどこにおるんやろ?」
殆ど瓦礫と化した訓練施設に入ってキョロキョロと辺りを見ていると【ビュン】と目の前をガジェット・ドローンが横切った。
そのまま目で追いかける。
「…っってあんなガジェット・ドローンおるかいっ!」
ガジェット・ドローンの姿が見えなくなってから自分で自分に突っ込みをいれた。
それもその筈、ガジェット・ドローンには訓練中というのが直ぐにわかる様「TARGET」と書かれた帯を巻いていた。それだけであればはやてもおどろかなかったのだが、ティアナの上司を模したバリアジャケットもどきを着たガジェット・ドローンははやても初めて見た。
当人がこの場に居たらこれを組んだ者は頭を冷やされる。でも彼女は当分の間は病院から戻って来ないからこれを見ることも無いだろう。
ガジェット・ドローンがこの辺を飛び回っているということはこの付近で練習している。そう思ってキョロキョロ辺りを見回していると声が聞こえた。
「…そうっ……さん…しっ…い」
「あ、いたいた♪ おーい、ティアナ!」」
ティアナの声が聞こえ呼びかけた時、今度はもっとはっきりと聞こえた。
「…陸曹…さんっ!!…っりして」
(なんかあったんかっ!)
胸騒ぎを覚え、持っていた差し入れを放り出して声する方へ駆け出した。
向かった先にはティアナと彼女に支えられたヴァイスの姿。
涙目のティアナがヴァイスに「ヴァイスさんっ目を覚まして」としきりに声をかけているが一向にヴァイスの反応は無い。
「ちょっ…ティアナ、どうしたん? ヴァイス君、なんでここにっ!!」
入院中だった筈と聞く前にこの状況はかなり危険だ。
支えたティアナの手や足下が真っ赤に染まっている。
「ティアナ、ストップ!! 揺らしたらあかん。傷開いてしまう」
『シャマル・リイン応答して、怪我人発生! グリフィス君と男手何人かこっちに回してっ。シャマルは医務室の準備。大至急やっ!』
『はいです』
『わ、わかりました』
怪我が治りきっていないシャマルを動かすのは躊躇われる。しかし見るからにヴァイスの方が重傷。
ティアナの手を押さえてヴァイスの様子を確かめていると、すぐにグリフィスがヘリのメンテスタッフを連れて駆けつけてきた。
人一倍冷静なグリフィスもこの様子を見て一瞬立ち止まった。
「グリフィス君急いで医務室に。シャマルが準備してくれてる」
「了解しました」
グリフィスはそのまま他の局員に指示を出しヴァイスを担架に乗せ運び出す。ティアナと2人だけになった場所、彼女の方を向くとヴァイスのいた場所を見て呆けている
「ティアナ、何があったか教えて。」
「ヴァイスさん…」
呆然としている彼女にははやての姿が見えていない。はやての声も届いていないのだろう。『ティアナごめん』心で謝りつつ思いっきり頬を叩いた。
施設にパァァンと音が響く。
「ティアナっ目を覚ましっ!」
「八神部隊長…」
「ヴァイス君は医務室に運んで貰ったよ。ここで何があったん?」
「わ…私…私がここで…練習なんて…」
応えられずしどろもどろになるだけで練習中に何かが起きた事だけしか彼女から聞き取る事は出来なかった。
「大丈夫や、医務室の前で待っててな。後で私も行くから。」
ポンと背中を押してティアナを医務室に向かわせる。
押された勢いで隊舎へ向かうのを見送った後、1人残ったはやては訓練施設の管理端末を呼び出した。
「思ってた通り殆どのシステムがダウンしてる。どこかでセンサーの1個でも生き残っていればいいんやけど…あった」
少し遠いけれどセンサーの1つが生き残っていた。開いてその時の映像を見た瞬間愕然とした。
「嘘っ…直撃…」
何かの拍子に跳ね返されたシューターを避けきれずティアナは動けないでいる。そこにヴァイスが入ってシールドを張って食い止めようとするが、そのシールドを突き抜けてシューターはヴァイスを直撃していた。
あの位置だとヴァイスが弾道を読んでティアナを庇ったのだろう。
どちらにせよティアナの強すぎるシューターの直撃を受け、まだ治りきっていない傷が再び開いたのであれば…
「マズイっ」
慌ててはやても後を追った。
医務室の前にやってくるとそこにはグリフィスとティアナが立っていた。ティアナに近くの椅子に座るように言い医務室に入ろうとした時グリフィスに耳打ちされる。
「部隊長…ヴァイスから伝言を頼まれています。『あいつに影を作らないでくれ』と。そう言ってまた気を失いました。」
グリフィスの袖には指の形がくっきり残る土跡が付いていた。
【アレ】を受けてもうろうとした中で伝えたかった言葉。
彼と彼の妹と同じ道を歩ませたくない。その気持ちは十分に伝わった。
「わかった。後は任せとき」
そう言い残し部屋へと入る。
「シャマル、リイン準備はストップや」
医務室に入るなり慌ただしく機器を設置・準備していた2人を止めた。理由も告げず時間も切迫している中で突然の停止。
「はやてちゃん、急がないとヴァイス君がっ」
「ヴァイス陸曹、手術した所が完全に開いちゃってるです。はやくしないとっ」
詰め寄る二人に静かに決意を言葉にする。
魔法文化のあるこの世界で高度な医療技術が扱えれば確かに便利にはなるだろう。但しそれが一過性の物であれば医療技術を衰退、終息させてしまう。
一歩ずつ培われていない技術に意味は無い。
管理局に身を置いた時、はやてはそれを感じていた。もし自分達の能力が一過性であるなら医療技術を衰退させる様な事はしたくない。
しかし、ティアナの姿とヴァイスの言葉はそれを揺るがせた。
「部隊長…いや…【夜天の主】としての命令や。シャマル、リイン【ユニゾン】を許可します」
「「!!っ」」
今まで禁としてきた事をあえて破る決意。
2人は暫くはやてを見つめていたが、やがて互いに頷いた。
「「ユニゾン・・インッッ!ですっ」」
~~こめんと~~
機動6課●物語は某アニメタイトルや中の人を参考にした今までと少し違ったSSです。
どうして三重奏なのかは続きをお楽しみに。
【訓練を遠目に見つつ、折をみて顔を見せよう】そんな軽いノリと気分転換にと2人分の飲み物とつまめる菓子類を用意して陣中見舞いに来たのだ。
「ティアナどこにおるんやろ?」
殆ど瓦礫と化した訓練施設に入ってキョロキョロと辺りを見ていると【ビュン】と目の前をガジェット・ドローンが横切った。
そのまま目で追いかける。
「…っってあんなガジェット・ドローンおるかいっ!」
ガジェット・ドローンの姿が見えなくなってから自分で自分に突っ込みをいれた。
それもその筈、ガジェット・ドローンには訓練中というのが直ぐにわかる様「TARGET」と書かれた帯を巻いていた。それだけであればはやてもおどろかなかったのだが、ティアナの上司を模したバリアジャケットもどきを着たガジェット・ドローンははやても初めて見た。
当人がこの場に居たらこれを組んだ者は頭を冷やされる。でも彼女は当分の間は病院から戻って来ないからこれを見ることも無いだろう。
ガジェット・ドローンがこの辺を飛び回っているということはこの付近で練習している。そう思ってキョロキョロ辺りを見回していると声が聞こえた。
「…そうっ……さん…しっ…い」
「あ、いたいた♪ おーい、ティアナ!」」
ティアナの声が聞こえ呼びかけた時、今度はもっとはっきりと聞こえた。
「…陸曹…さんっ!!…っりして」
(なんかあったんかっ!)
胸騒ぎを覚え、持っていた差し入れを放り出して声する方へ駆け出した。
向かった先にはティアナと彼女に支えられたヴァイスの姿。
涙目のティアナがヴァイスに「ヴァイスさんっ目を覚まして」としきりに声をかけているが一向にヴァイスの反応は無い。
「ちょっ…ティアナ、どうしたん? ヴァイス君、なんでここにっ!!」
入院中だった筈と聞く前にこの状況はかなり危険だ。
支えたティアナの手や足下が真っ赤に染まっている。
「ティアナ、ストップ!! 揺らしたらあかん。傷開いてしまう」
『シャマル・リイン応答して、怪我人発生! グリフィス君と男手何人かこっちに回してっ。シャマルは医務室の準備。大至急やっ!』
『はいです』
『わ、わかりました』
怪我が治りきっていないシャマルを動かすのは躊躇われる。しかし見るからにヴァイスの方が重傷。
ティアナの手を押さえてヴァイスの様子を確かめていると、すぐにグリフィスがヘリのメンテスタッフを連れて駆けつけてきた。
人一倍冷静なグリフィスもこの様子を見て一瞬立ち止まった。
「グリフィス君急いで医務室に。シャマルが準備してくれてる」
「了解しました」
グリフィスはそのまま他の局員に指示を出しヴァイスを担架に乗せ運び出す。ティアナと2人だけになった場所、彼女の方を向くとヴァイスのいた場所を見て呆けている
「ティアナ、何があったか教えて。」
「ヴァイスさん…」
呆然としている彼女にははやての姿が見えていない。はやての声も届いていないのだろう。『ティアナごめん』心で謝りつつ思いっきり頬を叩いた。
施設にパァァンと音が響く。
「ティアナっ目を覚ましっ!」
「八神部隊長…」
「ヴァイス君は医務室に運んで貰ったよ。ここで何があったん?」
「わ…私…私がここで…練習なんて…」
応えられずしどろもどろになるだけで練習中に何かが起きた事だけしか彼女から聞き取る事は出来なかった。
「大丈夫や、医務室の前で待っててな。後で私も行くから。」
ポンと背中を押してティアナを医務室に向かわせる。
押された勢いで隊舎へ向かうのを見送った後、1人残ったはやては訓練施設の管理端末を呼び出した。
「思ってた通り殆どのシステムがダウンしてる。どこかでセンサーの1個でも生き残っていればいいんやけど…あった」
少し遠いけれどセンサーの1つが生き残っていた。開いてその時の映像を見た瞬間愕然とした。
「嘘っ…直撃…」
何かの拍子に跳ね返されたシューターを避けきれずティアナは動けないでいる。そこにヴァイスが入ってシールドを張って食い止めようとするが、そのシールドを突き抜けてシューターはヴァイスを直撃していた。
あの位置だとヴァイスが弾道を読んでティアナを庇ったのだろう。
どちらにせよティアナの強すぎるシューターの直撃を受け、まだ治りきっていない傷が再び開いたのであれば…
「マズイっ」
慌ててはやても後を追った。
医務室の前にやってくるとそこにはグリフィスとティアナが立っていた。ティアナに近くの椅子に座るように言い医務室に入ろうとした時グリフィスに耳打ちされる。
「部隊長…ヴァイスから伝言を頼まれています。『あいつに影を作らないでくれ』と。そう言ってまた気を失いました。」
グリフィスの袖には指の形がくっきり残る土跡が付いていた。
【アレ】を受けてもうろうとした中で伝えたかった言葉。
彼と彼の妹と同じ道を歩ませたくない。その気持ちは十分に伝わった。
「わかった。後は任せとき」
そう言い残し部屋へと入る。
「シャマル、リイン準備はストップや」
医務室に入るなり慌ただしく機器を設置・準備していた2人を止めた。理由も告げず時間も切迫している中で突然の停止。
「はやてちゃん、急がないとヴァイス君がっ」
「ヴァイス陸曹、手術した所が完全に開いちゃってるです。はやくしないとっ」
詰め寄る二人に静かに決意を言葉にする。
魔法文化のあるこの世界で高度な医療技術が扱えれば確かに便利にはなるだろう。但しそれが一過性の物であれば医療技術を衰退、終息させてしまう。
一歩ずつ培われていない技術に意味は無い。
管理局に身を置いた時、はやてはそれを感じていた。もし自分達の能力が一過性であるなら医療技術を衰退させる様な事はしたくない。
しかし、ティアナの姿とヴァイスの言葉はそれを揺るがせた。
「部隊長…いや…【夜天の主】としての命令や。シャマル、リイン【ユニゾン】を許可します」
「「!!っ」」
今まで禁としてきた事をあえて破る決意。
2人は暫くはやてを見つめていたが、やがて互いに頷いた。
「「ユニゾン・・インッッ!ですっ」」
~~こめんと~~
機動6課●物語は某アニメタイトルや中の人を参考にした今までと少し違ったSSです。
どうして三重奏なのかは続きをお楽しみに。
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